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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
練兵育成篇
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異世界探求伝 第八十六話 ブートキャンプ合流

このお話に出てくるフォルスラ鳥とは、実在した鳥がモデルになっており、フォルスラコスは新生代漸新世から中新世にかけて、この大地を走り回っていたのです。 現在でも飛べない鳥はペンギンを始め、ダチョウなどが有名ですが、それらは決して退化によって弱くなったのではなく、進化によって特殊能力を身につけたものばかりなのです。

 かづきが遊び感覚で、何気に慣れさせる事に成功したフォルスラ鳥だったが、満足感に浸りつつ放牧しようとした矢先に、思わぬ言葉を投げかけられ愕然とするかづきであった。


ディアンヌの言うには、基本的に慣れる事が無い人間に慣れてしまった魔物は、人に対して無警戒となり不用意に近づいて行ってしまう為、あっさりと殺されてしまうのが落ちなのだとか。 また、難を逃れたとしても裏切られた思いに駆られ、より凶暴になる為に人を襲う癖が付き非常に危険性を伴うので、手放すのであれば殺すしかほか無い事を思い知らされたのだった。 


「私たちも手放されたら、殿方を喰い殺していくかもしれませんわよ、ねぇディアンヌ」

「あっ・・・それを比喩したのではありませんのよ。 ミシーさんったら意地悪だわ」

「ホホッ、で、どうするのかしらカヅキ」


「そうだな、まずは聞いてみよう」

「おい、お前、俺達と一緒に来るか? 一応報酬は餌をきちんと与えるが、言う事は聞いて貰わないといけないぞ」

「キュルル、クピー」


「そうか、じゃお前に人を乗せるから鞍を付けさせてくれ、お前を走り易くさせるためのもんだぞ。 これを付けると人に襲われる事も無くなるんだぞ」

「キュルル、クピー」

「えっ? フォルスラ鳥の言葉がお解かりになるのですか?」


「うーん、何となくだな」

「ホホホ、いつもの事だわ。 カヅキはニュアンスが伝わるらしいのよ」

「まぁ、魔物使いにもなれますわね」


かづきは鞍とアブミをフォルスラ鳥に取り付けると、口ばしにハミを取り付ける際にハミにたっぷり蜂蜜を擦り付け取り付けておいた。 こうしてやれば、違和感もそのうち無くなるだろうと思っての措置である。 乗り方はかづきが前に乗り、後ろに一人づつ乗せる事で操作の仕方を、ミシェータとディアンヌに教えると共に、フォルスラ鳥も慣れさせるため森をゆっくりと歩きながら教え込んで行った。


名前はプディンと名付ける事にしたのだが、あのムースがやけに気に入ったのか、ム-スというと過敏に反応するのでついそのままムースと単純に付けようとも思ったが、それではあまりかわいそうだと思いデザート繋がりでプディンとしたのだ。 意外にもプディンは直ぐに慣れ、ミシェータとディアンヌの足となってくれたのだが、ジュリナに対しては初めの脅しが効き過ぎたのか、寄り付かないどころか目も合わせようとはしない有様である。


試しに好物のムースを与えて、ジュリナにご機嫌取りをさせてみたのだが、さっとムースを取り上げるとその場で食べずに、そそくさと俺の元へとやってきて食べる始末だ。 とある一族には白巫女として奉られているのに、全くもってジュリナは残念な女である。 


プディンがかづきの乗せて爆走してくれたおかげで、そろそろ合流地点にも近づくはずだ。 合図の狼煙(のろし)も上がっているので、既に到着している部隊がいる事もわかり、そっと安心するかづきであった。


ジュリナが頻繁に足元や雨具に付いたヒルを取っているが、麻袋に貯め込むたびに送りつけてくる。 かづきはそれを乾燥し、十分の一ほどになったヒルを更に麻袋にまとめる作業を繰り返している。 このヒルは乾燥させても不思議な事に、水分があれば元に戻るのである。ちなみに、このヒルの名前はブラドリースと言い毒は無い。


やけにヒルを必死に集めるので、ジュリナに聞くが教えてくれないのでミシェータに聞こうとすると、後ろに座るディアンヌから知らない事は知らないままでいい事もあるのでわ、と嗜められる始末だった。 確かに狩りを行う上では、血抜きが手軽に行える方法として大変に優れているものだが、何か奥歯にものが挟まっているようでいただけない。 


恐らく冒険者や狩人などには引く手あまたなのだろうし、地球でも膿の吸出しや打撲のうっ血などの治療にも使われていたはずだ。 ところで、ジュリナからもらった雨具が非常に役立っているが、色がやけに派手で光に当てるとラメ入りのように細かく光るでついでに聞いてみた。


