異世界探求伝 第七十九話 ブートキャンプ後半ーサキュバスたちの顛末
かづきをサキュバスからようやく解放したミシェータ達は、いよいよ決戦と意気込んだのだが
呆気なく勝負付けは終わり、肩透かしを食らってしまったのだった。
ディアンヌの作り出した秘薬? のお陰で難を脱したミシェータは、サキュバスとの決着を行う為に戦闘態勢に入ったが、かづきが近づくと彼女らはあっけなく降参したのであった。
反撃して来るものと思われたミシェータ達は、何やらあっけなく敵愾心を削がれてしまったようであった。
「ねぇ、あんたたち戦わないの?」
「ぬしたちに、素手や魔法ではかなんせんわ。 わっちたちはかよわし女将なれもの。 それに旦さんとの対面なれば瞬殺されんすわ。 わっちたちでも、命は惜しいものでありんすからね」
「えっ? 何語!? ミシェータ、ディアンヌわかる?」
「うーん、所々の言葉だけだわ」
「そうね、命が惜しいってのはわかったわ」
「えっと、敵わないから降参だって」
「えっ! カヅキは判るの?」
「うーん、 廓言葉だからな、何となく時代劇とかで聞いてるし」
「え? ジダイゲキ?」
「ああ、気にしないでくれ、大体わかるって意味だ」
「成程、さすがカヅキね。 でも、さっきまで私達に酷い事をしたのよね? 多分」
「えっ、し、知らないなぁ。 ナニエオイッテイルンダロウ」
「ええ、殺される寸前だったのよ。 ディアンヌがいてくれなかったら確実にね」
「えっ、ディアンヌが」
「そうよ、ジュリナも感謝しなさい」
「い、良いのよ。 私たち仲間ですのよ」
「ディアンヌ、今まで邪険にしてごめんなさい。 見直したわ、私たちの仲間として認めてあげる」
「あ、ありがとジュリナさん」
「それから、その辺で転がってもがき苦しんでる男達、どうにかなんない?」
「ああ、そうね、カヅキ様も直して差し上げないと」
ジュリナとミシェータが、淫魔たちを拘束している間に、ディアンヌはかづき達の治療にあたっていた。 この丸薬は、かづきの作っていたレッドペッパ入りの激辛丸薬であった。 かづきは魔物対策に使いたいとデァンヌに相談していたものだったが、投擲用のものであった。
本来は、敵に当たった瞬間に破裂して粉末が飛び出すのだが、ディアンヌは口に放り入れる瞬間に、爪で潰しながら放り入れたのだった。 おかげで阿鼻叫喚の流中で、よだれと鼻水に涙により魅了の暗示が解けたのだった。
「これでうがいをして、吐き出して下さいまし」
「ん? 美味しいなこれ、ラッシーとミルクセーキの間くらいかな・・・うぐっ! 後から苦味が」
「飲んでは駄目ですよ。 吐きだして下さいな」
「ああ、口の中が和らいだ気がする」
「あぁ、唇をこすらないで」
ミシェータとジュリナが淫魔たちを拘束し終わる頃には、兵たちも落ち着いたようで、思い思いに飲み物などを飲んで口の中を癒していた。 男たちは、どれもがたらこのように唇がはれ上がっている。
「あー、居たいたおねぇ様達。 あれっ? おにぃちゃん何でそっち側で正座してるの?」
「あー、うん、そうね。 まぁ反省ってとこかしら」
「おにぃ様、何かなさったのですか?」
モモの率いた部隊は、全員無傷でどうやって捕まえたのかはわからないが、小さなサキュバスを三名と男を五名程捕縛してきたようだった。
「キオクニゴザイマセン」
「あら、旦さんは、術が効き難うてほとんどまともでありんしたぇ。 きおくはあるはずでありんしょう」
「だ、黙れクルス!」
「何って言ったの? かづき」
「うん、反省してるってさ」
「ホホホ、戯言を。 旦さんほどのお方が、あのおなごたちが悍ましいのでございんすかぇ?」
「何って言ってるのさ、カヅキ」
「うーん、よく聞き取れないな。 よし、こうしよう。 彼女たちは反省しているから、大目に見てやろう」
「駄目よ。 魔物だから討伐部位剥ぎ取って、使えるものはばらして使うわ」
「そうねぇ、サキュバスの素材は希少よね」
「ええ、わたくしもあの尾が欲しいわね」
「ヒィ、旦さん。 わっち達にもあの者どもは悍ましげでありんすぇ。 何とか、取りなして下さりんせんでありんしょうかぇ?」
「お前が調子に乗るからだ、馬鹿者め。 こいつら怒らせたら、俺でも手が付けられないんだぞ」
「ひっ、そこをなんとか、お宝でもなんでも差し上げんす。 なんでもいたしんすがら、なにとぞ命だけは許してくんなまし」
「そうか、じゃまずは誓約だな。 ジュリナ、出番だ」
