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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
砦村編
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異世界探求伝 第三十九話 ものつくり

ものつくりは生きていくための必須作業です。

「んと、後は聞きたい奴はいるかな」

「おう、わしらに、大事な事がまだあるんじゃないかの」


おお、いわれてみればそうだった。 優先事項は本拠地造りだったことを、忘れそうだった。


「ああ、ゴドルボルグか、すまん。 一番大事な事が砦建築だったな」

「たのんだわい」


俺は、土魔法で簡単に固めた六角の板皿を、テーブルに重ねて置いた。 ちゃんと縁もあって、器として使用可能だが、水漏れはするものだ。


「なんだの? 皿かの」

「ああ、この六角の皿一枚は、この工房地区だ」

「うむ」


「で、この一枚は、新しくする工場予定地、で次の一枚は資材置き場とか何でもいいが」

「うむ、これをひとつのベースと考えて、繋げるのかの。 ほれ、こうして、こうやったら」

次々に、ゴドルボルグがつなぎ合わせて行くが、六角の全てがまるでパズルの様に埋まって行く。


「そうだ、さすが建築責任者だ、俺の意図を汲んでくれたな。 これをユニットと言うんだ」

「ほう、ユニットですかの」

「利点は、この並びでわかる様に、土地に無駄のない利用が出来る」


「ふむ、確かにのぉ」

「それに、増やしたい部署をこの六法体に繋げて行くだけで、ルートの確保が出来るんだ」

「ふむ、それは二階以降の建物同士にも、通路が不要になりますな」


「そうだな、だが欠点もある」

「はて、なにかの?」

「クラーク、判るか」

「はっ、クロカワ様。 内部構造が分かり易く、地図作成が簡単に御座いますな」


流石にヴァレンチノ一家の黒執事である。 俺のイメージでは彼は策略家と言うよりも、分析に優れた細かい事が得意だと思っているが、実はその代わりとなる人物が居ないのかもしれない。


「そうだ、構造が単純な為に、敵に内部を把握されやすいという事だ」

「なるほどですのぉ、しかし、クロサワ様はその対処法もあるのだの」

「まぁな、これは機密事項で、後日現場の者で対処しよう」


俺に真意が伝わったのか、ダンブンが話をうまく切ってくれた。

「ふむ、では皆の者これにて解散じゃの。 各自自分の本分へ参るが良いわい」


ダンブンの意見でこの場は解散となったが、俺にはまだまだやる事が多いのだ。 ミシェータとミクの二人は、ゴーレム開発の任を任せているのでこの場には居ないし、ジュリナも俺の言いつけで動き回って居るらしい。 俺は、秘書兼俺のサポート役であるモモと行動を共にしていた。


