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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
砦村編
51/172

異世界探求伝 第五十話 伝説の白巫女

この、異世界探求伝も第五十話の節目を迎える事が出来ました。

これも、ひとえに皆様のご愛読の賜物です。

これからも一つ、この異世界探求伝、何卒よろしくお願い申し上げます。

作者:勘乃覚


「キャッ、な、なに!?」 

ジュリナの、とても熱いコンフィデンシャルを終えたかずきは、テント内に防具を丁寧に並べていた。 しかし、先に外へ出たジュリナの途切れた悲鳴に、大慌てで外へ出るのであった。


「何事かっ!」


外に出てみると、ジュリナの足元へとひれ伏した人狼達の姿が見えた。 そばにいた小隊長のバーミヤンに、顔を向けると彼は何も言わず、そのまま首を横に振るのみであった。 モモも銃を構えたままであったが、顔をニヤ付かせながら、ジュリナの方を眺めているだけだ。


俺は、無防備のジュリナの横へ立つと、話を聞く為に人狼のリーダーの男、ヤズリオ・ライトに声を掛けたのであった。


「ヤズリオよ、ジュリナが驚いている。 状況を説明せよ」

「はっ! 我ら人狼族「牙」は話し合いの結果、白狼様にお仕えする事に相成りました」

「白狼様ってぇのは、つまりジュリナの事なのかな?」


「左様に御座います」

「確証は?」

「そのお姿で御座います。 人狼族には長年に伝承の中に、人狼の守り神に仕える白巫女の伝承がございます」


「白い狼族なら、他にも居そうだが」

「いえ、人狼族にとって白は、遺伝によるものではありません」

「ジュリナ、お前も人狼なのか?」


「うーん、幼い頃にお母さまから話を聞いた事があるわ。 白巫女は獣人達の道標なんだって」

「で? 人狼なのか、おまえ」

「うーん、良く解らないけど、狼族だから血筋は引いていると思う」


「白狼様、白巫女様は、ある能力をお持ちの方に限ったもので御座います。 精霊魔法を行えるのではないでしょうか?」

「うん、出来るけど?」

「おお」「うおぉ」「お~」「うお」「オオーン」


「なぁ、ヤズリオ、精霊契約って人族でも、三つ目族とか他の種族でも使えるんだろ?」

「精霊契約は使えても、獣人の精霊魔法の使い手は居ないかと存じます」

「そうなのか? ジュリナ」


「さぁ、 人前で使うなとお母さまに言われていただけだから」

「やはり、我々の思い違いでは御座いませんでしたな。 では現在ただ今を持ちまして、この五名の人狼は白狼様御付の五人衆として使えさせて頂きます」

「ははぁ」「はっ」「白狼様よろぢく」「ははぁ」


ジュリナの意思はどうなんだ! と文句の一つでも言ってやるところだったが、当のジュリナは、広角を上げて腕組みをしたうえで、腰を突き出している。 これは彼女の機嫌の良いポーズで、この様子だとかづきも反対は、とてもしずらいのである。


「ヤズリオ、話は判ったが、俺の巫女と言う概念では、その、あの、なんだな」

「処女性と言う事ですか?」


話が早く伝わるのは良い事だが、ズバリ直球過ぎる。 ほら見ろジュリナが赤く・・・なってないどころか、俺に腕組して来やがった。


「ん、まぁ、そういう事だ。 巫女には不向きなんじゃないかな?」

「問題ございません。 逆にどんどんご子孫を増やして頂きたいほどです」

「いいわ、で、どうすればいいの?」


ジュリナは、既に乗り気である。 何でも興味を(いだ)くのは良い事だが、矛盾している様で「なんでも」は良くない。 ここは、モモに同意して貰って、釘を刺しておかなければならない。


「ジュリナ、思い込みは良いが、これは人狼族の全てを背負い込むのと同じだぞ。 そんな重要な事を軽はずみな言動で決めるのは良くないと思うがな、どうだ? モモ」

「カヅキそれは大丈夫よ。 貴方が居るもの、ねぇ、モモ」


「はい! お嬢様の言う通りです。 おにぃ、カヅキ様は私たちを導いて下さいました。 そうですよね小隊の皆様方」

「はっ、ジュリナデリカお嬢様とモモ様の仰る通りで御座います」

「はっ、小隊長の仰る通り、我ら一同はカヅキ様に命を捧げる所存」


「どこまでも付いて行くガゥ」

「命尽き果てるまでもンガ」

「オスでも撫でて欲しいニャ」


うーん、俺とした事が話の流れを逆流させてしまった様だ。 こいつらが俺を尊敬してくれるのは有り難いが、そんな人間では無い。 俺が頭を悩ませていると、ジュリナは人狼達に声を発していた。


