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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
練兵育成篇
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異世界探求伝 第八十二話 ブートキャンプ後半ー境界の森探索

境界の森探索が再開されます。 今回は回想シーンも交えながらお楽しみください。

 かづき達は隊を白赤隊と黄緑隊に分け、それぞれ隊長にビームス、副長犬族ベベリ、隊長バーミヤンに副長ネコ族ブルグに指名したうえで、境界の森を探索する事になった。


ビームス率いる白赤隊は進行方向から左翼側を、バーミヤン率いる黄緑隊は右翼側をそれぞれ進行中である。 かづきは総監督として、紅隊班の女性陣とゴーレムのアロンを連れだって、左右のちょうど真ん中の地点を進行中であるが、最終合流地点までは最短の距離で行けるので、ゆるりと狩りをしながら探索を行っていた。


その頃境界の森探索中の黄緑隊は、右翼側で狩りを行いながら歩みを進めている。 隊長であるバーミヤンは、十二名の隊を四人編成に仕分けし、前衛のガーディアン一人、中衛の攻撃手左右に二名、後衛に魔法が得意な者を配置し、三つのパーティを形成していた。 この頃の冒険者達は、このように綺麗に役割を決めてパーティを組む事は無く、魔法職が後方に下がる以外は、ほとんどが攻撃役に回っており、防御も攻撃も両方行いながら全員で戦うケースが一般的であった。


極端な話、魔法職以外は全てが攻撃職であり、防御は己を守る為の手段にしか過ぎなかったのだ。 魔法職が冷や飯を食わされていたのはこのせいで、全員が前に出ている為に攻撃を躊躇(ためら)い、攻撃をせかされると味方を巻き込んでしまう為に、ほとんどが戦闘後の事後処理で、主な役割は回復や手当などがだいたいの役回りであった。


かと言って、先手攻撃で炎系の魔法は木々の傍では使いにくいし、氷系の魔法は敵を凍りつかせたり壁を作ると、味方が攻撃できないと罵られるのが落ちで、使えそうなものは風魔法と土魔法だが、風魔法は制御が難しく味方を巻き込む可能性があり、巻き込まない為に先頭に出ると詠唱のタイミング次第では、瞬殺されてしまう危険性が大なのである。


つまり、魔法使いが少ない訳はこれらの理由のせいで、戦闘後か敵が強くて逃げる時の足止めくらいにしかならない訳だ。 しかし、こうした役立たずでも、シールドなどを味方に掛けられる支援魔法のお陰で重宝され、パーティでの存在感を示しているに過ぎない。


ただ、本当に強いパーティでは、全くの不要の存在で、装備がしっかりしており、回復薬さえあれば不必要な為、強いパーティには魔法使いの存在が無い事が多く、おのずと魔法使い人口も少ないというスパイラルに陥っていた。 しかし、かづきの指導の元、魔法使いが非常に重要な役回りをする事を、全員が知ったのだった。


こうした情報は、彼らにとっては非常に画期的な話であったが、始めは懐疑的であった者も多くいたのだ。 それは、戦闘には防御専門に働く役回りなども存在せず、集中攻撃が当たり前の攻撃方法だったのである。 その為かづきは前衛、中衛、後衛に分けて細かく解説を行った。


――――

「いいか、要は防御役であるガーディアンになる。 防御役と言っても防御ばかりをする訳じゃないぞ、敵の目を防御役に全て引き付けるんだ。 その為にガーディアンは、アイテムが多数必要で、目つぶしやナイフに石つぶて、敵を罵倒しながら威嚇する事も同時に行わなくてはならない」


「右手に持つ剣は、攻撃するためのものではなく、敵を後方に逸らさない為の道具として使う必要があるし、素早く持ち替えができるように重い剣は不必要なんだ。 それに盾は手で持つタイプではなく、前腕部から肘にかけての盾が有効で、盾での攻撃には相手の鼻づらや顎を殴りつけるバッシュや、相手の攻撃に合わせるカウンター、そして相手の強力な突進に対しては、相手の力を利用しての後方に下がるノックバック、それから見切りや受け流しであるターンサイドも重要だな」


「但し、だ。 基本は敵の攻撃を読む見極めが重要だぞ、敵の目に注目だが瞳の動かない敵も存在するから足に注意だな。 四本足以上なら軸足に警戒しろ、踏ん張れば攻撃が来るぞ。 そして、後ろに下がるノックバックとターンサイドは仲間がわかる様な合図をしろ。 いきなり後ろに下がったり、真横に動くと仲間は戸惑うし危険だぞ」


こうして攻撃をほとんどせずに、守りだけに集中できるガーディアンを作り上げる事から始まった。 この時に適性も伝えておいたが、パワーがあり頑丈な事は勿論の事、細かな動きのできる奴が適正者となる。 また、パーティの要となる者で、前方の攻撃は全てガーディアンの指示の元、全員に通達されなければならない。