聞くとやはりカエルの皮製という事で、カエルの苦手なかづきは嫌な顔をしたが、それを見たジュリナからヒルに吸われてもいいのなら、外しなさいと言われてしまった。 ヒルは麻酔作用のある唾液を使うので、知らない内に防具のすき間から入り込む事も多いのだとか。


変な穴の中に入り込まれるのも嫌なので、素直にごめんなさいで済ませたのも大人の貫禄というものだろう。 しかし、カルチャーグーやウッディフログが現れる度に、真っ先にプディンが駆け付けるのには呆れるばかりだ。 本人は好物なので条件反射で突進している様だが、乗っているミシェータやディアンヌはたまったもんでは無かろう。


プディンがカエルが好物なのも、毒体性に優れているようで、そのうち皆が慣れたのかブディンが盾役としての役割になり、後ろに乗ったミシェータが障壁を掛ける事によりうまく解決してしまった。 フロッグ系は皮と毒腺嚢や腿肉しか用が無いが、残りは全てプディンの胃袋に収まっているので、本人はとてもご満悦のようである。


「なぁジュリナ、フロッグ系の皮は気球にも使えるんじゃないのか?」

「うん、丈夫だし伸びるから大丈夫よ。 火にも強いから燃えちゃわないわね」

「表皮削って魔石パウダー入りの塗料で魔力も通りそうかな」


「そうね、表皮剥がしたら耐久力無くなるけど、塗って強化するのなら有りかもね」

「ミシェータ、王都の気球は何で出来てるんだ?」

「確か、茶色だったから翼竜でしょうね」


「ああ、それなら翼竜で間違いありませんわ、ミシーさん。 わたくし取引で見かけたことありますもの」

「ディアンヌは商会の孫でもあるんだよな」

「ええ、商工会ギルドの会長の孫ですわ」


「ああ、すまないそうだった。 もう随分俺たち馴染んじゃってるから忘れすところだった、ハハハ」

「まあ、でも商工ギルドなんか目じゃないのですものね」

「いやいや、そんなことはないさ、あの爺さんとは不文律って奴さ。 そのうちまた顔出しに行くさ」


「ええ、きっとお喜びになりますわ、色々な意味で」

「ハハハ、土産も必要だな」


ゆっくりぬかるみを歩いて行くと、狼煙の上がった先から活気にあふれた声と、聞きなれた声が聞こえてきた。 どうやら先に陣を構えているのは白赤隊のようで、遠くからも目立つように肩に紅白のバンダナが巻いてある。


「クロサワ指令! お疲れ様です。 ですが、その珍妙な生き物は?」

「ああビームス、プディンってんだが、フォルスラ鳥さ」

「ほお、よく見れば確かに、鞍や装備を施してあるので見違えてしまいました」


かづき達一行は、ビームスたちに導かれて先へと進むと森が切り開かれており、そこは広場になっていた。 しかもただの広場では無く、ログハウスまでも立ち並んでいる為に、いっぱしの村の様相を見せている。 しかも丁寧に柵まで(こしら)えているお陰で、兵站を行う部隊としてみれば満点ではなかろうか。 


この場所は深い森のど真ん中だが、木を切り開いて森を広場へと変え小さな砦の規模にまで拡張している。 勿論やり方も全てかづきが教えたものだが、実戦で本格的に行えるのにはやはり感慨深いものであるのだ。 恐らくすべてユニット式に作られており、撤退する際にも直ぐに平地に戻せるのであろう。


「クロサワ指令、こちらが仮本部の建物となっております」

「しっかし、まるで砦のようだな。 ここまで用意するとは、雨の中ご苦労だったなビームス」

「いえ、元々一番での到着予定でありましたので、雨以外はすべて予定通りです」


さすがに、クラークと同じ血筋のビームスだけあって、かなりの行動力であるのだが、ヴァレンチノ家の仕事もこなしていたのだろうし、人の扱いにはかなり慣れているのであろうか。 雨により地盤が緩むのも考えられており、一面に砂利がばらまかれているので、ぬかるんだり水が溜まる様子も見られないようだ。


見ると作業場も設けられており、木材を加工する者や皮細工らしきものをしている者、料理に勤しんでいる者達まで和気あいあいとした作業を行っているようだ。 かづき達一行は、ブディンを預けると中心部に建っている大きめのログハウスの中へと、ビームスの言われるまま建物の中へと入って行った。


中へ入ると、暖炉も設えてあるワンルーム構造になっており、ハニカム構造の建物で小さなキッチンも目に映るので、これは以前俺が設計したワンルーム仕様の図面だ。 窓は襲撃に備えて作られてはいない様だが、それでも明かり取りの天窓は備え付けてある。 二階へは梯子が取り付けられており、警備のものが見張りを行っている。 窓は無いのだが実は壁の下部には開き戸もあり、これを開くと外は十分に見回すことは出来る。


