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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
練兵育成篇
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異世界探求伝 第六十五話 ブートキャンプ中盤

ブートキャンプも中盤に入りました。

訓練生の上達ぶりはいかに。

 ブートキャンプも中盤を迎え、教える方にもかなり熱が入って来た。 この砦の訓練生たちが凄く吸収が早く感じるのは、恐らくかづきだけなのであろう。 情報が少ないという事は、簡単に言うと雑念が少なくて済む。 逆に言えば、正邪を判断する間もなく信じ込んでしまうので、ある面恐ろしい気もしないまでもない。


基本をみっちりやらせて来たので、体力はかなりついて来た。 動きは基本技が多いので、単調に見えるがその速さはかなり早くなっており、武器も木剣ではなく金属製のものなので、パワーもかなりついている。 体術も学んでいるので、足さばきにも隙が無くなり、武器だけに執着するような事も無くなったのである。


講習で体系的に武術を学んでいる為に、理論的に学習できているのが強みである。 簡単に言えばじゃんけんのようなもので、相手にすりなものを出させる事に成功すれば、勝ちにつながる事が分かってきている。 しかし、かづきは決して相手に有利なものを出そうとするだけではなく、不利なものを出させることを考えさせようにしている。


これは戦闘の学習や実戦に、軍略が絡んでいるのだが、彼らはそれを頭で行っているのではなく、実感で覚え込まされているので頭でっかちにはならずに済む。 また、商工会頭のシュタインじいさんから送られて来たディアンヌも、このブートキャンプに参加して貰っている。


さすがに彼女の作る秘薬は、そこらで買えるような代物ではなく、ましてやジュリナが作ってくれていた薬草とは全く違っていた。 俺は驚かなったが、周囲の者は切り傷や打撲がみるみる癒えていくのに、かなり驚いていた。 俺にとってはファンタジーの世界では、これが普通だったので全く驚かったのを見て、何故だか彼女は浮かれているようだった。


「さすがクロサワ様ね。 ジュリナやミシェータさんたちまで驚いていたのに、眉一つ動かさないのね」

「えっ? ああ、驚いているさ、ディアンヌが来てくれて本当に助かっているよ」

「ふふ、嘘ばっかり。 当たり前の顔をしているわ」


「ハハ、そんな事は無いさ、さすがシュタインじいさんの秘ぞっ子だな。 これで、魔力の使い過ぎでぶっ倒れても安心さ」

「ほら、やっぱり」

「うん?」


「傷薬のポーションは見せたけど、魔力ポーションはまだ見せてはいないわ。 でも、それを知ってる」

「あ、ハハ、それはただの素人の浅知恵だよ。 気にしないでくれ」

「どうだか。 でもクロサワ様、この白い外套気に入ったわ」


彼女の着ているコートのようなものは、特に防御性にあるものや特別なものではない。 生地もただの綿花で出来ている。 しかし、それは地球でも良く見かけるDrの白衣そのものである。


「ああ、俺の頭の中じゃ、君は保健医だからな。 やっぱ保険医は白衣でしょ」

「ホケンイ? 白衣はわかるわ」

「うーん、保険医ってのはね、女医さんとは違って、健康管理のスペシャリストって感じかな。 たまに恋の相談なんかもしてくれちゃったりするんだよ」


「えっ、恋の相談なんて無理だわ」

「ああ、それはあくまでもイメージだから、気にしないでくれ」

「あ、あの、クロサワ様は、皆さんのサポートもしているんですよね」


「うん? 工房の事かな、ああ、してるよ」

「ディアンヌは、薬草工房の長として任命を受けているわ」

「ああディアンヌ、君は間違いなく工房長だ」


「では、私もサポートが受けられるんですよね」

「うん? 当たり前じゃないか。 何か欲しいものがあるのか?」

「いえ、ディアンヌの知らない事を教えて頂ければ、それでいいのです」


「ああ、お安い御用さ、任せておけ。 但し知らない事も多いがな、ハハハ」

「は、はい。 不束者(ふつつかもの)ですが、どうかよろしくお願いいたしますわ」


彼女は何やら顔を赤らめて(うつむ)いていたが、そんな事に気が付くかづきでは無かった。 しかしながら、フラグはしっかり立てられたようである。 だが、ディアンヌがこのキャンプに来てからは、いよいよ本気で戦えるようになって来たので、効率が良くなったのは確かな事実だ。 


実戦訓練は基本的に寸止めだが、本気の試合の場合は上級者でも、寸止めは難しいのである。 寸止めをしようとすれば、手加減しなくてはならず、訓練生同士などの拮抗した場面ではそれは難しい事だ。 


