異世界探求伝 第三十三話 結界と障壁
今回はお勉強回ですかね
俺は、今回の討伐報酬を頭で計算し直すと、お金に関してもう一度よく考えてみた。
報酬だから、全員貰う権利はあるんだろうが、地球なら車一台買えちゃう値段なんだよな。 浪費して来た俺が言うのも何だが、女が浪費癖を身に着けると、禄でも無い事になるのは目に見えている。 俺には悪いイメージしか、感じないのでここは黒川家の伝統の質実剛健を地で行ってみよう。 俺はそう思った。
「取り敢えず、金貨一枚ずつ渡すからそれで好きな物買って、後は預けてくれないか?」
「うん、私は良いけど?」
「若い女が、大金持って浪費する姿は醜いんだよ。 欲しい物は俺が買ってやるから言ってくれ」
「良いと思うわ。 カヅキは計算にも長けてるし、管理能力も決断力も私達より上だわ」
「今までの開発費用も武器も全部出して貰ってるし、良いのではなくて?」
「私達は、おにぃちゃんに一任するわ。 ねぇミク」
「はい、それで宜しいかと思います。 大金持って狙われるのも嫌だし」
「うん、皆すまんな、父親みたいで。 ハハハ」
「いいのよ。 私達はボスに着いて行くだけだわ」
「そう言ってくれると有り難い。 今回はリザードボアとアイアンビートの素材があるから、これでお揃いの防具を作ろうと思う」
「了解」「いいわね」「やったぁ」「うれしい」
「好みのドレスも買ってやろう」
「あらいいの?」「わーい」「うれし」
「それから、ミシェータの店どうする?」
「砦村に居を構えるのよね」
「ああ、そうなるな」
「開発も、生産拠点もそこよね」
「ああ、風呂も大きな物を作るさ。 ふふ」
「あぁー、お風呂入りたーい」「私もー」「私も」
「んと、カヅキ、お店は何か新作出す時とか、委託販売とかでやってた方が良いかもしれないわよ」
「あーっ、それもそうだな。 家賃は幾らなんだ?」
「んと・・・・・・」
「滞納してた分も言え!」
「おほほ、判っちゃうのよね。 カヅキ大好き!」
「で幾らだ」
「家賃月銀貨二枚でね・・・銀貨十枚いえ、来月分とで十二枚よ」
「そっか、金貨一枚やるから払っておけ。 それから魔道具の扱える店員も探そう」
「ああ、それなら商人ギルドで斡旋してくれるわよ」
「じゃ、明日そこにも寄ろう」
「お話の切りが良いようで、私はここでお暇させて頂きますよ」と、マウリルクが声を掛けて来た。
「ああ、済まなかったなマウリルクさん」
「いえ、今後とも言い取引を願います」
マウリルク頭取は頭を深く下げて、俺に握手を求めてくれた。
ところで、連中はどこに泊めるのだろう? 聞けば、クラークがここに居残り、見張りも兼ねて護衛をしてくれるそうだ。 二階、三階は泊まれる部屋も完備しているらしい。 俺は奴らに、クラークの指示に従っての行動を命令して酒場を後にした。 少し、肌寒くなって来たがこちらの冬は寒いのだろうか。
屋敷に入ると、さっそく着替えてサウナへと直行した。
明日も早いし疲れを取りたいのだ。 何故か俺が入ると、ジュリナが急いでやって来た。
「何だ一緒に入るか?」
「う、うん、いいでしょ? クラーク居ないし」
ああ、それでか。 と、思って居たら脱衣所がやけに騒がしい。
開けて見ると、一斉に三人がなだれ込んで来た。 お前らもか! 今日は鬼のクラークが居ないせいで、謀略無人の振る舞いらしい。 まぁ、キャンプでも一緒に入ったんだし、いいやと思いながら皆でサウナに直行する。
「おい、何で収納袋持ち歩いてんだ? ジュリナ」
「だってさ、貴方達もここで好き勝手やってたじゃない」
袋から出したのはエールの樽である。 さっきの酒場から拝借したそうだ。 あぁ、そう言えばお金払って無いや。 等と思いながら、渡された木のジョッキで乾杯! ジュリナとミシェータから両脇を固められ、モモとミクはニコニコ笑いながらその様子を見ている。 俺は指から水を出し、焼き石に水を掛ける。
