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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
練兵育成篇
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異世界探求伝 第八十五話 ブートキャンプ後半ーフォルスラ鳥の出現

境界の森探索も、もう少しで合流地点に着きそうです。

森も様相も天候次第では、ガラッと変わってくるのです。

 かづき達は手筈通りに、日が沈む前に信号弾で無事の合図を送り出していた。

左翼に進んでいる筈の赤白隊は、やけに進行が速いようだが、左右の隊共に無事の確認が取れたので、少し開けた場所でキャンプを行う事にした。 


久しぶりに少人数のキャンプで、和気あいあいと食事作りが行われたが、人数が少ない為に凝った事はあえて行わずに、野趣に富む料理を楽しむ事にしたのだ。 風呂はさすがに無理なので、各自交代でのシャワー係となる。 


「あのさ、ミシーものは相談だけど」

「何? 今忙しいのよ。 ミクこっち少し手伝ってくれない?」


ミシェータとミクは、新たな素材の入手でその研究に余念がないようだ。 ゴーレムでは無くもっと人間らしい人形作りを提案したのはかづきだが、かづきの説明で人体をモデルにした人形作りには、かなり限定性のある素材が必要だった為に、研究があまり進まないでいた。 しかし今回入手した素材で、その開発に弾みがついたようで夢中になる気もわからなくはない。


ジュリナとモモは、何やら楽し気に絵を描き上げているが、ジュリナに絵心が無いので大まかなラフを書いて、それをモモが絵に起こしているのだそうだ。 今日は訓練生の奴らもいない為、ジュリナかミシェータに遊んでもらおうと思ったが、そのような暇も無さそうなので、魔力制御の訓練をしながら大人しく休む事とする。


余った魔力を魔石に封じ込むのも一日の日課である。 こうして貯めておけば、いざという時に利用する事もできるし色々研究するのにも魔力は大切だ。 テントに自動で結界が張れるのも魔石のお陰だし、ライトと唱えるだけで明かりも点く、ミシェータの魔力回路作りは安易な魔方陣作りにおいて大いに役立っていると言えるだろう。


鍛錬も終わり、灯りを消して寝袋の中でうとうとしていると誰かの足音がするが、しかしもう睡魔によって深淵の縁まで追いやられていたせいか、直ぐに眠り込んでしまったようだ。 しかし、しばらくすると何やらの違和感で、夢見心地ながらぼんやり目が覚めてしまった。


「ミシェータなのか? ん、この大きさはジュリナかな、まぁいい気を使ってきてくれたんだな。 俺も溜まってたから助かるよ」


彼女はコクコクと頷くと、再び俺のジュニアを包み込むように愛でてくれている。 かづきはそっと彼女の頬を撫で、熱い口づけを交わすと互いの触覚を絡ませ思うがままに貪った。 


「つっ」

「ん、どうした傷むのか?」

「ううん」

「あれ? お前は誰だ」


かづきが暗闇で頼っていたのは、触感と体臭だけであった。 しかし、同じシャンプーや香料を使っていた為に、誰なのかの判断が付かなかったのだ。 そしてかづきの脳内にアドレナリンが噴き出していたのも、その判断不備が起こった原因でもある。


「あちゃ、ディアンヌか。 済まない、事を起こした後だもう俺は止まらんぞ」

「ええ、そのつもりで来ましたから、いいのですわ。 それにお二人の承諾も得ていますので」

「そっか・・・」


かづきは責任を痛感したのだが、この場の脳内思考はその責任感をすぐに隅に追いやってしまった。 もうことに及んでしまった後では、車は急に止まれないのだ。 こうして夜は静かに更けていくのであった。


――――

朝起きると、既にディアンヌの姿はなく、もう起き出していたようだった。 テントを出ると外はしとしとと雨が降っており、少し高台に彼女の姿が見て取れたので行ってみる事にした。


「ふぁーっ、今日はあいにくの雨だな」

「カズキ様お早いのですね。 あっ」

「おはようの挨拶だ。 今日から宜しく頼む」


「う、うれしぃ。 わたくしこそ不束者(ふつつか)ですが、宜しくお願いしますわ」

「フツツカモノってなぁに?」

「おっ! モモか、おはよう」


「おはよ、朝ごはんの用意が出来たの、呼んでおいでって」

「そっか、じゃ行こうディアンヌ」

「は、ハイ」


ジュリナの達のテントは既に畳まれており、雨よ家の天幕が施されてテーブルと椅子が並べられていた。 かづきはスープの鍋を取り出して火にかけると、ダッチオーブンから温められたパンを取り出し、厚めに切り分けてたっぷりのバターとヨーグルトを乗せ、そこに気前よく蜂蜜を乗せると各自の皿に置いて行く。 