「貴方達の事は、任せなさい。 カヅキに任せておけば、心配ないわ」

「はっ! 白巫女様、御随意のままに」

「御意」「ぎょい」「ぎよい?」「御意」


「つきましては、白巫女様にお願いがございます」

「なぁに? ヤズリオ? だっけ」

「ははぁ、恩名を読んで頂けるとは、感謝感激で御座います。 しからばお頼み申しあげます。 この五人衆にする証として、精霊契約を施してはいただけないでしょうか?」


「んと? カヅキ」

「いいんじゃないか? どうせこいつらは砦村行き確定だし」

「わかったわ、貴方達に誓約魔法を執り行います。 まずは名前を言いなさい。 但し、虚偽の名は罰が下りるわよ」


「はっ! 有り難き幸せヤズリオ・ライトにございます」

「白巫女様、ジビエ・マーズと申します」

「御光栄の至りです。 ズルカ・マーズと言います」


「ユゾウス・ライトです。 白巫女様」

「おいら、ザジオ・マーズです。 白巫女様、何があっても必ず、おいらが守り抜きます」

「わかったわ、早速用意を始めるわよ」


ジュリナは、テントに戻ると、何やら準備を始めた様だ。 前見た時は、その場でチャッチャッチャと契約書に書いていた様だが、何か特別な準備が必要なのだろうか。 この待ち時間の間に、俺は疑問を色々投げ掛けて見る事にした。


「まずは、自己紹介だ。 俺は砦村の責任者で、カヅキ・クロサワと言う。 名前は好きに呼んでくれて構わないぞ。 君達五人の身の安全は保障する。 えっと獣人様の名に於いてだったか、とにかく奴隷扱いなどは無いから安心してくれ」

「ははっ」


「ジュリナの用意が整うまで、少し君たちの事を知っておきたい。 質問に答えられなければ、無理強いはしないので、答えられる事だけ答えてくれ」

「畏まりました、クロサワ様」


「君たちのセカンドネームかな? ライトとマーズだが、外見で分けられてるのか?」

「はっ、左様です。 狼に近ければマーズ、人族に近ければライト、厳密に言えばライト・マーズとなります」


「解った。 次に能力だが教えられるのか?」

「能力につきましては、基本的に満月に近ければ近いほど、その身体能力が上がります」

「一人、違った能力を見たのだが?」


「ザジオ、これへ」

「ヤズリオ、やだよ」

「クロサワ様に申し上げなさい。 信頼には信頼で返すのが人狼の本質だろう?」


「ちぇ、わーったよ。 おいらだけが持ってる特殊な能力さ」

「詳しく申しなさい」

「はぁー、見ての通り、おいらは昔からちびっこくて、仲間内でも弱いもん扱いだったさ。 でもある時、長老様から、熱意と真摯な態度で心から獣人様に願えば、困難な願いでも成就すると諭されたんだ。 そいでもって、体を大きくして貰おうと、お供えしちゃあそいつを食ってたんだ」


「願って食ったら、大きくなったのか?」

「ちゃうわい! この、なんて言うか、体の中に気力が満ちて来て、そして体内にそれを摂り込むんだ」

「クロカワ様、説明が不十分ですが、我々の間でも良く解っておりませんので」


「うん、そうだろうな。 俺は何となく解ったぞ」

「へっ? そうなのか、にいちゃん」

「これ! クロサワ様、とお呼びしろ」


「いいさ、気にしてない。 で、坊主、いや失礼ザジオだったな、その(みなぎ)った力を骨と筋肉にしたんだろ?」

「おっ、わかってるな。 そうさ、でもあまり大きくなりすぎると、パワーは付くが動きが鈍くなっちゃうんだ」


「うんそうだろ、それは重力の影響を受けるからな」

「じゅーりょく?」

「ああ、大きくなると、動きが鈍くなる働きが強くなって事だぞ。 でもなザジオ、それも克服は出来るぞ」


「そうなのか?」

「ああ、あの剣ももっと軽々振れるようになるさ」

「はっ! 飢狼神の剣・・・どうしようヤズリオ」


「心配するな、俺が責任もって直してやる」

「ほんとか? にぃ、いやクロサワさま」

「にいちゃんで構わなぞ、ザジオ」


「本当に直るのですか? クロサワ様」

「ああ、心配するな。 俺の大刀も自作の品だ」


俺は「セセラギ」をに抜き身にすると、青白い光が剣の周りを覆っていた。 それを眺める周囲の表情は、小隊の者も含めて息を呑んでいた。


「少し先の話になるが、君たちの部落の住処が必要なら、その用意もしてやろう」

「ほ、本当に? クロサワにいちゃん」

「ああ、その代わり働いて貰うがな。 勿論賃金も払うし、食い物も困る事は無いだろう」


「そんな夢のような話が? いや、今までのそちらの話を聞いていますが、偽りは感じませんでした」

「あれは、大袈裟な話だぞ。 そこまで力は無いが、全員で力を合わせれば、出来ない事もそんなに無いさ」

「ははっ、クロサワ様」「クロサワ様」「はっ!」「ははっ!」「おいらを強くしてくれ!」


「なるべく、君らの意に添うようにするが、出来る事と出来ない事があるから、それは判って欲しい」

「ね、ねっ! にぃちゃん、おいらを強く出来るんだよね?」

「ああ、サジオお前には素質がある。 俺が直接仕込んでやろう」


「やったぁ!」

「他の四人も同様だぞ。 希望があれば後で言ってくれ」


話に区切りが付いた所で、ジュリナの準備も出来た様だ。 見るといつの間にか巫女服を着ている。 確か服のデザインを頼まれて、モモに書いてやったものだが、いつのに作っていたのか・・・モモを見ると俺にVサインを送っているが、きっとこいつら全員分作っているのだろう。