「ジューーーーっ! シュー、シュー」
「きゃぁー やめて熱いぃー」「ひぇ」「ひゃっ」「あちち」
ふん! サウナはこう言うもんだぞ 柔な奴らめ。 飛んで出て行った四人を横目に暫く汗を流していた。
すると、ドン! とドアが開いたかと思ったら、冷たい水を大量にかけて来た。
「アッ、アプ、アプ、ブハァー!」
「くそう、やったなー」
俺も当然仕返ししたった。
大きめの水弾を作り、それを四個作るとドアを開けて一斉射撃だ。 勿論手加減しましたとも・・・しかし少し暴れ過ぎたらしい。 騒ぎを聞きつけて、メイド長のサウリーネが急いでやって来た。
「貴方達いい加減にしてくださいまし! クラーク様に言いつけますよ!」
「はーい、ごめんなさい」と、声を揃えて謝った。 怖いお方はもう一人居た様である。
てな訳で、怒られちまったおいら達は、いつもは水風呂の浴槽を温めて風呂にして、仲良く入ったのでした。チャンチャン! あっ、追伸だが、井戸に俺の書いていた図面を参考に、『ポンプ』が仕上がっていた。 これからは楽に水汲みが出来るだろうなと思いつつ風呂場を後にしたのであった。
風呂から上がると、香木で綺麗に歯をガシガシしてからの魔力消費開始だ。
狩りで訓練出来なかったのと、弾倉の充填もしておこう。 オーブが沢山手に入ったけど、色々大きさが微妙に違っているものだ。 多分戦闘で魔物が自分の魔力を使った後での回収だから、それでドロップのオーブは魔力が余り残っていないのかもしれない。 となると、魔物が魔物を食べる場合どうなるんだろう? 普通なら二個無いといけない筈だが、溶けて無くなるとか有りえないだろう。
まぁ初心者な俺だし、知ってる者から聞くのがこの際妥当だろう。
「ラビ先生、起きてるか?」
「ハイ カヅキ」
「魔石を持った魔物同士が戦って、喰われた方のオーブってどうなるんだ?」
「オーブハ 食ワレタ魔物ニ 魔力ト共ニ 吸収サレマス」
「で? そのオーブに何か変化はあるのか?」
「ソノ魔物ノ 魔力総量ガ 上ガッテ行キマス」
「へー、なら何個も食べたら、体内のオーブが大きくなるとか?」
「種ニヨリマスガ 進化ガ促サレル 場合ガアリマス」
「変身とかすんの?」
「種は変ワリマセン 進化シテ強力ナチカラヲ 得ル事ガ多イノデス」
「上位種みたいな感じかな」
「ハイ ソウヤッテ進化ガ 進ミマシタ」
「ほー、じゃさ、進化があれば退化もあるんだ」
「身体的ナ退化ハ 起コリマスガ 内面ノ強サノ 変化ハ知リマセン」
ふーん、少しは納得が行ったかもしれないな。 魔法の事もだが、大きい魔法が強力とは限らないのかもしれない。 リザードボアとの戦闘を思い出すと、小さな水弾だったがかなりの威力だった。あれってどうやるのかな? お風呂で調子に乗って大きな水弾出したけど、威力ほぼゼロだったしな。 魔法は創造するよりその操作の方が難しいのだと思った。
馬車に掛かった結界を初めて触って見たが、幻想的と言うか芸術的な幾何学模様と構築された魔方陣が見えたし、あれをもう少し学ばなければ先が見えてこないような気がする。 銃での土魔法も弱かったしな、魔力の強弱じゃなくてもっと何かこう・・・
「トントン、冷たい飲み物は如何ですか?」
「ああ、頂こう」
入って来たのはミシェータだった。
「ああ、丁度良かった。 魔法関係の話とかとか、色々相談があったんだ」
「あら、帰って早々、お仕事の話ですか?」
「うん、ごめんな。 銃の事もだけど魔法の事も色々聞きたくて」
「うふ、お安い御用ですわ。お任せ下さい」
「先ずは銃の話だが、土弾は威力が無さすぎる」
