異世界探求伝 第三十六話 砦村建設
砦村編がはじまりました。
みなさまよろしこ。
昨夜の酒場裏にやってくると、そこには待ちかねたように馬車が止まっていた。
「クラークお待たせ。 出発しよう」
「はい、良いご商談が出来た様ですね」
クラークも判っていた様だ。 お前もグルだったのかい! と思ったが、怒りは特には無い。
送迎の馬車は三台に分かれて行くそうだ。 モモとミクの双子は学校が終わり次第合流するそうだが、道は判るのかな? そんなこんなで、五時間程揺られ現地へと到着したが、成程、ここははっきり言って僻地だった。
道中は俺がこっそりと、重力魔法を掛けていたおかげか、以外に楽に馬たちが引いている。 途中で馬に休みを取らせながら、道中魔物に出会う事も無かった。
しばらくは土の街道だったが、林を抜けるとその光景は一変したのだ。 俺には山にしか見えないのだが、この程度では山とは呼ばないらしい。崖も見えるが、いわゆる峠までもこの馬車で直接行けるらしい。
所々、岩肌がむき出しになって見えているので、石材には困らないであろうと予想は出来た。 また、こうした場所には水源も多くある事を、俺は知っている。 なだらかな峠を登って行くと、開けた場所にようやく砦が見えたのだった。
門を潜ると、そこは忙しそうに働く者達の姿であった。
「皆の者、手を休めてここへ集まられよ!」
クラークの、大きな叫び声にも似た掛け声で、その場に居た人々が集められた。 その数は五十名程は居るだろう。
俺は少し小高い場所に引かれると、クラークは続けて全員に話し掛けたのだった。
「皆の者、此方におわすのがカヅキ・クロカワ様で在らせられる。 現地のご当主にご挨拶なされよ!」
「ははーーーっ」「当主様」「ご当主さま」「おねげぇします」「よろしくたのんます」
いやいや、ハハハ、どこのご隠居様だよ! 印籠効果じゃあるまいし、そんなに崇められても何も出ねぇよ。 とか、照れながら思っていると、クラークに背中を押され、俺は緊張の場へとほうり出された。
「えぇー、今ご紹介に与りました、わたくしカヅキ・クロサワと申します。 つきましては・・・」と、未だに張り詰めた気持ちが解れない俺を、強引に引き戻してくれたのはジュリナであった。
「ドン!」、「あいたっ!」、 「ワーッハ、ハッ、ハッハッハ、こりゃいいな、がははは、ワハハ」
何時もの尻蹴りが飛んで来た所で、俺は冷静に対処? する事が出来たのだった。
「んんっ、まぁそのなんだ、気さくにカヅキと呼んでくれて構わないぞ。 宜しくな皆」
「ピーッ、ピュー、ピュー、パチパチパチ、カヅキ様よろしく頼むぜ」
どうやら、口笛入りの歓声で俺は歓迎されている様だ。 後ろを見ると皆も嬉しそうにしていた。
「それから、今日から仲間でここの住人になる者達も連れて来た。 仲良くやってくれ」
「宜しく頼むぜ!、皆の衆たのんだぞ、よろしく、よー、」
「おう! 宜しくな、よろしく、なかよくね、がんばるべ」
全員の顔合わせが済むと、主だった親方を集めての顔合わせを行う事になった。
土木技師のゴドルボルグは、土魔法の専門家でマッチョで熊族の獣人だ。
漁師のダンブンは魚人族である。 水魔法が得意で堀や上下水道の工事に携わっているらしい。
大工職人のオゴハは四属性が全て使える上に手先が器用らしい小人族だ。
革職人のシューズはドワーフで大酒飲みらしい。
陶器職人のウンデルクは町で家業を継ぐつもりだったが、新技術を教えて貰えると聞いて来たそうである。
石工のカッパーも熊族出身でゴドルボルグの兄だそうだ。
硝子職人のジャスミは、女性であるが体格は良い。同じく新技術が欲しいそうだ。
鍛冶職人は、ガスドロビコフの息子の、デスパイヨを連れて来てしまっての参加だ。
元々いた鍛冶職親方はバーグハムと言い、鍛冶の仕事は二工房でやるらしい。
彫金師は、現在稼働中の工房を任されているハグネットで、細工も得意らしい。
館のコック長、ペンネが着いて来てしまったらしいので、取り敢えず食品加工の責任者に就任。
機織職人が欲しいと言ったら、農家の娘を紹介された。名前はミルンだそうだ。
王都で拾ったと言う芸術家も居た。、ゴルモスアゲイと言い絵師や彫刻も出来るらしい。
「クラークも、良くこんなに集めてくれたな。感謝するぞ」