「でもな、最も重要なのは後衛だぞ、後衛の適正者は魔法使いだが、目を凝らして全体を把握できる事が大切だな。 要はガーディアンだからこそ、その重要性を把握しつつ適切な補助が必要なんだ。 後衛は盾役を主体に、ガーディアンが気付かない所をサポートしつつ、先の一手を考えなければならない」 


「実際の補助は主に、ガーディアンの防御を維持する事と回復も適切に行え。 あらゆるアイテムを懐でいつも出せる状態で、臨機応変に対処する事が大事なんだ。場合によっては攻撃手に防壁を掛けて、臨時の盾役に使う事も忘れるな」


「後衛で魔法使いならば、支援魔法が優先だ。 しかし、詠唱短縮の為にはスクロールを沢山用意しておけ、スクロールは使い捨てでコストはかかるが、即座に対応できるアイテムでもある。 回復薬も直ぐに使えるように準備は怠るなよ。 その為に後衛は服装も大事で、内ポケットは沢山入れられるようにしておくんだ」


「そして、魔法使いは魔法に特化した職業だから、使わないと損だぞ。 障壁魔法が邪魔になる? 敵に掛ける時にはな、基本腰から下にかけるように訓練しておけ。 浅い落とし穴を作ったり、足元を氷らせてやれば殴り放題だぞ。 派手な魔法が必要なんかじゃない。 ファイヤーボールの小さなものを顔に投げつけるだけでも、こちらの攻撃のチャンスは生まれるはずだ」


「敵と味方が入り組んでるときは、基本魔法を小刻みに展開してやるだけで、攻撃手も大助かりなのさ。 大きな魔法じゃ詠唱も時間がかかるし、味方に大損害だから笑えないジョークだな。 細かな魔法の連携は実戦で覚えていけ、その為の訓練だ、忘れるな」  


この部分の話は、ミシェータの魔法講義での語らいであった。 かづきが魔法を使える者達がやけに大人しかったことを気にして、ミシェータにその理由を尋ねてようやくその理由がわかったのだ。 そして、話だけでは理解できないようだったので、実戦形式でその戦いぶりを示して見せたのだ。


相手は班ごとに分かれている六人構成で、四隊班にそれぞれこちらを好きに攻撃して貰う事にした。 剣は刃がついていない練習用だし、回復サポートにはディアンヌが待機している。 方やこちらはジュリナがをガーディアン役にし、中衛は双子のモモとミク、後衛はミシェータの四人構成だ。 六人対四人だが、力を示すのには双方共にもってこいの態勢だろう。


かづきは審判役で、致命傷を受けたと認められ次第名前を出し、呼ばれたものは退場となる。 かづきは紅四人組に、戦い方のレクチャーを細かく指示しておいた。 とは言え、大技や大きな魔法の使用は禁止だし、彼女達の魔拳銃や守り刀は勿論使用禁止である。 訓練兵と同じ剣での戦いだが、魔法や目つぶしも何でもありの本物の実戦形式であった。


初戦は緑隊班の六人組だ。 この班の特徴は班長のバーミヤンが、かなり冷静で適切な判断ができる男というところにある。ズナン山麓の探索にも同行し、小隊を上手く指揮していたのも好印象だし、何しろ己の力量を理解してこのキャンで励んでいたし、最も力量の上がった男の一人だろう。熊族ギルルはガタイが大きく、全ての面でガーディアン役に適していると言っていいだろう。石工技師カッパーの次男だが、土魔法の使い手でもあり、細やかな技術を取り入れる事ができたなら、向かうところ敵無しかもしれない素質NO1の男だ。


コトトラは、以前の冒険時に知り合った元盗賊であるが、野山を駆け巡る足腰と感の鋭さに長けた男だ。 飛び道具は得意中の得意だ。 ウルグアは、現在ヴァレンチノでも幹部の一人のダックの弟である。兄共々冒険者稼業で、魔物の扱いには長けている。 魚人族ガンダは、上下水道の責任者であるダンブンの三男で、水魔法を得意としているが、ほかの魔法も初級の腕前を持っているのだ。 魔力はあまり多くは無いが、賢さというよりあざといというイメージだろうか。


そして人狼族ザジオ、今は小さななりだが以外に経験豊富で、戦闘力は高いし俊敏さにかけては訓練生の中でもトップクラスである。 意外な怪力も持ち合わせており、要注意人物だと言えよう。 班長のバーミヤンは班を三つに分けてきた。 下士官候補としては、戦い方にも注目だ。


バーミヤンは、熊族ギルルを先頭に置き教えた通りに盾役をさせるつもりらしい。 ギルルの背後にバーミヤンが立ち、魚人族ガンダは後方に陣取っており、それを守るように(かたわ)らにはコトトラが弓を持っている。 左側にはが剣を構え、 弓の穂先は勿論丸く刃を潰してはいるが、当たるとそれなりの衝撃は覚悟しておかなければならないだろう。


