異世界探求伝 第三十四話 初討伐完了
冒険ギルドで依頼書返さないとね。
完了にならないんだよね。
「ファー、今日も頑張ろう」
ベッドから起き上がった俺は、横に寝ているミシーのたれ目で可愛い顔に見入っていた。 朝起きて、隣に誰か居るのって悪くないな。 すると、どこかの部屋のドアが激しく閉められた音が聞こえて来る。
「ガシャッ!」
「ちょっとミシェータ! 何でカヅキと朝まで寝てるのよ」
「ふふーん」
「ニヤニヤしちゃって! キィー、あんただけずるいわよ」
俺は直ぐにジュリナを引き寄せて、ギュッと抱きしめてあげた。
「二人とも俺の大事な愛しい女なんだから、喧嘩はやめてくれ」
唇を寄せると同時に、熱い抱擁を見せるとミシーも抱き着いて来た。 二人に同じ様に接すると落ち着いた様だ。 赤くして上目を送る仕草がやけに可愛い。 まだ、生まれたままの姿で座っているミシーに着替える様に促すと、顔と歯を磨いて身づくろいだ。 庭へと降りて久しぶりの鍛錬である。
俺が体を良く解していると、その内に全員やって来た。
今日は魔剣の使い方を全員で練習してみる。 それぞれ魔力を通して光らせる事が出来ているが、それだけだと切れが増すだけの様だ。
「まずは、水魔法を使う様に魔力を流してみてごらん。 火魔法はこの刀には使用禁止だぞ」
「はーい」「ええ」「ほーい」「はぅ」
「で、水を具現して、それを刀身に纏わせる感じで」
魔法の世界で、普通に暮らして居るだけ全員飲み込みは早いようだ。
特にミシェータは片手で火魔法を操り、短刀で切り裂いている。 纏わせるって難しいのかな? 他の三人は刀身から、ただ水が垂れ落ちているだけのようだ。
俺は風を纏わせてみるが、風は渦をイメージする感じだ。
水球を切って見るが水滴が付いていない。 収納袋から肉の塊を出して切って見たが、肉脂も血の汚れも無い様だ。 これは行けそうだと感じ入り、更に落ち葉を巻き上げて切りつける。 だが、他の者は余り固執させてもいけないと感じて、ここは少し気分を変え、木刀でて打ち込みをやらせる。
百本程打ち込みを終えると今日の鍛錬を終わりにする。汗を流して食事を取ったら、冒険者ギルドへ向かおうとするか。
―――――
ギルドへとやって来た。 何か相当久しぶりの感があるが、まだあれから三日しか経ってはいないのだ。
「おぉ、チーム龍だっけか、この前は有難うよ」
いきなり冒険者ギルドで話しかけて来たのは、『魔物捌き』リーダーのガイヤスである。
「えっと、ガイヤスだったか。 無事で何よりだ」
「ああ、あれからは気を付けてやってるよ。 そっちはどうだい? 依頼で出ていたんだろ」
「まぁな、今から報告さ」
俺は、手を振って彼の前を通り過ぎると受付へ向かった。
「あら、お早いご帰還だこと。 そんなにわたくしに逢いたかったのかしら?」
「ハハハ、単に早く討伐が終了しただけの話ですよ」
「まぁ、ではあたくしには逢いたく無かったとでも、仰りたいのですか?」
「あ、いえ、決してそのような事は・・・」と、言いかけたら後ろから尻を蹴飛ばされた。 足癖の悪い奴らだ。
こうして、討伐依頼書を二枚出して完了した旨報告すると、そのまま検査所へと向かったのである。
俺達は討伐依頼書の内容の確認の為の、検閲を受ける為に検査所へと向かった。
ギルド内に在るのだが、ここで素材の鑑定をし、報告通りかどうかの是非を確定させる場所だ。 出て来たのは鑑定士のモーリスさんだ。 ハーフエルフらしい。
「ここに、証明部位をお願いします」と言うと、台に依頼物を置くように指示されたので、ついでに聞いてみた。
「あの、ここで剥ぎ取りとか出来ますかね?」
モーリスが素材鑑定を終えてサインをすると、隣を指で示して教えてくれた。
作業場があるあるらしく、冒険者なら自由に利用が可能らしい。 作業を終えたら道具を整理して、綺麗に元通りにするのがマナーだそうだ。
俺は獣人女子の三人に、ロンガムベアとウッディフログを渡して捌いて貰う。 ここには、作業着も置いてあり、汚れもこれで防ぐ事が出来る。やがてモーリスがやって来て、この魔物も依頼が出ていると教えてくれ、ついでに書類を作成してくれると言うので、甘えさせて貰う事にした。 ロンガムベアとウッディフログの証明部位は右耳と右手だそうだ。