『精霊王の名の元に此の書に記した者らよ・汝が誓約に基づいた契約を順守する事を誓従せしもの也』

『コントラクト!』


いつもの事ながら、呪印というか光り輝く魔方陣が、頭の中へと吸い込まれて行く様は、先程の話を聞いたからではないが、厳粛(げんしゅく)さを感じるものだが、巫女服のせいでもあるような気がする。


俺は全員を集めて、明日の予定を説明する事にする。 人狼族の「飢狼衆」には初めての事だろうから、詳しく説明しようとしたら、良く知っている場所だと言うので、明日は先行して任せる事にする。 但し訓練を兼ねているので、魔物を見つけたら小隊に任せる様にと、言って聞かせておいた。


やる事も特にないので、寝ようとすると、飢狼衆がジュリナの警備をすると言う。 まぁ制約も済ませているし、問題無いと判断して、無理はするなと言っておいた。


テントの中には軽く香を焚いておいた。 実際は煙の臭いの良い香木なのだが、これも香道ではちゃんとしたお香である。 ジュリナとモモの三人で寝るので、匂いがきつ過ぎないように、軽めで消しておいた。 官能の匂いのする中では、モモが寝にくいとのかづきの気を効かせた行動である。


モモはこんな時でしか、一緒に寝てやれないせいか、べったりと俺にくっついて来るし、ジュリナはジュリナで、俺の胸もとに頭を乗せている。 大好きな不たちの仕草も嫌では無いが、どうにもこうにも、あまりこういった事は慣れていないのである。


そのうち、ジュリナのお陰で疲れていたのか、気が付いたら朝がやって来たらしい。 俺にしては珍しい事だが、真っ暗な洞窟の中では致し方あるまい。 起きたらモモが、干し肉と野菜を使ってスープを作っていた。 


モモがこの間のヨーグルトを、作ってくれとおねだりして来たので、拒否する訳もなく人数分作っておいた。パンを温めたら全員で朝食を囲む事にする。 人数が多いので、お代わり用のパンも、ダッチオーブンに詰め込んで温める事にした。


「好きなだけ食ってもいいが、直ぐに移動するから、程々にしとけよ」

「にぃちゃん・・・おれ少し多めに食ってもいいかな?」

「ああ、そっか、ザジオは沢山食わないとな。 肉でも焼くか?」


「おっ! さすがクロサワ兄ちゃん、話が分かるぜ」

「よし、他にも欲しい奴はいるか? 居るなら焼くぞ」

「はいはいはい! ハイは一回だ、ジュリナ」


狼の種族は得てして大食いの様だ。 他の奴らも遠慮がちなようなので、大目に焼いておくとする。 熊、というかロンガムベアの肉は、恐らくステーキには向いていないようなので、デァホーンの肉を焼く事にする。 これは前回の冒険の時に、戦った時の物で鹿肉なので、肉質が柔らかく脂肪分も少ないヘルシー肉だ。


この時の為に、網目の鉄板を作らせておいて良かった。 油分を鉄板が受け止めてくれるので、良い感じに均一に焼けるのだ。 ついでに生レバーも切って出しておいた。 俺は切ったパンを(くわ)えながら、次々と肉を焼いて行く。 焼いた後少し休ませるのがコツなのだ。 上手く行くと切り口は綺麗なピンク色に染まっている。


「ちょっとちょっと、おにぃちゃん、焼き過ぎよ」

「大丈夫だモモ、俺の収納袋には、焼きたてのまま入れられるぞ」

「いや、そうじゃ無いってば」


モモに後ろ指を指されて、ゆっくり後ろを振る剥くと、苦しそうに全員が転がっている。 無事なの者は、ジュリナとザジオだけのようである。 聞くと、俺がわざわざ焼いたのだから、失礼に当たると思って、食べていたそうだ。 収納袋の事を説明しながら、転がっている連中に俺は陳謝していた。





ジュリナ:ふふーん♪

モモ:お嬢様、やけにご機嫌がおよろしいのですね。

ジュリナ:あら、気のせいよ。

モモ:あまりお調子に乗っていると、おにぃちゃんに嫌われますよ?

ジュリナ:何言ってるのかしら? この子

モモ:いたたたた、頬をつねるのはおやねくらさい。

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