テーブルには厚めの焼きベーコンと、茹でた野草のスクランブルエッグが添えられていた。 フルーツミルクもあるが、この間の作り方を覚えていたのだろう。 スープはとろとろに溶けた筋が口内で蕩けていくが、少し肌寒いので体が温まって心地良い。  


「ここからだと、順調に行けば昼ぐらいに集合地点に辿り着くわ」

「そうだなミシー、雨が少し激しくなって来たし、無理な狩りは控えよう」

「そうね、雨具も渡しておくわ。 これを着るとヒル避けにもなるわよ」


森は雨で多少ぬかるみができている。 森の中は天候によって魔物の姿も一変するらしく、小さな害虫の姿も見られないので虫よけの煙は必要ないらしい。 昆虫系の魔物は雨の中では姿をほとんど見せる事は無く、代わりにフロッグ系やそれを狙う魔物が姿を現すのだそうだ。


進んでいると出くわすのは、やはりフロッグ系の魔物やワーム、そしてスネーク系も多く出現してくる。 スネーク系はカエル目当てかと思いきやそうでもないらしく、フロッグ系の多くは皮膚が丈夫で、噛みつきに対して無効なうえに毒にも耐性を持つものが多い。


言わば大口勝負となってしまえば、カエルの丸呑み攻撃に一日の長があるようだ。 フロッグ系は目が良く、動くものに対して機敏に反応して獲物を仕留めるが、やはり天敵がいて雨の日には良く現れるそうだが早速お出ましの様だ。


-フォルスラ鳥- ランクc

飛ばない鳥類の魔物で、体長は二mから三mあり口ばしは鷲のように鋭く大きい。

丸い眼はとても遠くが良く見渡せ、雑食で何でも食べるが警戒心はとても強い。

攻撃は鋭い口ばしと逞しい腿足から繰り出される蹴りには要注意だが、かかとには指が進化したような鉤爪があり、後ろ蹴りされると金属の盾をも貫くという。 種類にもよるが雌雄で羽色が違う事が多い

素材部位:嘴、鉤爪、羽

可食部位:筋肉、卵


「へぇ、綺麗な鳥だな。 ダチョウやキウイとも違うし、毛がフサフサして顔も可愛いな」

「何言ってんのよ、相手はランクcの魔物よ」

「ジュリナの言う通りよ。 だいたいカヅキは魔物をなめてかかり過ぎる帰来(きらい)があるわ」

「お前達ちょっと待ってろ」


かづきがフォルスラ鳥に近づくと、フォルスラ鳥は夢中になって食べていた木の実をついばむのを止めて、かづきをじっと睨んで静止している。 かづきは鳥類のオスが美しい羽根を持っている事を知っているので、この鳥がオスだという事を当たりを付けていたのだ。 全身のベースは薄いベージュだが、光の具合では金色に見えなくもない。 尾羽も長さこそ短いが、コバルトブルーや緑色、ピンクの羽は迷彩色にもなっているのだろう。 


羽を大きく広げて膨らませているので、これが威嚇のポーズなのだろうが、吠えてはいないので怒ってはい無さそうだ。 相手にしてみれば、見た事も無い生物がやって来てそれで警戒している風にも見える。


「なぁ、お前綺麗だな。 俺はかづきってんだが、羽を少し触らせてくれないか?」

「ギルッ」


かづきは愛刀セセラギを抜くと、魔力は通さずウッディフログの腿肉を手のひら大に切り取り、刃先に突き刺すと刃を下に向けてフォルスラ鳥に見えるように差し出して見せた。


「フンフゥン」

「匂うか? お前さんの好きなカエルだぞ」

「フンフゥン、ギルッ」


フォルスラ鳥は目の前でブラブラされる肉を、即座に好物の肉と判断したらしい。 最初は鼻をヒクヒクさせていたが、口を半開きにしてこちらを斜め目線で覗いている。


「さぁ、食っていいぞ、ほら」


かづきはフォルスラ鳥を刺激すまいと、ゆっくりと歩みを進め鼻先でその肉を揺らして見せたが、フォルスラ鳥は後ずさりするだけで食べようとはしない。 次第に険悪になって来たのか、威嚇の声を上げ始めた。


「ギルッ! ギルギルッ」

「カヅキ、もういいでしょ。 危険だわ」

「ジュリナ、もう少し、もう少しだけ動かないでくれ。 刺激したくないんだ」


かづきはそういうと、刃先に刺したウッディフログの肉を手に持ち替えると、セセラギを鞘に仕舞い込んだ。


「ちょっ!」


ジュリナが動き出しそうなので一瞥くれると、既にミシェータが腕を掴んで、モモとミクもそばに寄り添っている。 かづきは右手に持ったウッディフログの肉を、舐めるような仕草をした後に、頭上高く持ち上げてフォルスラ鳥の前に進み寄って行った。


