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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
砦村編
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異世界探求伝 第三十八話 オコノミヤキ

なんかお題で、何が起こるかバレバレみたいですね。

 既に夕暮れ時を迎えており、俺はペンネの元へと歩いていた。

そこは食品加工場であり、厨房のある場所である。 十人程の働き手達が忙しそうに走り回っている。


「やぁペンネコック長」

「あ、これはクロサワ様、ご苦労様です」

「今、忙しいだろうから手短に言うが、食肉を渡したいんだが」


「ああ、それならもう調理は済みましたので、お引き取りしましょう」

そう彼が言うので、建物内の処理場へと案内され、そこで引き渡す事にした。


リストを渡すと、やはり捌ききれないと言うので、必要な分だけ渡しておいた。 熟成が必要だからと多めに引き取ってくれたのには、俺も助かったが、それでも大量に収納から出していたのを、彼はとても不思議がっていたが、俺との付き合いもそこそこあるので、何も言わず受け取ってくれたのだった。


「そう言えばクロカワ様、酵母もこちらへ運んでおりますよ」

「ああ、そうだったな、うーんと、まだ三日目かな」


「はい、専用の小さな厨房で発酵させております」

「あっ、ソースはどうなってる?」

「仕上げがございましょうから、案内いたします」


そう言いながら、五坪ほどの厨房へと案内されたら、そこは若いコックが丁度寸胴で火入れをしている最中であった。色目を見るとだいぶ黒くなってきているな。 濃い茶で理想の色具合より薄い感じでのようだ。


「良い感じだ、とろみも出てるし仕上げをやろう」

まぁ仕上げと言っても、塩と足りない香辛料を足すだけの仕事である。


「甘みが少し足りなかったので、ハチミツと塩、それに胡椒を足す事にした」

「うーん、良い感じの中濃ソースになったな、ペンネコック長、味見をしてくれ」

「はい、是非に」


レシピの追加を書き終えたペンネは、スプーンにソースを付けると香りを確かめ、そしてそれを口に運んだ。


「ほう、 塩味が酸味と甘みのバランスを綺麗に取りましたな。 酸味が効いていてそしてまろやかな甘み・・・これはトルテアや肉料理にも合いそうです」

「そうか、肉料理や揚げ物にも合うぞ、目玉焼きにもな」


俺は目玉焼きを直ぐに焼いて貰い、ソースを掛けて試食して貰った。 この場に居るのはペンネと若いコックの三人だけだが、パンもちぎって付けては試食していた。


「あっ、こ、これは、ピリ辛でとても美味しい。 ケチャップの材料に近いのに全く別のものですね。ペンネ様」

「そうだろそうだろ、わたしも同じ意見だ。 全く屋敷を直ぐに出て来て良かったわい」

「ハハハ、そりゃ良かった。 じゃ特別に一品作ってやろう」


俺は小麦の粉と卵、キャベツもどきを切ると、リザードボアのバラ肉を薄く切って貰ってから、出汁の代わりにスープをもらい、粘りのある山の芋を用意して貰った。 この材料で見る者は直ぐにお判りだろうが、他の者は見た事も無いだろうから、二人は何を作るのか全然恐恐で見守っていた。


若いコックには材料を用意し、切らせるとペンネはレシピと調理法を小まめに取っている。

「イカとかエビを入れると持って旨いそ」、そう言いながら小麦をスープで解いて、卵と山の芋を混ぜて種を作った」


「キャベコとバラ肉に、その「タネ」をいれるのですな」

「ああ、一応これは『大阪風おこのみ』だぞ」

「『オオサカフウ』と言うのですな」と、ペンネは言ったが、ネーミングがしっくりしないのでやはり言い換えた。


「『お好み焼き』が正式名称だ、今から焼くぞ」

「はい」「はっ」


俺は、熱したフライパンに、種と具を混ぜ込んだものを厚めに流して、弱火にして焼き始めた。

うーん、何故だか道頓堀の映像が浮かんで来た。 ゲリコのおっさんの走り姿も懐かしい風景だ。 

 

