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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
練兵育成篇
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異世界探求伝 第八十三話 ブートキャンプ後半ー境界の森それぞれの戦い

かづき達の隊は、三つの隊に分かれて行動していた。 

合流地点は決められているので、明朝までにたどり着く予定である。

そして、それぞれが三様の探索を始めていた。

 森探索中の黄緑隊は、右翼側で狩りを行いながら歩みを進めている。 


隊長であるバーミヤンは、十二名の隊を四人編成に仕分けし、前衛のガーディアン一人、中衛の攻撃手左右に二名、後衛に魔法が得意な者を配置し、三つのパーティを形成していた。 基本的にこのパーティは、魔物一体に付き人パーティで当たらせるつもりである。 つまり魔物が複数であれば、合流してこれにあたるのだ。三つのパーティを組んだのは、それぞれ魔法の補助ができる者もおり、訓練の成果を試すつもりでもある。


一班:ガーディアン・バーミヤン>アタッカー・バルグス・コトトラ>サポーター・魚人族ガンダ

二班:ガーディアン・熊族ギルル>アタッカー・犬族ビビル・デスパイヨ>サポーター・ギズリ

三班:ガーディアン・人狼族ザジオ>アタッカー・ネコ族ブルグ・ウルグア>サポーター・チップ


以上の構成でバーミヤン率いる黄緑隊は、境界の森の右手の進路から合流地点へと歩みを進めていた。 探索に入る前に訓練兵からの提案で、かづきとの約束が取り交わされた事も発奮材料の一つになっていたようだ。 発奮材料とは単純に、狩りでの成果が一番良かった者が、ご褒美が貰えるというものであった。


対象の魔獣はFランク以上でポイントが付けられていくが、幼生体やランクG以下の魔獣は対象外となっている。 魔獣を数人で倒した場合には、倒した者でポイントを分け合う事とし、その討伐証明は白赤隊ビームスと黄緑隊バーミヤンの両隊長に一任されている。


「―ロンガムベア― ランクC発見! 樹上にいち、に・・・五頭いるな。 うち小物二頭」

「よし、大物を各班で一頭づつあたれ、小物は無視してもよし、あまり生態系を余り乱すなとの仰せだ、ブルグ副長」

「了解ですニャバーミアン隊長、手筈通り、各隊風筒銃で対処するニャ。 樹上から落ちて来たら各ガーディアン対応宜しくニャ」


ロンガムベアは樹上に潜んで狩りをするクマだが、両手が発達しており身長の半分以上の長さがある。 ランクCだが、気が付かず奴らが潜んでいる樹上の上を通ると、上からいきなり鎌のような手が襲ってきて、首ごと根こそぎ持っていかれる恐ろしい奴らだ。


風筒銃にはしびれ草で作った麻痺弾が充填されているが、炸裂弾だと強力過ぎて訓練にならないので、よっぽどのことが無い限り使用は認められていない。 体長二m以上もあるロンガムベアに効くのかどうかは不安だが、樹上から下ろす事さえできれば戦いになる。


「よし! 命中、各班個別にあたれ、小物は逃がしても構わん」

『了解!』


ザジオは三班の盾役だ。 その素早い動きで最初の一頭を決めると、鼻先を剣でかすめ手前にうまく誘導していく。 相手の手は長くあまり近づくと、両腕を巻き付けて締め上げて来るので、威嚇しながら振り回す腕を避けて対応している。 身体能力にたけた人狼のザジオの前ではその攻撃が当たる事はないし、ロンガムベアが右手を振れば左から、左手を振れば右からとザジオの指示で左右から、足首を狙った容赦ない攻撃が続いていた。


二班の熊族ギルルは圧巻であった。 持ち前の体力を生かして落ちてきたロンガムベアの顔を、左腕に装備した特性の盾で思い切り殴りつけると、そのまま左方向へと魔物が飛んで行ってしまったのだ。 どうやら大木にぶつかって気絶しているようだ。


一般のバーミヤンは、このロンガムベアの群れの中でも最大級の大物が相手となっていた。 体長は四mをゆうに超えているだろう、オスである証の金毛のタテガミが背中まで続いている。 バーミヤンは盾を使って顎をカチ上げ、うまくあしらいながら左右の攻撃陣を誘導して戦っていた。 これは基本だが左右の攻撃に気を取られたロンガムベアの、前ががら空きになったところをバーミアンの一突きで、喉から頭部まで長剣が貫通し即死させる事に成功したようだ。


「よし、血抜きで三班残れ、一・二班は先へ進む」

『了解!』


バーミアン達はこの後も、ランクEのウッディフログやランクFのボアハッグ、ラビホーンを次々と倒していき、順調に狩りを行っていたが、ここにきて思わぬ強敵に出くわしたのだ。


