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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
冒険編
36/172

異世界探求伝 第三十五話 シュタイナルとの取引

ひょんなことから、商工ギルドの会頭と出会ったかずきは、

裏事情を探る事にしたようだが、それは高くつくのか安くつくのやら。

 ここは商工会ギルド 俺はジュリナとミシーを連れて魔道具屋の店員補充をするべく向かったのだが、ひょんな事に変なじいさんに付きまとわれてしまった。


俺は、ジュリナとミシェータに用事は任せて、会頭のシュタイナルと話を進めた。

先程の危惧している話を包み隠さず、あえて率直にぶつけたのだ。 話し次第ではギルドとの関係は危険とみなして、距離を置かなければならないからである。

 

「ふむ そこまで見るか、しかしこれで、おまいさんが他国の間者と言う線は外れたのう」

「それは良かった」

「しかしその様子じゃと、まだ判っておらんようじゃな」


「だから聞いているんだ」

「まぁ、そんなにいきりたつな。 焦っても何も良い事は無いぞ」

「あ、あぁ、悪かったなシュタイナルさん」


「シュタインで結構、カヅキと呼ばせて貰っても良いかの?」

「ああ、勝手にしろ」

「ウハハ、勝手にさせて貰うとするか、許しも得たしな」


「早く教えろ! じじぃ」

「ウァッハハハ、ワシをじじぃ呼ばわりか」

「あぁ、済まなかった。 シュタイン」

少し興奮している自分に叱咤するかの様に、首を振り大きく息を吸ったカヅキであった。


「まぁ良い。 この国とは言わず、どの国でも政治の実権を握ってるのは誰じゃ?」

「王様? 皇帝? つまりは貴族だろ」

「左様、王侯貴族じゃ。 こやつらは血で結託しておる」


「でも名声とか英雄とか、まぁ大金を使えば貴族になれるんじゃないのか?」

「ふむ、確かに貴族にはなれるじゃろう。 しかし、それらの貴族の地位は底辺の物じゃ」

「上位貴族って奴らか」


「そうじゃ、一族の血を継いだ者にしか、実権は無いのじゃよ」

「中へ入るには、婚姻しか方法が無いんだな」

「ふむ、左様。 核心に近づいた様だの」


「ギルドの息がかかった者が、たとえ上手く近づいたとしても、その代では権力が得られないんだな」

「ふむ、更に言えば生まれた子は、既に貴族じゃ。 貴族として優雅な不便無く過ごした者に、庶民の暮らしが判ると思うか?」


「うーん、だいぶ理解が出来た。 しかし、なら何故有能な者を要所に置こうとする?」

「うむ、良い質問じゃ。 それらは(くさび)なのじゃ」

「見張り、いや違うな・・・そう、監視だな」


「うーん、ちと惜しいのう。 じゃが監視は正解じゃな。 もう一つは導き手なのじゃ」

「悪い方向に行かない様に誘導するってか?」

「そうじゃ」


「善悪は誰が判断するんだ? 種族や考え方でそれぞれの善悪は違うと思うぞ」

「そうじゃな。 だからこそ、庶民の集まりであるギルドで話し合うのだ」

「そうか、では最後に聞こうか、国がギルドと敵対したらどうするつもりだ」


「ギルドは、この国以外にも彼方此方(あちらこちら)にあるのじゃよ。 嫌なら他へ移れば良いだけの事じゃ」