ギルドの討伐依頼は『依頼取得⇒討伐⇒討伐確認⇒証明完了⇒報酬獲得』の流れである。
ギルドが半強制買取を行うのは、品質管理とその保持が目的だ。 厳しくギルド内で統制され、品質の維持が図られる。 そして厳しい管理の元で、肉や素材は商業ギルドへ送られる。
肉は卸売り業者として市場で売られ、他の場所へと流れて行く。 素材もギルド内でのセリで分配され、各地に流れて行くのだ。 ギルドが売買に関して厳しい措置を取るのは高品質の物を高値で取引 そういう事なのだそうだ。 勿論ギルド以外へ売る事も可能だが、息の掛かっていない場所へ持ち込む事は、下手をすると買い叩かれる事もある。
無論、珍重される様な珍しい物は高値で売れるだろう。
しかし罰則もあると言う。 何故罰則が設けられるのか、それはギルド以外で売られると、儲けが出ないからである事が推測出来る。 すると案の定、肉と素材の売却が求められた。
悩んだ挙句、リザードボア一頭の半分だけ肉を供出することにしょう。
ギルドの職員にご協力下さいと言われては、嫌とは言えなかった。しかし、半分とは言え一tの肉は相当な量だ。 満足そうだったので、素材はカエルの皮だけ売る事にした。
他は身内の防具に消費すると、お断りを入れたのだった。 今回の討伐数を全て口にしないで良かったとホッとした。 言えばすんなり収まっては居なかったであろうと予想されたからだ。
「初討伐ですね。 おめでとう御座います」
「有難う御座います、ミルフォードさん」
「あら? カレンでいいわよ、まずは無事で何よりです。 出来れば、素材も出来れば売って欲しかったのですが、防具も必要だとの事で今回は折れましょう。 此方は報酬の金貨が合計二三枚で御座います」
「ああ、有難うカレンさん」
「それで、カヅキさん、初依頼のお祝いはなさるのかしら?」
「いいえ、やりません」
俺はきっぱりと断りを入れて、冒険者ギルドを後にした。 カレンは不服そうな顔をしていたが、またはめられては示しが付かないのだ。 しっかし、冒険者ギルドの存在価値って何だろうな? 己を鍛えるのなら鍛錬すれば良いんだし、腕を上げたければ道場みたいな所に通えばいい。 別にギルドに頼らなくても、魔物は勝手に狩って売れば金になる。 俺はついつい考え込んでしまっていた。
それに答えてくれたのは、一人の老人であった。
どうやら声が漏れていた様だ。 ぼやきを聞かれていたらしい。
「ギルドでは、子弟制度が充実しておるんじゃよ」
「えっと、おじぃさんは何者ですか?」
「ほっほっほっ、わしは隠居の身でな、昔はギルドで名を売ったもんじゃ」
「で? ご隠居は何をなさっているんですか?」
「うん、散歩じゃが、何やらボヤキが聞こえたもんでな。 つい答えてしもうた」
「ハハハ、そうですか。 ギルドの事が詳しいんですね」
「まぁな、何か知りたければ教えて進ぜよう」
「では、さっきの子弟制度の事を少しお聞きしても?」
「ふむ」
ご隠居は、口にパイプを銜えてこちらを見据えている。 ああ、煙草の葉をよこせって言うんだな。 俺は胸ポケットから煙草を取り出し、自分の口に銜えて火を点けて見せた。 そうして、箱から一本出しながらご隠居に差し出した。 しかし、ご隠居は箱ごとそれを奪い取り、出ている一本を抜き取るとそれに火を点け、大きく息を吸い込んだ。 まだ半分は入ってたのに・・・とか思って居ると、ご隠居はこう言った。
「情報はタダでは無いからのう。 フゥー、これは紙で巻いておるのか、どこで売っておる?」
「ご隠居、情報はタダじゃないんですよね?」
「おっ、ゴホン、ゴホン。 こりゃ一本取られたわい」
「いや、一本所か箱半分取られましたが」
「ウオッホホ、冗談もいける口じゃな。 ではギルドの話をば」
「はい、お願いします」
「ギルドには、冒険者を使って素材を供給する冒険者ギルドから、それを収めて流通、販売する商業ギルドがある」
「判ります」
「そこには、あらゆる商に関する職人が居る訳だが、人材は何処にも此処にも落ちている訳じゃ無いんじゃの」
「そうですね。 そこで子弟制度で教育していると?」
「そうじゃ」
「至って普通じゃないですか? 親方が弟子を取って教えるんでしょ?」
「ふむ、では聞くが師匠は弟子を選べるが、弟子になる者は師を選べるのか?」
