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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
練兵育成篇
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異世界探求伝 第六十九話 娼館

今回は娼館の話になります。男なら誰しも通る道でしょうが、ここは異国の地

地球のようなイメージでは失敗する事もあるでしょう。

 クラークから相談を受けてやって来たのは、ズナンの娼館のようであった。

女性陣に行き先を告げられなかったのは、こうした経緯があっての事であるが、何の相談であるかなどは、かづきにまるで見当がつくものではなかった。 風俗へ行く事は当然、健全な男性としてはよくある事だが、実際にこうした中世の匂いがするような娼館は初めてである。


こんな場所は、下に赤い絨毯(じゅうたん)などが敷き詰めてあって高級家具が並べてあり、高級な素材で作られたドレスと毛皮を着た娼館のおかみが、手袋越しに細いキセルで煙を燻らせながら、「あら、初めて見かける顔ね」などと、濃い化粧で煙を顔に吹きかけて来るのが定番のイメージなのだが・・・


館の雰囲気はまるで酒場のようだった。 奥にはカウンターバーが設置してあり、あちらで見かけるものは、丸いテーブルを囲むように、柔らかそうなソファーが備えてけられているようで、高級なもので(しつら)えられているのは間違いなさそうであったが、なんせ館内はかなりの薄暗さだった。


見回すと辺りには常連らしい客が、女性たちを侍らして会話を弾ませている様だが、これではまるで地球にあった、高級クラブのような(たたず)まいではないか、とかづきは感じざるを得なかったのだ。 三人が案内され、向かったのは館内の最奥である、ボックス席のような場所だった。


席に座ると直ぐに、シックなドレスを着た女性がこちらへと足を運んできた。 ドレスは胸元が開いており、ほのかに膨らんだ双丘の割れ目がいやに艶めかしい。 男性なら真っ先に目が行くドレスの胸元を強調するのは当然だろうが、両袖は膨らんでもっさりとした感じである。 色は金色で袖口などの所々にレースが施してあり、裾はくるぶし程まであるので足は全く見えない。


「いらっしゃいませ、皆様方。 わたくし、当「シラシメの館」を預かっているカレンと申します。 以後お見知りおきを。 それで、お飲み物は如何なさいますか?」


「カレン、食事がまだなので何か食べ物を。 つなぎでワインを頂きましょうか。」

「畏まりましたクラーク様、少々お待ちくださいませ」

「ふむ、クラブで食事か、少し野暮だな」


「申し訳ありませんクロサワ様、お腹が空いていらっしゃるかと」

「いや、俺のつまらん常識さ。 気にするな」

「ハハハ、そう仰って戴けるのは何よりですな」


しかし、先程のマダム? はとても綺麗な人だった。 みどりの黒髪とはよく言うが、本物の緑色の髪の毛はこの世界でしか拝む事は出来ないだろう。 緑色の瞳もかなり貴重で怪しげだ。 地球にも北欧系野人種に居る事はいたが、家系的なものがありかなりの希少な確立のものだったような気がする。

 

