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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
練兵育成篇
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異世界探求伝 第八十九話 ブートキャンプ後半ティターン族との夜会

意外な訪問者に緊迫したひと時はあったが、これも何かの縁であろうと考え、気さくに応じるかづきであったが、一波乱が起きそうな予感がしてならない。 そんな時に騒ぎを起こしたのは・・・

 ニショルクサ王国では、鬼人族との交流は商業取引のみが行われているに過ぎないが、過去には争いも起こっていたらしく、獣人たちとヒューマンたちが協力して鬼人達を打ち破ったとの伝承もある。


かづき達のキャンプに突然現れた、ティターンの戦士ダルザ・グルモの口からは、驚くべき言葉が飛び出したおかげで、皆一様に驚きの表情を隠せないでいた。 人族たちが狩りの対象にしていたゴブリンが、まさか鬼人族と同族であったとは夢にも思わなかったのである。 だが、かずきは同じ角が二本あるのだし、同族でもおかしくないだろと、非常にあっけらかんとした考えでいたのは、やはりこの国出身では無いからなのだろう。 


その時外で大声と共に何やら騒ぎが起きた模様で、かづきらは一目散に小屋から一斉に飛び出したのであった。


「ギギッー、グギグギ!」

「グルゥ、ヴグルグゥ」

「おーい大変だ! こっちへ来てくれ」


見ればベースキャンプの柵の外で、ゴブリンとフォルスラ鳥のプディンが、両者入り乱れての乱闘が行われているようだ。 ゴブリン達はプディンに群がり、そしてプディンは千切っては投げてはの大乱戦を繰り広げており、我々側の訓練兵たちは、どちらの味方に付いて良いのかわからず右往左往している。


「ダルザ、取り敢えずゴブリンどもを鎮めてくれないか」

「せやな、まずはやめしゃしぇちゃうわ。 こりゃ! にしゃら止めんない」

「おい、誰か状況を報告してくれ!」


直ぐにかづきの元へ駆けつけたのはミクだった。 ミクとモモは周囲にいるゴブリン達が、何頭隠れているのか数を数えていたらしい。 その時何を思ったのかプディンが柵の外まで飛び出し、ゴブリンを見つけたかと持ったら頭から丸呑みしたらしい。


当然仲間を助けるべく、ゴブリン達は天敵であるフォルスラ鳥に果敢に挑み、先程の有様に発展してしまったようだ。 鳥類は程よい大きさの物は味わって食べるが、生きていたり大物であった場合には急いで丸呑みする習性がある。 御多分に漏れず、プディンもそうあって欲しいと願うばかりのかづきであった。


「プディン、まずは口を開けて見せろ」

「ギュルルぅ?」

「ここにいるゴブリン達は餌じゃないから、食べちゃダメだ」


「ギュルルぅ?」

「何故でもダメだ。 いう事を聞かないと怒るぞ」

「キュルッ」


渋々近寄って口を開けたプディンの口を開けさせると、かづきは左手で舌を持ち上げながら頭を突っ込み、右手を突っ込んだ。 すると奥から何やら動く気配がする。


「おい聞こえるか、この右手を掴んでくれ」


何やら声にならない叫び声が聞こえるが、確かにかづきの腕は何者かに手によって掴まれているようだ。 かづきは、滑りやすくなった相手の腕をしっかりと掴み直すと、力任せに引っ張り上げた。


「ギュルッ! ギュルル、グェ」

「グッ・・・ギ」

「ちょっと待ってろ、今洗ってやる」


胃液と未消化の混ぜ合わされた塊は、かづきの放ったお湯の噴射で綺麗に押し流されると、そこには一匹の可愛いゴブリンが立っていた。 成程、確かに見た目はゴブリンだが、肌が薄い緑色がかかっているほか、耳がとんがり鼻が高い以外は、見た目は人間とさほど変わらない様に見える。 しかも胸のふくらみから見る限り女のゴブリンのようである。


「カヅキ兄さま、何をじろじろ見てるんですか。 エッチですよ」

「あ、やっぱり女の子か、何か着せてやってくれ」

「はーい」


体型的にモモやミクと同様に百三十㎝程であったので、恐らくは彼女の手持ちの服でも着せるのだろう。 モモとミクは彼女をタオルで隠しながら、小屋へと連れて行くようだった。 一部始終を見ていたゴブリン達は、安心したのか大人しく膝をついて待機している。


「プディン、餌はこれから俺が許可したものだけ食うんだ、いいな」

「キュルッ、クピー!」

「やぁ、ゴブリン達。 俺のペットが悪さして済まなかった、この通り謝る」


かづきはゴブリン達に、深々と頭を下げ、プディンにも無理やり頭を下げさせた」


「騒がして悪かったなダルザ、お詫びに全員夕食に招待したいんだがいいか?」

「ほう、人間がくさゴブリンどもば歓迎しゅるんか? こりゃ面白か ガッハハ」

「おい、お前達食い物に好き嫌いとかあんのか? あるなら言ってくれよな」


「ふむ、どげんやらにしは、他ん人間っちは人種のちごうとるようやな。 そん歓迎受けるのそん前に」

「ん? 何だ」


ティターンの戦士ダルザ・グルモの口から合図の声がかかると、一斉にゴブリン達が動き出し、しばらくすると何やら木の棒に担いだ大きな葉で縛られた荷物をいくつか持ってきた。


