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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
練兵育成篇
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異世界探求伝 第六十話 ブートキャンプ二日目ー午後の部

訓練の続きです。

「ふーぅ、旨かったなカツサンド」

「うんうん、前に端っこ食べたけど、段違いの美味しさだわ」

「次は何を食べさせて貰えるかと思うだけで、お腹が鳴っちゃうわ」


「ハハハ、ジュリナデリカお嬢様ったら」

「モモとミクに言っておきたいんだけど」

「はい?」「はぅ、何かモモがしでかしましたか? お嬢様」


「アハハ、そうじゃないわ。 もうお嬢様ってのは、無しにして」

「えっと・・・?」

貴女(あなた)達は、カヅキの妹分でしょ。 だから私たちの事もおねぇちゃんで良いと思うの、どうかしら? ミシェータ」


「ええ、その通りね。 それに私はミシーでいいわ」

「そうだな、ミシェータはお上品でいい名前だが、俺達の間じゃミシーの方が愛らしいな」

「はい、ではジュリナおねぇ様、ミシーおねぇ様とお呼びいたします」


「モモは、ジュリナおねぇちゃんと、ミシーおねぇちゃんでいいかな?」

「ええ」「それでいいわよモモ、ミク」

「やったー」「でもここでは、ジュリナデリカ教官とミシェータ教官なのよ、モモ」


「もう、わかってるよミク」

「ハハハ、じゃ話は決まったな。 ジュリナとモモはアスレチック訓練場へいくぞ。 ミシーとミクは次の講義の用意をしておくと良い」

『はーい――』


こうして二手に分かれたかづき達は、午後からのアスレチック訓練を行い為に、現場へと向かったのであった。


「よし、貴様達、午後からはアスレチック訓練だ。 内容を今から教えるが、アスレチック訓練教官をここで紹介しておく」

「ジュリナデリカ・ヴァレンチノよ。 よろしく頼むわ」

「イエス、マム!――」


『うん? イエッサーじゃなかったっけ、カヅキ』

『いいや、女性教官の返事は「イエス、マム」であってるよ』

『ふーん、まぁいいや』


「てめーら、ジュリナデリカ教官に後れを取るんじゃねぇぞ! いいな」

「イエッサー! ベルミ教官殿――」

「おい、ベルミ、お前も参加だぞ」


「へっ?」

「へ、じゃねぇよ。 何事も体験だ、行って来い」

「は、はい、クロサワ教官」


「じゃ、モモ、コースの説明を」

「はい、クロサワ教官。 では、アスレチック訓練のコース概要を説明いたします。」

「イエス、マム――」


「まずここから、大木に向かってのダッシュ移動、木登りした後は、ロープを伝って渡る訓練を行います。 向かい側の木にたどり着いたら、荒れ地移動で看板の矢印に沿って走ります。しばらく行くと石壁がありますからそこを登りますが、手段は問いません。 但し、魔法が使えないというのを前提としていますので、石壁登りは自分に力で登って下さい。 石壁を降りたら湿地になっていますので、湿地内を移動して下さい。 コースを外れたら厳罰に処します。 以上!」


『イエス、マム!―—』

「コースを進む時は、パートナーと随時行動を共にする事。 他に何か質問は?」

「モモ教官殿、質問があります」


「そうぞ、えっとあなたは、クラーク様の・・・」

「白隊班班長ビームスです。 モモ教官」

「質問ですか、どうぞ。 クロサワ教官、お願いします」


「えっと、このアスレチック訓練の採点方法を知りたいのですが、宜しいでしょうか」

「ああ、それは俺が答えよう。 それは簡単だぞ、班全体で早く完走すれば勝ちだ」

「クロサワ教官、それはお互いに助け合えという事でしょうか?」


「その質問には答えられないが、魔法の行使以外には罰則は無いとだけ言っておこう」

「はっ!、充分です、クロサワ教官」

「では、ジュリナデリカ教官が先行するから、後に続け」


「イエッサー!――」

「いくよー!」


こうして全員がスタートを開始した。 大木までは直ぐに行き着くだろうが、その先のロープ渡りは慣れていないと大変だろう。 太いロープではあるが、命綱などは全く用意されていない。 落ちたら初めからやり直す様に言ってあるので、ロープ渡りに慣れるまでは落伍者が多いと思っている。


案の定ロープ渡りで躓くものが多い。 普通に渡ろうとすれば、体重の関係で逆さまになってしまうから、握力が足りないと真っ逆さまだ。 地面は雑草がはびこっており、それなりのクッションにはなるが、ダメージは蓄積されて行く。


