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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
練兵育成篇
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異世界探求伝 第六十三話 体術と魔法訓練

ブーストキャンプでも、大事な体術と魔法の訓練が始まりました。

しかし、この国では武器を持って戦うのが主流、教え込むのには難儀しそうな予感。


ベアリングの完成でいよいよ、工具の組み立て作業の開始だ。 ユニットごとに設計図を作っておいたので、組み立ては比較的に楽だった。 ガスドたちにとっては、見た事のない代物でどうすればいいのか判って無い様だが、こっちは完成品自体を知っている訳なので、おもちゃを組み立てるのと変わらない作業だ。


完成したグラインダーは、人の頭ほどある大きさだが、部品を小さくすれば直ぐに小型化できる。 ベアリングに使う油は、動物性油脂を代用して使ったが、精製してあるので問題はないだろう。 後は魔石をセットして、研磨用のグラインダー盤を取り付けると早速稼働開始だ。


先日の鉄鋼板を固定し、グラインダーを動かしてみる。 音は至って静かで、せん断用なので一番目の粗い奴を使ってみた。 火花が勢いよく出るので眼鏡が必要だが、ここは魔法の国だ。 障壁をうまく張って火花は遮断できている。


「おお、すげぇ速さだ。 おいおめぇら、主だった親方連中を集めて来な!」

『へい!』


グラインダーの関係者は、おなじ鍛冶仲間のバーグハムもそうだが、水車や馬車を作る木工職人も同様だ。 小型化すれば、鋳掛彫金のハグネットも研磨加工に使えるし、大型化で、石切り加工や磨きにも使える。 更にアダプターその職種に応じた形に変更すればやり易くなるだろうし、ドリルに形を変えれば盤線や穴掘りまで広い用途に使えるのだ。


ガラス工芸にも切子があるし、料理についても調理器具があると、仕事は早くなることは確実である。 恐らくこのベアリング開発による『軸受制作』は、砦村における産業革命になるであろうと、かづきは思っていた。 ボルトとナットの開発もしかり、 従来のネジは釘の延長のようなものだが、ボルトとナットは明らかに違う。


ネジや釘だけの建物や、工作は壊れやすいが、ボルトは強度が半端なく強く、ほとんどどんなものにでも対応可能なのだ。 工具のメリットはどんな職業にも使える上に、作業効率が確実に上がるだろう。


いつの間にか集まってきた親方連中は、もう浮かれた気配も喪失していた。 それは自分の部署でこれをどうやって生かすかを検討している証でもあろう。 親方連中は集まってここの意見を酌み交わせながら、その利用法についても大いに語り合っていた。


飲酒も制限があるのだが、こんな日の為に平日の飲酒を控えており、思い切り意見を交わす為、食堂に場所を移動して、酒盛りしながら意見交換会にするのだそうだ。 かづきは口からアイデァが漏れてくるのを自重し、彼らの頭からのひらめきに任せる事にし、工房の若い衆の作業を見守っていた。


既に加工の工程は、刃付けも終えており、仕上げを待つばかりとなっていた。 彼らは二手に分かれ、グラインダー制作の者と実際に作業するものとに分かれており、難点が見つかればその都度意見を酌み交わせ、修正を重ねて行くのだそうだ。


最初に出来たグラインダーは、ギヤによって高速、中速、低速に切り替えているが、仕上げ用に使うのであれば、もっと細分化が必要との結論に達したようである。 これは、精密部分を作る彫金師たちにも必要な事で、これは後々彼らの下敷きにもなるだろう。


――――

翌朝かづき達は、ブートキャンプ三日目に入っていた。 二日めまでに慣れない特訓に、疲れていた訓練生も柔軟な姿勢で訓練に励んでいた。 かづきが思ったより、感心したのはその真面目な態度だった。 普通はもう少し不真面目なものや、問題を起こすものが現れてもおかしくないと思っていたが、問題を起こすものなど皆無で、自由時間にも自分の課題を克服するべく真面目に取り組んでいたのだ。


今日は三日目で初めての体術の実践と、魔法訓練が行われる。 体術の重要性はさほど知られていないので、不安な部分はあるがこいつらは実際に見て判断している傾向が高い。 利便性に長けていて実戦に有利だと知れば、自ずと取り組んで行くに違いないと、かづきは感じていた。