「まぁ、素質が認められなければ、認められないでしょう」
「素質があるかどうかは、若い者に判るじゃろうか?」
「ふむ、では職業訓練所があるのでしょうか?」
「うむ、まずまずの見識じゃ。 学校を作ってそこで教育を施しておる」
「成程、勉学と共にその者の素養と能力を見極めるのですね」
「ふむ、正解じゃ。 中々の知恵を持つ者と見える」
「それは恐縮ですが、そこには利権が見え隠れしていませんか?」
「・・・考えを聞こう」
「教育した生徒をそれぞれの能力に応じて振り分ける。 そして、その者らはそれぞれの分野で大成し、そしてその者は影響力を持つ訳です」
「ふむ、中々の慧眼じゃ。 名を聞こう」
「黒沢かづき・・・いえ、こちらはフアーストネームですから カヅキ・クロサワとなります」
「そうか・・・他国の者よ。 何か欲しかった物は見つかったか?」
「ハハハ、貴方は年齢以上に思慮深いですね。 ご心配には及びません、他国の間者であればもっとコソコソやってますよ」
「ウオッホホ、これは更に面白い。 ギルドまで付き合おう」
「てかさ、ご隠居さんは商業ギルドのお偉いさんですよね?」
「ふむ・・・これは逆にやられてしもうたわい」
「シュタイナル・アベルボ-グじゃ。 今は只の隠居なのは間違っておらぬぞ」
快調な会話が続いていたので、いつの間にか到着していたらしい。 ミシェータの声で漸く気が付いたほどだ。
「この大きな建物ですわよ」
「へー、商工ギルドなんだ」
「まぁ、ここは商人ギルド発祥の地じゃからな。 商人でも商工ギルドでも間違ってはおらぬ」
「成程ね、学校もこの中ですか?」
「いや、それは別じゃな」
「学校は屋敷の西側だわ。 おにぃ様」
「そうか、ジュリナとミシェータ二人とも通ったんだもんね」
「ええ、懐かしいわ」
「二人とも優秀じゃったな」
「えっ? えっ!・・・そうなんだ。 二人とも知ってたんだな、人が悪いぞ」
「えへへ、カヅキの事がどう評価されるかなって」
「そうそう、知りたかったしね」
「で? どなたなんだ」
「もう、良いじゃろうて」
老人はそう言うと、自分の身の内を明かしてくれた。
「商工ギルドの会頭じゃよ。 学校では理事長じゃな」
「あら、凄い人なんだ。 それじゃあ改めて宜しくお願いします」
「ウオッホホ、長い物には巻かれるのか?」
「ハハハ、ご隠居は俺を巻く事が出来ますか?」
何か、やけに意味深な雰囲気になってしまったが、別に対抗心を持って居る訳では無い。
つい性分なのか、口答えみたいに言ってしまう。 まぁ、一つの自分の悪癖なのだが、それも個性だ変える気は毛頭無いのだが。
商工ギルドを良く見て見る。
レンガ塀の建物で、漆喰で張り付けられた壁は重厚感がある。 すぐ横には広い馬車停があり、何台もの馬車を御者らしき者が世話などをしている。 木の扉を開けると丸テーブルが、周辺に散らされる様に置かれて椅子に何人もの人々が熱心に会話に励んでいる。
此方に気が付く事も無く、ある者は手にに皮を持ち、またある者は生地を褒めたたえている。
奥にはカウンターが見えるが、酒場では無いだろう受付かその類だろう。 聞くとこの場では商品の取引がなされるらしい、まぁ問屋みたいなものだからな。
素人が商売に手を出しても、買い叩かれたり騙されたりだが、ここへ持ち込めば適正価格で売る事が出来るらしい。 尤も大量の品物や珍品、貴重な品等はここでオークションに掛けられると言う。 成程、中々便利なシステムだが、国を裏から操るとかも出来そうな気がする。
底辺から育て上げて国の重要人物に仕上げて、その人材を使ってあらゆる業種から牛耳る。
そして政にまで口を出し、国を動かす。 冒険者自体はギルドが無ければ猟師と違い、傭兵に近い存在である。 強い冒険者は高価な防具を身に纏い、強力な武器を携えている。 確か、魔物が大量に出現した時や強力な魔物が現れた時には、緊急依頼が発生して強制的な召集が可能なはずだ。
かづきは、この国の概要を知る為にも、この老人と話し合わなければならない必要性を感じていた。
モモ:なんか一気におかねーもーち♪
ミク:貯金だよ、貯金!
モモ:おにぃちゃんはお金は天下の周りものだってさ。
ミク:何それ?
モモ:さぁ・・・