「ふふっ、さすがカヅキね。 仕事が早いわ、まずは全員から血を頂きましょう」
「ひっ! ひぃ、わかりんした。 しかし、こちにも条件がありんすぇ」
「何をいまさら、条件など言える立場と思っていのか?」
「なら、こなたの場所で、先つ頃までの、伽のたてぬきを、咄してきかせんすが、宜しいのでありんしょうか?」
「おいマテ! どうせお前の言葉なんか理解できないぞ」
『もしもし、ヒトの言葉も喋る事は難しくありませんよ、旦さん』
「くっ、用や何て愚劣な。 わかった、ある程度の事は大目に見てやる。 で?その条件とは」
「なに、簡単な事でありんすぇ。 我らを庇護してくんなましと、いわす事だけでありんす」
「俺は何も、お前達を拘束したいわけじゃないぞ、しかし守るにも連れてはいけないしな。 だが、方法は無きにしも非ずってとこだな。 その前にお前達の事は知っておく必要もあるから、色々教えてくれると助かるぞ」
こうして、サキュバス達から、その生態を含めて根ほり葉ほり聞くことにした。 しかし、一人では危険だという事で、お目付け役付きだったのだが。
サキュバスは、合計十四名ほどいたのだったが、そのうち小さなタイプは幼体で、つまりは子供という事らしい。 クリスタル・ローズ達は、人数がある程度に増えると、巣別れの儀が執り行われるそうだ。 出ていった連中には危険が伴う為に、それまで居た男たちも根こそぎ持っていかれるようだ。
男たちの事はオスと呼び、家畜同様に彼女たちの栄養源とされている。 伝説のように精気を吸い尽くして、取り殺す様な馬鹿な話は無く、我々が家畜からミルクを与えられるように、オスが家畜同然になっている。 また、彼女たちは魔法の攻撃力も余りなく、素手や格闘では戦う事ができず、この男たちに身を守ってもらう事で生活が成り立っていると言うわけだ。
男たちは、自分たちの食料を集めるために狩りをし、採取なども行っており、一見すると普通の村人の生活と変わりがない。 男たちは普通に彼女らを抱き、子供も作るのだからサキュバスだからと言って、怖がる事も余りないのかもしれない。 但し、彼女らの魅了の効果の威力は凄く、魔法では無いので対処法がほとんど無いのが玉に瑕だろう。
ただし人族との違いは、その民族特有のものがある。 魅了は元々持っている特殊能力のようなものだし、淫魔族は子を成す事ができるのだが、全部女しか生む事ができないのだ。 発育も早く、わずか五年ほどで大人と同じほどに成長するのだそうだ。
数が少ないのは、彼女たちが積極的に産めない体質があり、受精させるには人と同じ性行動によるものだが、精嚢に貯め込む事も可能らしい。 彼女たちが出産を決めた時には、自分の精気も必要な為にその寿命も出産する事で減ってしまうのが、出生率の低い原因らしい。
つまり、出産率を上げるには、自分の精気の量を増やさなければならない為に、せっせとオスを漁るのである。 また、食事で摂取する場合は、人と同様経口摂取という方法になるのだという。 食事も摂る事はあるが、元来肉食はしないので柔らかいものしか口に出来ないのだそうだ。
顎の力は普通だが、パワーが無く肉をかみちぎる事などは苦手なのだという。 それでもオスから食料が取れない場合は、仕方なく潰したものをミルクに混だそぜて飲むのうだが、基本的にあまり味付けはしないのだそうだ。 彼女たちは力は無いが、狩りなどは可能だそうだ。
ただし、獲物は比較的弱いもので、ある程度の知性が必要らしい。 知恵を持たない動物は魅了が効かないので、昆虫や爬虫類などや他の種族のメスは彼女らにとっては天敵で、逆に捕食される事も多いと聞く。
「ふむ、感慨深いリポートだな。 ムチンはいるかな?」
「連絡してみるわ。おにぃ様」
かづきがミクとディアンヌの監視の下で、供述を基にリポートを作っている間に、ジュリナやミシェータ達は、淫魔族の長であるクリスタル・ローズの案内で、屋敷の探索を行っていた。
「こちが、書庫と宝物庫でございんす」
「ふぅん、沢山あるのね。 いいの? 貰っても」
「誓約に違える事はできんせん」
「ミシー何て言ったの?」
「もう、わたくしに聞かないでくださいな」
「誓約って言ってるから、もって行って大丈夫って事でしょ、おねぇちゃん達」
「そうね、貴方達、運び出しておいて」
『イエスマム!』
「さび付いた剣が多いわね」
「何分宝と言っても取引相手もいんせんし、朽ちるばかりでありんすぇ。 貰って頂いた方がお宝たちも貴やかなりいでありんしょう」