ふむ、今日はだいぶ感慨深い言葉を受ける事が出来た。 恐らく今後の指針にもなるだろうと、カヅキは心に留めるのであった。


「カヅキ、話は終わったわ。 店員を手配してくれるって」

「そうか、滞納の支払いは終わったのか?」

「もう! 言わないでよ。 終わったわよ!」


「ハハハ、すまんすまん。 さて、シュタイン爺さんに頼みがあるんだが」

「ちょっ! 老師に向かって何言ってるのよ」

「カヅキ、ミシェータの言う通りよ。 老師はここの元締めでもあるのよ?」


「構わないよな? シュタイン爺さん」

「ウオッホホ、勿論じゃともカヅキ、で何の頼みじゃな?」

「ポーション作りの秘匿書があるだろ?」


「ちょっと! カヅキ危険よ」

「カヅキ、もうここは出ましょう」


二人してダッシュして来ると、両脇を挟み込むように掴みかかる。 とても慌ててるようだから、それは秘伝書と言う訳なのだろうと直ぐに察知出来た。


「お嬢様方、ここは商いの場じゃよ。 有益な取引ならば受けぬ道理も無いじゃろ。 じゃが、確かにここではまずいのう。 奥へ参ろうか」

奥へ奥へと通された我々三人は、俺達はさらに奥まった部屋ある一室へと案内されたのだった。


しかし、意外な出来事だった。 話をよくよく聞いてみると、この老人は何とギルドの会頭であると言う。 ジュリナとミシェータが知っていたような素振りなので、はめられた感はあるが、ついでに知識の充実を狙って色々聞き出す事にしたが、先程は少し興奮してしまった。 


一応俺なりには丁寧? に謝った・・・つもりである。 話は進み、俺は少しだけ触れてはいけないものに振れたらしい。 ジュリナとミシェータが慌てて引き留めたが、爺さんの考えは少しばかり違っている様だ。


「昼食には少し早いが、軽い物でも食べながら話そうかのぅ」

「コンコン」、「入れ」

「軽い食事を四人分じゃ」

「畏まりましたシュタイナル様」


メイド? と、言うよりは秘書が妥当であろう彼女は、俺達の顔も見ずに会釈して出て行った。

「少しして料理と飲み物を持って来た。

ああ、これは見た事が有る。 屋台で食べたタコスもどきである。


「食事が終わるまでは、ここには誰も近づけてはならんぞ」

「畏まりました。 シュタイナル様」

「さて、欲しい物は理解したが、それに吊り合う物は?」


「ミシェータ、販売用のエンピツを出してくれ」

「はい、カヅキ様ただいま」

『ストレージ・ドロップ』


 この辺は気が利く女、ミシェータである。

俺を主風に仕立てて、厳格さを高めてくれたのだ。 出した販売用のエンピツは半ダースの六本入り箱である。 これは筆箱代わりにもなる代物でもあるのだ。 これとは別にばら売り出来る十二本入りがある。 それから別売りのエンピツ削りであるが、これは構造が簡単な為に直ぐ出来ていた。


「紙に書く為の筆記用具です。 水にも滲んだりしませんわ」

「ふむ、これは良い。 学校にでも直ぐ使えるのぅ。 いくらで販売するつもりじゃ?」

「これは、もう流通に流し始めていますが、一本銅貨半分です」

「おぉ、その設定価格は何故じゃ?」


じじい! そこは何故そんなに安いのじゃだろうか、と聞くとこだろ、なんて考えながらも、流石商人の元締めだ、足元を見られるようなヘマはしないよな。 でも俺もしないのさ、フフフ。