「あぁ、リザードボアの時ですわね。 では土魔弾は消去致しますわ」
「いや、違うんだ。 火と組み合わせて欲しい」
「火と土ですか? 土の圧力を強化してやれば、もっと硬く出来ますわよ」
「いや、岩位の硬さじゃ、リザードボアの硬さの魔物では通用はしないんだ」
「火と土ならば、それが可能と?」
「まぁな、金属の硬さを得る事が出来ると、俺は睨んでる」
「そうなんですの?」
「土って言うのは金属が含まれているんだよ。 そこを火で熱すると、土と金属が混ざり合い一つの硬い弾に出来る。 ほら、陶器の皿も土だろ?」
「あぁ、確かに。 土を焼き占めているんですわよね」
「更に詳しく言えば、おこしの理屈なんだ」
「おこし?」
「ハハハ、俺の国のお菓子なんだが、穀物と水飴で固めた物さ。 おこしの水飴が冷えて固まれば、歯が欠けそうなくらいの堅さになるんだよ」
「そんな物、食べたくないですわ」
「美味しいよ? それで陶器の焼成で溶けて鉱物が溶けて粘土の中の砂、土を包み込むと柱状結晶が生まれ始め、これが焼き物の強度をより一層強くするんだ」
「うーん、何かつかめて来たわ。 今度その『おこし』って作って見せて」
「ああ、忘れて無かったらな」
「で、土の中の成分で焼き固めて強度を増すって事でいいのね」
「そうだ、恐らくそれで四属性弾の中では、物理的攻撃で一番になるだろう」
俺の話をミシェータは、メモに記し始めていた。
「後の属性は?」
「水弾は不要だな、氷弾はそのままで良い。 火弾は風と合わせて圧縮で考えてくれ」
「火の圧縮? ですか」
「ああ、少し待ってろ」と、俺は洗面所から桶を出して来て、水を入れると実演して見せた。
「火が燃えるのは、大気が在るからなんだ」
「うん、燃焼って奴だわ」
「そこに、風を更に送り込む」と、手の平上の拳大の火魔法が、大きくなり始めた。
「ちょっ、 火事になるわよ」
「ああ、ここからだ」
俺はその火を圧縮して、小さく、そしてポンポン玉の大きさ迄の火塊にして行く。 火の色は紅色から黄色に変化して、そこから白く光り輝く火球に変化した。
「これが完成だ、どうだ?」
「すっ、凄い熱量だわ」
俺がそれを水桶に入れようとしたら、直ぐにミシェータから止められた。
「なぜ止める」
「ちょっとカヅキ! あなたここをサウナにでもするつもりなの?」
あぁ、確かに、俺は直ぐに反省したが、どうやって威力を証明すればいいんだろ? するとミシェータは窓を開けて庭の宙に、大きな水塊を風魔法で浮かせてくれた。
「あれを、撃って見て」
「ああ、判った」と、俺は集中し、狙いを定めて大きな水塊目掛けて圧縮火球を放った。
『コンプレスト・フアイヤ』「ドーン、ジュワーッ!」
あちゃ、またやり過ぎたか。 大きな音と共に水蒸気が庭一帯に立ち込めている。 騒ぎで館内が騒然となってしまった。 俺はすぐさま庭へと駆け出して、使用人を始め全員に謝罪の弁を伝えたのだった。
「すいません皆さん、お騒がせしました。 実験は夜間控えますので、お許しください」
「全くクロカワ様!、野党の類の襲撃かと思いましたわ」と、槍を脇に抱えたメイド長は怒り心頭である。
「カヅキは、やり過ぎなんだわ」
「おにぃちゃん、眠気飛んじゃった」「でしゅ~、あわーっ」
只管ひたすら謝り、何とかこの場は収める事に成功したが、三人娘も部屋に入り込んで来てしまった。 何をどうやったかの説明を散々細かく聞かれ、監視するとのジュリナの一言で結局五人が部屋に集まる事になってしまった。 メイド長のサウリーネも、逆にその方が安全だとかで見て見ぬ振りらしい。
「で、?カヅキ 圧縮火弾までは判ったわ。 次は何?」
「んと、弾に関しては土の圧縮弾、火もさっきの圧縮弾、風は刃弾で氷弾と雷の雷撃弾、雷砲はそのままで良いかな。これ以上は過剰戦力になりそうだしね」
