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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
練兵育成篇
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異世界探求伝 第七十五話 ブートキャンプ後半ー消えた仲間

新年あけましておめでとうございます。

本年度初投稿になります。

 かづき達一行は、初日の野営場所に渓谷上流の河原へと陣を張り、食事を行っていた。


夕暮れには少し早いが、疲れを取ってあげるのも上司の仕事でもある。 はっきりとした目的の旅路であったが、せかして急ぐようなものでもない為、安全を期して野営にしたのである。 勿論、森の中よりもはるかに安全である事は、言うまでもないだろう。


「ふむ、確かにこのトメトソース、骨出汁を煮詰めてソースに混ぜ込む事で、旨味がさらに広がっていますね。 では、このスープを濃縮して固形状にすれば、どの料理のソースにでも・・・ブツブツ」

「ムチンくーん、早く食べないと冷めちゃうよ? モグモグ」

「あー、モモさん、すいません。 ソースのうま味について少し考えてました」


「なぁムチン、肉には肉の、魚には魚の旨味ってのがあってな、旨味付けするのには、その料理に使う肉の出汁で旨味を出すんだよ」

「おっ! そうでしたか、さすがはクロサワ様。 私の考えなど既にお見通しなのですね」

「モモじゃないけど、早く食ってしまえ、検討は後でもできるだろ」


「あ、はい、申し訳ありません。 しかし、この香草焼きなる料理は、都の料理にも劣りませんモグモグ。 外側はカリカリ、サクサクで香草の香りが口に広がり、肉の旨味を閉じ込めておりますモグ」

「そうねぇ、おじいさまに連れられて、何度も大きな貴族の家で晩餐に招かれましたが、こうした料理は見たことありませんわモグモグ。 肉汁から出た旨味が中身の野菜を更に、美味しくしておりますのね」


「モグモグ、おいひぃははふねーモグ、ふいはべすぎはぅガツガツ」

「ジュリナ、女性が食べながらお喋りするのは、はしたなくてよ」

「確かにミシェータさんの仰り通りですが、モグ仕方なくてよモグモグ」


「まぁ、貴女まで」

「ハハハ、ミシー固い事言うなよ。 ここはレストランじゃないし、それにこのポトフもなかなかのもんだぞ」

「ふふっ、それモグング、モモが指導したのよ、ング」


「ふむ、飴色の艶やかなスープになっていますね。 ズーッ、ふむふむ旨味が凝縮された感じです。 白オオマメがスープの塩味を吸って味わいをより深くしておりますが、このツルツルしたハルサメですか、素晴らしき食感ですな」

「ああムチン、ペッパが効いてて旨いな、黒パンとよく合う」

「ふむモグ、確かに」


「んじゃ、デザート出しておくか。 おい! お前達っ、デザート一人いっ個な」

『うーいっす!』

「なんだ、ミシー一番先にって、はしたなく無いのか?」


「ほほっ、カヅキがさっき仰ったじゃないですの、ここはレストランでは無くてよ。 パクッ、ふぐ!、こ、これなに」

「ん、なにって紅スグリのムースだが」

「ほひひぃー、ムグ」


「ハハ、美味しいってか、どれどれ、ムグうん、いいな。 あまり甘くないし酸味のバランスがいい。 フンワリ感は狙い通りだ」

「どれどれわたくめも、パクっ、おっ、こ、これは初めての食感です。 柔らかいんですが、濃厚なまろやかさと酸味、まさに絶品です。 帰って早速試さなければ、メモメモ」


こうして、初日の夕食は滞りなく無事にお腹を満たす事ができた。 のんびりとシガーを燻らしていると、そこへ人狼族のザジオがやって来て俺をどこかに案内したいと申し出てきた。


「どうしたザジオ」

「いいから、こっちへ来ておくれ、にぃちゃん」


手を引かれるままに付いて行くと、木々を抜けたあたりに川のせせらぎが聞こえる。 川べりだが何やら建物も建てられているようだった。 


「どうだい? カヅキ兄ちゃん」

「何だアレ? ログハウスか、えらくでかいな、入り口が二つ!?」

「まぁまぁ、入って見なよ」


言われるままに建物に入ると、トイレが左右に三つづつ合計六個ほど並んでいる。 成程、トイレなのかと思ったら、そのまま奥へと通され、小さな部屋に入ったがそこからは、外が丸見えの状態で湯気が立っている。 


「ありゃ、いつの間に岩風呂を・・・」

「熊族のギルルと小熊族のボピが兄ちゃんを驚かそうってさハハ、手の空いた連中で作ったんだ」

「そっかー、女たちが喜ぶな」


「兄ちゃんたち先に入ってくれよ、白巫女様たち、おいら呼んでくっからさ」

「いいのか?先に」

「あったりまえじゃん、おいらたちの大将なんだから」

「そっか、じゃ甘えるかな」


かづきは言われるままに、服を脱ぎ始めた。確かにこの小部屋には壁に仕切りが入って、棚状になっている。 先頭のように四角く区切られてはいないが、衣服を置くのには申し分はない。 タオルや湯あみ着などは袋にあるので問題はないのだ。 風呂は掘りごたつのように地面を掘って作ってあるが、きちんと土魔法で固めてあるし、川から水が引かれておりちゃんと流れ込んでくる。 


