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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
練兵育成篇
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異世界探求伝 第七十四話 ブートキャンプ後半ーたのしい野外調理

キャンプ初日は少し休憩のひと時を迎えました。

ホッとするのは、やはり食事の時でしょうね。

 かづきは小さめの気球を使って、上空からの探索と地図の作成を行わせていた。


但し、風で流される危険もあるし、地図作成のために地上からの距離を一定に保つ為、ロープで固定してある。 固定先はもちろんゴーレムのアロンだが、崖道を整地しながらの移動なので、安全に移動できているようだし、途中の邪魔な枝木などは先頭の者が薙ぎ払ってくれているのでこれも安心である。


かづきが忙しい最中、色々とやって来れているのは、すべてラビ先生のお陰である。あらかじめ必要な書類や情報などをこのラビが、カヅキのの情報を基に処理してくれているおかげで、あれこれと的確な指示ができているのである。気球もその一つで、ラビ先生にあらかたの情報を与えておき、カヅキはこれを基に図面を起こして指示して作らせているのであった。


ラビ先生とかづきは、ともにリンクしているわけではないが、実を言えばかづきの持つ収納袋は特別製で、ラビ先生が袋に入れたものであれば、直接認識してくれるのでそこを利用したわけだ。つまり袋に入れさえすれば、計算も修正も思いのままで、さすがはコンピュータといったところであろうと、かづきは感心していた。


気球に乗っているのは、地図作成に長けており、体重の軽い者に限定されるが、ミクがこの役を買って出てくれている。 ミクは絵が上手な上にネコ族なので、目も耳も良いので斥候の代わりにもなるのだ。 モモが登りたがっていたが、目が良いのでうってつけとは思ったのだったが、絵が下手なのは致命傷だったので、丁重にお断り願ったと言うわけである。


ちなみに、地図作成はガラス板に描かせている。 現在、砦村で作られていたガラスの透明度は、あまり良くないのだが今の所とくに問題は起きていないようだ。 枚数が多くても袋から出し入れできるわけだし、絵にはナンバーが振ってあるので、後で繋げればそれなりに精密な地図の完成である。


それにミクからの指示で、進行方向の修正も同時に行われている。 イヤーカフがあるので、情報が逐一報告されてくるのし仕事も早いという事もある。 その様子をディアンヌが不思議そうにしているが、風魔法だと言ってあるので、それで納得している様だが、それよりも薬草採集の方に夢中のご様子だ。


単純な望遠鏡を渡してあるので、アロンの肩にまたがり、あれこれ指示を出している。 崖の上部に生えている薬草を採るのは難儀だが、訓練生の良い特訓にもなっているはずだ。 身軽な獣人も多いし、特に問題は起きていない。


この周辺は、やはり魔物が濃い場所である。 特に鹿やイノシシにウサギといった類の魔物が多く、そのほとんどが訓練生の風筒銃の良い的代わりになっているのだ。 隊班も交代で、攻撃係や道路整地の工兵役を自分達で判断して交代しているようなので、緊張の糸も途切れる事は無いであろうとかづきは思った。


崖の道路は、ある程度の道幅を作っているが、 一定の間隔で少し広めの整地を行っている。 人数が三十名ほどいるので、戦闘になると狭い道だと戦いにくいせいもあり、攻防拠点も必要となると考えての事であった。 獲物もある程度貯まったら、解体を行わなくてはならないので、それだけ広い面積も必要である。


血抜きの場所に困ると思っていたが、ジュリナが飼っている山ヒルのお陰で、吊るす手間が省けているのも、良い兆候である。 こうして順調に徒路は進んでいったのだった。


『コールカヅキ:おにぃちゃん、そのまま進めば国境西の森だよ。 それより左側に大きな水溜りがあるよ』

『うん、わかったモモ。 確かその辺はクリソって場所だな、先に森へ進もう、もう日が暮れる頃だし、手頃な休憩場所を見つけてくれ』

『ラジャ、おにぃちゃん』


小一時間モモの指示通りにそのまま進むと、林に入った急こう配な下り坂があり、降りていくとそこは渓谷の谷底に当たる場所であった。 川幅もだいぶ狭くなっており水深も低そうなので、今日はこの周辺でキャンプを張る事にした。 


初日という事もあり、先を進みながらの行程は、道路も作りながらの作業も含まれており、襲撃もあった事からそれなりに体力と魔力を全員削られている頃だ。 かづき自身を中心で考えると、気が付いたら全員バテバテだったという事も考えられるため、早めの休憩をとる事にしたのだった。