「それは、じぃさんの思ってる通りだよ」

「そうか・・・ふむ、確かに水にも(にじ)まぬ」

「ミシェータ、五十箱ごと並べてくれ」


「畏まりました、カヅキ様」 

「ふむ、これは?」

「学校への寄付分です。 お受け取り下さい」


「こんなに・・・ゴホン。 ああ、助かるな、しかしカヅキ、口調が違うぞ」

「ああ、これはビジネスですから。 公私は分けなくてはなりません」

「ふん、良い心がけじゃ。 但し、この販売権だけで取引が出来るとでも?」


「ハハハ、滅相も無い。 俺が欲しいのは長い時間を掛けて作った先人の秘伝ですので。 これ位では足りません」

「ふん、まだ何かを隠しておるのか。 で? この『エンピツ』は週に何本納入可能じゃ?」

「少しお待ちを。 ジュリナ、クラークに鉛筆の生産状況の連絡を」


「あっ、は、はい、カヅキ・・・さま」

「『コール』クラーク :『クラーク、今週の鉛筆の納品数教えて』」

「うんうん・・・・・・了解」


「カヅキ様、今週は一万ニ千本の予定だそうです」

「ちょっ、ちょっと待て! 今誰と話した? 魔法? どんな魔法じゃ? いや魔道具か、その耳に付けておる、おお、それそれじゃ」

「爺さん落ち着け! まずは鉛筆の交渉だぞ」


「あ、お、ゴホン。 すまなんだ、『エンピツ』であったな」

「はい、こちらへは六千本ご用意いたしましょう」

「価格は一本いくらじゃ?」


「同じ価格でお願いします。 一本銅貨半分です」

「判った、六千本じゃな。 エンピツ削りなる物はいかほどじゃ」

「取り敢えず、三百個納品でひとつ銅貨一枚です」


「わかったぞ、判ったから、その魔道具を見せてくれ」

「はて? 何の事でしょう。 では、次の商品に移らせて頂きます」

「ミシェータ、『レディケア』を出してくれ」


「畏まりました、カヅキ様。 こちらです」

「なぁカヅキ、後生じゃから、さっきの魔道具の事を教えてくれんじゃろうか」

「じじぃ! いい加減にしろ、次の商品の案内が出来ないじゃないか。 時間が無いんだから、商品回収して帰っちまうぞ」


「あ、ああ・・・すまなんだカヅキ、続けてくれ」

「では、この商品はミシェータからの説明を」

「はい、これはですね――」


 会頭は、どうやら説明すら耳に入って居ないらしく、先程の秘書さんを呼んで貰った。

この商品は、例のリザードボアの肺から製作した『ブツ』で、つまりは生理用品である。 何故知ってるかって? それはその・・・昨夜ミシェータに事が終わってから聞き出していたのだ。 それを知って、完成品を地球で知っている俺は、部屋でさらに改良品を製作したのだ。


元盗賊から教えて貰ったやつは丸い物だったが、俺は紐の遊びを増やして長く筒状にすると、さらに吸収力を強く出来る仕様にした。 ミシェータに、その出来上がりを見せると感心して、商品に出来るとまでお墨付きを得た物なのだ。


結局、此方の商品はレシピと素材を渡す事にした。 技術は余りない物だし、男は使わないし、出来た物を買った方が早いとの判断である。 秘書に試作を渡すと、ひったくる様に奪い、会頭の耳元に素速く(ささや)いて出て行った。


親指を立てて、ミシェータにウインクしてから、まずは気に入ったのだろう。 じいさんも彼女の囁きで優れた物と判断したのだろう。 機嫌は更に良くなっていた。


「うん、素晴らしい物ばかりだったな。 まぁ満足じゃよ」

「満足? 次は見せるだけだが続きは見ますか?」

「何? さっきの魔道具か」


「さて、これをご覧頂きましょう」と、会頭の質問には答えずに、話を続ける。

「剣? 変わった剣じゃな、曲刀の様じゃが太く細いな」

俺は、皮の一部を取り出して魔力を注いで見せた。


「ふむ、程度の良いリザードボアの皮じゃな。 水を纏っておる」

「では、ご覧ください」

俺は、素早く『セセラギ』に風の魔力を流し旋風を纏わせた。


「ほう! これは見事な魔剣じゃ」

「では、切りますね。 スッ」

「す、凄い切れ味じゃ。 片手で・・・しかも力を入れた様子も無い」


シュタイン会頭は、白髪交じりの茶髪を分けながら、リザードボアの皮質も丹念に調べているようだ。

「これは我が大刀『セセラギ』と申します」

「ほうぅー、見事じゃ」

「おい、お前達のも見せてやれ」


「はい」「畏まりました、カヅキ様」

ジュリナとミシェータは、それぞれの愛刀『ヘシキリ』と『ライキリ』に魔力を通して会頭に見せつけた。

「さて、次は・・・」


「待て! その製法を教えてくれるのでは無いのか?」

「次と申していますよ。 シュタイン爺さん?」

「あ、ああ、判った。 判ったから」


話のペースは既に俺が握っている。 これは俺が過去に培って来たノウハウの一部である。 俺はゆったりと、ソファーに腰を落とすとお茶を(すす)り、次に銃を取り出して見せた。