「さっきの女性店主か? 綺麗な人だな」

「お気に召したのですか?」

「ハハハ、いやいや、どこかで見た気がしただけさ。 それに、人の女を奪うような趣味はないさ」


「あらあら、楽しそうですわね。 ヴィンテージ物のワインをお持ちいたしましたわ」

「ワインか、グラスで飲まないんだな」

「ええ、基本ワインは銀製のワインカップになりますわ」


「ところで、マダムカレン。 どこかで見知った気がするのだが、気のせいだろうか?」

「ホホホ、名前を覚えていらっしゃらない所をみると、見知っていたとしてもさほど気になる相手ではなかったようですわね、クラーク様」


「良かったなクラーク」

「う、ぬっ」

「なんだ、クラークの想い人ってこの人なのか?」


「そうなのですか? クラーク様」

「い、いやっ」

「ホホホ、断られちゃいましたわ」


「いや、カレンそのような事は」

「ハハハ、マダムカレン、だそうだ。 君はクラークの事をどう思ってるのか?」

「わっ、私なんかが・・・」


「あらら、二人して何か探し物か?」

「ハハハ、クロサワ殿、そりゃ愛を探してるのさ」

「じゃ、見つかったようで、良かったな。 式はいつにするか?」


『くっ、クロサワ様!』

「うん? 嫌なのか」

「そ、そうではなく、私の一存では」


「カレンはどうだ?」

「わ、わたくしは昔からクラーク様の事をお、お慕い申しておりました」

「ほら、これで決まりだ。 後でカレンの父親に挨拶して来い!」


「あ、有難うございます! クロサワ様、これまでの数々の御無礼、お許しくださいませ」

「ん? 無礼なんか別に・・・カレン? って! ギルドの受付嬢のカレンさんなのか?」

「はい♪ そのカレンですわ」


「ほぅ、これは驚いた。 髪型や化粧でやはり女性は変わるもんだな」

「あら、あの時はそんなに不細工でしたか?」

「ハハ、いや釣り目が怖かっただけさ」


「あら! 失礼な、ってこっちが失礼でしたわね。 ホホホ」

「じゃ、前祝と行こうぜ、クロサワ殿」

「ああ、ダッグ、この話を進めてくれるか」


「イエッサー!」

『ハハハハハ』

「じゃ、二人の前祝で乾杯だ。 トォーストだったかな、グラスとかじゃないのな」


「グラスは高級だからな、王侯貴族ぐらいしか使えないだろうぜ」

「らしいな、 俺が庶民でも使えるようにしてやるよ」

『トォースト!』


「そう言えば、そろそろ材料も各地から集まって来ていますな」

「そっか、またしばらく忙しくなりそうだな。 工場は出来てるのか?」

「はい、ほぼ完成しておりますが、なにぶん居住区を優先して作らせていますので」

「そうだな、移住民も増えることだしな」


一通り、砦村の話や今後の段取りの話を済ませると、頼んできた食事も出来上がり、こちらへと運ばれて来たのであった。 肉料理がメインの、クラークが好きそうなものばかりだった事は言うまでもあるまい。


「ふぅ、食った食った。 で? メインの話はお前の結婚話だけなのか」

「はぁ、ご察しの通り、これから本題に入ります。 カレン、ヴィテスと氷を」

「はい、ではわたくしは、しばらく席を離れますので、用事があればお呼びください」


ギルドの受付嬢であったカレン嬢が、この店を任されたのは、つい最近の事らしい。 別にギルドを辞めたわけではなく、夜のアルバイトのようなものらしい。 クラークが砦に居付いてしまったせいで、店を取り仕切る者と切り盛りする事務方が必要だったようで、ダッグが気を利かせてカレンに声を掛けたのだという。


クラークから聞くところによると、ここは少し高級な飲み屋というイメージで、吟遊詩人が楽器を奏でたり、歌を聞かせるショーがメインなのだそうで、言われてみれば舞台のようなものが備わっている。 話を聞けば、ようはヴァレンチノの所有する店などの活性化が目的な様だ。 確かに俺が見てもかなり野暮ったいのは事実だ。


「そうだな、全体的に見て全てに田舎臭さを感じるな」

「やはり、左様ですか」

「客層はどうなのか? 儲かってるのか」


「左様ですな、最近は何かと金銭感覚の方が鈍って参りまして」

「ハハハ、そうだな。 いっそのこと誰かに任せてしまえ」

「しかし、代々ヴァレンチノ家が守ってきた土地ですので」


「手放せとは言ってないさ、任せればいいだろ。 売り上げの幾割かを納めさせればいい」

「はぁ、しかし収穫祭の事もありますし」

「収穫祭と何か関係あんのか? 人出が多くなるから忙しくなるとか?」


「あ、ああ、申し訳ありません。 ここではなく娼館の事で」

「そっちか、本題は、全く回りくどくてかなわんな」

「クロサワ様、収穫祭は収穫を祝うだけじゃないんで」


「そうなのか、ダッグ? 詳しく教えろ」

「実は・・・」


収穫祭とは、この地で獲れる小麦や大麦に白豆と呼ばれる作物や、葡萄を始めとする果物の収穫のお祭りなのだが、この収穫は実りに通じており、精霊の加護が一番大きい季節だという。 ヒトも同じ事で、この時期に結婚や子作りに励むと、幸せになれると信じられているのだそうだ。このズナン地方で、よく収穫されている白豆も縁起の良い作物で、豆は女陰の証として葡萄は乳首証として、女性を象徴しているのがこの収穫祭だという。 


ちなみに男の祭りは無いものかと尋ねてみたが、何故か不思議な顔されたので、黙り込むしかほか無かった。 話は延々と続いたのであったが、ようはこの収穫祭が女性の祭りで、この国の女性権はかなり強いものだと理解は出来た。 恋愛や婚姻自体も優先権があるのは女性の方で、基本的に女性の方からアピールをして、付き合うかどうかは女性次第と言うわけだ。


従って、一般的な政略結婚は存在するが、決めるのは全て女性に主導権があるので、無理やり嫁がせるという事はない。 従って女性との約束事は特に厳しく、ジュリナやミシェータがピリピリしていたのは、このせいだと言えるだろう。 これは逆に言えば、男性には選択権があまり無いのだそうで、ここからようやく本題の娼館の話に繋がるのだ。