訓練生たちは周辺の探索組、野営準備組、調理組、警備組と別れて行動を行っていた。 特にこれといった細かな指示は出していないが、細々とカヅキガ指示を出すよりも、連中を放置する事によって自立心というものが芽生えて来るものだ。 そうした中で、自然とリーダーは出来ていき、そして育って行くものだと、かづきは肌で感じていた。


実際の指示は、ズナン山の麓で共に行動をしていた緑隊班のバーミヤンと、白隊班のビームスが行っている様だ。 ビームスはクラークのいとこでもあり、ヴァレンチノ家の事もよく知っている。 彼らは他の赤隊班と黄隊班の班長四人で、よく相談し合っているそうだ。


かづきの思惑ではブートキャンプでは、各自の競い合いによって、個々の実力アップを図る目的であったのだが、警備隊長のベルミに言わせてみると、彼らは競い合いに熱中する以前に、戦いや武器そして砦村での新しい知識を己の物のする為に、競い合いよりもお互いに協力して、知識や技術の向上を目指すという方向でまとまっているのだという。


全くかづきの思惑は、的外れのようであったが、原因は偶然にも選んだ各隊の班長の選択の影響によるものが、色濃く出ているのだとベルミは言った。 彼ら班長達はズナン山麓で、カヅキと行動を共にしていた為、その話を全員に聞かせているようで、そうした影響で自分たちのレベルの程を思い知らされているという話であった。


「あー、そこ、出汁は一旦茹でこぼさないと駄目!」

「パンはダッチオーブンで、重ねるのよ。 お水を軽く振りかけて遠火です」

「ハハハ、モモもミクも調理指導だな」


「カヅキ様は何をなさっているのですか?」

「ん、ディアンヌか、赤隊班のムチンはペンネの弟子なんだ。 この旅でペンネコック長の、知らない料理を教わりたいって言うからな」


「成程、興味深いですわね。 で、何をお作りに?」

「これは、ワイバーンの胸肉を使った香草焼きだな。 胸肉を厚めにカットして、袋包丁で中に味付けした野菜を詰め込むんだ。 後は塩と香辛料で味付けして、パン粉をまぶしてオーブンで焼くだけさ」


「まぁ、凝ってらっしゃるのね。 見た事無いわそんな料理、ムチンさんも勉強になるわね」

「ええ、クロサワ様のお料理は斬新ですので、いつも驚かされるものばかりです」

「まぁ、俺も見様見真似だから、勉強になるかはわからんぞ」


「いえ、ワイバーンの肉は脂身が無く淡白なものですが、こうして具を詰め込みワイバーンの油で掛け焼きする事で、油の乗った美味しい肉に早変わりするんですよ」

「まぁ、美味しそう、お腹が減ってきちゃったわ」

「ハハハ、もうしばらくお待ちください」


料理の指揮は勿論ムチンが行っているが、各班の料理好きが集まっている様だ。 こうして全体を見てみると、隊班ごとで行動しているわけではなく、それぞれの特色を生かした組み合わせで行われている。 一旦バラバラになって、それでいて必要な場所に必要な人材が集まっているわけだから、これも必然なのだろう。


「ディアンヌも、途中で食べられる野草や木の実を取ってくれたせいで助かってるよ。 俺は食材なんかほとんど知らないからな」

「まぁ、良かった、お役に立てたのね」

「もちろんだよ、今日はこのヤマモモ? だっけ、こいつは甘みが強いから、デザートでムースを作るよ」


「ヤマ、あぁそれは紅スグリね。 秋ベリーやキノコも沢山採れたわ」

「キノコがでかいのには、驚かされたが安全なのか?」

「キノコは採れる場所で、種類が決まっているから安全なのよ。 でもね、毒を持っているキノコにも利用価値は沢山あるもの」


「らしいな、ミシェータも詳しかったからな。 俺は怖いから、ムチンに丸投げだ。 ハハハ」

「クロサワ様、ムースの作り方をお教えください」

「あぁ、材料はだな、残った白みを漉してメレンゲを作らせろ。 乳山羊のミルクを鍋で温めろ、くれぐれも沸かすなよ」


「はっ、直ちに取り掛かります」

「紅スグリは、一k位潰してくれ、残りの二kは洗うだけでいい」

「わたくしがやりますわ」


こうして、デザート作りも始まった。 温めたミルクは砂糖で甘みを調節して、紅スグリの潰したものを混ぜる。 ほのかに色付いたピンク色が美しい、ここに動物の筋と皮から作った、乾燥ゼラチンを戻したものを溶かして、軽く冷気に当てて冷ますと、メレンゲの投入が行われる。