「いえいえ、声を向こうから掛けてくれた者もおりますので」と、以外にも謙虚だ。
「ところで、警備の者が居ないのか?」と、尋ねると適当に残った者でやっているそうなので、元一味の頭目だったベルミを主任にする事にした。 元盗賊が町の皆の安全を守るとか笑えるな。
砦村にやって来た俺は、早速都市計画を進める事にした。
砦村はズナンの町から南東に位置する山深い場所である。 古い砦が周辺の丘よりも少し小高い場所で作られていた。 この丘を一旦綺麗に均して、土台を仕上げたのである。
まずは人口だが、既に移住済みの五十三名に、連れて来た十二人を含め俺達五人で人口が一気に七十名になったのだ。 先ずは各部署の責任者を集めて大まかな指示を出し、後は個別指導の手法で進む事にする。
責任者となるのは土木技師:ゴドルボルグ、上下水道管理:ダンブン、木工職人:オゴハ
革職人:シューズ、陶器職人:ウンデルク、石工:カッパー、硝子職人:ジャスミ、鍛冶職人:ガスド、
鍛冶職人:バーグハム、鋳掛彫金:ハグネット、食品加工:ペンネ、機織職人:ミルン、
芸術家:ゴルモスアゲイ、 警備責任:ベルミの各ラインナップとなった。
何はさて置き、この責任者十四名に主だった指示を与える事とするかな。
追加で魔道工作師としてミシェータを任命し、既に出来上がっていた工房に、到着して来たミクを連れて作業を始めて貰う事にした。
元一味は、一旦解体して手に職を持つものはその方面へ、残りの体力がありそうな者達を集め、クラークとベルミに警備体制を作って貰う。 食品加工のペンネには、全員の胃袋を支えて貰わなくてはいけないので、新たに五名を付けると直ちに食事作りと体制作りを頼んだ。
現在食器生産稼働中の金属食器工房ハグネット、鉛筆工房ゴルモスアゲイは戻って貰い、生産続行を進めさせる。 未だ仕事の無い機織りのミルンには、取り敢えず食事の手伝いをして貰うことにする。 土木、上下水、石工の基礎工事三人衆に居残って貰い、残りの工房主へ指示を出す。
木工職人オゴハには水車の製作を進めさせる。 図面は既に渡してあると言う事なので、どんどん作って貰おう。 同時に「規格」の製作を全員に提出させる事にする。 例えば部屋の間取りや窓枠の大きさ、ドアの大きさ等が決まって居れば、受注するだけでその部分が出来上がる。
後は簡単な取り付けののみなので素人に任せても大丈夫な訳だ。 この規格が在れば作業がずいぶん楽になるのだ。 この重要性をしっかりと頭に叩き込んで貰ったが、いまいちピンと来ないみたいだ。
硝子職人は窓やランプ、グラス製作を行っているが、品質が安定しないとの悩みがあったので、出来た製品を見つめながらアドバイスを送った。
「色がかなり緑っぽいから重金属が多いんだろう」
「色はこれ位やん。 それに製品を薄う作ると割れやすうて困ってますわ」
「原材料は?」
「はあ、鉱山から手に入る水晶の屑石を砕いて使いますわ」
「そうか、砂漠とか海は近くにあるかな」
「えっ? 砂漠ですか。 南に行けば大きな砂漠が有りまっせ」
「うーん、じゃ土魔法が得意な者を集めて、砂ゴーレムを作ってここへ運ばせろ」
「ほんで砂漠の砂を、何に使わはるんですか?」
「うん、ガラスの材料に使うから大量に頼むよ」
「へえ、ほな直ぐに手配致しまっさ」
後は他の材料だが、確か透明にするには鉛だったな。 鉛ガラスって聞くからな。 鍛冶屋に聞くと溶接に使うらしいので鉛はあったから、無い物を聞いていたら硝石は知らないのだそうだ。
うーん、硝石は爆薬の材料になるから危険なんだが、さてこの古い時代でどうやって手に入れるかな。
確か糞尿後の土に多く含まれるんだよな、と長考している時にハッと閃いた。
「ダンブンは、下水道管理もしてるんだっけか?」
「へい、やらせて頂いておりますヨん」
「えっと、前にクラークに言ったんだが、下水処理にプリアスライムも使ってるのか?」
「へい、後で案内しますヨ」
「プリアスライムに詳しい奴は居るのか?」
「へい、貧民の奴ですが、あちこちの便所を管理してる奴がおりますヨ」
「そうか、後で教えてくれ」
「へい、わかりやしたヨ」
次に鍛冶職人達のバーグハムには一枚の図面を渡した。 この男は稼働中の工房の金属板や器具を生産して貰っていた男だ。 石炭を生成して、コークスを生産する為の工場だ。 図面はこのボイラー窯を作る為の物なのだ。