「こりゃ驚いた、ブルパイソンだニャ。 ランクBの魔物は居ニャいはずだったのニャ」

「ブルグ副長、詳細を教えてくれ」

「ウニャ、―ブルパイソン― ランクB 体長十五m、太さ三mはあるニャ。 吐毒は強力な麻痺毒で噛みつかれると致命傷だにゃ、表皮のうろこは強靭で刃が通らないニャ」


「巻きつかれると危険だなぁこりゃ、各班ガーディアン三方で距離を取りつつ対応してくれ。 攻撃班は目か口、頭部を目標に、魔法班は障壁が切れないように魔法攻撃を頼む」

『了解しました。 バーミアン隊長!』


戦闘はブルパイソンと対峙すると直ぐに始まった。 まず、ガーディアン役のバーミヤン、熊族ギルル、人狼族ザジオが交互に奴と対峙する。 障壁は掛けてもらったが、なんせ戦闘力が違い過ぎるのだ。 攻撃を二発三発と受ける度に障壁の耐久力は落ち、直ぐに障壁をかけ直さなければならない。


戦闘を維持する為に、ガーディアン達が持ち回りで盾役を交代するが、障壁からの振動だけでもダメージを受けるほどの強い攻撃であるので、障壁を切らすわけにはいかないだろう。 攻撃手が風筒銃を使い弾を打つが、動きが素早い為に中々目標の目に命中せず、周囲のうろこに全て弾かれてしまっているのだ。


魔法の水系はほとんどのダメージを与えず、火は多少嫌がる程度である。 複合魔法の使い手はこの場に居ないので、残るは氷魔法だけであるが動きを多少止める程度でダメージを与えられていまい。 バーミヤンは攻撃手に向かって、即座に炸裂弾の使用を許可したのだった。


『ドン・ドン・ドン!』


「シャァー!」

「効いているようだな、眉間から血が滲み出したぞ! よし、動き封じで氷魔法を頼む」

「よ-し、ここはおいらの出番だ」


人狼族のザジオは、村に代々伝わってきた伝説剣を取り出した。 実はこの剣、かづきとの戦いで叩き折られてしまった事もあり、その後ザジオらが服従した証に修繕して貰ったのだが、その切れ味は今までにもまして鋭い切れ味になっていたのだ。


かづきは折れた剣を修復する際に、オリジナル性をそのまま残したのだが、剣の刃の部分には青鋼が使われており、剣は使用者の魔力を吸いつつ風を纏う性質を持たせている為、切れ味の鋭さの他にも突き通す威力が半端ではない。 しかし、その大きさゆえ常に膨大な魔力を消費していくので、いざという時にしか用いる事が出来ないのだ。


「ギルルのおっちゃん、こっちに木に登ってくれ。 バーミヤン隊長、盾役頼んだで」

「ワシはまだ十九や、おっさんやない」

「ハハ、すまんすまん、こっちや」


魔法役が交互に氷魔法を使って足止めをしていた隙に、ギルルとザジオは近くの大木へとよじ登り、太い枝を伝ってブルパイソンの近くへと寄って行ったのだった。


「おっちゃん、おいらの背中にタイミング合わせて飛び乗ってくれや」

「おう! だから、おっちゃん言うなって」


ザジオは、ひときわ大きな大剣を収納袋から取り出すと、両手を使って握りしめ何やら一言呟いた。 すると大剣は息を吹き返すかの如く、風をまとわりつかせ剣先を黄色い光で照らし出した。 命名はかづきにより、金剛大剣と名付けられたザジオオリジナルの剣である。


ザジオがブルパイソンを睨みつけるのと同時に、金剛大剣の剣先を下に向け合図と共に飛び降りると、樹上からブルパイソンの頭部目掛けその大剣を振り下ろした。

『ドーンッ!』


ザジオの大剣はブルパイソンの眉間を見事に貫いていたが、そこにクマ獣人ギルルの体重がさらに加重された為、その貫いた眉間ごと地面に縫い付けてしまい、ブルパイソンは胴体をうねらせ尾を無差別に薙ぎるしか方法は無くなっていた。 バーミアン隊長の指示の元、攻撃班は尾からの攻撃を上手く避けながら、サバイバルナイフの鋸の部分を使って首筋の固いうろこを引きはがすと、トドメはバーミヤン自らが首を断ち切ったのだった。

 

「しかし、凄い大剣だな。 つっ! しかも力が吸い取られるのか、ヤバいな」

「ああ、バーミヤン隊長、剣はおいらが抜くよ。 そいつ危険だからな」

「魔剣? なのか」


「いんや、おいらの村に代々伝わる秘宝なんだけど、兄ちゃんに叩き折られて作り直して貰ったんだ」

「ほう、クロサワ様の作か、どうりで」

「おいらでも長時間持つことは出来ないんだ。 だから普段は収納袋行きさ」


「ハハハ、しかし、ドラゴンでも断ち切れそうだな」

「まぁ、使いにくいんだけどな、ハハハ」

「その御首級(みしるし)はお前のものだ、ザジオ、よくやったな」

「えへへ」


その後ブルパイソンは、あまりに巨大な為に皮を丁寧にむきブツ切りにされると、これまでの獲物と共に解体され、黄緑隊は昼食の場を設ける事になった。 


その一方で、ビームス率いる白赤隊は、行程の半分以上をゆうに進んでおり、途中で食わす魔物だけを狩り罠を次々と仕掛けていくのであった。 昼食はパンと皮脂肉を(かじ)りながらの行幸で、休みを取らずに前進するのがビームスの流儀らしい。


