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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
砦村編
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異世界探求伝 第五十二話 酵母完成

酵母が出来ましたので、早速やりましょう。

 いつの間にか広場にもクラークも来ており、自己紹介を済ませていたので、もう何もする事は無い。 

砦の案内も勝手にしてくれるだろう。 戦力的にこいつらは並みの身体能力では無いので、十分な戦力としては使えるだろうが、どちらかと言えば特殊任務隊である。


俺はクラークと、緊急のミーティングをこなさなければならないと感じていた。 しかしその前に、やらなければならない事があり、俺はその姿を探していたが、どうやらこの辺には居ない様だ。 ジュリナは、ワイバーンの首元に無数のヒルを吸いつかせるのに夢中なようだし、モモはクラークへの報告を先に済ませると言うので、夕食までここで別れる事にする。


俺は探し物を見つける為に、いつのも場所へと向かった。 女性は大変デリケートな生き物なので、こちらから気を使ってあげないと、後々大変な事になる事も多いのだ。 今回の獲物は、ロンガムベアとワイバーンの二頭だけの魔石しか収穫が無かったが、解体の終わって無いワイバーンは後日とし、取り敢えず一つをミシェータに差し出しておこう。


「ミシェータ、居るかい? ただいま」

誰も居ない様である。 いったいどこへ行ったのだろう。 気配を探ってみると、どうやら砦の外へ出ている様だ。 かづきは急いで砦の外へと向かったのだった。


「ミシェータ、ミク! 砦の外は危険が一杯だぞ」

「あら、お帰りなさいカヅキ、早かったのね」「おかえりなさいませ、おにぃ様」

「駄目じゃないか、警護も付けないで」


俺は直ぐに駆け寄ると、ミシェータを抱きしめて、熱い口づけを交わした。 ミクが恥ずかしそうにもじもじしているので、いつものように上へ軽く放り投げると、抱きしめて頬をスリスリしてやると、キャッキャと喜んでいた。 さすがは双子、反応は同じである。


「警護はね、危険なのよ」

ミシェータの指さす方向には、一体のゴーレムが立っており、辺りには潰された大木の幹が転がっており、難儀しているようだった。


「加減が出来ないんだな」

「そうそう、持つ事は大丈夫なんだけど、木を引っこ抜かせようとすると、ああなっちゃうのよ」

「木を切るのなら、ゴーレム用の武器を持たせれば、いいだけなんじゃない?」


「あら、それもそうだわね」

「それで、作業工程のコピーは出来る様になったのか?」

「うん、大体はできるわよ」


「ミシェータ、一つ聞いてもいいか?」

「ええ、何でも言って」

「ゴーレムじゃ無きゃいけないのかな?」


「えっ?」

「いや、土とか砂の塊がゴーレムだろ」

「当り前じゃない」


「複雑に動かす為に、コアを作ったんだよな」

「ええ、なんでそんな事今更いうのかしら」

「うーん、じゃ、例えばの話、馬車に組み込むだけで、動作可能だよな」


「あら、確かにそうね・・・カヅキの言う通りだわ」

「人型が良ければ、予め人形のようなものを作っておいて、それに搭載すれば動かす事も可能じゃないのか?」

「カヅキ・・・本当にあなたって凄いのね」


「流石です、おにぃ様」

「もう一つ、ゴーレムに作業をどうやって教え込んでいるんだ?」

「勿論命令の積み重ねで動かしているわ」


「その辺も、あまり複雑にしなくも良いんじゃないか?」

「簡単な動きしか出来なくなるわよ」

「命令によって、その動きを真似するようにすればいい」


「えっと、鍛冶屋ならその動きだけが、出来る命令にすればいいのよね」

「ああ、馬車なら車輪を動かす、停める、眼や耳に当たる機関があれば、そこを強化する事で微調整が可能だな」

「正常な動作が行えるようになって、それを固定すれば同じものを量産できるわね」


「ああ、そういう事だ」

「やってみるわ、 モモ、アロン行くわよ」

「はい、ミシェータ様」「フォー」


へぇ、アローンって言うのか、あのゴーレム・・・っていうか俺は置いてきぼりなのかい。 

頭を下げて、一人とぼとぼ帰って行くかづきの背中には、男の哀愁が漂っていた。

――――

 かづきは砦村へ戻ると、クラークの事務所に詰めかけていた。 警備隊の様子を知りたかったし、今後の育成方法についても相談したかったためだ。 話を聞く限りは、クラークが警備隊長のベルミに要所を示して、その警備をやらせているだけだと言う。 訓練内容については、特に朝練を行う以外には、あまりやっていないそうである。