後は竹の節で作った容器に入れたら、残りの紅スグリを乗せて冷やしたら完成である。 本来はガラスの薄い容器に入れれば、小洒落た雰囲気をかもしだせるのだが、未だガラス製品は未完のままである。 かづきは木で作られた番重に容器を並べさせ、結界を張りながら冷気で完全に固めると、そのまま収納してしまった。


「いつもながら、さすがですね」

「ん? たぶん美味しいと思うぞムチン」

「いえいえ、料理は当然として、そのダブルスペルですよ。 今結界魔法と、冷気の魔法ですか、同時にお使いになっていましたよね」


「えっ! 詠唱など聞きませんでしたわ」

「ハハ、クロサワ様の魔法は無詠唱ですよ、ディアンヌ様」

「あら嫌だ、今まで魔道具をお使いになってらしたとばかり思っていましたのよ」


「あぁ、俺は詠唱が苦手なんだ、というか知らないんだよ。 最初に無詠唱で覚えたから、感覚だけでやってるのさ」

「あぁぁ、王都の高等魔導士様方でも、無詠唱は難しいと聞き及びますわ。 それなのにダブルスペルですって⁉」


「わたくしのカヅキを、そこら辺の魔導士と一緒にされては困りますわ、ディアンヌ」

「あ、ミシェータ、さん」

「さんは要らないわ。 ディアンヌ、貴女と違ってカヅキとの付き合いは長いのですから、この方の破天荒ぶりにはあきれ返ると思うわよ」


「は、はぃ・・・確かに、おじい様も同じ様な事を」

「カヅキの魔法はダブルスペルだけではありませんわ。 トリプルでもフォースでも可能ですわ」

「えっ! それでは王宮の最高魔導士並みですわよ」


「うーん、比べられないわね。 だって魔法陣すら必要としていないのだから」

「おいおい、その辺で止めてくれ、ディアンヌも口外禁止な」

「あ!はぃ・・・やはり、賢者様ですわね。 最初は少し持ち上げたつもりで言ったのだけれど・・・」


「正直ね、ディアンヌ少し見直したわ。 それに野草だけに執着せずに、食料を優先させたのも好印象だわ」

「ありがとう、ミシェー、タ」

「そう言えば、ジュリナが居ないな」


「ジュリナは、周辺探索隊の任務中よ。 あっ、帰って来たみたい」

「ゆっくり帰って来てる所をみると、問題無さげだな。 さて、食事の用意だ」


テーブルやイスは、土魔法の得意な連中が、長テーブルと長椅子に見立てて作ってくれている。 真ん中を開けて、四方を囲むように作られているので、万が一敵の襲来があっても、バリケード代わりに使えるので、これはかづきが指示を出したものだ。 いつでも臨戦態勢を整えておく事は、兵士としての心構えでもある。


本日の夕食のメニューは、ワイバーンの骨で作ったスープに、白豆で作ったハルサメと芋などが入ったポトフである。 かづきが白豆で豆腐を作ろうとしたのだが、にがりが無くて酢を使用したおかげで大失敗に終わっていた。 この時、沈殿した搾りかすからでんぷんを取り出して、春雨を作っておいたのだ。


周囲が知らないのは、勿論、失敗に終わったからで、その時作った豆腐もどきは、家畜の飼料となっていた。 隠元豆と大豆は成分が違うので、にがりがあったとしても失敗に終わっていた事だろう。本来は、この地で取れるコマメが黒豆で、大豆そのものであるからこれを使うのだったが、素人考えで白い豆の方をテストしたのだろう。


さて、野菜のポトフの次は途中の狩りで手に入れた、ボアハッグの網焼きステーキだ。 イノシシなので、この時期のボアハッグは脂の乗りがとてもいい。 付け野菜のザワークラウトとも相性抜群である。 そしてメインはワイバーンの香草焼きで、 ソースには濃厚トメトソースが合うはずだ。 パンは黒パンにする事にした、重くて噛み応えがあるので満腹感が得られるだけでなく、栄養価は最近始めた白パンよりも高いのだ。


『精霊の御名において、こうして糧を頂ける事に感謝と慈悲を捧げます』

「さぁ、食おう、エールは無しだが、料理は沢山あるぞ」

『イエッサー!』


こうして初日の晩餐が、滞りなく行われたのであった。

ムチン:野外で調理も楽しいものですね。

ディンヌ:そうですわね、しかしカヅキ様の引き出しは多うございますわね。

ムチン:あぁ、そう言えばペンネ師匠も同じ様な事を仰ってました。 同時に、料理も経験の積み重ねが腕を上げると、ブートキャンプの参加を進められました。

ディアンヌ:そうねぇ、経験よね。 わたくしも早く経験しなければ。

ムチン:ケイケン、ですか。

ディアンヌ:ホホホ、こちらの話よ。

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