 丁度そんな時にジュリナから通信が入ってきた。


『:カヅキ? 今何してるのよ、夕食の時間だから食堂に来てよ。 以上』

『リプレイ:ジュリナか、今手が離せないんだ。 先に食ってていいぞ』

『:何やってるの? そこはどこよ』

『:ああ、今ペンネコック長の所で試食会やってるんだ。 先に食っていいぞ』


俺は直ぐに通信を切ると、別のフライパンでお好み焼きを若いコックに、焼き加減を教えはじめた。教えるのに夢中だから、今は話している暇も無いのだ。


「さぁ、ひっくり返すぞ」

フライ返しを鍋下に滑り込ませて、フライ返しの要領で軽やかにひっくり返すと、裏面をじっくり焼いて行く。


「ここまで来たら青のりに鰹節も欲しくなるよな」

「アオノリにカツオブシ、ですか?」

「んと、アオノリは海藻の粉で、鰹節は赤身の魚を干して熟成させたものだな」


「ふむ、干した魚を粉にした物は御座いますな」

「おお、それ、クレクレ!」


俺は、最初のお好み焼きが出来上がったので、大阪風にそのままソースと魚粉+マヨネーズを掛けて、フライ返しで切り分けるとそのままテーブルにドンと置いた。 しかし、その時この厨房のドアが勢い良く開いたのだった。