「コークスを作るボイラー? へぇ? なんだこりゃ」
「ああ、バーグハム、説明しよう。 コークスは石炭より強い火力が起こせるんだ」
「ほぉ、するってえと、今より作業が早ようなるんじゃーな」
「そうだ。 その為に大量に作る必要があるんだ」
「判ったぜ、で、こん下にある溝はなんじゃあ?」
「ああ、不純物がそこから出て来るんだよ。 黒い汁なんだが木材の防腐剤や、屋根の塗料に使えるんだ。 固体で黒く残る物は、樽とか船の防水に最適だぞ。」
「へー、 そうなんやな判った、早速取り掛かんじゃ」
「石材はカッパーから調達して貰え」
「おう」
「ガスドには武器を作って貰うが、これを渡しておく」と、俺は鉄鉱石でも、程度の良い鋼が出来るコツや手法を書いた紙をガスドに渡した。
「おお、任せろ。 で、何を作るんだ」
「先ずは剣と槍を五十本、弓の鏃を五百程だ。 弓は機械仕掛けの奴を後で、設計するから出来たら送ろう」
「おぅ、任せろ」
「息子のデスパイヨには防具を作って貰う。 革職と協力してかかれ、胸、肩、腕ごとに単独パーツで作れば後で体形に合わせられるからな、そうしておいてくれ」
「はい、師匠、任せてくれ」
俺はこの場に、前回の討伐の時に集めた魔物の素材をすべて出した。 ラビホーンの皮二五枚、角が25本デアホーンの皮が一二枚、角が三一本、ロンガムベアの皮一枚、アイアンビートの甲殻一九個に頭一個、牙二本、リザードボアの皮六枚、尾六本、ウッディフログの皮一枚、これが今回の収穫である。
全員大きなテーブルに、山積みになった素材に目を見開いていた。
「良く聞け、これは全て村の財産になる。 牙などの武器素材はガスドに、皮はシューズの管理下となるが、他の職人も使うだろうから、必ず監理者の許可を貰う事」
「はい」、と声を揃えて全員が元気のいい返事をする。
「材料が欲しい時は、素材依頼書を出す事、素材管理者は許可書を発行して、その許可書を持って受け取りに行くんだ。」
「えっと、師匠、 支払いはどうやるんです?」
「ふむ、今一つ把握出来て居ない者が居る様だが、この生産現場では、基本的に書類と交換の受け渡しのみだから、金銭の受け渡しは無いぞ」
「おおーーーーーっ!」と、全員の歓声で、俺の意見が理解されているのを感じながら、そのまま話を進めた。
「この工房群の良い所は、いつでも素材の受け渡しが簡単に行えるようにする事だが、横流しや横領は厳罰にする事を言い加えておくぞ。 それから連絡や書類は、エアシュートで各自で連絡を取り合ってくれ」
「へい、ボス」「はっ、ボス」「はい、ボス」「わかったヨ、ボス」「うむ」
いつの間にボスになったんだと思いながら、次の説明をする。
「えっと、話は戻るがデスパイヨには、先ず、アイアンビートの素材で防具を作れるだけ頼む。 革職人のシューズと共同作業になると思うが、宜しくな。 まずは警備兵の分を銅、頭、小手、ブーツの二十人分セットで頼む、寸法は後でリストに纏めておく」
「ハイ師匠」「は、はっ」
「それから、この村の商品には「龍」というブランド名を付けようと思う。 既にスプーンなどの裏に刻印がある筈だ。 この名前で売り出す限りは高品質をを出して、行こうとおもってるから、製作に躓いたら、いつでも俺達に相談してくれ」
「はい」「へい」「ヨよ」「はっ」「ああ」
「クラーク、ジュリナデリカ、ミシェータ、モモ、ミク、そして俺がその窓口だ」
「へい、わかったけんど、不在の時はどうするんかのう?」と、シューズから聞かれたが、俺は後で連絡が取れる方法を考える、取り敢えずその場を取り繕った。
「それと革職人のシューズには、別件でリザードボアを使った防具を頼む。 後でリストを送るぞ」
「はっ、わかりもうした」
リザードボアで作った防具は、かづきにとっても楽しみなアイテムの一つである。 彼はそれを楽しみにしながら次の指示を出すのであった。
モモ:学校もう行きたくない。
ミク:駄目よ。 ヴァレンチノ家から学費も出して貰ってるんだから。
モモ:だってさ、おにぃちゃんといる方が勉強になるし、面白いもん
ミク:ふふっ、手は打ってあるわ。
モモ:えっ? そうなのミク。
ミク:ええ、任せておきなさい。 でも学校の課題もやるのよ。
モモ:ふぁーい