「ビームス隊長、前方一キロほど先で何やら戦いが起きてるみたいだバゥ」

「ベベリ副長、斥候を三名程出して様子を探れ」

「了解だバゥ、パルとテンテンは俺についてくるバゥ」


しばらくして戻ってきたベベリは、息を切らす事も無く、事の次第をビームスに報告したのだった。 聞くところによると、進路方向より十一時方向で小規模戦闘発生しており、ゴブリン十体以上とダイアウルフ三頭が交戦中の模様だ。 人との戦いではないので、スルーするかと思われたがビームスは様子を見ようと隊を引き連れて向かったのだった。


「おお、これは・・・」

「むごいです、ガルゥ」


森を抜けての一キロだったが、草木を分けての走行だったので十分は時間を要しただろうか。 着いてみるとゴブリン達の数は七体程になっており、先程まで三体であったダイアウルフの数が五体迄に増えていて、ゴブリン達をかこんでいるのだった。 しかも、運が悪い事にその場所が開けた場所で、空からワイバーンの襲撃に合い、ゴブリンが一体がかぎ爪に掴まれてもがいており、それを仲間が引っ張り助けようとしている。


「隊長、指示をくれ」

そう(つぶや)いたのは狼族のズグロウで、彼の目を見れば誰を助けたいのかも一目瞭然であった。


「よし、各射手、風筒銃用意、狙いが定まり次第発砲を許可する。 狙いはワイバーン、ダイアウルフ」

『ラジャ』

「三人一組で対応しろ、撃ち方始めッ!」


『ピシュ・ピシュ・ピシュ・ピシュ・ピシュ・ピシュ』

号令と共に、風筒銃から放たれた弾は目標に全て着弾したが、同時にズグロウが躍りかかるように、ゴブリンたちの元へ飛び出していったのだ。 一瞬呆気にとられたビームスだったが、全員突撃の合図を送ると自らもその攻撃の輪の中へと飛び込んで行った。


驚いたのは勿論ゴブリンたちだけではなく、ほかの魔物たちも同様で、さっきまでゴブリンたちを囲んでいたダイアウルフは囲みを解きこちらに威嚇し始め、驚いたゴブリンは、さっきまでワイバーンに連れ去られようとしていた仲間の足から手を離してしまい、ワイバーンは空へと舞い上がってしまった。


火炎弾の魔法をすぐさま放つが、ワイバーンにはこの手の魔法は、自らの風魔法で弾き飛ばしてしまうのだ。 だが、気の利いた仲間の一人が、炸裂弾をワイバーンの顔面目がけて発射し、見事命中したワイバーンは掴んでいたゴブリンを手放してしまった。


いち早く駆け付けていたズグロウは、ダイヤウルフを一瞥するとすぐさま威嚇をし、ゴブリンの落下地点へ到達すると落ちてきたゴブリンを上手く掴み、地面に立たせたのだった。 


「ギギ、グギャ」

「うるせえ! 早く仲間の元に戻りな」


ワイバーンは落下しかけたかに見えたが、再び慌てて逃げ去ろうとしたその尾の先を、ズグロウはしっかりと掴んで離さなかった。 その内ゴブリンたちも、脅威が去ったと感じ取ったのか、果敢にも弓と投石でワイバーンに襲い掛かったのだ。


やがて、ダイアウルフの処理が済んだのだろう、隊長のビームスも駆けつけ頭部に剣を突き立てると、ワイバーンは流石にこと切れてしまった。 ビームスはワイバーンの尾と翼、そして頭部を切り取ると、全員に撤収命令を下したのだった。


「えっ、隊長獲物の回収はしないのバゥか」

「獲物は奴らにくれてやれ、折角助けた命だ。 獲物の奪い合いで殺す事になれば寝覚めが悪いだろうが」

「流石、隊長だけの器はあるな、俺も同意見だぜ。 ほれ見ろあの喜びよう」


『ギャウギャウ・グギグギッ』

「よし、遺体を集めて先へ進むぞ!」

『ラジャ!』


ズグロウがゴブリンたちに手を振ると、呆気にとられた顔をしており、そのうちニュアンスが伝わったのか何やら大騒ぎで声を発していたが、隊の仲間にはわかるはずも無かった。



次回は合流地点、何か進展はあったのか否か

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