魔法の訓練などは、本気で行わなければ上達する事は難しいし、本気でやる時には事故が多い。 特に火の魔法は危険度が高く、さらに言えば五行を組み合わせた場合に、この難易度はかなり上がっていく。 ミシェータ自身でさえ、本気で練習を行う時には人前ではやらないし、俺が付き添いの場合が多いのだ。


魔法が暴発しても、それを消し飛ばせるほどの上級者が居ない時には、訓練生には練習をさせないのも、これが理由の一つである。 ヒトは得意の絶頂期になればなるほど、ミスした時の痛手は大きいものだという事は、かづき自身が体験している事である。


体術の授業は、皆が楽しみにしている訓練でもある。 なぜかというと、力の弱い者でも相手を倒しうる技が多いからである。 『柔よく剛を制する』などと言っても、自分の倍以上の相手だと投げ技は難しくなるものだ。 とくに身長の差は決定的なもので、体の小さなものほど不利になる。


しかし、ツボを狙った技は大きさには関係なく相手に決まる。 なので、かづきは関節技や突き技を丹念に教え込んでいるのだが、これは秘匿技として訓練生には指導している。 余り広めたくない技でもあるからだ。


「えいっ!」

「ぐはっ」

「それまで! 残身が足らんぞ」


ベルミが言っている『残心』とは、武道におけるトドメの態勢の継続の心得である。 相手を倒しても隙を突かれて、逆にやられる場合も多い。 隙を見せずに相手をいつでも葬れるという動きは、敵に決定的な敗北をもたらす。 慣れてくれば警戒を解いてリラックしながらも、この残心を行えるようになるのだ。


「クロサワ教官殿、赤隊班テンテンであります。 教官のご指導は興味深く毎回楽しみにしておりますが、剣技や急所のツボなどはともかく、打撃技や関節技は我々には・・・その」

「うん? 言いにくいのか、確かにお前はこの中では一番小さいな。 意味があるのかないのかは、その目で判断して貰おうか。 んと、この中で一番でかいやつ前へ出ろ」


訓練生たちは、一応回りを見渡すしぐさをして見せるが、そんなことは一目瞭然なのだ。 この中で一番大きな者は、砦の建築主任でもあり石工のカッパーの息子、熊族のギルルに決まっている。 しかもこいつは親のカッパーよりもかなりのでかさで、その身長は2mはゆうに超えているのだ。


『おう!』と勢いよく足を踏みしめ起立した姿は、まさに山のごとしである。 その踏みしめた足元はほんのりと窪んでおり、そのパワーの程が判るほどだ。


「ギルルとは初めてだな。 体格差はかなり違うが、テンテンに合わせるとしよう」

「えっ?」


かづきは開始線に向かうと膝を着き、構えて見せた。 かづきが膝を着くとその身長は1mにも満たないはずで、ギルルとの身長差はさらに広がり、三倍以上にもなっている。


「クロサワ教官殿、それではわいと戦えんではないか」

「いや、戦えるぞ。 良いからかかってこい!」


ギルルは不満そうだが、開始線に来るとすぐにベルミの合図で試合は開始されたのだった。 かづきは膝は着いてはいるが、正座している訳では無い。 古武道にも膝を着いた型はあり、合気道にも見られるものである。 何故膝を着いた戦い方があるのか、不思議に思う方もいるかもしれないが、これは武士を思い描いてみると、簡単に想像できるであろう。


古来より畳の上で生活していた日本人は、正座が基本姿勢となっているのは常識。 特に侍は重要な話や会議などでは、畳か木の床に正座かあぐらを組むのが常だった。 しかし、相手によっては調略の相手であったり、敵方に寝返った武将である事も少なくなかった訳である。


当然そういった相手方に、乗り込む事は勇気が必要な事もあり、決死の覚悟をしなければならない事も多かったのだ。 つまり座った態勢で、攻撃を受ける可能性も多く、その対処法で膝を着いた攻撃方が編み出されていった経緯があるのだ。


「ワイは手加減せんど!」

「おう」


ギルルは開始の合図とともに、かづきを一声かけるなり右足を大きく薙ぎって来た。 教えた通りの回し蹴りは、『ブーン』とうなり音を立てながらかづきの頭部へ直撃した・・・かにみえたが。