ジュリナは先頭切ってロープに飛びついたが、案の定ひっくり返って落ちるのかと思ったら、雲梯(うんてい)の要領で腕だけの力で軽々向こう側へたどり着いた。 さすがと言うか、ジュリナならば当然の結果とも言えるだろう。 


各班の対応は様々である。 ロープは班の数に対応しており、その数だけのロープが張られているが、同時に何人も渡るとロープの揺れは大きくなり、それだけ落ちやすくなるはずだ。 さっき質問したビームスは、パートナーを一組づつ渡している。 


赤隊班の班長は犬族のベベリだが、身軽な者を先に渡らせると、どこからか(つた)を持って来て、もう一本綱を張ってしまった。 どうやら二本渡してその安定感で全員渡らせようとしている様だ。


黄隊班の班長はネコ族のブルグである。 最初は、ジュリナを見習って雲梯渡りをしていたが、握力の無い者や体重の重い者は次々と落ちて行く。 仕方がないので、両手を紐で縛ってロープに掛けていたが、どうやって渡り切るつもりだろう。 ロープは向こうに近づくほど勾配があるので、滑らせるだけではあちらへたどり着けないだろう。


緑隊班の班長は、バーミヤンだ。 こいつらもジュリナを真似て落ちてはいたが、パートナー同士で押し合いながら、進んでいる。 何とか渡り切りそうなので、次の難関に進むとしよう。


綱を渡って木から降りると、コース沿いには岩や木々が転がっている、デコボコの荒れ地になっている。 平たんでは無いコースは、それだけで練習生の体力を奪うものだ。 ジュリナは、フンフンと鼻歌を歌いながら、飛び回って進んでいるのが見えた。


次の難関は石壁だ。 垂直な壁ではなく、扇状にネズミ返しにしている壁である。 ジュリナは勢いに任せて突っ込んで行き、そのまま頂上に手を掛けると直ぐに登り切ってしまった。 くっ、一回で成功するとは思わなかったぞ。


この石壁は、体重の重い者に不利なのは間違いのない所だが、背丈が無い者にも不利になる。 垂直ならば手足を伸ばして、次の者を助ける事が出来るが、湾曲している為にそれは不可能である。 先に上った者がロープを垂らすという手もあるが、登るのも大変だろう。


案の定、ここで次々と脱落している。 何人かは登れていたが、班での完走が難しそうだったので、さりげなく登って、一言小声でつぶやいて見せた。

『魔法は許可してないが、身体強化は魔法じゃないからな』


この一言が功を奏してか、次々とクリアしていくものが出始めた。 まぁ、後は慣れだろう。 ここをクリアすると沼地だが、これはコースに穴を掘りわざわざ作ったものだ。 当然行く手を阻む仕掛けを施してある。


先頭の者が確認しながら進まないと、いきなり深い穴があったり足元に段差を作ったりの罠や、杭を打っていたりと仕掛けをしてある。 緩いロープも張ってあるので、引っ掛かれば泥まみれだ。 さすがのジュリナも、自慢の綺麗な白い毛が真っ黒だった。 怒りに満ちた表情は、俺に向けられたもので無い事を祈っておこう。


この訓練が、一番体力を消耗したのは間違い無いだろうが、驚いた事に最初のロープ渡りで一番苦戦していた緑隊班がトップゴールをしてしまった。 


難関だと思わせた石壁も、ギルル以外が台役に回り、それぞれが固まって身体強化を施すと、ギルルがジャンプして最初に飛び上がったのだ。 背丈の有利性もあり、難なく上部にたどり着いたギルルは、両手にベルトを垂らして、仲間を次々と引っ張り上げてしまった。


次に班長のバーミヤンは、熊族のギルルを先頭に据えると、湿地はブルトーザーのように進むギルルの背後に全員が回り、難なくクリアしてしまった。 湿地の後は戻る事になるのだが、言わなかったのだが、戻りのコースは地面を掘って、乾いた砂を入れてあり相当な体力を消費するはずだ。


飲み物も食い物も禁止してあるので、どうするかと思っていたら、バーミヤンが途中の水分の出る木を見つけ、水分補給を促していた。 厳密に言えばコースアウトなのだが、そこから移動せずに元の地点に戻り、再開したので勿論セーフだ。 バーミヤンは良い隊長になれるだろう。


