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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
砦村編
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異世界探求伝 第四十九話 嵐の逃亡者

襲撃者達を無事に鎮圧した筈だったかづき達であったが、気が付いてみると

一人居ない事に気が付く、果たして奴は。

 折角捕獲した一味であったが、奴らの大将格であった奴が逃げ出してしまった。

ジュリナの意見で、追跡を任せてしまったかづきだったが、その後の検証で不可解な点が見つかってしまった。 モモの貴重な意見を参考に、考えを改めて新たな思考を(ひね)り出すかづきであった。


「おい、バーミヤン、そいつらの一人の猿ぐつわを外してくれないか。 話を聞きたい」

「はっ、して、どの奴に致しますか?」

「うーん、そうだな」


既に気が付いている奴らを一しきり見ると、目を逸らした一人に決める事にした。 眼をそむけるのは、こちらに恐れを抱いている証拠でもあり、不利益な情報を持っている事が多いのだ。


「その一番右端の、狼族だ」

「はっ」

「こっちへ連れて来い」


俺は急ごしらえの土魔法で、小さな部屋を(こしら)えた。 雰囲気を作り出すために、机を一つとその両脇に椅子を拵えておいた。 小さな灯りを灯して、取り調べは小隊長のバーミヤンに任せる事にするが、これも実地訓練のつもりだ。


「貴様の名前と種族名を述べよ」

「ふん!」

「素直に吐けば、身の安全は保障するぞ」


「けっ」

「逃げた奴の名前は?」

「さぁな」


「ドカッ!」

「いちちち、けっ! 好きなだけやりな。 けど仲間は売れねぇぜ」

「貴っ様ぁ~!」「ドカッ!ボコッ、ドン」


何度も同じ事を、聞くが意外と口が堅いようだ。 俺の見込み違いだったか。

「少し代わろう、バーミヤン」

「はっ」


「済まなかったな、手を出さちまって」

「けっ、どんな手で来ようたって、俺達の気高い誇りは失わねぇ!」

「さすが、誇り高い種族だな」


「まぁな、そこいらの獣人とは気合の入れ方が違うぜ」

「ほぉ、流石だな。 少し痛めつけたようだから、綺麗にしてやろう」


今までの会話は、俺のイヤーカフを通して、ジュリナとモモの耳にも入るようにしてある。 キーワードが二つ出て来たので、この辺を攻める必要があるだろう。 俺は狼族の男の顔を綺麗に拭いてやると、先程の串肉を出して、食べさせてあげたのだった。


「モグモグ、あんた、中々いい奴だな」

「俺は暴力など、振るうつもりは無いんだ」

「モグモグ、フグ、でも喋んねぇぜ」


「ああ、構わないさ。 でもお喋りは良いだろ?」

「ああ、あんたみてぇな強い奴と話すのは、嫌じゃねぇ」

「なんだ、さっきの訓練観てたのか」


「まあ、俺達の種族でもあんな素早い動きが出来る奴は、あんまり居ねぇからな」

「そんな事は無いだろ、お前らの高尚には叶わないぜ」

「ハハ、そうだろそうだろ」


「並みの獣人にゃ、真似できねぇからな」

「ああ、人族だって真似できねぇさ」

「へ? お前も駄目なのか? 魔法も使ってたよな、しかも無詠唱で」


「ああ、あれは仕込みがあるんだよ」

「へっ、そうなのかよ。 最初は驚いてみてたが、種明かしされちゃあガックシだぜ」

「お前らも仕込みがあるんだろ?」


「けっ、そんなもんあるかよ。 代々受け継がれて来た高潔な血筋ってもんよ」

「へぇ、じゃいつもより強くなれんだ」

「ったりめーじゃねぇか、嵐で曇って無きゃこんな事になってねぇぜ」


この言葉で決定だな、こいつらは伝説の人狼だ。 それなら対処の方法が変わってくる。 俺はこいつを縛り直して、元の場所に戻す様に説明しながら、バーミヤンに小声で情報を入れ、警備を厳重にするように言い渡した。


『「コール:ジュリナ:モモ」:聞いての通りだ。 奴らは人狼だ。 モモは銃で対応出来る様に準備しておけ、ジュリナの具合はどうだ?』

『そうねぇ、外は嵐の真っ盛りよ。 でもね、森の途中で匂いが途切れてるのよね』


『ぷっつり、途絶えたとか?』

『ええ、ごめんなさい』


 俺は思いを巡らせながら、逆の方向を魔法探知し始めた。 つまり、森とは逆方向のこの洞窟の真上だ。

土石で隔てられてはいるが、ここに来た時に崖の上も丹念に見ているから、イメージは出来た。 しばらく様子を探っていくと、崖の窪みに気配を感じた。 一度対峙しているので奴の気配はよく判るが、少し弱々しい気がする。