「あー、何やってんのよ」「カヅキ、一人でずるいですわ」「おにぃちゃん、しどい」「あんまりですわ」、といきなりチーム龍娘たちが、乱入してきたのだった。


「あー、もう! えっと若いコックさん、名前なんだっけ?」

「ムチンです。 クロカワ様」

「ああ、ムチン、すまんが、此奴らの分も追加だ。 今の三倍量で焼いてくれるか?」

「畏まりました。 クロカワ様」


 可愛そうなので、最初の一口はムチンの口に入れてやった。

「はっ!ハフッハフッ」

熱かったのか、目を白黒させていたが、やがて口をせわしなく動かすと、目を瞑りゆっくりと飲み込んだ。


「くっ、クロカワ様、このような美味しい物は初めて食べました」

「おお、そうかそうか、追加を焼き終ったら好きに食ってくれ。 もうレシピは覚えたろ」

「は、はっ、はい」


「キャー、うまぁ」「ふむふむ」「こ、これは、ムグムグ」「あふっ、あふっ」「おいひぃ」

あっ、俺はまだ食ってねぇのに、最初のお好み焼きは既に空だった・・・・・・ま、まぁ直ぐに焼けるからな、気にするまい。


「クロカワ様、はっきりと申しますが、これは・・・売ればかなりの儲けが期待出きますな」

「ああ、屋台で売ってもいいな。 任せるから好きに販売してくれ。 後で追加の材料ともっと旨い食べ方も教えるからな」


「はっ、有り難き幸せ、わたくしもこれでクロカワ様に貢献出来ます」

「ハハハ、ペンネも大袈裟だなぁ。 しかし、ソースをもっと作らないといけないな」

「ふむ、確かに、 マヨネーズもこのソース自体も売り物になりますな」


「いや、しばらくは売らないよ。 お好み焼きだけ売ればいい」

「ふむ、秘匿しておけば、人気爆発の相乗効果を生み出せますな」

「あー、まぁ、それはそうだけど、 それらを作る工房を先に作らないと目処が立たないだろ」


「ふむ、確かに。 急ぎゴドルボルグをひっ捕らえて参ります!」

「アハハハ、ここにもエアシュートがあるんだろ。 俺がサインするから建築許可書を作ってこいよ」

「あっ、左様ですな。 急ぎ作成させます」


てな具合いで、ソース工房も新たに出来そうだ。 ここで俺は大事な事に気が付いた。

「なぁなぁ、紙は何処で作ってるんだ?」

それに答えてくれたのは、ペンネだった。

「紙の材料は、木の皮を剥いて中の白い繊維質を砕いてから漉いておりますから、山麓の村で生産をしております」


「そうか、この村には紙職人は居なかったな」

「左様でございますな」

「じゃぁ、追加の募集だな、クラークに頼んでおこう」

「えっ? 紙もお作りに?」


ペンネは驚いていたが、この地は水量も山から流れて来るので豊富だ、山には大量の木があるし欲しいのは職人だけなのだ。


俺はミクに次の指示を出しながら、お好み焼きを頬張った。 

・・・あぁ、旨い。

 

結局、今日の晩御飯は『お好み焼き』で、お腹が一杯になってしまったので、食堂に行ってお詫びに行ったのだが、用意してくれていた食事は俺の袋へ収納しておいた。 俺の収納庫は特別製で、データ化されているので腐らないのだから安心である。


 俺達一行はミシェータの工房へ赴いた。

この工房は二階建てで、二階が泊まれる様になっているのだ。 部屋は四部屋で中も狭いのだが、寝るだけならこれで十分である。 俺はあてがわれた部屋へ入ると、モモと工作を始めた。 少し厚めの紙が欲しいと言ったら、絵を描く専用の紙を持って来てくれた。 


俺はモモに説明しながら六角柱を次々と作って行くのだった。 俺はいくつかの六角パターンを作りながら、モモにハニカム構造の良さを丁寧に教えていた。


 


 翌日、朝食を早くに済ませると、工房の親方連中を集めての研修会を開く事にする。 昨夜はモモも頑張って工作を手伝ってくれたのだ。 「鉄は熱いうちに打て」とも言うし、早いうちに対処したいものだ。


