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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
練兵育成篇
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異世界探求伝 第五十八話 ブートキャンプ二日目ー剣技

かづきの段取りは多少、当初の予定より外れたものだったが

思惑道理にどうやら事が運んだらしい。


「では、俺はあんたとやれるのか? いや、クロサワ教官だったな」

「ハハハ、勿論さ。 準備が出来たらいつでもいいぞ」

「こちとら、今のがウオーミングアップなのさ、じゃ行くぜ」


来たきたきた! こういうのを待ってたんだ。 気迫の満ちたズグロウは、気力は十分と言う所だろう。 かづきは一振りの模造権を握ると、盾は持たずに両手で正眼に構えた。


ズグロウは最初と同じく、素早いダッシュで俺に迫ってくるが、当たる瞬間に剣でいなすとするりと回転し、ズグロウの背後に立つ、ズグロウはすぐさま振り返り剣を差し出しながら体を入れ替えるが、これは中々の動きである。


相手に攻撃のスキを与えないのが、良い攻撃とも言え、防御もしっかりと出来ている。 一度ぶつかって技量が知れたのか、今度は盾を前面に押し出してゆっくりと進んで来た。 俺が攻撃した瞬間に盾でいなして、攻撃する腹積もりなのであろう、じりじりと間合いを狭めて来る。


俺はゆっくりと、右に回って行った。 こうする事で、相手の剣を持つ攻撃の間合いを殺す事が出来る為だ。 このままどうするか見ていると、盾を打ち据えて来た。 良い判断だ、俺が受ければすぐさま攻撃が出来る必殺の剣である。 


俺は更に右回りをしながら、盾をすり抜けようとしたが、ズグロウはここを狙っていたようだった。 直ぐに左に向きを変えると同時に、剣が斜め横から切り付けられたのだった。 


『ゴン!キン』


最初の音は、盾と俺の剣がぶつかり合った音である。 俺はこの衝撃と盾の角度を利用して、相手の剣を弾いたのである。 


「くっ、まぐれだ」

「実戦時に喋るな。 そろそろ、こっちから行かせて貰うぞ」


次の瞬間、ズグロウは万歳の状態のまま、喉元に剣を突き立てられていた。 まさに、お手上げ状態だったのではなかろうか。 恐らくズグロウはこの時、かづきを上位の存在と改めて認めざるを得なかったに違いない。


「で? 負けは認めたか」

「ま、参りました。 クロサワ教官どの」

「よし、ズグロウは良くやった。 その動きなら上達も早かろう」


「これで、大方の腕前は判断できたと思うが、その他の者についても随時実戦で鍛えさせて貰おう」

「い、イエスサー!――」


少し段取りが変わって、モモのむくれ顔も見えるが、当面の意識改革は出来たであろう。 弱い者は強いものを認め、これに従うという図式は、この世界においては大きな方程式のようなものだ。 逆に言えば、いくら知略に長けていても、実践が伴わなければ、誰も言う事を聞いてはくれないのだろう。


かづきは素振りの基本から始める事にする。 剣と握り方、そして腕の振りと体全体で絞り出す力、更には足捌きと体重移動までだ。たかが素振りだが、されど素振りなのだ。 


「いっち、にぃ、いっち、にぃ」

「振り上げる時に息を吸い込み、振り下ろす時は、息を吐け!」

「サー!イエッサー!――」


「精神を統一しろ、無になれ」

「サー!」


かづきは、片手で素振りをこなしながら、一人一人の腕の振り方や角度を注意していく。 足の動きが悪い者には、無言で足を蹴って行く。


「サー!」

「いいか、この中段での素振りは基本だ。 だがな、中段の構えは「水の構え」と言い、防御も攻撃も出来る縦横無尽の剣と知れ!」

「サー、イエッサー!――」


「よし! ラスト素振り百本」

「イエッサー!――」

「よし! やめい」


一斉に腕を降ろして全員お疲れの様だが、基本の構えはあと二つある。 剣技の初日ついでに、三つは覚えてもらわないと、先に進めないのだ。 


「次は下段の構えだ。 これは「土の構え」あるいは「地の構え」とも言い、防御の構えとなる。 剣捌きが上手くなれば、これもこなして行けるはずだ」

「サーッ‼ イエッサー!――」


「最後に上段の構えだ、これは「火の構え」、攻撃に特化した構えだ。 「天の構え」とも言い、力が一番出せる構えでもある」

「サーッ‼ イエッサー!――」

「続けて百本!」

 

基本の三つの構えでの素振りが終われば、剣技のかかり稽古になるが、パートなづつに分かれて、先ずは受けと攻撃をやる。 「型稽古」とも呼ばれ、これは恐れを無くす意味と、受けや攻撃に慣らす必要があるから丹念に行う必要があるのだ。 お互いに十本づつ交代で攻撃をし、今度は変わって相手が攻撃する事で、受けをする必要がある。