「戦士の頭領カヅキよ、これはゴブリン達を助けてくれた礼だ。 受け取ってもらいたい」

「礼? ああ、赤白隊の連中だな。 おいお前達、ティターン族の戦士ダルザからのお礼だそうだ。 ビームス隊長、好きに分けてくれ」

「はっ! クロサワ指令、承りました」


「モモ、ミク、全部で何人だ? 料理はみんなで作るぞ、雨除けも作らないとな」

「カヅキ、周囲は障壁で覆えるようにしたわ。 土を乾かせばいいだけよ」

「お、ミシェータか気が利くな」


「おーい、俺達も混ぜてくれ」

「戻ったか黄緑隊」

「はっ! 黄緑隊全員無事に合流致しました。 クロサワ指令」


「えっと、色々あってゴブリン達もいるが、気にするな。 取り敢えず飯の用意が先だ。話はその時だぞ」

「はっ! 黄緑隊夕食の準備に取り掛かれ!」

『イエッサー』


「おーい、宴会場は工兵たちだろ、地べたに座るから敷物を頼む、ゴブリン達がいるからテーブルは膝の高さがあればいいぞ」

『イエッサー! 指令殿』

「おいカヅキ、俺はなんばすりゃあよかか?」


「ダルザは適当にくつろいでいてくれ、あー、飲み物も出さずに悪かったな。 取り敢えずこれでも摘まんで飲んでてくれ」


かづきは袋から適当につまみになりそうなものを見繕って、器にに入れるとエールの樽と木のジョッキを脇に置き、エールを並々に注いでダルザに手渡した。


「しゅまんのう、ほんなら先に戴いとくわ」

「おう、ちょっくら料理作ってくる」

「にしゃあいっちゃん偉い奴やろ? なしてがまだすんや」


「ああ、俺の故郷じゃ主人が率先して、お客さんをもてなすのが流儀なんだ。 気にするなハハハ」

「あ、あの良かったら私がそれまでお相手をしていましょうか?」

「ああ、ディアンヌ任せた、ダルザ、ディアンヌだ。 お酌の相手をさせるが、俺の女だから手を出すなよ、ハハハ」


笑いながら、かまどの方へ歩き出すカヅキを見てダルザは不思議そうに頬を叩いていた。 今まであって来た人族や獣人族は、彼の顔を見るや否や逃げ出すのが普通だったので、彼は何か拍子抜けしたようであった。


しかし、かづきにとっては、ティターン族の鬼人であるダルザは、角の生えた大男にしか見えていない様だ。 コスプレを知っているかづきにとっては、話の通じる外人くらいにしか思っていないのであろう。


「おいそこ! もっと丁寧に皮を剥け。 ああ、それはこっちへ持って来てくれ」

「ムチン、精が出るな」

「これはクロサワ様、いえ師匠。 何かお作りに?」


「ああ、食材は袋に溜め込んでるからな。 いくらでも料理は出来るぞ」

「それは助かります。 肉料理はあらかた仕込んで火入れする最中です。 スープもそろそろかと」

「ああ、それなら人数が多いから、お腹に溜まるものを作るよ」


ゴブリン達も簡単な仕事はこなしてくれたので、料理は二時間ほどですべて完了した。 長テーブルをニ列に並べて一方はゴブリン達、そしてもう一方は兵士たちが座っているが、ゴブリン達の給仕はこちらで交代で行う予定だ。 何せ、ゴブリン達と行動を共にするのも初めてだし、ましてや食生活などわかるはずもない。


いつの間にか、ダルザの横に先程のプディンに喰われたゴブリンの少女が座っているが、ミクがワンピースを着せて飾っているので、傍から見ると可愛い少女にしか見えない。 ゴブリンは角があるのと無いのがいるらしいが、彼女にはその角が無いようなので、肌の色さえ緑っぽく無ければ、人の子と見間違うだろう。


「ダルザ、もしかしてその子がうちの兵士が助けた娘なのか?」

「そーだ、族長ん孫娘ん子でタムっち言うんたい。 直接本人に礼の言いたいそーやけんなこって」

「ふむ、おーい! ズグロウ来てくれ」


「はっ! お呼びですかクロサワ指令」

「えっと、この娘かお前が助けたのは」

「・・・はっ、間違いありません」


「そうか、タムと言うそうだ。 直接礼が言いたいそうだから受けてくれ」

「はっ、了解であります」


かづきが紹介する間もなく、タムはすっくと立ちあがり、ズグロウの周りをくるりと周ると正面に回り、着けていた髪飾りを外し左手に持ち掲げるのと同時に、右手は甲の方を向け両手をズグロウに差し出す格好になっていた。