「ドーン! あいててっ」


かづきはギルルの蹴りを巻き込みながら、足首の関節を決めてそのまま投げ飛ばしたのである。 しかも足の急所を指で押さえたままにしているので、ギルルは立ち上がる事も反撃も出来ずにただ『ジタバタ』しているだけである。


「どうした? ギルル、片手で持っているだけだぞ」

「ひ、ひぃ、いてぇよ教官殿。 参ったからわいの足を離してくれ!」

「ハハハ、どうだ? テンテン意味に無い事か?」


「ひっ、魔法ですか?」

「魔力を使ったかどうかは、お前にもわかってるだろ。 コツを掴めば大きな相手でも倒せるって事だ」

「は、はひ しょ、精進いたしやす」


戦闘においては、柔道の投げ技はほとんど相手に通じない。 しかし、関節を決める投げ技は有効で、足技のほとんどは使えるものが多い。しかし、柔道も元々は古武術から来ているものがほとんどで、古武術は武器を持っている相手に有効な技が多いのである。


危険な技も多いので、基本技を中心に教え込むのが妥当だろう。 また、急所は加減を変える事で身体を癒す有効な手段でもあるので、これも同時に教えておく事にする。 あとは何度も繰り返し自分たちで覚えていく事だろう。


「クロサワ殿」

「ああ、クラーク、来ていたのか」

「はい、一通り見させていただきましたが、練兵の技術、大したものですな」


「うーん、練兵をやってるつもりは無いんだがな」

「ガハハハッ、ご冗談を、これでは王国の騎士団に匹敵する強さが身に付きますぞ」

「うーん、富国強兵って訳じゃないが、砦を守る為にやっているだけだから」


「はっ、勿論承知しております。 で、この者達は全て兵士にいたすのですか?」

「うん? いやいや、希望者だけだぞ。 この中で素質のある奴も多いからな、そいつらに今後の訓練を引き継いでもらう事にするよ」

「ほう、それはいい考えで御座います。 では訓練場が必要ですな」


「うん、だが、ここは農地にするんだろ」

「はい、ですがまだ土地は広いのですから、この地をそのまま利用しても良いでしょう」

「そうか、助かるな。 色々と作った施設もそのまま使えるしな」


「何か不備がございましたら、手直しいたしますが」

「うーん、そうだな。 女性用の建物も作って欲しいな」

「女性用ですか」


「ああ、お前たちの考えはわからんが、この国の女性も男と同等に戦えるぞ」

「ふむ、確かに。 女を集めるのにも使えますな」

「出来れば、男女の比率は同じくらいにしておきたいな」


「そうですな、女は多い方が宜しいですな。 一人で何人も抱え込む者もおりますし・・・」

「クラーク、そう睨むな。 無理やり手籠めにした訳じゃないぞ」

「ガハハハッ、確かに」


「お前も身を固めてもらわないとな」

「へっ! わ、私は・・・」

「意中の女がいるんじゃないのか?」


「わ、わたくし用事を思い出しました。 また見学に来させていただきます。 では」

「お、おい! クラーク」

「ふふーん♪ 逃げたわね」


「ジュリナ、何か知ってんのか?」

「さぁね、フフッ」


クラークとジュリナの様子を見る限りは、惚れた女の一人くらいは居そうだが、余り言いたげでない所をみるとこれ以上突っ込まない方が良いのだろう。 さて、昼の食事が終わったら午後の講義が待っている。


午後の講義が終わった際に、全員に祭りの話を振ってみた。 祭りが収穫祭という事は先日の話で判ってはいるが、もっと詳しく詳細を知りたい意味もあったし、屋台の手伝いも募りたかったからである。 ところが全員大乗り気で、ぜひ参加したいという事になり、全員で丸地に向けての下準備に取り掛かる事になった。


ついでにジャパンの祭りも伝えたのが、強い好奇心を炙り出したのだろう。 太鼓や囃子といった日本人にとっては普通の光景なのだが、ここは外国と同じでそんな物見た事も聞いた事も無いのだろう。 特に花火の事を話すと、どんな魔法なのかと魔法使い組が身を乗り出して来た。


確かに言われてみれば、火薬を使う必要も無いはずだ。 基本的に光の魔法をアレンジすればできない事も無い。 問題は形と色の具合だが、音もないと寂しいものである。 花火の話題に全員が食いついて来てしまった。 眼をこんなに輝かせて見られては、どうにかして揚げたい気持ちにならざるを得ないではないか。


そう言うわけで、ミシェータと魔法組に協力を願って、花火の開発に着手する事になったのである。 

次回は花火作りですが、魔法で花火。

どう言った作り方なのか、興味がわきます。

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