「そうね、あの威力じゃ、魔物も討伐も楽になりそうだわ」
「もうさ、おにぃちゃん銃を杖代わりで、直接撃っちゃえば良いんじゃないの?」
「ああ、それは駄目だな、最初のコンセプトは、自己魔力の消費を防ぐ意味で作ったんだ」
「コン・・・サセ、ん?」
「うん、概念の事だな。 口を塞がれて、魔法が使えなくなったらどうする?」
「うっ。 た、戦う」
「剣が折れたらどうする? 魔法が使えない、剣も使えない状況で、さぁどうする?」
「あぁ、そう言う意味だったのね」と、ジュリナが納得する。
「まぁ、趣味も半分だが、そう言う場面にも対処出来るって事さ」
皆さん「うんうん」と、頷きながらも合点がいった様だ。
「次は、結界の話なんだが色々種類があるんだな」
「そうですわね、高度な結界は秘匿されている事が多いんですの」
「そうだよね、相手を強制的に拘束可能だもんな」
「馬車に施した二重結界の事ね。 初見で理解したのには驚いたわ」
「いや理解してないから聞きたいんだぞ。 何で二重にする必要があるんだ?」
「あら、そうなんだ。 じゃ、基本からかしら?」
他の三人娘はもう完全にオネムの様だ。 先に寝ますと言いながら部屋へ向かってしまったが、これでゆっくり二人で話が出来る。
「ああ、頼む。 出来れば噛み砕いて教えてくれ」と、一から教わる事にした。
「結界は精神に作用して空間を仕切るもので、障壁は物理的な物を遮断するわ」
「結界は精神魔法なのか? てっきり防御魔法と思ってた」
「ええ、闇と光魔法の術があるわ。 そうね、極端に言えば物凄く明るい物を見るとどうなる?」
「そうだな、眩しくて目が眩むし、近づきたく無いな」
「闇は逆に暗くて恐れを抱くわ。 同じ様に精神に作用すると効果のあるのは『恐れ』だわ」
「幽霊が怖い、化け物が怖い、親父が怖い。 とかか?」
「アハハハハ、その通り、それが闇魔法結界ね。 光魔法だと神々しさ、敷居が高い、眩しい等がこれに当たるわ」
「成程、それで触った時に素晴らしいと感じた訳か」
「お褒め有難う、破った事は許してあげるわ。 じゃ、次は障壁ね」
「障壁が物理防御だな。 武器とかを防ぐんだよな、魔法はどっちになるんだ?」
「魔法は火や水等を具現して実体化させたものよ。 完成した火も実際燃えるし、物理だわ」
「ああ、見えないが風も空気の流れだもんな。 大気も液体になれば固体になる立派な『もの』だよね」
「相変わらず凄い理解力ね。 これで概念が理解できたかしら」
「うん、それで考えたんだが、魔力を使えばこの二つを破壊出来たんだが、これは魔力がその二つに影響を及ぼす事が出来るんだよな」
「ええ、それを『感化』と言うのよ。 魔力で直接影響を与えて作用する方法ね」
「へー、難しいもんだな」
「何よ! 簡単に壊して置いて良く言うわよ」
「ハハハ、たまたまの偶然だぞ。 じゃ、障壁で防御すれば最強なんじゃないか? どんな攻撃も防ぐんだろ」
「そうとも限らないわ。 魔法術の防御力を上回れば破壊されるわ」
「んと、それは許容を超えた破壊力って事で良いのか」
「ええ、その障壁を上回れば破壊されるわ」
「成程、属性魔法の防壁魔法の方が有利な事も多いかもな」
「そうね、属性を逆手にとって有利に持ち込めるものね。 ほら、こうやって・・・ねっ♪」
ミシェータは風魔法の障壁で周りを覆うと、片目でウインクして見せた。
うむ、この流れでは致し方無かろう。
『ライト・オフ』・・・・・・
そこには、一頭のオスオオカミが獰猛な目をして、獲物に飛びかかっていた。
モモ:サウリーネ様におこられちった。
ミク:うん・・・礼儀作法からやり直しねって、小声で言われちゃったわ。