「モモさんや、これからの今日の予定はなんだっけ」

「うん、おにぃちゃん、鍛冶職人のガスドさんからは、新しく教えも貰った鋼鉄の鋼板を作ったから見て欲しいって」


「そうか、じゃまずガスドの鍛冶工房だな」

「うん、それからオゴハさんから、午後には水車の試作が出来るから来て欲しいって」

「おう、わかった」


「それからミルンちゃんが、糸の材料を集めて欲しいって言ってるよ。 ギルドに取り敢えず発注かけたけど、良かったよね」

「ああ、勿論いいさ。 でもミルンが機織してるとこ見たいな」


「はい、伝えておきまーす。 後、ハグネットさんが貴族用の食器の試作が出来たから、意見を聞かせて欲しいってさ」

「あぁー、彫金師だったな。 了解」


「後は――」

「おい、モモ! ちょっと待て、整理するから」

「うん、おにぃちゃん」


「今からガスドのとこに行くよ。 時間を区切ってスケジュールを組もうか」

「うん、今メモするわ」

「ガスド鋼⇒オゴハ水車⇒昼ごはん⇒ハグネット銀製品で、後は順番に工房見学で行こうか。 廻り切れない場所は、明日以降という事で頼む」


「わかったおにぃちゃん、三件は行く事で決定ね。 後は見学程度だから連絡不要だわ」

「ああ、そうか、向こうにも離せない用事があるからな。 連絡方法は?」


モモがメモを三枚書いて見せると、ここから一番近い食堂へと出向いた。

「お腹空いたのか?」

「キャハハ、違うわよー。 おにぃちゃん、これで送るの」


着いて行くと、そこは食堂内に備え付けのエアーシューターだった。

モモは自分の袋から三つのカプセルを出すと、それぞれメモを入れてエアシューターでどこかへ送っていた。


「あれ? モモ、一カ所から送ってそれぞれの部署に着くのか?」

「えぇー? おにぃちゃん、ここから事務所のシューター収集所へいくんだよ」

「ほう、そこから各工房に送るって訳か。 そこまで頭が回って無かったな」


「ソウムって部署があるんだって。 クラーク様がこの方が便利だからって言ってたよ」

「そうだな、俺が詳しく言わなくても、大丈夫だったな。 後でクラークにも礼をしないとだな」


「それで? 向こうから連絡する時はどうするんだ? モモ」

「うん、最初にクラーク様の元に要望が集まってね。 それからクラーク様から伝言が来るんだよ」


「ああ、そうか。 俺達には『イヤーカフ』があるから、相互に連絡が取り合えるんだったな」

「キャハハ、もう、おにぃちゃんって抜けてるね」

「ハハハ、すまんすまん」


モモと話しながら歩いていたら、ガスドが工房の前で手を振って待っていた。

「おう、カヅキ、もう来てくれたのか、ありがてぇな。 まずは見てくれ」


出された鋼の板は50㎝四方の板であった。 俺はたたら炊きに近い方法で粉炭を使わずに、鋼が出来る方法を教えていたのだ。 俺は日本刀にこだわりがあった為に、昔ならでわの方法をとったが、もっと簡単に鋼を作り出す事は可能なのだ。 石炭も同じ炭素で出来ているので、理屈は同じなのであるが、やり方にはコツがあった。 


大事な事は温度管理である。 鉄の融点は1300℃辺りだがそこまで行かずに、弱めで火を入れるとその温度以下の鉱物は、先に流れてしまうのだ。 これが不純物であり、ノロというやつだ。 これが含まれていると鉄は錆びやすくなり、脆く柔らかい鉄が出来てしまう訳だ。 それに土の窯で鋼を作るのにも、不純物を出し易くする理由だとも聞いていた。


ガスドには温度管理を徹底させた。 焼きの色目を教えるだけだが、さすが鍛冶の本職である。 直ぐに理解してくれたので助かった。 出来上がった鉄鋼は赤く焼けている間にプレスして板加工にしてもらった。 それに前回で、フォークの時に利用したプレス機械での代用が、きいたので助かっている。


出たノロは、鉄分が非常に少ないので武器加工には利用価値が全くない。 しかし、他の金属は入っているのでセメントに混ぜてレンガにしたり、畑の肥料くらいの使い道は残されているので、そう説明しておいた。 出来上がった鋼板は、不純物が抜かれて錆びにくい筈だろう。 現に見ると、銀色にピカピカ光り輝いており、曇り一つも無い出来だった。 


「うん、ガスド、今の所出来はいいようだな。 ヤスリを貸してくれ」

「おう、配合もチャンと纏めてあるぜ。 ほれ、ヤスリだ」


俺は鉄鋼板に鉛筆でおおよその形を書いてみた。 五十㎝の長さでは剣は無理なので、山刀を作るのだが、いわばサバイバルナイフのイメージだ。 先ずは、この板を万力で何カ所かを固定すると、俺はヤスリを持ちその手に身体強化で板を削り始めた。 鉄鋼板を半分に切り、長さ二五㎝幅七㎝にしようと考えた。 削る時は一㎝位の余裕が必要である。 



ガスド親方に作って貰った鉄鋼板で、かずきは山刀を削り出して作る事に決めた様だ。

鋼板の長さがたり無い為の措置ではあるが、ナイフは剣よりも使い出があり、使用度が高いので正解であろう。


結局、刃渡り二三㎝、幅七㎝、なかご七㎝とした。 なかごはグリップに入れる刃元の事で、握りこぶし程度の長さは必要だ。 ちなみに、刀では鍔にあたるがナイフでは「ヒルト」というが、これは後で付ける予定だ。 


基本ナイフは薙ぐ動作より、突く事に特化しているからで、これが無いと刺した時に指が前に滑って、指を切断してしまうからだ。 暫くシャカシャカ切っていたが、思ったより鋼板が硬いが、まだ焼き入れをしていないので切れる事は切れる。 「でも、楽がしたい」


「うーん」、俺は宙をむいて考え込んだが、聞く方が早いと考えて親方に聞いてみた。

「かてぇ金属か? この鋼が一番だろ、うん? 武器にゃ使えねぇが石なら、金剛石が一番かてぇな」


「おっ!ダイヤモンドか、あるんだな。 欲しいんだがな」

「うーん、石工のカッパーか、彫金やるハグネット辺りが詳しいと思うぜ」


なるほどと思いながら、直ぐにモモに連絡を入れて貰った。 すると、ハグネットから頼まれたと、使いの者がすぐにやって来たのだった。 もしかして、と思いつつダイヤモンドの存在を、期待して聞いてみたら、思いもよらぬ言葉がかづきの元へ帰って来た。