「えっと、クロサワ指令、どうすればいいんすか?」

「くれるんじゃないの? 貰っておけばいいぞ」

「しかし、先程貢物を頂いていますし・・・」


しかし、ズグロウは何も持っていない方の右手に手を掛け、そっと彼女を立ち上がらせたのであった。

「おい、ズグロウ!」

「えっ!?」


タムは立ち上がると、嬉しそうにズグロウに寄り添い彼の腕を取っていた。 同時に周りのゴブリン達が、高音の雄たけびを上げ全員が立ち上がったのだ。 何が起こったのかわからない兵士たちは、取り敢えず同じように歓声を上げたのだったが、実はこれは鬼人族由来の儀式で、宝を選ぶか本人を選ぶかの選択だったのである。


「なっ! 何が起こったんすか? 指令」

「おまえ、彼女の何も持っていない手を取ったという事はだな、その、何と言うか宝ではなく本人を選んだという事になるそうだ」

「えっ」


「その娘は今からお前の所有物となる、そう言う事だ」

「えっ!? そ、そんな」

「だから、髪飾りを取れといったはずだぞ、ズグロウ」


「ど、どうすれば」

「おまえ、この状況を見ろ。 ゴブリンやティターン族の鬼人ダルザのあの喜びよう、尋常じゃないぞ。 今更どう断わるつもりだ」

「うっ」


「まぁ、取り敢えず状況に任せよう、それしかない、うん」

「は・・・はい」

「ま、まぁみんな喜んでいる事だし、ゴブリン達とティターン族ダルザの歓迎の意味を込めて夕餉の開始だ。 今日は好きなだけ酒を飲んでいいぞ! ・・・めでたい席らしいしな」


「めでたいって・・・」

「まぁ、飲めズグロウ。 おいタム、ズグロウに酒を注いでやってくれ」

「ポッ、あい」


「クロサワ指令、茹で上がりましたが」

「おっ、土鍋ごとこっちへ持って来てくれ」

「はっ」


大きな土鍋がテーブルに置かれ全員が注目する中、かづきはすっくと立ちあがり料理の説明をする様だ。 実はこの鍋の中身は『うどん』である。 いざと言う時の為に砦村で作っておいたもので、小麦粉と塩さえあればだれにでも作れるものだが、このうどんは保存が利くようにと乾麺にしてあったものだ。


問題は醤油が無い事だが、魚や甲殻類のあらと塩を漬けこみ、麦麹で発酵させた(ひしお)と白オオマメを使い豆味噌を仕込んでおいた。 ともに熟成度はまだまだだが、樽に入れたまま持ち歩いているので、暇を見て外に出して熟成させているわけだが、これらの底に溜まった汁を集めて醤油代わりに使おうというものだった。


なにぶん量が少ないので、かさましする為ナッツなどの木の実を煎り、ゴマダレ風に作り上げる事が先程できたのである。 スープを煮詰めたものにニョクマムと味噌、そしてゴマを合わせたような複雑な味で、かづきは満足のいくものに仕上がったと自負していた。


「これは、俺の故郷で作られるうどんと言う料理だ。 今から食べ方を教えるから同じようにして食べろ」


かづきはそういうと、釜揚げうどんを特性の麺掬いの木のヘラで木製の丼に手早く取ると、熱々の湯気の立ったうどんを掬い入れ、特製の醤油もどきたれをお玉で掛けると、ネギの様や薬味と唐辛子を三回振り、鬼人族ダルザに差し出した。


「こん木ん棒は? これで食べるんか」

「ああ、軽く混ぜて食えよ。 火傷するぞ」

「ん、んあ」


鬼人ダルザは箸の持ち方には程遠く、持ち方だけでも四苦八苦しているようだ。 かづきはダルザの持っていた丼を取り上げると、みんなの見ている前で箸の持ち方を見せ、うどんをすすって見せたのだ。


『ズズッ、チュルッチュル』

「お、思ったよりいい出来だ。 モチモチ感がたまらんな、ダルザ、ほれ口を開けろ」

「おお」


『ズズッ、チュルッチュル』

「おっ、これは旨い、なんだこれ?」

「だからうどんって言ってんだろ、馬鹿め」


「ガッハハハ、こんダルザ様ば馬鹿呼ばわりか、面白か、まるっきし面白か奴ちゃカヅキ」

「ハハハ、まぁみんな喰え」

「美味い」


「キャー、もちもちしてて美味しい」

「ほれダルザ、お代わりだ。 今度は卵入りのカルボナーラ風だぞ」

「ふむふむ、モグモグ、ゴクゴク、プハーっ。 酒にも合うのう」


こうしてティターン族の鬼人ダルザとゴブリン達の、ささやかな歓迎会が始まったのだった。


無事にトラブルを回避したかづきらは、ゴブリン達鬼人族と宴会を楽しむ事になった。 次回は鬼族たちとの因縁が明らかになる、かも。

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