「ゆにっとしきと申すものは、建てるのに楽です。 クロサワ指令」

「いやいや、指示していないのにここまで作るなんて大したもんだよ」


女性陣も一通り見まわした後で、俺の話に合いづちを打つが、ミクがお茶を用意してテーブルに置くと、それに導かれるように女性陣も順に席に座るのだった。 ビームスは副長の犬族ベベリと、狼族のズグロウを従えて着席していた。


「まずは、拠点地作りご苦労だったな。 俺達は特に情報らしい収穫は魔物くらいだったぞ。 まぁ魔物をテイム出来たのは収穫の一つだったがな」

「ていむ、ですか?」

「あ、すまん。 そうだな、使い魔って事かな」


「ああ、それならわかります。 この国では魔物使いがいますので」

「やっぱりいるんだ」

「はい、愛玩用や見世物にするんです。 ワイバーンは都の軍隊でも乗られていますよ」


「へぇ、あんな獰猛なのに凄いな」

「いえ、卵を掻っ攫(かっさら)ってくるんです」

「成程ね、刷り込みかぁ」


ビームスは副長の犬族ベベリと、狼族のズグロウを横に座らせてはいたが特に二人は喋る事も無く、報告の要点は途中で遭遇したゴブリンに関してのものであった。 ビームスは魔物であるゴブリンに対して、討伐対象としてではなく、人と同じ様に助けた事が重大な軍務違反に当たるのではないかとの危惧があり、こうして当事者である自分と二人をそばに置いているのである。


三人を見ればビームスは勿論の事、二人の青ざめた表情がこの話にしっくり噛み合ってくる。 勿論ビームスはこの隊の指揮官であり、最高司令を担っていたのだから責任は自分にあると、食って掛かるのは間違いのないところであるが、さてどうしたものであるのか。


「あー、うん。 魔物と言えばサキュバスも同じ概念だし、問題は無いだろ」


三人がこれを聞いてホッとしたのもつかの間、ミシェータが思わぬ爆弾を投げかけてしまった。 かづきもこの話は美談として、褒めようとした矢先の出来事だったので、つい虚を突かれた形になり固まってしまったのだ。


「サキュバスは、コミニュケーションが取れたから助けたのよね。 話が通じなくても助けたの?」

「み、ミシー、それは」

「そうね、確かにカヅキのコミニュケーション力が無ければ、アイツらの討伐部位も集められたわね」


ジュリナもミシェータの言葉に同調したおかげで、俺はどうしていいのかわからなくなってしまったのだ。 しかし、次のディアンヌの言葉によって、その緊張感が一気にほぐれる。


「話が通じなくても、カヅキ様、いえカヅキ司令はフォルスラ鳥を狩らなかったわ」

「そ、そうだよな、敵意の無いものは狩る必要はないだろ」

「えぇー、おにぃちゃん、いや指令殿、私たち敵意があろうが無かろうが狩ってるよ。 ぐんむいはん、なの?」


モモがしゃしゃり出て来て、話が余計に絡まり始めてきた。


「そうよね、魔物は狩るものよね。 学校でも習ったし、冒険者ギルドでは魔物狩りが目的なのよね」

「でしょミク、同じ魔物なのに狩って良いのと悪いのとか、モモ見分けつかないよ」

「ふむ、確かにな・・・難題かも」


「ちょっと! カヅキ、皆あなたの言葉を待ってるのよ」

「ああ、すまん、ちょいと考えさせてくれ」


『という事だラビ、魔物狩りでの線引きが必要になった。 知恵を貸してくれ』

『了承シマシタ 現在アル魔物ノ データベースニヨルト 獣類、妖精類、爬虫類、魔植物類、昆虫類トニ分ケラレマス』

『ソノ内 妖精類トサレルノハ ゴブリン、コボルド、オーク、サキュバスト言ッタ魔物デ 共通項ハ二本足デス』


『おお成程、ヒト型って訳だな。 人に近ければOKってのか?』

『イエ、ソウデハアリマセン モウ一ツノ共通事項ニ 可食部ガ存在シテイナイ 可能性ガアリマス』

『うんさすがだな。 ラビ先生はやっぱり頼りになるな』


『イエ 懸念ガアリマス ソレハオークニ関シテデスガ カヅキノ星ノ概念ニハ 豚肉ノ概念モアリマス』

『あぁ、確かに、豚かぁ、豚は食いもんだな。 鳥も二本足だしな・・・ええぃ! 当たって砕けろだ』


かづきの一か八かの思い切った言動が、功を奏して上手くいくのか・・・それは天のみぞ知るといったところなのであろう。

ビームスらが助けたゴブリンたちに対して、何やら問題が起きてしまったようですが

どううまく収めるのでしょう。 次回をお楽しみに。

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