ここまで計算して作っているのは流石だ。 熊族は土魔法の使い手が多いので、多分ギルルとボピの仕業なのだろう。 縁には大きめの石で縁取られており、間違いなく岩風呂仕上げである。


『きゃー、凄い凄い、うわー! ひろーい』


かづきが体を手際よく洗い、湯船に浸かっていると女性たちの黄色い歓声が聞こえてきた。 浴槽から出る間もなく脱衣し始めたので、まぁいいかと思いつつ温まっていると、ふと女性の数が多い事に気が付いたかづきだった。


「うぉ、おーい、俺出るからぁー」

「何よ! あたしたちと一緒じゃ、やなの?」

「い、いやぁ、その、約一名の方が恥ずかしいんじゃないかと」


「まぁ! デァンヌ様恥ずかしいの?」

「い、いえ、モモちゃん、皆さまとご一緒ですし、湯あみ着も着ていますので、それに殿御と言ってもカヅキ様ですし」

「だっよねぇー、いこいこ」

「は、はっ」


手を繋がれたディアンヌが、モモと一緒に湯船に向かい、ダダダッと駆け込んで飛び込もうとした矢先、直ぐにジュリナが前に立ちふさがったのだった。


「駄目よモモ、ちゃんと先に洗わないと、カヅキに怒られるわよ」

「ふわぁーぃ」

「それから、ディアンヌにもきちんと作法を教えないとね」


「さ、作法ですか?」

「ええ、私たちにはお風呂って風習が無いでしょ、だからみんなカズキから作法を学んでるわ」

「作法っていうか、入り方だよ。 難しくはないぞ、基本は綺麗にお風呂を使うってやつだな」


「あら、それは砦村の浴室で教わりましたわよ?」

「うーん、多分違うと思いますわディアンヌ」

「あら? ミシーさんどう違うのかしら、興味がそそられるわね」


「では、私が教えてさしあげますわ。 まずは掛け湯を」

「ふぅー、気持ちいいわ」

「まずはスポンジでこうやって泡をムフムフと」


「まぁ、きめが細かいですわね。 お上手だこと」

「これを両手に持ち上げる様にたっぷりとね。 こうよ!」

「あっ! いきなり何ですの、いけませんわ、そのような」


「まぁ、細い体つきのくせに、実付きが良いですのね」

「あん! そんなとこ、ヤッくすぐったいですの」

「ここもこうして、あぁして」


「あー、あたしもやったげるわ、ホレホレ」

「ひゃい、そんなとこは結構ですわ」

「いいのよ、ホレホレかづき仕込みがこれよ」


「あっ! 摘まんじゃらめれす、ア」

「ああ、カヅキもやりたかったのね、いいわよ、来なさい」

「いやいや、ハハ勘弁してくれ。 そっち見れないし」


しかし、かづきはこの時ちゃんと技を駆使して、しっかり眺めていたのだった。 祖父直伝の「流し目」は一子相伝ではないが、ちゃんと孫に引き継がれている。 安心しろ、じっちゃん。


一しきり騒いだ後の湯船は久しぶりの大賑わいだ。 砦村では、しばらく一人で男湯に浸かっていることも多く、久しぶりの大人数での入湯は、活気に溢れている。 先程の件での納まりも済んだことだし、後も使えている事もあり、ここは退散と行こう。


「ふぅ、良い湯だったぞザジオ、見張りご苦労さん。 続けて入ってくれ」

「うん、じゃ班ごとに入るから、後は任せておくれ」

「ああ、見張りは適当にやっとくよ」


思いもかけず、ザジオたちの協力で良い湯にありつけたが、やはりお湯から上がった後は何かとのどが渇くものだ。 かづきは来る道すがら、ディアンヌの採取してくれた秋ベリーとオレンジで、フルーツミルクを作る事にした。


「ディアンヌ、お前が採取してくれたから、一番に飲め」

「いいのですか? カヅキ様」

「ああ、勿論だ。 さぁ、みんなの分もあるぞ」


『わーい!』

「これは何ですの? コクがあってミルクですが、とてもフルーティな味わいが」

「うん、ディアンヌの採って来てくれた果実で作ったフルーツミルクだぞ」


「火照った体にいいですわ、おいしぃ」

「うーん、おいひぃ、おにぃさま」

「ミクも気に入ったか、沢山作ったからお代わりしてもいいが、飲み過ぎるなよ。 猫にミルクはお腹がゆるくなるからな」


「ねこじゃないもーん! ぷん」

「でも、冷たいミルク飲むとうんち、柔いよね」

「もう! モモまで、やだっ」


ひと樽分作ったかづきは、風呂場の入口に張り紙を添えて、フルーツミルクを振る舞う事にした。 だが、「一人につき一杯まで」と注意書きは怠らなかった。 


このキャンプはあくまでもお遊びではなく、実地訓練である為に就寝時の夜間警備も行わなくてはならない。 夜間警備は全員での話し合いにより、結局班ごとの日替わり夜勤となるが、ひと隊の編成は六人なので、三人で二交代や二人で三交代など、班によってその対応はまちまちなのであった。