『ふぇー、ゼイゼイ、はぁはぁ――』

最後の赤隊班がゴールして、アスレチック訓練は怪我人も無く無事終了した。 怪我人が出た場合は、大声で援護を求めると、誰かが駆けつけて対処する手はずだったが、今の所何も起こらなかったのは祝着至極である。


「よし、皆ご苦労だった。 思ったよりきつかったようだな、次は魔法訓練だったが、明日に持ち越しとする。 次は魔法講義を行うので、講義室に一時間後集合せよ。 以上、お疲れさん」

『サー、イエッサー!――』


「えー、折角用意したのに魔法訓練やらないの?」

「すまん、ミシーにモモ。 訓練生の体力が思ったより消耗が激しいんだ。 あれじゃ訓練にならないだろ」

「まぁ・・・それもそうだわね」


「じゃ、急遽魔法講義にしたから、宜しく頼む」

「ええ、解ったわ」

「ムスー」


「あ、アハハ、ジ、ジュリナ、建物の裏にシャワー室用意してあるから、行こうか」

「じーっ」

「さぁさぁ、綺麗に洗ってあげようね、ジュリナ」


ジュリナの機嫌を直すのは簡単だった。 綺麗に泥を洗い流してあげて、体を乾かすついでにカツサンドを口へと持って行ってあげたのだ。 おかげで終始ニコニコ顔で、気分も晴れたようだった。


講義室へ行くと、訓練生はへたばっているようだった。 気が抜けたのもあるのだろうが、実際疲れ切っているんだろう。 モモに濃い薬湯を用意させると、講義前に全員へ飲ませる事にした。 これで少しは気分爽快になるだろう。


ジュリナの魔法講義が始まったが、俺達教官は最後方の席で座って見学だ。 何かミシェータの晴れ姿を見ているようで、初々しい気分になる。 さて、自慢の彼女はどんな講義を行うのであろうか。


「皆さん、初めての方も多いと存じますが、わたくしは「ミシェータ・アベルニキュア」と申します。 魔法に関しての授業を担当しますわ」

『イエス、マム――』


ミシェータは、説明しながら教本を配っていたが、俺と目が合う(たび)に顔を赤らめて俯いていた。 うんうん、こういうシュチエーションいいな、今度教師と生徒の設定でやってみよう。 とか不埒な考えを夢見ていたが、本当に夢を見始めている奴がいた。


「モモ、ジュリナは退場だな」

「はい、クロサワ教官」


ジュリナは事もあろうか、「ぐーすか」寝始めていたのだ。 このままでは部屋の雰囲気を壊すと判断して退場して貰う。 ジュリナ本人もそれを解ってか、素直に退出して行った。


講義は当初の予定通り、基本の五行の概念と身体強化の概念を教える講義だった。 特に不真面目なものは居ず、直ぐに四十分の講義は終了する事になる。 次は俺の受け持つ算術講義を行ったが、思いの外やりづらかったのだ。


予測していた通り、殆どの者は四つしか数を数えられなく、工房で働いている者や、それなりの経験をしている者しか、まともに百まで数えられない。 このままでは教えること自体が困難と判断し、列を分けてそれぞれのレベルで教え込む事にする。


右から四までしか数を数えられない列、次は百まで数えられるが、足し算、引き算の出来ない列、次は足し算引き算が出来ているので、掛け算割り算を教える上級組の列とした。 最初の列は数を覚えさせるだけのなので、声に出させながらノートに書き込んで行くようにモモに指示した。


ともかく丸暗記で良いから、数の把握をさせるつもりだ。 二列目は足し算引き算の概念を教えるのだが、これはミクが引き受けてくれた。 実際に、ラモンなどのフルーツを使いながら教えて行くが、概念さえ理解出来れば、計算式に移る予定である。


上級組は流石に工房組の比重が多い。 ムチンを始め、アラリオは彫金師見習いだし、ガラス工見習いジャベ、ガスドの息子デスパイヨにメイド長の養子ドラウトも利発(りはつ)そうだ。 意外な所では、魚人族ガンダ、デゴブが数字が得意というのには驚かされたが、「プリア・スライム」の管理を任されていたらしい。


プリアスライムは、ある程度成長が進むと勝手に増殖していくので、増え過ぎると大変な事になるのだ。 その為に、一定の間引きを行わなければならないし、新しい区画が出来れば逆に数を増やして、送り込まなければならないのだという。 その辺の生態も後で詳しく教えて貰うとするか。










結局、チーム龍の面子が、クラーク以外は揃ってしまいましたね。

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