「これは? 見た事も無い魔道具かの?」

「じぃさんは魔法使えるよな? 窓を開けて水の玉を放ってくれ」


「なにぃ? 危ないぞ。 それに町中での攻撃魔法は禁じられておる」

「危なければ上空で止めて見ろ、抑制出来るんだろ? 小さいもので構わんぞ」

「ふ、ふむ、しかしだのぅ」


「そうか、じゃお暇しよう」

「待て! この土地の所有者はわしじゃ。 所有地ならば良かろう」

「時間が無いから急いでくれ」


俺は立ち上がったついでに、窓に近づいた。

会頭は、拳大の水球を窓から宙に放ったが、制御して宙で留めている。 流石の制御力だ、水球はゆらぎもせずに、まるで水晶玉のように安定している。


「ビシュ!」

俺はすぐさま火弾を放ち、水球を消滅させて見せた。


驚いていたが、続けてに五個水球を放ち、動かして貰ったが、同じく連続して消し去って見せた。

「ビシ、ビシ、ビシ、ビシ、ビシ」

「これは凄い。 魔弾を放つ魔道具はあるが、予備動作も殆ど無いのじゃな」


「あそこの大木に枯れ葉が見えるな? 色が変わってる茶色の葉だ」

「お? あれか、うむ、あの枯れ葉がどうした?」

見ている間に、その枯れ葉が『パン』と弾けた。


「今のは風弾じゃな! まさか威力の調節も出来るのか?」

「破壊力なら、金属鎧を着てても爆死すると言えば判るな?」

「う、うむ」


俺は、銃をしまうと『レディケア』の素材渡しを頼んだ。 つまり、リザードボアの肺である。

「ふむ、下の作業場で出して貰えるかの」

「ああ、案内してくれ」と、シュタイナル会頭に申し出たが、彼は道すがら先程の話の続きをして見せた。


「カヅキ、先程の武器の事を聞いても良いかの?」

「話せる範囲でなら」

「その口調では、売り物では無いのだな」


「まぁな、こいつはどこにも売るつもりは無い。 技術も含めてな」

「では、何故見せたのじゃ!」

「抑止力、と言えば理解してくれるか?」


「・・・どこに対してか聞いても良いかの」

「敵対者全て・・・かな」

「嗅ぎ回るな、とも聞こえるが」


「まぁ、お得意様先を無くしたいのなら、好きにやって構わんぞ」

「ふむ、その様子では、手を打てる所は打ってある様子じゃな」

「潰すより活かす方が難しいからな、まあ、言える事は権力者には決して武器は売らないって事かな」


「よぉく判った。 カヅキよ、今後とも宜しく頼むぞ」

「ああ、敵対しない限りは仲良くさせて貰おう」

「では時間も無いようじゃし、あない致そう」


俺達は、商工ギルド内の作業場へと案内されると、そこへリザードボアの素材である『肺』を取り出した。

片肺だけでも、キングサイズのベッド一つ分はある。

あの盗賊団の根城の木箱をばらして、大きく作り替えた物であった。


『ストレージ・ドロップ』


取り敢えず二箱出して置いた。 鮮度に驚いていたが、先を急ぐので何も言わず退散した。 会頭が名残惜しそうに見送っていたが、砦村が出来たら誘ってやろうと心に決めた。



ミシェータ:どうかしら、わたくしの会話術は。

ジュリナ:みっ、見直したわよ。

ミシェータ:いつでも対応できるように、精進なさい。

ジュリナ:なっ! 偉そうに

ミシェータ:カヅキに恥をかかす気なの?

ジュリナ:ぐっ! わ、わかったわ。

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