「えー、今日は体術の訓練に入るが、まずは基本の受け身からだ。 受け身がわかるものはいるか?」

「はっ、緑隊ウルグアであります。 投げられたリ飛ばされた場合の、衝撃を和らげる行為と思います」

「ああ、その通りだ。 ひとの最大の弱点を守る最大の防御の一つで、自分の体で防御が可能だ」


「はっ、防御は大事であります!」

「攻撃を百回繰り返しても、急所に当たらなければ相手を沈黙させることは難しい。 しかし、頭部への攻撃は一撃で相手を倒す事もできるんだ。 つまり逆を言えば、こちらも頭部への攻撃を受けないように心がけなければならない」


「はっ、頭部には目や耳、そして鼻や口などの重要な期間が存在します」

「ああ、そこでお前達に配布してある、ヘルメットが生かされるってぇ訳だ」


この訓練生に渡されているヘルメットは、防具の中でも一番難しかった部分でもある。 強度を上げれば重くなる為に動きにくくなる。 その為にかづきは故郷の兵士が使っていたヘルメットを基本にした軽くて丈夫な中空機構を付ける事で、軽量化には成功している。


具体的には、表面素材は鉄鋼作りで廃棄物として出る軟鉄を利用して、アルミ合金にしてある。 内部にはクッション材として、リザードボアの肺を利用しており、内部には魔獣の樹脂で二重構造で衝撃を吸収する為に、鉄のこん棒で殴られても平気だ。 しかし、表面望材が柔らかな金属性である為、曲線状に鋼を配置してある。


このヘルメットの飾りのような曲線の凸部分は、鋼で硬い為に刃物をはじく部分としてとても有効である。 ヘルムやフルフェイスではなく、キャップのような形にしてあるのは、防御を生かして強化するよりは、視野が広く通気性に優れている方を重視した為である。 それに必要ならば、後付けも可能であるからという事もある。 


その為訓練中は、動きやすい恰好はさせないつもりだ。 実践では防具で固めて動き回って居る為に、動きやすいジャージなども不必要でナンセンスだからだ。 その為には、もっと動きやすくするための、防具は開発し続けなければならないだろう。


話は少し脱線したが、脱線ついでに最近のラビ先生の活動についても報告しておこう。 ちなみにラビ先生は、かづきに着けられている『ナビゲーションシステム』の事で、かづきの行動の手引きとなるものだ。 かづきはこれを逆手にとって、情報の収集をやらせている。


かづきの部屋へ毎日送られてくる報告書の類は、モモが重要項目を教えてくれる以外は、ナビがこれを収集してかづきの知りたい部分を、要点ごとに(まと)めておいてくれるので、かづきは楽をしている事になる。 まぁ、その分余計な仕事をやっているので、同じ事ではあるのだが。


「よし、左右の前転受け身が終えたら逆回り、そして横受け身、後転受け身だ」

『サー! イエッサー』


ちなみに実技特訓などは、講義などの授業とは違い、倍の時間を掛けている。 繰り返し反芻させることで、学ばせるのが一番の近道でもある為だ。 ちなみにジュリナ、モモ、ミクも訓練をさせている。 体術は今まで教え込んでいるが、更に高度な投げ技を横で個別に教えている。 


練習のために同じ体格の、モモとミクは良いのだが、ジュリナと相対しているのは、流石にベルミでは物足りないので、ゴーレムのアロン教官だが、アロンが日増しにその形を変えている事も面白い。 技とかではなくリアルに体形が変わってきている為だ。 俺が毎日外観を削っている為に、どんどん人型に近づいている。


ベアリング開発による軸受機能を関節部に取り付ければ、アロンも更に動きが良くなるだろう。 さらにこうした上級者の姿を、訓練生が見ている為に地道な訓練にも身が入り、早くこの先を覚えてやろうとする意気込みも感じられる。  


「よし、本日の採点に入る、10点満点だぞ。 白隊、赤隊、黄隊、緑隊の順に一人づつ殴りかかってこい」

『サー! イエッサー』


「小熊族ボピ八点、ビームス七点、魚人族デゴブ六点、ベスクド五点、狼族ズグロウ八点、ドラウト五点だ。 よーし六点以下の者は復習みっちりやっとけぇ! 次赤隊ぃ」

『サー! イエッサー』


こうして体術訓練が終わると、二十分の休憩時間を挟んでの魔法訓練だ。 担当はミシェータ教官だが、その補佐もチーム龍の仲間で分担して行う事になる。 覚える必要のない武闘派は、俺とジュリナ側で身体強化の訓練に入る。 ジュリナもまだ不得手なので、教えるというか教わる事の方が多いだろうが、自分の訓練にもなるので、張り切っているのは間違いない。


この身体強化訓練は、ほとんどの者が基本ができているので、実際に教える事は余りないのだが、覚える事は沢山ある。 実は身体強化については奥が広く、ただ体を強化すればいいものではない。 これはかづきがクラークとの訓練で学んだものだが、人の魔力総量はほぼ決まっている。