「ブートキャンプでもやろうかな」

「ブートキャンプですか?」

「兵士を育てる訓練の事だ」


「はぁ、そのような事まで、御出来になるので?」

「うーん、出来るかどうかは、終わってみた過程で決めてくれ」

「何が御入用ですか?」


「まずは、離れた場所で訓練したいから、その場所と宿泊施設だな。 食事はこの訓練所へ運び込んで欲しい」 

「畏まりました。 では、地図をお出しいたします」


クラークが提示して指し示したのは、山を切り開いた農業予定地であった。 周囲は区画だけ示しているだけで、荒れ地で岩がごろごろしているそうだ。 時期的に本格的に農地に耕すのは、春まででも構わないので、その時期まで好きに使ってくれとの事なので、ここを利用させて貰う事にする。


ブートキャンプに参加するものは、全員は無理だろうと言うと、あの人狼衆もジュリナの警護は、広い意味で村の警護となる訳だから、その辺りは幾らでも言いくるめると言うので、新しくこの村へやって来たものも含めて、二四人ほどが参加できるらしい。


今後の参考にしたいからと言うので、モモを記録係として連れて行く事にした。 後は、装備の話もしたが、盾を追加して装備に加えて貰う事にした。 肘にあてがう様な細めのバックラーにしたが、バックラーの両側を開けると、扇傘状に金属板が仕込んであり、弓矢や投石をこいつで防げるようになっている。 


かづきは、人狼族の内情も詳しく説明し、少し奴らの様子を見た後に、その後の人狼達の受け入れを考えていると説明し、ジュリナの事も少し聞いてみた。 しかし、彼の口は以外にも重く、余り喋りたがらないようであったので、それ以上は聞く事はしなかった。


これ程内情を知り尽くした仲でも、言いたく無い事はあるものだったし、かづき自身もほとんど自分の事には触れていない。 誰しも、触れられたくない部分もあるものだ。 クラークの元を去ると、武器、防具を頼んでいた工房を順に巡り、その出来上がり具合を確かめると、夕食をしに食堂へと足を運ぶのであった。


俺はいつものように、ペンネの様子を見に厨房へと足を運んだが、いつもの研究所兼、厨房に居るらしいので、手慣れた場所へと足を運んだのだった。 


「やぁ、コック長ご機嫌はどうだい」

「ああ、クロサワ様お帰りなさいませ」

「何やってるんだい?」

「はぁ、実は――」


聞くと、例のパン用の酵母の発酵が落ち着いたと言うので、早速パンを試作していたのだが、あまり上手く行かないのだと言う。 俺がこのパンのイメージとして、ふわふわモチモチと比喩していたのを思い描きながら、作業を(こな)しているのだが、思うように膨らまないと言うのだ。


かづきは、綺麗に生成された白い小麦粉を分けて貰うと、早速パン作りを始めてみる事にした。 最初に作るのを何にするのか考えていたが、無性にトーストが食べたくなった。こんがり焼いて、バターを塗るだけなのだが、そのシンプルさ以上のものがある。


御飯派のかづきだったが、学生時代の朝食には良く食べていたものだったし、昔の話では、このトーストを口に(くわ)えて走りながら登校すると、意中の人と巡り合う事が出来ると、(まこと)しやかに噂されていたものだ。


「ふんふんふん♪」

「随分楽しそうですな」

「ペンネコック長、料理を美味しく作るには、たっぷりの愛情をもって楽しく作るのがコツと言うぞ」


「ハハハ、左様で、あっ! ムチンこっちだ」

「はっ、はい、クロサワ様お帰りなさいませ」

「ああ、ただいま、材料を運んでくれたのか、有難う」


「シャボンですが、厨房の皆さんや、洗濯なされる女性にもかなりの好評価ですよ」

「そうか、今は工房で作らせてるんだったな」

「はい、香料を使った石鹸も順調なようです」


「そうか、乾燥させるのに、時間が掛かるがな」

「いえ、水分を抜くのには、魔法を使っていますので」

「おお、その手があったな」


「試作品は、ミシェータ様の元に御座いますよ」

「そっか、ご苦労後で使ってみよう」

「はい、それで、バターとミルク、白小麦粉、白岩塩でよかったのですね」


「ああ、後色の付いていない粉砂糖が欲しいものだが、無いんだよな。 水飴で代用するかな」

「はぁ、固形のものは真っ黒ですから、使えないですよね」

「何!? サトウキビがあるのか」


「はい、クロサワ様、チクトウという南の国から輸入されていますが、真っ黒ですので、煮込み料理や色の濃い菓子に使われております」


かづきは、現物を見せてもらってかじってみたが、これは間違いない黒糖だった。 石のような黒に近い茶色であったが、この味は紛れも無いあの黒砂糖だ。 はやる心を抑えきれすに、ツボごと収納に入れてみるかづきだった。


