異世界探求伝 第五十四話 ブートキャンプ初日
やってきましたブーストキャンプ。
かづきの特訓はどんなもんなんでしょう。
新たな章の始まりです。
「えー、本日よりこのブートキャンプを指揮する、カズキクロサワだ。 貴様たちは、この栄えあるブートキャンプの第一期生となる。 だが、良く聞いておけ。 貴様らがこの栄えある一期生に選ばれるには、地獄の特訓が待っている、この特訓を耐えたもののみこの栄光が授与されると知れ、いいな!」
「はっ、了解、――」
「貴様らの返事は、ただ一つ!イエスサーだけだ」
「イエッサー」
「はぁ? よく聞こえん、もう一度」
「イエッサー」
「貴様等それでも金玉ついてるのか!」
「イエッサー!」
「おい、そこのちびっこいの、お前だお前」
「お、おいらですか? クロサワにぃちゃん」
「貴様! 俺の事は教官と呼べ! それにおいらでは無い。 己の事は自分と呼べ!」
「イ、イエス、サー」
「返事が遅い! ちびすけ、罰として腕立て伏せ十回だ」
「イエッサー、教官」
「貴様は目上の者を敬う事も知らんのか、教官、どの、だ。 さらに追加で二十回だ」
「こ、ここでですか? 教官、どの」
「答えはイエスだ。 ちびすけ、貴様のせいで全体の訓練が遅れるではないか!さらに追加の罰で三十回だ」
「イエッサー」
「声が小さい!」
「サー、イエッサー!」
「次に貴様、名前は何という?」
「イエッサー、わた、いえ、自分はバーミヤンと申します。ご存知の筈では?」
「貴様、上官に対してなんだその口の利き方は! 言われた事にだけ答えろ、いいな」
「イエッサー!」
「貴様も罰を与える、腕立て伏せ十回だ」
「イエッサー!」
「よし、次は貴様だ、名を名乗れ!」
「イエッサー! 教官殿、ビームスと申します」
「教官殿は余計だ、簡潔に述べよ。 貴様も腕立て伏せ十回だ」
「イエッサー」
こうして、一通り最初の洗礼が終わると、全員に支給品を配る事になる。
そう、靴から訓練着の一セットだ。 下着までも用意され、下着だけは三着あるが、その代わりに、身につけているものから、一切合切没収となる、これらは終わった後には、返す予定だが、砦村や今まで住んでいたころを思い出させない為である。
全員に、この二週間の訓練が終わるまで、この場所に住み込んで貰う為に、出入りも一切禁止だ。外壁には、かづきが、今までため込んでいた、魔力を充填した魔石が埋め込んであり、障壁が張ってあるので逃げ出す事は難しいだろう。
この集まったメンバーから、二人づつを選んでパートナーにする。更に、このパートナーを三組集めて、六人小隊の編成にする予定だ。 この六人小隊が、一つの部屋に住む訳だが、全て無作為に選ぶ予定である。
全部で二四名居るので、四つの小隊が出来る事になるが、中には魔力に優れているものも混じっているので、これについては均等に分けるものとする。 この者ら全員については、適性検査を行っている訳では無いので、クラークの着眼点に期待するものである。
支給品については、一切を支給しているのだが、紛失は一切許されない事は申し渡してある。 無くせば、全体責任として処罰の対象になる。 装備品は次の通りだ。
下着上下三枚、特殊ブーツ一足、ズボン本、ベルト一本、上着二着、キャップ、収納袋一他備品一式(タオルや歯ブラシなど)
武器:剣一本、風筒銃一丁、風筒銃用ダーツ10本、ナイフ一本
防具:盾一枚、革鎧一着、脛当て一足、肘当て一対、ヘルム一頭、皮手袋一対、ヤッケ一着
武器は真鍮製で刃は付いていないものが支給されるが、体の大きさがある為に、長剣と中剣のどちらかを選んでもらい特訓に使う。 真鍮製にしているのは、比較的金属が丈夫で柔らかく、手入れを怠ると直ぐ曇るので、手入れの有無が一目瞭然だからである。
なお、訓練が終わればこの練習用の武器は回収される。 卒業すれば、新たに刃の入れられた新品の武器などが支給されるが今は内緒である。 風筒銃は空気圧でダーツを飛ばす吹き矢の応用だが、小動物などには強力な武器である。 銃のように持ち手があり、ダーツが五本入る回転式のシリンダーが付けられるようにした。
鍛冶屋のガスドに、クロスボウの依頼をしていたが、多忙な事もあり木工職人に、筒作りの旨い奴がいたのをヒントにした訳だ。 クロスボウは殺傷力は高いが、飛距離も無く次の打ち出す準備にも、弓を引くのにも時間が掛かる。 吹き矢方式であれば、空気圧で威力は増やせるのだから、問題はあるまい。