教官に指名したベルミも同時に鍛えなければならないので、モモに相手をして貰う事にした。 俺はと言えば、ゴーレムのアロンとの訓練だ。 同じ剣筋を正確に真似てくれるので、教え込ませるのには、ある意味一番適している優秀な生徒とも言えよう。


上中下段のかかり稽古が終われば、最後に乱取りを行う。 最初はパートナーから始めて、相手を替えながら行うが、場所が狭いので乱戦の稽古とも言えるのである。 一応防具はしてあるが、興奮した状態で行うと、怪我をする危険があるので、見回らなくてはならない。


生き生きと動く訓練生がいる一方で、逃げてばかりの者もいるが、そのうち慣れて来るだろう。 俺がうろついていると、たまに襲い掛かって来る奴がいるので、油断も隙も無いので、攻撃したら打ちのめしてやる事にした。 何人かが襲って来たが、その中の何人かは気絶している事だろう。


『パンパンパン!』

「よし! それまで、全員整列」


ここで正座して神棚に礼をするのだが、神棚が無いので二列に並ばせて、互いに礼をさせる。 武道の基本は礼節にあるとも言えるので、かづきには絶対に外せないポイントでもある。 上手く正座できないものが多いが、これは仕方の無い事である。 正座は生まれてこの方、今が初めてだろう。 


正座にはちゃんと利点もあり、背筋を伸ばす事で気の通りも良くなり、清々しい気分にさせてくれるし、集中力も増すのだ。 座禅も同様の効果もあり、骨盤の矯正や内臓の働きも強める。 腱を伸ばす事で柔軟性も良くなり、同時に動きも活性化される。


一分間の瞑想ののちに、互いに礼をさせて剣技の時間は終了となる。三十分の休憩を挟むつもりだが、この間に水浴びや水分補給を行わせる事は、絶対に忘れてはいけない。


「たがいに礼!」

「サー!」


「えっとモモ、次はなんだっけ?」

「歩行訓練に、風筒銃の訓練でお昼だよ」

「そっか、じゃ、一緒に水浴びに言って来ようか」


「えーっ」

「どした?」

「だって、男の子ばかりで、行けないよぅ」


「ああ、そうだったか、じゃあ、個室を作ろう」

俺は建物の裏にモモを連れて行くと、土魔法で囲いを作って、温いシャワーを浴びせてあげた。 ともかく、後々の為にも女性用の浴場も作っておかないといけない。


「おにぃちゃん、ありがとぅ、終わったわ」

「よし、乾かしてあげるから、待っててね」

「いいの、自分でできるもん」


あらら、冷たくあしらわれたかづきは、少し寂しそうだったが、自分も汗まみれだったので、モモと離れて浴場へ水浴びに行くとする。


『ギィーッ』

「サー!――」


おお入ってる入ってる。 俺が素っ裸で来たのでみんな驚いているが、俺にとっては風呂場では至って普通の行為である。 風呂の残り湯を「サバーザバー」と勢い良く掛けると、さっさと上がって来た。


「お前達、訓練は残ってるからな、汗を流す程度にしないと、疲れが残るぞ」

「サー!――」


少し、くつろいだ後に号令をかけて、始める事にする。 とは言え、ここからはベルミとゴーレム教官のアロンの出番なので、次の授業の用意でもしておく。 次は風筒銃訓練だが、こいつらは楽しみな教練らしい。 今日は昨日の試射とは違い、実地訓練も兼ねたコース訓練なので、そちらへ行って整備しておく事にした。


「いっちにさん、全体~! 止まれ」

「サー!」

「お前達に言い聞かせておく。 次の教練は風筒銃の訓練だが、歩行訓練でのまとまりが無ければ、昨日のように何度も繰り返し行う。 よって、長引けば長引くほど、風筒銃の訓練の時間が短くなる事を言っておく」