結界を張る事も考えたのだが、それでは訓練にならないとミシェータに反対され、やむなく魔物の気配が合ったら起こす様に、ラビ先生にお願いしておいたのだった。


『ラビ、悪いが近くに、魔物の気配がしたら起こしてくれ』

『ハイ、カヅキ 広義デカヅキノ 保護ニナルト判断シ 最小限ノ索敵活動ヲ オコナイマス』

『そっか、悪いな』


かづきはテントで一人寝だ。 さすがに野郎ばかりの中で一人だけ、特別待遇は気が引けるのだ。 これはジュリナもミシーも来る前から、しっかりと言いつけておいてたから、まさか夜這いには来るまい。 日も短くなり夜が来るのも早い。 辺りは暗闇なので、地球だと宵の口でもこちらだともう夜更けなのだ。


静かな夜だったが、川のせせらぎと虫の鳴き声が懐かしく感じられ、たまに鳴く鳥や獣の声もかづきには子守歌のように聞こえ、いつの間にか睡魔に心を抱かれていた。


「隊長! クロサワ隊長、夜分すいませんが起きてください」

「ん? ん、どしたビームス。 魔物の・・・気配はないぞ」

「はっ、今夜の夜勤は我々白隊班の当番ですが、見回りの二名が交代時間に帰って来ないのです」


「うん? おまえのとこは三交代なのか」

「はっ、デゴブとベスクドの二名ですが、我々残りの四名で探索を行いたいと思いますが、お許しを頂きに参りました」

「魚人族のデコブとベスクドはバーミヤンの弟だったな」


「はっ、狼獣人のズグロウがおりますゆえ、臭いを辿れば大丈夫かと」

「ああ、了解した。 取り敢えず一時間探索の猶予を与えよう。 三十分経ったら引き返せ、いいな!」

「はっ、承知しました。 ではいって参ります」


一応ラビ先生に問いかけてはみたが、魔物らしい気配は周囲にあるものの、こちらへ来るものは居なかったようだ。 一応魔物除けの薬草を周囲に撒いているし安心していたのだが、少し腑に落ちない面もある。 夜勤の警備は、周囲の探索など無いので、道に迷う事などありえないのだ。


「どうしたのぉー、にぃさま」

「ひっ! ミク、何でここに居んだよ。 訓練中は女人禁制だぞ」

「ふん、いつも子ども扱いしてるからいいのっ」


「モモはどうした、いつも一緒だろ」

「うーん、今日はディアンヌさんの警護兼添い寝ぇだよ。 三人じゃ狭くてテントじゃ寝れないもの」

「ま、まぁそういう事なら、い、いや俺は男だぞ、襲うかもしれないだろ」


「いいもん、おにぃさまならいつでもあ・げ・る。 フフッ」

「くっ、モモが怒るぞ、ミシーとかジュリナも」

「モモには言ってあるわ、明日はモモと交代よ。 おねぇ様たちも大丈夫だわ。 ところで何があったの? 少し騒がしかったわ」


「うーん、今夜の警備役が時間に戻って来ないんだと」

「ふわーっ、おかしいわね。 警備って言っても見回り無しでしょ?」

「ああ、今白隊班の四人で探索に出てるよ。 1時間くらいで戻って来るだろ」


「ふわぁー、ねもい。 おにぃさま、何か目覚ましください」

「寝てていいんだぞ、俺起きてるし」

「兄さま起きてたらわたし寝れないもん、付き合うわ」


「そっかぁ、じゃ効くかわからんが、ミルクたっぷりのミルクコーヒーだ。 タンポポだからカフェインないかもな」

「甘い?」

「うんと甘くしてやるぞ、ほれ」


「あぁ、おいしぃ、苦味がいいわね。 これって大人の味?」

「ハハハ、そうだな大人の味だと、砂糖は抜きだぞ」

「いやっ!」


かづきはミクの頭を撫でながら、探知の魔法を発動させていた。 使うたびに感知度はかなり上がっているようで、四人の気配は良くわかる。 どうやら居なくなったデゴブとベスクドは、川向うに西方向に向かっているようだった。

ディアンヌ:さぁさ皆さん、お風呂上りは油分がとぎれますゆえ、これをお塗り下さいませ。

ミシエータ:ふんふん いい香りだわ肌油かしら。

ディアンヌ:ええ、香軟膏ですので、肌にしっとり馴染みますわ。 殿方には、大変喜ばれる香りだと聞きますわよ

ジュリナ:モモ、ミク! 今夜はディアンヌを監視、いえっ、警護しなさいな

『ほーい』

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