使いよさにも重点を置いて五十㎝の長さにしたのだが、筒の先にカートリッジ式で筒を長く伸ばす事で、飛距離も出せるようにしている。 この為に盾にも工夫がなされているのだ。 これらの配給が終わると、これから施設の建物内へ行き、着替えが終わると早速の訓練開始の運びとなる予定である。
「よし! 貴様等、支給品を受け取ったら、部屋で着替え準備しろ、ベルミ教官!」
「へい、おめぇら、この壁に張り出してるのが、てめぇらの部屋割りだ。 用意が出来たらそのまま部屋で待機していろ、いいな」
「はっ!――――」「タッタッタッ――」
「しっかし、ボスはてぇしたもんだな」
「ベルミ、お前は教官として、学んでもらわきゃならないんだぞ」
「へぇ、すんません」
「口の利き方がなっちゃいないな、お前も参加させるぞ?」
「はっ! ボスお許しを」
「このキャンプでは、教官と呼べ。 クロサワ教官だ、いいな。ベルミ教官!」
「はっ! クロサワ教官殿」
「あ、あのぉ、クロサワきょうかん? どの」
「ハハハ、モモは人前だけ、訂正を取り繕ってくれればいいさ」
「えっと・・・おにぃちゃん教官どの?」
「いつものように、おにぃちゃんでいいよモモ」
「へへっ、おにぃちゃん♪」
「モモは、これから昼までタイムキーパー兼、俺の補佐をしてくれ」
「はーい」
「ベルミは俺について、教官の職務を学べ! いいな」
「はっ! クロサワ教官」
「じゃ、今から各部屋へ行くからな」
訓練生全員は全部で24名、これを六名ずつに分けて部屋に入れているが、このうち約二名は魔力の資質に長けている連中だ。訓練の際には体を使わない講義をやる予定があるので、この際には訳て講義を受けてもらう訳だ。さらにこの中で二名づつパートナーになって貰う訳だが、その意味は教えていない。訓練の最中で、その重要性を知ってもらえればいいとかづきは思っていた。
建物は突貫工事で、作って貰った。なにぶん初めての試みである事は、かづきにとっても変わらないものなので、その辺は適当である。ただ訓練生の管理を行う利便性で、部屋は二階の四部屋である。 判別の為に部屋は色分けで区別されており、手前から順に白隊班、赤隊班、黄隊班、緑隊班としてある。
「よし、先ずは白隊班からだ!」
「へい! クロサワ教官」
「えっとー、了解ですぅ、クロサワきょうかん」
「トントン、入るぞ」
「ハッ!―—」
部屋内には二段ベッドが三つあり、机といすもそのベッドの脇に一つづつ設置されている。支給品を受け取って着替えた訓練生たちは、各自自分のベッドの前で直立不動の態勢を取っているだけなのだが、先程のやり取りを目の当たりにしているだけあって、皆戦々恐々である。 早速ここはベラミにやらせてみる事にした。
「てめぇ等が二段式ベッドを共有している相手をよく見ろ、それがお前達のパートナーだ。更にこの部屋の六人は班として訓練を行って貰う。成績は、班ごとの成績を持って行われるので頑張る事だ」
「べ、ベラミ隊長?どの」
「ここでは、てめーらの教官だ。ベラミ教官と呼べ」
「は、はっ」
「返事はサーだ。もう忘れちまったのか? ビームス、罰として腕立て伏せ十回だ」
「い、イエスサー」
「ビームスのパートナーはどいつだ?」
「自分でありますンガ、ベルミ教官殿」
「小熊族のボピか、貴様も同罪だ、腕立て伏せ十回」
「イエッサーンが」
「次、何か質問はあるか?」
「へぇ、パートナーとは、どんなもんですろ? ベルミ教官どの」
「貴様は魚人族だな」
「へぃ、デゴブといいますらヨ」
「返事は、イエッサーのみだと言ったろう? 貴様も腕立て伏せ十回だ」
「い、いえっさ」
「てめーら良く聞け! パートナーとは相棒だ、それ以上は自分で見極めろ!」
「イエスサー!――」
「他に聞きてぇことは?」
「はっ、これからの予定ですが」
「てめーはバーミヤンの弟だったな」
「ハッ! ベスクドです。教官殿」
「明日からの予定は、追って指示する。 お前達はそれに従うだけだ」
「イエスサー」
「次、ズグロウ、狼族のおめぇは体力が余ってそうだな」
「はっ、お任せ下さい、ベルミ教官殿」
「おめーはどうだ? ベスクド」
「じ、自分は己の力を信じてやるだけです」
「ふん! そうか。 貴様等ここへ持ち込んだ私物は、全て目の前のかごへ入れろ」
「イエスサー!――」
「あ、あの、母から頂いた剣もあるのですが」
「ベスクドか、全部と言ったろう? 聞こえなかったか、おめーたちの持ち込んだもの全てだ。 下着も全てだ、解ったな!」