「サー、イエッサー!」

「よし! てめーら行くぞ」

「サー! ベルミ教官殿――」


「モモ、風筒銃の訓練場へ行くぞ」

「はい、おにぃ、クロサワ教官」


「モモ」

「うん、なぁに」

「銃の訓練をしよう」


「えっ? いいの」

「あいつらは、まだ時間が掛かるだろ。 時間は有効に使わないとな」

「えへへ、嬉しい」


「でも、威力を抑えても、訓練の的壊しちゃうよ?」

「ああ、大丈夫さ、これを使う」


モモに見せたのは、土で作った皿状の物だ。 判る奴には直ぐにこれが何だか理解できるだろう。

「なぁに? お皿?」

「ハハハ、そうだな、こうやるのさ」


何枚かの皿から一枚取り出すと、かずきは思い切り天高く投げたのだった。

「うわー、良く飛ぶね」


すかさず、かづきは自前のリボルバーを取り出すと、その皿を目掛けて射撃した。

『ポン』

見事に命中したクレーは木っ端微塵に空中で砕けたのであった。


「あー、すごい、ねぇ、おにぃちゃん、やらせてやらせて」

「ああ、まずやり方を教えておこう。 用意が出来たら合図の掛け声を出すんだ」

「かけごぇ?」


「ああ、掛け声は『ハッ!』でいいぞ」

「うん、わかったわ」

「弾は何でもいいが、出力弱目で行くんだぞ」


「うん、了解、まずは岩石弾で」

『ハッ』

「カスッ、カスッ」


「あー、落ちちゃった」

「大丈夫だ。 練習だからな」

『ハッ』

「カスッ、カスッ」


「あちゃ」

「どこか、取り敢えず木の枝でも打ってみな」

「うん」


モモが木の枝を打って練習している合間に、かづきは次々とクレーを投げて練習していく。 土で出来たクレーはタダだし、壊れても自然に帰るのみだ。 かづきの銃はリボルバーだし、銃身も長くしてあるので狙いやすいが、モモ達のはグロッグで短銃である。


狙いにくいのは確かであるが、モモの目であれば行けると踏んだのだが、少し甘かったようである。 先が伸ばせるように、改造を施しておく必要があるとかづきは思ったのであるが、今は道具も材料も無いので、仕方がない。


「あっ、そう言えば盾に改造してあるんだった」

「改造? ああ、あれね」


モモは訓練生とほぼ同じ盾を持っている。 この盾は通常の盾とは少し変わっていて、地面に固定させる事が出来るのだ。 何故地面に固定させるのかと言うと、風筒銃を固定して撃つ為に改造してあるのだ。 まずこの中盾を地面に固定させ、穴に銃身を差し込む。 


この穴には筒がはめ込んであって、前方であれば160度の方向に銃先を固定できるのだ。 つまりここから狙えば手で銃を固定しなくとも、照準を合わせる事が可能である。 見にくいが、横に切れ目が施してありそこから見ながら打つ事が出来るのだ。


「よし、やってみるわ」

「ああ、クレーは点で見るのじゃなく、線で見るといいんだよ」

「てん? せん?」


「ああ、動きが予測できるだろ。 そこを狙うんだ」

「うん、わかったわ、おにぃちゃん」

「いくよ」


「ああ、いつでもいいぞ」

『ハッ』

「ポン」

「きゃっ、やったー、おにぃちゃん大好きぃ」


飛びついて来たモモを抱き上げ、思い切り頬ずりしてあげる。 かづきの至福タイムの到来である。 かづきはゆっくりと、堪能すると続けてどんどんやらせてみた。 驚く事に、何と固定してからは、百発百中である。


「凄いなモモ、次は二つ行くからな」

「任せて、おにぃちゃん」

『ハッ』


「ポン・・・ポン」

「おお、凄いぞモモやるじゃないか」

「えへへ」


「ふーん、面白いことやってるじゃない」

「えっ! ジ、ジュリナとミシェータ、ミクも来たのか。 早くないか?」

「カヅキ? 焦ってんの」


「あ、焦ってなんかいないぞぉ」

「自分達だけ楽しんで、ずるくない?」

「いや、これはだな、練習だぞ」


「ふむ、確かにずるいですわね。 ミクはどう思って?」

「おにぃ様は、客観的に見てもモモだけ贔屓しているようにしか見えませんわ」

「そっ、ソンナコトハナイゾ。 モモは教官としての立場があるしな」


「ほう、訓練生の装備に「じゅー」などありましたっけ? カヅキ様、いえ、クロサワ教官どの、でしたかしら?」

「ミシェータ、意地悪言うなよ。 お前達がその気ならモモ! 向こうへ行くぞ」


「あっ! ごめんなさいカヅキ、ジュリナが弱みを握れって言うから」

「ほう? ジュリナ、その内容を聞きたいな。 ミクもグルなんだよなぁ」

「お、おにぃ様、先程の話は只のジョークですわ。 おにぃ様からお教えいただいたのですもの」


「あっ!ミシェータ、ミクの裏切り者!」

「あら、ミシェータ・アベルニキュアは、身も心もカヅキの物ですわ」

「ミ、ミクも・・・ぽっ・・・ですわ」


「くっ!」

「ふーん、ジュリナが浮いてるのか、みんなで仲良くやりたかったのに・・・残念だ」

「ちょ、カヅキ!?」


ジュリナが今にも泣き出しそうなので、この辺で勘弁してやるかと思うかづきであった。


モモ:「しゃげき」っておもしろーい。

ジュリナ:いいわね。 最近かづきとべったりで。

モモ:あっ! お嬢様。

ジュリナ:独り占めは許さないわ。

モモ:い、いえ! モモは無理やりおにぃちゃんに。

ジュリナ:えっ! 何かあったの!?

モモ:ふふ、あってもいいように、覚悟してますわお嬢様。

ジュリナ:くっ、もう二人だけにしておけないわ。

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