『ストレージ・イン』

「クロサワ様、いったい何を?」

『ストレージ・ドロップ・上白糖』


ペンネの言葉には返答せず、上白糖をイメージしながら取り出すと、そこには真っ白な砂糖の塊が手の平に乗っていた。

「やったぁ! やったぞペンネ、ムチン」


二人はあっけらかんとして見ていたが、ペンネはその利用性に無限の広がりを、直ぐに感じていた。 二人で抱き合うさまを、ムチンはポカンとして見ていたが、かづきが手を差し出すと、一緒に抱き合って喜んでくれていた。


「して、クロサワ様、どのようにして、このような穢れを知らぬような砂糖になるのですか?」

「済まないペンネ、上手く説明できないが、今の所これが出来るのは俺だけみたいだ」


その言葉を聞くと、先程とは打って変わって、ペンネの顔が暗くなって行くのだったが、俺があるだけ白砂糖に変えてやるからと(なだ)めてやると、少しは元気を取り戻した様だ。 


白糖を取り出して残った黒い廃蜜は、それなりの用途があり、ウスターソースなどの色付けや肥料に使えるからと、ペンネに言っておいた。 石鹸作りにも使えるので、美顔石鹸として売り出せるだろう。 


こうして、材料が全て出尽くしたので、早速食パンの臨時講習会である。 今回は、女性陣にも覚えて欲しかったので、イヤーカフで一応声を掛けておいた。  


材料を混ぜ合わせて行くが、レシピを完全に再現できると言う訳では無い。 しかし、パン作りの肝は、温度管理が重要で、酵母に上手く糖分を食わせてやる事が出来たなら、おのずと膨らむので、比較的楽なのである。


ボウルの中で、材料たちをさっくり混ぜ合わせると、耳たぶの硬さになるまで生地を練り、石板に生地を置いて引きが強くなるまで丹念に捏ねていくと、うすく生地が伸び始めて薄い膜が出来上がった。 これをボウルに移して濡れた布を被せると、一次発酵の開始である。


ペンネには発酵時間を含めて、注意事項を細かく説明しながらの作業だったが、俺は時間も惜しかったので、会話をしながら魔法で生地を温めながら、その発酵時間をおし進めていた。


気が付くと、いつの間にかモモが俺の傍らに居て、レシピを書き写している。 俺が夢中で気が付けなかったのは解るが、恐るべしニャンコだ。


「モモ、いつの間に?」

「今だよ、おにぃちゃん」

「モモ、語尾にニャンって付けてくれないかな?」


「やだ!」

「ふーん、じゃぁミクに頼むからいいや」

「えっ! い、嫌だけどわかったニャン」


「おぉ、かわええのぉ」

「きゃっ! おにぃちゃんだめニャン、人が見てるニャン」


一しきり、頬ずりしてモフモフを堪能していたら、手がおろそかになっていた事に気が付いた。 発酵進めてたんだっけ、見るとムチンが代わりにやってくれていた。 温めるだけなので、魔力の消費も大した事は無いから、任せる事にする。


ついでに、便利そうな調理器具も、いくつか書き貯めしておいたので、それもペンネに渡しながら説明する事にする。 時間は有効に活用しないとな、と思い描いていたら女性陣も次々顔を出して来た。


「カヅキ、パン作るの?」「白いパンでしたわよね」「おにぃ様、楽しみでしたわ」

「ああ、今やっている所だ」


一次発酵が終わると、充分に生地が膨らんでおり、順調そのものだった。 女性陣も全員揃ったことだし、次の工程に移るとする。


ガス抜きが終わり、再発酵を促すと見る見るうちに、大きく膨らんで行く。 この待ち時間の間に、ジュリナはヒルを使った、クスリの効能や薬効も説明してくれた。 ミシェータも理解力が早く、俺のイメージしたコアの製作に当たっているらしい。 ミクはモモと相談しながら、人型のゴーレムの製作中なのだそうだ。 順調なようで何よりである。




ミシェータ:楽しみだわ、白いパンが食べられるのよね。

ジュリナ:うん、たぶん

ミシェータ:白いパンなんて、王都以来かしらね。

ジュリナ:そうね、王城での晩餐会のパンは美味しかったわ。

ミシェータ:学園の近くのサロンでも出していたわよ。

ジュリナ:知ってるわ、でも、あそこは貴女の縄張りだったもの。

ミシェータ:ふふっ、今じゃ考えられない位の仲良しよね。

ジュリナ:ハハッ、きっと同窓の仲間達は、驚くでしょうね。

ミシェータ:うふふっ♪

ジュリナ:ふふっ♪

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