「ええ、今日は技術供与の一環として、ハニカム構造と言うものを紹介しようと思う」

「パチパチパチパチパチ」

「先ずはこれをみて欲しい」


俺は厚紙でこさえた六角柱を、いくつか出すと皆に回して貰った。 

次に厚紙に六角柱を十二個張り付けたものと、同じく円柱を張り付けたものを用意して、テーブルに置いたのだが、これはデモンストレーション用のオブジェクトだ。


「何かハチの巣みてぇだな」と総責任者で熊族の獣人、ゴドルボルグが感想を述べるが的は得ている。

「そうだな、その通りハチの巣構造だ。 これの上にまた板を乗せてサンドイッチにするぞ」


みなさん不思議そうにしているが、興味津々の様だ。 まぁ掴みはOkだろう。 次に五kの鉄のインゴットを出して見せると、すぐに手に取りゴドルボルグが反応する。


「これを上に乗せるのか? そんなのつぶれちまうわい」

「まあ、紙だからな。 ついでにそのまま載せてくれゴドルボルグ。 先ずは円柱のサンドイッチからだ」


「任せろ、ほれ」「グヂャ」

「ほれみろ、つぶれたわい」

「次、ハチの巣サンドだ」


「おう」

「ドン」

「おっ!、なんでだ? なんでつぶれねぇ」

「同じ本数の柱でも、こうして形を変えると強度が増すんだ。 これがハチの巣構造というもんだ」


俺はさらに五kのインゴットを追加して、ハチの巣サンドイッチに積み上げた。

「おお」「すごい」「十kか、すげぇな」「すげ」「これは」


「皆、見ての通りだ。 あえてこれ以上は言う事は無いが、何か質問は?」

さっと手を挙げたのは、革職人でドワーフのシューズであった。 彼はドワーフにしては細身で背が高いので、俺には普通にヒューマンにしか見えないのだ。


「はい、どうぞシューズくん」

「あ、はい、このハチの巣工法だっけか? 革職の私には余り関係の無い話かと存じますが」

うん? 言われてみればそうかもしれないな、と思いつつピピっと来たので即答してみた。


「えっと、革靴の底部分があるだろ? そうそう、かかと部分だ。 その箇所を小さめの六角柱で埋めれば丈夫で軽く出来るぞ」


「おぉー、なるほど、緩衝材(かんしょうざい)ってわけですな」

「後はグローブの拳頭部分に付けるとか、盾の内張りに補強で使うとかすると、相当軽く出来るよな。 使える部分は結構あるんじゃないか?」

「ほーぅ、ほうほう、ありますね。 確かに、うんうん」


シューズは納得してくれた様だが、 そこへゆっくりと手を挙げたのは、木工の小人族オゴハだった。

「クロサワ様ぁ、ちょっとききてぇんですが、おらたち木工職人がハチの巣ってのを使うなら、どこさに使えばいいんだべ?」


「ああ、そうだな、例えば木造の家なら柱にはもってこいだな。 壁に使えば外気熱の遮断効果があるから、補強の効果よりも断熱材だな。 金属で作れば防火材として利用出来るな。 馬車にも使えないか?」


「そうだべな、馬車内の壁回りに使えば倒れても安心だべさ、軽量化にもつながるべ」

「後はそうだな、大男用のベッドとか椅子の足を強化するのにもいいな」


これに食いついたのは、クマ獣人の兄弟のだった。

「確かにそれはいいのぉ、 わしらじゃ特注のベッドでも平気で潰しとったわい」


「そうじゃのぉ兄よ、わしのベッドの足は六本あるわい」

「ぐわっはは、わしのは八本じゃの」


変な競い合いを始めたのでスルーしておこうと、周りを見渡すと一しきり首を振るものが一人。

「どしたー? ジャスミ。 お前は硝子職人だったよな」

「あ、はい、 あたしんとこはどう考えても、用事がなさそうやんか。 そゃけん困っとるんよ」


「そうだな、壊れやすいガラスは補強の素材には不向きだしな・・・じゃぁ、デザインにしてみてはどうかな」

「あぁ、そういや、六角のガラスってみたことないわ!。 いゃー、ほんま助かるわ」

「そうだな、ガラスの材料が揃ったら、色々やってみよう。 ガラスを彫る切子ってやり方もあるしな」

「クロカワはんは、よう知ってなさるわ。 感心やで」 


「クロカワの旦那、 次はおらさたのむヨ」

「うん? ダンブンか。 お前は水回りだっけか」

「そうヨ、漁師だヨ」


「そっかー、 水周りか、漁師なら網も使うよな?」

「使うあるヨ、 でも破れやすいから二重にして編んでるヨ」

「網の形は? 四角いのか?」


「そうヨ、四角なんヨ」

「網の目を六角にすると、丈夫になるぞ。 魚の重さで伸びても元に戻り易く編めるはずだぞ」

「おらさ、そんな編み方きいたこともねぇヨ」


「ああ、そっか。 あっ、布織のミルンだっけか。 どこだ?」

「あっ、は、はひ おらすに用事だすか?」

「ああ、ミルン、お前は刺繍とか、編み込みも出来るんだろ」


「はい、おらす、やれるです」

「六角編みもやれるなら、ダンブンに教えてくれるか?」

「はい、おしえるだす。 ダンブンさあんたぁ、後でうちにくるだすよ」

「おうヨ、たのんますヨ」



 

ムチン:ゲポー 食った食った!

ペンネ:あなた食べ過ぎですよ。 料理人に満腹は厳禁です。

ムチン:へぇ、親方、いえコック長、なぜですか?

ペンネ:ふむ、それは満腹になると味覚が鈍感になり、微妙な味加減が掴めないからですよ。

ムチン:へえ、ペンネ様はオコノミヤキ5枚も食べても、まだ大丈夫なのですね。

ペンネ:んんっ、ゴホン!

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