つまり、この収穫祭の期間は、女性が男性を選択する機会という事で、祭りの間は女性が夜這いを掛ける事も、普通に行われており、これにあぶれた男連中は情けない話だが、婚期が遠のくという意味になる。 そうした中で、娼館はこうしたあぶれた男たちの救いの場であり、祭りの期間は特に大忙しと言うわけだ。


しかしながら、娼館でうっぷんは晴らせるだろうが、結婚が出来る訳ではない。 しかも、娼館で働く女性には拒否権もあり、そこで振られた男は目も当てられないと言えるだろう。 こうした悩みを抱えて、クラークは何かしら打開策を探そうと、日夜努力? をしているらしい。


「なぁ? それってもてない男をどうかするって話だろ。 それについては無理だぞ。 だが、砦村のような男どものように、仕事で腕を磨けば女性は寄って来るだろ」

「ふむ、確かに世の男どもは、女性にアピールするための努力は怠りませんな」

「クロサワ殿、もてないもんはしゃーないんですが、毎年娼館がパンクするんでさ」


「うん? それって娼館の女性が圧倒的に足りてないって事か」

「そう、その通りなんだ」

「聞くが、女が足りなくて、あっちの処理ができないから悩んでるのか?」


「はい、クロサワ様、深刻な問題になっており、毎年あぶれたものが暴れ出す始末で、なんともはや」

「そっか、あっちをスッキリさせればいいのか?」

「そうそう、何か無いですかねぇ」


「それならあるぞ、取り敢えず娼館を見せてくれ」

『おぉ』


娼館はこのズナンの街に五軒あったが、そのうちの二軒は祭りの際に他所から出稼ぎに来るのだそうだ。 つまり、普段は宿としての営業しかしていないが、この期間中にだけ臨時娼館としてオープンさせるのだそうだ。 どれもこれも同じ造りで、一階がバーになっており待合室と兼用なのだそうで、かづきがズナンで最初に入った酒場と同じ建物になっている。


客は一階で軽く酒を飲み、気の合った女性と二階や三階にしけこむのだそうだ。 普段の営業は、娼婦が自由出勤だそうで、出勤とは一階に出向く事を意味しているのだそうだ。 暇なときは客引きもしているのだが、ほとんどの者は一階のバーでお喋りしたり、軽く飲んでいたりする。 ようは全てが自由行動で、好きに働いているというのが現状のようである。 


各部屋は娼婦の住いになっており、その部屋に客を招き入れる形で営業が行われている。 これはクラークの苦肉の策で、家が別にあると気が向いた時にしか出てこないが、店自体が自分の家でもあるので、無断欠勤という事がなくなるメリットがあり、娼婦も部屋代が浮くし、客に強請(ねだ)れば好きなものを奢ってもらえるので一石二鳥なのだ。 


ギャラは時間や宿泊などによって料金は変わってくるが、基本的には1時間で銀貨一枚だそうで、人気者の娼婦は言い値というが、半分が店の利益という事らしい。 祭りの期間はソファーを追加して、アルコールもほとんででないらしく、まさにポンプ輸送状態という事態が起きる。 この時ばかりは、娼婦を引退した者も臨時で来るのだそうだ。


「なるほど、一通り見たがサービスの方はどうなってるんだ?」

「ほ? サービスってなんだ? クロサワ殿」

「客を喜ばせるサービスさ」


「えっと、飲んで会話を楽しむ。 後は部屋にしけこんでやるだけだな」

「あーんなことやこーんな事はやんないのか?」

「えっ! そんな事知りませんよ、クラークは知ってるのか?」


「うむ、そんなことがある事は知ってはいるが、娼婦たちは自分の自由にやってるだけですからな」

「なるほどな、これはいちから教育し直さないといけないな」


「クラーク、悪いがニ、三日ズナンに滞在だ。 明日娼婦全員をシラシメの館に集めてくれ」

「はっ、畏まりましたクロサワ様」

「何が始まるんだ?」


「研修だ。 店の改造も行うから内装ができる職人も集めてくれ」

こうして、娼館のリノベーションを行う事になったかづきであった。 

ジュリナ:「かづきはお泊りなの?」

ミク:「はい、出かけたのが夕方ですし」

ジュリナ:「ちぇ、今夜は私とお泊りだったのに」

ミク:「おにぃ様がお疲れの日は、決まってジュリナおねぇ様の時ですわ」

ジュリナ:「あ、あら、いやだ」

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