「これがクロサワ様が欲していた、金剛石の粉です」そう言いながら小さな木箱を渡された。

透明でキラキラ光ったものと、何か色の付いた岩石が混ざり合っているようだった。 俺は土魔法でそれを円盤状にすると、鋼板に鉛筆で書いていた線をそいつでなぞってみた。


「うん、うん、書ける書ける。 ガスド、今から設計図書くからベアリング作ってくれ」

「へっ?ベァ・・・」


これは、いつものかづきの悪い癖なのだ。 興奮してしまい、我を忘れて思わず口にしてしまったのだった。


「ああ、すまん、つい興奮してな。 前に鉛弾を作ったろ、あの半分の大きさで作れるか?」

「ああ、あれか、小さければ精度は落ちるかもな。 綺麗な丸でなければ直ぐに出来るが」

「いや、綺麗な丸じゃないと駄目だな」


「うーん、材料は何でる作るんだ?」

「この鋼材だが」

「うーん、 完全に溶かすにゃ相当な燃料がかかるぞ。 それに鉛玉を作る様な方法は危険だしな。 ならプレスしか方法はねぇな、それにプレスのひな型を作るのに見本も欲しいな」


俺はまたもや悩まされることになった。 言われてみれば小さな鉄球を作るには、作業方法に問題が山積している。 豆粒ほどのものを作るのに、どうやって溶けた鉄の量を計るのか、鉄ほどの融点が高いものに水分が掛かったら、大爆発を起こすのは目に見えてる。 「安直だったかな」


こんな時に両指につばを付けて、頭をなぞりながら座禅を組むと、何かの考えが浮かぶかもしれない。 「ふーむ、 ポコ、ポコ、ポコ・・・」


「おにぃちゃん、いきなり座り込んでなにやってんの?」

「うーん、少し黙ってろ、明鏡止水だ」

「め、めいきょう?しす」


かづきは、綺麗な円を作る事を考えていた。 これまでに手掛けた仕事の中に、何かのヒントはある筈だ。 そう思考を探りながら、ひたすら自分の過去を反芻(はんすう)していた。


「ビー玉作りの時は、ガラスを溶かして棒状にしてから、柔らかいうちに切って転がして丸玉を作ってたんだよな。 しかし、小さな球が作れるかな」


かづきが目を(つぶ)って、ブツブツと独り言を言っていたら、そこへ神託ならぬ、ラビ託が聞こえて来たのだった。

――――

「カヅキハ 魔法ガ 使エルノデハ」

「おっ、直のお助けはご法度じゃ無かったのか?」

「コレハ アドバイスデ 問題アリマセン」


「そうかラビ、助かるよ。 それで? 魔法って何を覚えればいい?」

「スデニ 習熟シテイマス」

「おっとー、それがヒントなわけだな。 まてよ、えーっと属性が四つあってだな・・・」


「宇宙デ 水ヲ流スト ドウナリマスカ」

「!! おっ、そっかー、重力か、液体にすれば重力で丸く出来るな。 ラビ助かった」

「イエ お役ニ 立テマシタ」


しかし、俺がグラビデを使えるのは、触ったものだけだ。 まさかドロドロに焼けた鉄の中に、手を突っ込む訳には行かない。 「さて、どうやって触らずにグラビデをかけるか」


考えは直ぐに閃いた。 「そうか、溶ける前の材料に魔法を掛ければ良いのか。 いや、ヤッパシ駄目だ、材料が浮いてしまえば、どうやって溶かす。 密閉して溶かすか? いやそれだと炉が爆発してしまう」


「ラビさんや、どうしたらいいかのう?」

「・・・・・・」返事が無い、ただの屍の様だ・・・

――――


たとえ溶かす事に成功しても、大きな球体が出来るだけだし、そこから細かく分けるのにも問題がある。 しかし、偶然できたものを利用するのも手かもしれない、見本は完成品が最低でも一つあればそれで済む。


確か、ベアリングを作る時は、焼いては居なかったはずだ。 棒状の金属をプレスでバリ取りして、研磨仕上げで最後に焼き入れに磨きだった筈である。 プレスなら大量生産可能だし、いけそうだな。


かづきの方針が定まった様だ。 黙って見ていた二人はその確信した彼のかを見て、先行きに光が差したことに安堵した。 目を開けたかづきは、ゆっくりと立ち上がり二人に指示を出した。


「俺が作りたいのは『グラインダー』と言うものなんだ。 これには『ベアリング』という小さな玉が、要るんだ。 それを作る為にプレス機を新たに作るから、その設計にかかろうと思う」

「そうか、じゃこの鋼板はどうすんだ?」


「うん、とりあえずこのまま一本武器を作るよ。 切れ味を確かめないと(はがね)生産にめどが立たないしな」

「お? こんな板で武器つくんのか」


俺はこのまま鋼の板を切って行く事に決めた。 とにかく先に進むしかないのだ。 


ジュリナ:カヅキは大変そうねぇ、でも私も大変なんだよ。

この間のキャンプので採った薬草も、下処理とか干さなきゃだし、あれも作んないとね。


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