「もう! わかんない。 カヅキにどうするか聞いてよモモ」
「あい、ムチンさん居るかな?」
「はいはい、モモ教官何でしょ?」
「おにぃちゃん、はっ、クロサワ指令が呼んでるよ」
「はっ! ただいま参ります、では」
「でなんだって?」
「えっと欲しいんだって。 剣を鍛えるのには最適なんだって」
「ふーん」
「うーん、書物は読めないわね。 いくつかの単語は読めるのだけど」
「カヅキに任せとけばいいわ」
「そうね、確か・・・」
「まるなげよ丸投げ」
「ホホホ、だったわね。 カヅキに丸投げぇ」
「アハハハ」
「てか、もう疲れたわね。 少し仮眠摂りましょう」
「雑雑の者が多なかりばな、広らかなり間に雑魚寝でいいでありんしょうかぇ?」
「ん? 雑魚寝、うーんそうね。 お願いしようかしら」
「では矢庭に、ご用意させてもらいんす」
「良くわかんないけど頼むわ、あなた達運び終わったら広間で仮眠よ」
『イエスマム!』
カヅキのいた部屋は、この館の主とも言えるクリスタル・ローズの居間だったが、ジュリナ達が出向いた先には既にその姿は無く、残ったディアンヌからの言伝で、厨房で食事を作るから仮眠をするように指示が伝えられたのであった。
「えっと、ローズさんだったかしら、私たちはこの部屋で少し仮眠を取らせて頂くわ」
「はい、かしこまりんした。 雑雑の者は広らかなり間にて、あないしんす」
「んと・・・まぁお願い」
それから数時間たった後、かづきとムチンは、ミクを連れて淫魔族の女性と厨房に立っていた。 淫魔族の女性はトパーズと名を名乗っていたが、クルスの娘なのだそうだ。 成程、彼女に瓜二つだが髪の毛の長さが違い、あどけない顔をしている。同じブロンドで瞳の色は薄紫だが、髪の量が少なくまだ結う事は出来ないのだそうだ。 どうして彼女がいるのかというと、試作料理に味見役で来て貰ったのである。
実はサキュバスと対峙した時に、かづきが手出しをしなかったのには理由があった。 しかし、彼女たちの美貌が魅了によるものかの判断も必要であり、その生態がどの様なものであるのかも、見極める必要があったのだ。 悪意があれば対峙するしか無いが、彼女らの美貌が本物で、ヒト族との敵対心が無い事がわかれば、その価値は十二分に発揮されるとの判断であった。
このクルスの娘はまだ七歳なのだそうだ。 しかし、充分大人の美貌を秘めており、抗体のあるかづきもドキドキしてしまった。 流石に同伴のムチンは、欲望を抑えきれずにいたので、仕方なくMr.K用のマスクを被せる羽目になってしまった。 おかげでかづきがいる緊張感と相まって、仕事に集中できているようだ。
「さて、お次はどうだ?」
「あいな、試させていただきんす」
「どうだ?」
「あい、とてもかろしく、いと口に合いんす」
「そっか、んとこいつもあったな。 ソースは控えめだな」
「えらい甘うて初めて口にしんした」
「よし、こいつはもっと甘さ控えめだな。 さてと、これ位しようかムチン、もう夜が明けた頃だしな」
「はい、出来上がったものは、どこにお持ちしますか」
「うーん、食堂みたいなとこあるのか? トパーズ」
「あい、御食処はこちでありんすが、わっちらで運びてやりんすに、気にしないでくんなまし」
「そっか、じゃついでに、淫魔族を全員集めてくれトパーズ」
「あい、旦那さん」
「クロサワ様は、あの者達の言葉も理解出来て凄いですね」
「うーん、何となくな。 さて、俺たちの朝飯も作ろうか」
「はい、スープとパンは温め直すだけです。 腸詰は出来合いのものがオーブンに」
「そっか、段取りいいな。 さすがムチンだ」
「お褒めに預かり、恐縮です」
かづきは、男どもが雑魚寝しているという広間に出向き、全員叩き起こしに出向いたが、こうしていると、何となく学生の頃の合宿を思い出すようで、胸がわくわくし新鮮な気持ちになっていた。
次に、女性陣が仮眠しているローズの部屋へ行って、同じく起こす事にしたが、彼女らの食事は俺と同伴とする。 また間違いが起きてもしたら、次は正座では済まないだろうという予感が、かづきの心に走ったのだ。
ジュリナ:サキュバス達あっけなかったわね
ミシエータ:そうね、私たちにはチャームが効かないものね
ディアンヌ:そうでもないかもしれませんわ。 同性の方がお好みの方もいらっしゃるわ
ジュリナ:あぁ、そうね。 そう言えばミシーって学生の頃・・・女の子に人気あったよね
ミシェータ:おだまり!