その為、簡単な身体防御強化においては、魔力総量の多いものがその硬度を固く出来るし有利性がある。 しかし、それは一概に言えないのだ。 魔力は柔軟性に富んでおり、それを具現化させて放出する事で魔法となる。 強化においても魔力を体の特定の部位に集中させることで、その防御力や攻撃力が倍増できるのだ。


しかし、これは簡単な事では無く、慣れが必要で思った位置に魔力を寄せる事は至難の業であった。 特に急所は、心臓や頭部以外の概念がない為に、攻撃は拳や足に集中できるが、防御にはあまり気を使ってはいない。 しかし、かづきはこの対処方法を既に知っていた。


しかし、その方法が少し(はばか)られた方法なので、人にはあまり言えなかったのだが、そのうち慣れて来ると肌に接触するだけで、その方法が可能と解った経緯がある。 これを使えば、身体を巡る気の流れというか魔力の流れを知る事ができ、相手に体感させる事ができるようにまで上達していた。


最初はミシェータで実践していたが、始めの頃は上手く行かず、次の日にミシェータが「貴方とのHは魔力を消費するみたいだわ」と不思議そうな顔をしていて、うまく誤魔化すのが大変だった覚えがある。


現在かづきは、かなりの熟知度である為、手を繋いでのサポートが少しできる様になっている。 この延長線上に、セセラギのような武器に魔力を通す『攻撃付与』が行えるのであって、この世界ではこれを『魔剣』と呼んでいる様だ。


しかし、武器に魔力を付与するという概念が無ければ、これも無意味に終わってしまう。 ジュリナがヘシキリに上手く魔力を通せないのはこのせいである。 ミシェータが直ぐに使えたのは、職業も魔法技師である魔導具を扱っていたせいであり、モモもミクも使えたのはその手伝いをして、概念を理解していたせいであろう。


従ってこの授業では、ジュリナは魔力付与の特訓で、訓練生たちは基本の防御での、魔力の使い方を学んで行く事になる。


ミシェータの講義は俺自身が学んだ事もあり、とても判り易いのだ。 まず自然とはどの様なものから始まって、それが生まれるまでの経緯や、その特性を丹念に教えて行き、自然の摂理を学んだ上で開始するので、直ぐに頭の中に入るのだ。 


美味しいお菓子を食べて美味しいのは理解できるが、それを作れと言っても作れないのと同じで、その過程を知る事で、その美味しいお菓子自体も作れるようになる。 レシピも大事だが、コツというものは自分で学ばなければ、決して身に付かないものである。 


三日目の訓練と講義は今日も順調に終了した。 全員が慣れてきたせいでもあるが、楽しんでやれていることもある。 勿論人種もそれぞれである為に、得て、不得手もあるが不得手な事でも挑戦する事に意義がある。 決して他の者より上位になれなくとも、それは恥ずべき事では無く、自分の知識の一部として役立てて欲しいと教えておいた。


今日の晩御飯は、ピッツァの予定である。 白パンの生地を発注しておいたので、思う存分堪能できるはずだ。 トマトソースも出来ているし、ベーコンも完成している。 チーズは元々あったものだし、後はオコノミヤキと変わらず、好きなものをトッピングだ。


魔法使いも多いので、石窯はいくつも作る事ができたので、次々と焼いて行く。 ペンネの弟子であるムチンが居るのも心強く、パン生地のあるだけ全部焼いてしまった。 余っても俺の袋に入るので問題はないだろう。 そのうち、満腹になった手伝いの者も増えて来たので、俺も食事とする事にした。


ビールが無いのとコーヒーが恋しいが、まずは腹ごしらえだ。 冷めてもすぐに温められるのが魔法の良いところだろう。 俺は満足の行くまでお腹いっぱいピッツァを堪能する事ができたが、唐辛子は獣人達にとっては鬼門らしい、俺はピリ辛の特製ピッツァを作って堪能していたが、女性陣はそれを摘まんで悲鳴を上げていたようだ。


『ぎゃっ、かぁ~!、ひぃい』

「ふぅ、余は満足じゃ」


ジュリナ:ひぃい~!

モモ:ぎゃっ!

ミク:ひぇえ! みずみず

ミシェータ:あら、みんなおこちゃまね

ジュリナ:あ、あんた何でこんな辛いもの食べられるのよ。 何ともないの?

ミシェータ:ええ、ねっかずき、美味しいわね。

モモ:ミシーおねぇ様、唇が真っ赤になっているのは、気のせいですか?

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