風筒銃は流石に危険なので、これは禁止としたのだが弓も非常に厄介である。 勿論毒物も禁止にしてあるが、普通の目つぶしは有効な手段である。 左のウルグアとザジオニ人組は、攻撃に特化させた切込み役である事が推測される。


かづきの号令と共に、双方の試合が開始された。 緑隊班は、熊族ギルルの足に合わせて、バーミヤンと左手のウルグアと人狼ザジオも飛び出した。 同時に魚人族ガンダは詠唱に入り、コトトラは弓を構えて援護体制である。 詠唱からすると、ギルルに送る補助魔法の類なのであろう。


かたや紅班はというと、ミシェータが即座に発動できる風魔法を発動、難しいつむじ風やハリケーンの類でも無ければ突風でもないただの強風だが、初級である為に詠唱は軽いのだ。 しかし、地面の砂塵を巻き込んでいる為に、敵の足は十分鈍らせる事ができるだろう。 すかさず次の詠唱に入りながらミシェータが懐から何やら取り出すと、モモがミクの背中を足台に宙へ飛んだのだった。


モモが飛んだのと同時に、ミシェータは懐のものを辺りにばらまくと、周囲は真っ白に煙り、緑隊班は煙の中へと巻き込まれる事となる。 


「クッ、止まれ。 敵が上から一人飛んでくるぞ、コトトラは射落とせ、ギルルは前方注意だ。」

『任せろ、ウス』

「ウルグアとザジオは、いつ敵が現れてもいいように飛び出せるようにしておけ」

『おう、うい』


しかし、以外にも悲鳴が二つ同時に聞こえてしまう。 ミクの背中を足台にジャンプしたと見せていたモモは、実際にはそのまま頭から落ちて行き、ミクの両手に摑まるとその反動で、前方に地面すれすれを飛び出していたのだった。 熊族ギルルは敵を予測し、両足を大きく開いて身構えていたのだが、モモはまんまとその股座(またぐら)をすり抜けて後方へと到達したのだった。


モモは滑った反動を利用して、魚人族ガンダとコトトラの両股間を強く強打し、前かがみになった背後から二人の尻を思いっきり前方に蹴返したのだった。 二人は上ばかりを見ていた為に、下半身は全くの無防備で改心の一撃を喰らわされ、屈んだために簡単に前方へと吹き飛んで行った。


バーミヤンとギルル達にぶつかった衝撃で、背後に敵と剣を向けるが味方と判りホッとしたのもつかの間、強い衝撃が四人の首筋と頭に訪れたのだった。 一方左に居たウルグアとザジオは、叫び声でバーミヤン達の元に駆けつけようとしたが、そこには落とし穴があり、嵌ったと同時に氷漬けされガタガタと震えていた。


「ありゃ、名前も呼ぶ暇が無かったな、ハハハ。 勝者紅班! 負けた奴らは地面を元に戻しておけよ」


残りの三つの隊も健闘空しく、紅班四人組の敵では無かった。 かろうじて白隊班が多少時間稼ぎができた様だが、隊をばらけすぎたおかげで、一人づつゆっくり倒されたに過ぎなかった。 最後に残った狼族ズグロウとジュリナのいとこ同士の一騎打ちも、ガチンコバトルではジュリナの圧勝で、彼は悔しそうに歯噛みをしていたが、致し方のないところであろう。


一通り終わって、今度は小細工無しのガチ勝負をひと試合だけやらせてみた。 女性陣も四連戦でひとしきりお疲れのようであるので、軽く食事と飲み物を与え休憩後に始めたのだった。 相手はバーミヤンが是非やらせてくれと拝み倒すのでやらせる事にしたが、この緑隊班には盾役のしっかりしたギルルが居るので、それももう一度ガチでやらせてみたくなったという理由もある。


今度は始めから接近戦だった。 だがジュリナの意外な口撃で、二人も多いはずの緑隊班は、撃沈してしまった。 動きの細やかな双子の動きもだが、ミシェータは冷静に後方に氷の柱を防御に置くと、支援に集中していたのだ。


「ギルル? あんたうんち漏らしてんじゃないの? お尻が膨らんでるわよ」

「うぐっ!」


熊獣人族の尾っぽは往々にして丸いものだ。 当然弱点であるので、ズボンなどの中に隠すが、その為にお尻が膨らんでしまうのだ。 ジュリナはこの後たいそう謝っていたが、本人は相当落ち込んでいた。 だが、ガーディアンとしては満点の罵倒であったことは認めよう。









ジュリナ:ギルルごめんね。 あれ試合だったからなんだよ。

ギルル:うぐっ

ジュリナ:ほーんとにごめん、これあげるから許してね。

彼女がギルルに沿って手渡したものは、彼女の大好物であるカツサンドであった。 

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