『「コール:ジュリナ」:目標はこの洞窟入り口から左上の窪みに潜んでるぞ』

『了解かづき、直ぐに向かいます』


さて、お次の尋問だが、人族の奴を呼ぶ事にしよう。 もう一つ同じ簡易取調室を作り、そちらにも別な奴を取り調べさせることにしたが、手出しはせずに話だけ聞くように言いつけた。 特に情報は必要ないとも付け加えておいたのだ。


さて、新たな尋問者だが、見た目はヒューマンにしか見えない。 しかし、俺の感はそうでは無い事は明白だ。 何故なら態度が同じなのだ。 特にこいつは聡明な顔つきをしているし、俺の目をじっと見据えている。 逆に情報を得てやろうという気構えなのであろう。


「さぁ、手が不自由だろうから、俺が食わせてやるぞ。 話を聞くだけだからそう、身構えるな」

「ふん! 敵からの施しなぞ受けん」

「ハハハ、敵じゃないさ。 世間話してただけさ」


「ふん!」

「人狼は腹が減るから、沢山食わなきゃな」

「!くっ、ジビエの奴が喋ったのか」


「ああ、ジビエもたらふく食ったさ。 お前も食っとけよ」

「あの野郎!」

「おいおい、俺達はお前達から襲われたから縛ってるだけだぞ? もう脅威が無いのなら、拘束する必要も無いだろ?」


「嘘を言え、俺達をこのニショルクサ王国に引き渡すつもりだろ!」

「うーん、お前達がそうして欲しいなら別だが、生憎俺はこの国の人間じゃ無いんだ」

「そんな事じゃ騙されんぞ」


「俺は、この国の国境外れに砦を構えてる、カズキ・クロサワってもんだぞ。 人狼のお前なら俺のウソが見抜けるだろ?」


奴は俺の眼をじっと見据え、深くため息をついた。

「確かにお前は、嘘を言っていない様だが、それが命の保証に繋がると思うか?」

「殺したいのならとっくに殺してるさ。 お前も見てたんだろ? さっきの特訓」


「うっ」

「お前達が変化しても、俺達には敵いっこないって訳だ」

「ジビエの奴そこまで話したのか」


「お前が奴らのリーダーだろ? 仲間を守るのも責務だぞ」

「くっ」

「高潔な種族が滅ぶのを見たいのか? おまえ」


「・・・や、ヤズリオ・ライトだ」

「そうか、ヤズリオ、今縄を解くからな」

「いいのか?」


「ああ、構わないさ。 しかし、砦村の事も知ってるんだな」

「まぁな、いつか襲うはずだった」

「いいのか? そんな事言って」


「その戦闘力で、クロサワだったか、お前に敵う奴は居ないだろう」

「そんな事は無いさ」

「ふん! 俺達の村に代々伝わって来た、伝説の剣を切った奴に謙遜は無用だ」


あちゃー、そんな大事な剣だったのか、悪い事をした。 後で直してやろう。

「悪かったな、後日で良ければ直してやるよ。 まぁ先に食ってくれ。 エールもあるぞ」

「助かる」


彼、ヤズリオ・ライトに聞く所によると、人狼は人にもなれるが狼にもなれるとして、伝説級の魔物扱いをされていると言う。 しかし、その珍重さから、昔から人に狩られる事が多かったそうだ。 人狼側からすれば、一定の時間に人間や狼になれるが、逆に言えばどっちにもなれない、コンプレックスを抱いているのだと言う。 だから思想として、高潔だとか誇り高きなどと、子供達に教えているのだそうだ。


定職にも付けないありさまだから、隠れて冒険者になるか、狩人として生計を建ててはいるが、生活範囲を狭められている為に、その暮らしは豊かでは無い。 その為に、こいつらが出稼ぎしているのだが、人殺しはしないのだそうだ。 信じて良いのかは判断の付かない所だが、お宝などは命乞いをして戴くのだそうだ。 


人殺しをすると、山狩りが行われたりするので、禁忌だそうで(さら)う事は良くあるのだと言う。 攫ってどうするのかを聞くと、口を濁していた。 はやり性処理なのかもしれない。  


一通り話を聞いてみて、俺は判断を決めた。

「ヤズリオ、お前たちは罪を犯した。 この罪は償って貰わなければならないぞ」

「ああ、そうだな、しかし、俺はどうなっても良いから、奴らの命だけは助けてはもらえまいか?」


「ん? 何を言ってるヤズリオ、俺は殺す気など無いと言ったはずだぞ」

「本当にか!? 信じて良いのか」

「ああ、その代わりしばらく、あの砦村で働いて貰う事にしよう」


「ああ、奴隷なら十分だ。 いつか開放してやってくれ」

「何を言ってるヤズリオ、奴隷扱いなどしないさ。 村人と平等に扱ってやるぞ、賃金も払う」

「馬鹿な! 貴様俺達を侮るなよ」


「ハハハ、お前の目は腐ってるのか? 俺の嘘が見破れないと言ってるのと同じだぞ」

「あ、あ・・・済まなかったクロサワ殿」

「その代わり、誓約だけはして貰うつもりだから、お前の仲間に言い聞かせてやってくれるか? 無理強いはしたくないんだ」


「解った、任せてくれ。 しかし、村では俺達を探すだろう」

「そうだな、その対策は後で相談しよう。 取り敢えず仲間をまとめてくれ」

「承知した。 このヤズリオ・ライト、獣神の名に於いてお誓い申しあげる」


あれ? 新たな単語が出て来たな。 獣人って濁らなかったよな? 獣神かぁ、いるのか? そうこうしていると、やけに外が騒がしくなって来た。 どうやらお迎えが辿り着いた様だ。