「い、イエッサー!――」
ここで、おもむろにかづきが口を開いた。
「ああ、お前達は心配しなくていい。 持ち込んだものは回収させて貰うが、教練過程が終わったら返してやるぞ。 良く聞け! ここは訓練をする場だ。 必要なものは全て支給してあるから、不要なものは拐取させて貰う。 いいな!」
「イエスサー!――」
「それから貴様等は、一心同体だ。 つまりこの部屋の者は『白隊班』と言う訳だ。 班は小隊と同じと思ってくれて構わないぞ。 この白隊班で、他の班に負けないように訓練してくれればいい。 成績によって、更に上級のスキルを得る事になるからな。 頑張れ!」
「イエスサー!――」
「ついては、この白班のリーダを決めなくてはならんが、これはお前達の自主性を重んじる事にする。 明日までに白隊班長を決めろ、いいな」
「イエスサー!――」
「よし!てめーら、用意が出来たら、フル装備でグラウンド集合だ」
「イエスサー!――」
こうして、かづきたちは同様に各部屋を巡回して行った。 判っていた事だが、殆どがこの砦村の血縁者や縁者ばかりであるが、訓練に参加したものについては、手加減するつもりはさらさらない。 以下が隊班別の部屋割りである。
――――
【白隊班、小熊族ボピ、ビームス(クラークいとこ)、魚人族デゴブ(ダンブン次男)、ベスクド(バーミヤン弟)、狼族ズグロウ(ジュリナいとこ)、ドラウト(メイド長サウリーネ養子)
【赤隊班、犬族ベベリ、ムチン(ペンネ弟子)、アラリオ(彫金ハグネット次男)、ネコ族パル(ブルグいとこ)、イタチ族テンテン、ジャベ(ガラス職ジャスミ弟)
【黄隊班、ネコ族ブルグ、デスパイヨ(鍛冶ガスド長男)、ギズリ(機織ミルン長兄)犬族ビビル(ベベリ弟)、バルグス(元盗賊)、チップ(バルグス弟)
【緑隊班、バーミヤン、人狼族ザジオ、熊族ギルル(石工カッパー次男)、魚人族ガンダ(ダンブン三男)、コトトラ(元盗賊)、ウルグア(冒険者ダック弟)
――――
グラウンドに集まった者は、全員フル装備のいでたちである。 全員が同じ装備をしているのを見ると、まさに兵士という感じがする。 盾は左手で構えており、剣は右手で持っているが、左利きの者もいるので左側に並ぶようにしている。 これから昼までの間に歩行訓練を開始するつもりなので、班別に六人、四列に並ばせてある。
「これから、歩行訓練を行うが、新しい教官をここで紹介しよう。 『アロン教官』だ」
「ざわざわ――『へっ? ゴーレムだぜ』『歩行訓練? ここに歩けない奴がいるってぇのかよ』」
「おい! 貴様等、今喋った奴、前へ出ろ」
「・・・・・・」
「居ないのか? まぁいい、では連帯責任とする。全員、腕立て伏せ十回だ」
「・・・・・・」
「聞こえなかったようだな。 では、もう一度言おう。 全員、腕立て伏せ二十回だ」
「イエスサー!――」
「よし、お前達、改めて紹介しよう、教官のアロンだ。 言葉は喋れないが、お前達はアロン教官の動く通りに歩けばいい。 但しだ、全員の歩調が揃うまでは、この訓練は続けられる。 いいな!」
「イエッサー!―—」
「よし、アロン教官、先頭で歩行訓練開始するぞ、行け!」
「コー・ホー」
このゴーレムのアロンは、ミシェータが作った例のゴーレムである。 俺の言う事に聞くように設定を変えてもらい、このキャンプの手伝いをして貰う事になった。 サイズは小さく作り替えたが、コアは同じ物だ。 ついでと言っては何だが、動きをコピーさせる為には丁度良かったのである。 取り敢えずこの歩行訓練が出来る様に、前日特訓で覚えさせている。
「いいか貴様等! この笛を吹いたら、行動開始だ。 では始める」
「全体歩行用意! 白隊班から二列縦隊を組み、後に続け」
「サー、イエスサー」
ゴーレムのアロンが、かづきの合図とともに歩みを始め、それに続いて白隊班、赤隊班、黄隊班、緑隊班が続く。 このグラウンドだけは、前日に綺麗に均してトラックを作ってあるので、それに沿っての行進である。 ベルミにこの訓練の指揮を任せて、かづきはスケジュールの内容確認に大わらわであった。
ベルミ:すげーなボスは、練兵までこなしちまうんだな。
モモ:そうよ! 何でもできるんだからおにぃちゃんは。
ベルミ:お嬢ちゃんもすげぇよ。 でもよ、じゅーだっけか? あれの方がもっとすげーよな。
モモ:ベルミ教官! それは機密事項だわ。
ベルミ:おう! 解ってるぜ、どうせ喋る事は出来ねぇ誓約あるしな。