「金っ気が嫌だったんだな、さぁ食っていいぞ」

「ギュルッ」


フォルスラ鳥は、いつの間にか威嚇の毛を膨らませるのは止め、鳴き声も心なしか穏やかになってきたように見受けられる。 体高は頭の高さまで入れると三mはありそうで、口ばしも大きく人なぞ丸呑みされてしまうだろう。 フォルスラ鳥が一気に近づいてきて、辺りの空気が変わったかに見えるほどの緊張感が走った。


かづきは殺られると思い、体中に身体強化を使い固まってしまったが、いつまでたっても何も起こらず、ふと見上げてみるとフォルスラ鳥は、モショモシャと美味しそうに肉を平らげているのが見えた。


「美味かったか、まだあるぞ」

「キュルッ」


かづきはサバイバルナイフで肉を削ぎ、同じ様に高々と肉を挙げると、今度は間を置かずにペロリと平らげてしまった。 何度か同じように肉を与えていると、ついにはかづきの腕ごと噛みついた。 背後がざわついたのは、本当に噛みつかれたと思ったみたいだが、かづきが涼し気にしているのを見てほっとしたようだ。


フォルスラ鳥は、かづきの腕をくちばしで挟み込んではいるが、これは舌で彼の手を舐めているせいであった。 かづきも左手でフォルスラ鳥の頬や口ばしを優しく撫でると、うっとりして目を閉じている。 かづきはフォルスラ鳥の体中を撫でて回り、調子に乗って背中に飛び乗ってしまったのだ。


「なぁ、いいだろ少し背中に飛び乗らせてくれよ」

「グェッ! ギュルギュルッ」


背中に飛び移られたフォルスラ鳥は、驚いてかづきを乗せたまま、猛スピードで森の中を突進してしまっていた。 それはそうだろう、人など見るのも初めてのフォルスラ鳥が、背中に人を乗せるのも初めての事である。 人間でもいきなり背中に飛び移られれば、誰しも驚くに違いは無いのだから。


「ちょ! おい、止まれ」

『カズキぃぃー』


後方で声は聞こえるが、あまりの猛スピードで降りるのも大変そうだ。 同時にこいつが、どこかの大木にでもぶつかってしまわないかとヒヤヒヤものである。 かづきは右手に強化を掛けると、口ばしの横から手を突っ込みフォルスラ鳥の舌を思いきり掴んで引っ張った。


「ギュルルッ!?」

「ちっ!、止まったはいいが、俺の言う事をきかないと舌をこのまま引っこ抜くぞ」


フォルスラ鳥は、顔を必死に左右上下に振ってこの手を振りほどうこうと暴れているが、かづきの指はしっかりと舌を掴んだまま離さない。 しばらく暴れていたフォルスラ鳥は、とうとう観念したのか、大人しくなってしまった。


「よしよし、大人しくなったな、これはご褒美だ」

「キュルッ」


デザート用に作っておいたムースを口の中へと放り入れると、最初はビクッとしていたが、口の中でネチャネチャトその食感をゆっくり味わっているようだった。 かづきはもう一つ口の中へと放り込むと、フォルスラ鳥の首元と頬をゆっくり撫でると、背中から飛び降りたのだった。


「ハァハァ、もう! 驚かせないでよ」

「流石ジュリナだな、一番で追いついてきた」

「おーい、居たわよこっちこっち」


「カヅキ様ー、ご無事ですか?」

「ハハハ、ディアンヌも来たか、てかアロンのお陰だな」

「おねぇちゃん、重ーい」


見ると、モモ、ミクの二人に背負れたミシェータも、ようやく合流してきたが、まるで騎馬戦のように二人の背に乗っている。 


「それじゃ騎馬になってないぞ、互いの内側の手を首に巻き付けて、外側の手は後ろで組むんだ。 こう、そうして」

「あー成程、らくちんですわお兄様」

「あぁ本当、安定しているわね、ささ、もう一度走ってごらんなさい」


三人が先に行ってしまったので、追いかけるようにして後を追うかづき達であった。

「どうすんのよあの鳥、〆ていいの? 丸々肥えてて美味しそうだわ。 腿肉がジューシィそうよ、ジュルッ」

「ピキッ!?」


「こら、ジュリナ! 怖がってるじゃないか。 よしよし、もうどっか行っていいぞ」

「そうは行きませんわ、カヅキ様」

「えっ?」


デァンヌからその理由を聞くと、やっちまった感で一杯になったが、もうそれは手遅れである事はわかっていた。



ジュリナ:あっ! カヅキが魔物に攫われたわ 

ディアンヌ:あらあら大変、アロンさん追いかけて頂戴!

ミシエータ:あぁ、置いて行かないでー、モモ、ミクぅ

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