「お放しください、白狼様。 何故このような者共のお味方に付かれるのですか」

「もぅあんた、うるさ過ぎ、黙ってなさい」

「なんだ? そのちびすけは」


「さぁ、でも匂いは間違いないわ。 こいつよ」

「白狼様~、今ならまだ間に合います。 私が囮になりますので」

「おい、ヤズリオ、こいつを連れて行ってくれ。 それからバーミヤン、こいつ等の開放を頼む」


「良いのですか? クロサワ様」

「ああ、話は付いてる」

「はっ、ご命令に従います。 しかし、監視はさせて頂きます」


「ああ、好きにしろ」

「カズキ、ただいま~」

「ジュリナ、待て! そのまま待てだ」


上から下まで、びしょ濡れなジュリナに抱き着かれては、たまったものでは無い。 俺はテントまでジュリナを連れて行くと、彼女に着替える様に命じた。 


「ねぇ、カヅキ、濡れて重いから一人じゃ無理ぃ。 手伝ってぇ」

「もおっ、ちょっと待ってろジュリナ」


俺は人狼たちの元へ行き、人狼のリーダーであるヤズリオ達へ、念の為に結界を張らせてくれと話しを通す事にした。 信じていない訳では無いが、眼を離した隙にこの人数で暴れられては元も子もない。 話やすいように、風で障壁を施してもいいと言っておいた。 モモを見張りに付けているから、これで大丈夫だろう。

 

「お待たせ、ジュリナ。 おいっ!」

俺がテントの中に手を突っ込んだら、ジュリナがその手を掴んで、引っ張りこんで来たのだ。 彼女の胸に抱きとめられた俺が、顔を上げると露わになった、彼女の肢体が目に飛び込んだ。


「髪の毛を乾かしてあげるから、向こうを向いてくれ」

「ええ、でも見られないように、障壁か結界を張って」

「わかった」


俺は誰も入らないように、風障壁を張ってやった。 土の防壁をしなかったのは、何もやましい事をしてないという理由付けのみである。 俺はブラシを取り出して、彼女の髪と背中に繋がるたてがみを、綺麗にすきながら乾かして行ったのである。


「さぁ、綺麗に乾いたぞ。 下着を身に付けろ」

「ねぇ、カズキ、私の事愛してるの?」

「なんだいきなり、そりゃ愛してるさ」


「じゃなんで、あんな酷い事したの?」

「あ、え? 何の事でしょうか」

「モモから聞いたわ」


「いや、その、それはですね」

「いいわ、愛しているのなら、その証拠を見せればいいだけよ?」

  

ジュリナは、その肢体を俺に見せつけるかのように、大きく手を広げて片目をつぶって見せた。 あぁ、もう、こんな時に・・・薄いテントの外には、大勢の人がいると言うのに、全くなんてこったい。 俺は覚悟を決めて、風の障壁を強く掛け直すと、まるでクモの糸に絡められていくように、その両手の中に包み込まれて行ったのだった。

――――

俺はかなりの体力を削られていた。 そう、それは先程の戦闘や特訓でも、比類するものでは無い位であった。 しかし、逆に彼女は充実して、気力が満ち溢れているのの如く、光り輝いて見えた。


「綺麗だよ、ジュリナ」

「貴女も素敵よ、私のナイト様」


熱い抱擁を交わすと、着替えて外に出る事にした。 彼女の防具は濡れており、乾かさなければならないので、前に作った白いワンピースを、ジュリナは身に着けていた。 これは、ワンピース好きな俺の好みでもあるのだ。 あっさりしたデザインだが、要所にはレースやフリルがあしらってある。 これは前に、女性連中に約束していた代物でもあるのだ。


俺の収納袋には、便利な使い方がある。 それは一旦袋に入れると、データ処理で分離できる事があるからだ。 何でもは出来ないが、水に塗れた防具を入れて水だけ取り出す事で、乾かすのと同じ行為が出来るので、とても重宝だ。 もう防具は乾いているのだが、彼女の姿をもう少し見ていていたいので、このままにしておく事とする。

  

ジュリナ:鼻が効くあたしから、どうして逃げおうせたのか不思議だわ。

モモ:おにぃちゃんによると、一部の動物では追手から逃れる為に、自分の足跡を後方に辿って

別方向にジャンプするんだって。

ジュリナ:へぇ、待ち伏せされてたらヤバかったわ。

モモ:相手が弱ってたからその心配は無かったんだって、でも気を付けないとね。

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