異世界探求伝 第三十一話 帰還の途
強敵が現れましたが、何とか一頭を仕留められたようですが
課題は残されたようです。
かづきの機転で、上手くリザードボアを仕留めた一行だったが、まだ敵は四頭ほど残っていた。
「まだ獲物は残っているぞ、続けて行く。 土弾は無効だから氷弾に切り替えだ」
「はい」「行くわ」「行きます」「畏まりました」
俺の放つ「手動爆裂弾」は威力を加減しながらも、一頭ずつ丁寧にそして慎重に相手を屠っていった。 そうして、とうとう最後の一頭が倒れると、俺は後方に避難している奴らに手で合図したのだった。
「うへー、お頭っ、すげーな」と、元頭目のベルミが絶賛してくれる。
「まぁ、最初の一頭の頭部は目茶目茶になったが、後の奴は加減して中身の破裂で収まった様だな」と、一応謙遜して見せたが、他の子分達も皆で称えてくれている。
「そうですぜ、普通はこいつ等を狩るにやぁ十人集まって、火魔法と焼き石を使って地道に殺るんですぜ」
「だなぁ、お頭にかかっちゃあ、此奴らもただの獲物だな」
ベルミは顎髭を撫でながら、ひたすら感心している様子だが、何か聞きづてならない事を聞かされたようだ。
えっ? 今何か言ったか? 熱湯で始末するのか・・・成程考え付かなかった。 てか、おめーが親分だろ! お頭が頭って一体誰の事だ。
「そうですわね、この方法だと皮も傷みませんし、身も煮えなくて良かったですわね」
おい! 待て、ミシェータも知ってたのかよ。
まぁ、こっちの狩り方が優秀だと判ったからまぁいいや、 取り敢えず血抜きでもしておこう。 そう思いながら俺は、穴に飛び込み獲物の後ろ足に綱を結ぶと、重力でリザードボアの少し体重を軽くして、穴の途中まで引っ張り上げた。
「スパーッ、ふぅー」
あぁー、仕事の後の一服は旨いな。 奴らもパイプで一服やっているが、俺の煙草も残り五箱だしな、補充しないといけないな、と思いつつ尋ねてみた。
「煙草とかは、どこかで作ってるのか?」
「へい、農家の畑で『けむり草』を作ってやして、行商人から買い求めてヤス」
「盗賊だから奪うんじゃ無いのか?」
「いえいえ、お頭、商人から奪っちまったら、こっちは売る事も出来なくなりまさぁ」
「そうなのか? てっきり盗賊は何でも襲って、略奪するものと思ってたぞ」
「あっしらは、基本殺す為に仕事はしやせんぜ。 奪った結果、たまたま死んじまったもんが居るって訳です」
「あー、結局殺ってるんだな」
「まぁ、手練れならこっちが殺られちまいますから、戦闘になって命を失うのはどっちもですし」
「女は攫って慰み者か?」
「まぁ・・・人並ならばそうなります」
「人並以上なら? 奴隷か」
「いえ、奴隷にするのは、あっしらじゃねーです」
「奴隷商に売るんだろ?」
「まぁ、商人に売るだけですが、そいつが奴隷商に売っぱらっちまうんでしょう」
「俺達も、そうするつもりだったんだよな?」
「勘弁して下さい。 もう性根は入れ換えたつもりです」
「まぁ、働いて罪の償いをするといいだろう。 少なくとも罪の意識があれば、もう悪行はしないと信じてるぞ」
「任せて下さい。 お頭に恥は欠かせませんぜ! なぁ、おめーら」
「へい!」と勢いよく彼らの声は響いてはいるが。
「いや、だからお頭って・・・俺なのか・・・」
何か無性に不快感を感じながらも、リザードボアを回収したら、キャンプ場へと戻る事にしたかづき一行であった。 行きと違って、帰りは早めに無事にキャンプ地まで戻って来た俺達は、早速リザードボアの処理に追われる事になった。ここは安全地帯だからな。 綺麗な水辺だから洗いながら解体が出来るな。 皮はエフェクトが在り、つまり水属性の付与で魔防具として扱われる。 リザードボアが水を纏わせていたので、耐火防具には最適だろうと、解体を始めた皆の姿を見ながら色々考えをまとめてみる。
尾は槍先に使うそうだ。
火を纏った魔物には最適だろう。 なんせ刃物は、高熱で炙られると鈍になってしまうしな。 変わった部位では胃袋だろう。 鍛冶や焼物師などが使う窯のふいごや楽器、オーブンの取っ手等に使われているらしい。 胃の内容物を見て見ると、やはり魚や動物を食べた痕跡は見つからなかったが、水草らしきものが潰れて入って居た。 やっぱ、草食だよなこいつ、などと、勝手に解釈しながら、お手伝いをやっていく。
魔石は拳大の物が取れたが、これで拳大七個とピンポン玉位のが三十個以上取れた計算だ。
「こいつも使えますぜ」
見せてくれたのは、ろっ骨を外して取り出した大きな「肺」だが、一つで二メートル四方はある。
「何に使えるんだ?」
「女が使うんだよ」
聞けば、ベルミはスポンジ状の肺は丸く切り、押して空気を抜きながら乾燥させるそうだ。 過去の経験なのだろう、今一つ把握出来ていない俺は、取り敢えず幾つか作って貰う事にした。 女性陣がそれを興味深そうに見ている。 成形した肺は板に挟んで押しに掛けると、魔法で水分を抜きさり、針で中心にに紐を通すと結び切りにしていた。 ミクが横目で見ながらも、ちゃんとメモをしている。 「ええ子やー」
「ふーん、これどうすんだい?」
「こうするのさ」
結んだ紐を摘まんで水に漬けると、あら不思議・・・と言うほどの事では無いが、水を吸ってまん丸に膨らんだのだ。
「まぁ、吸収力の良いスポンジだな」
「で? 利用法は?」
「良く知ってるさ、なぁ、お嬢ちゃん達」
あれれ? 四人は顔を赤くして、ひったくる様にして、ベルミから『ソレ』を奪い取った。
まぁ、必需品と判ったから、回収だね、OK。 リザードボアは巨体なので、各部位の塊肉にするそうだ。 そりゃ一頭が四tはありそうだし、捌き応えはあるだろうなと、俺は他人事に思った。
後は、奴らに解体は任せる事にしよう。 俺は出汁取りに忙しいのだ。 今日は早くに朝食を取ると、リザボア沼に行ったが、行き帰りで三時間半、戦闘に二時間掛かったはずだから、しめて合計五時間半掛かり、キャンプに戻ってからは一時間半程解体に掛かっていた。
今は昼を過ぎた位だが、漸く昼食が取れる。 ここからは南西に森を横断する道を帰る事になる。 元盗賊の奴らは近道に詳しいし、魔物を避けて進むのに長けているらしい。 日が暮れる前に馬車へと帰還したいのだ。 思えば名前も知らない馬だが、一人ぼっちで可哀想だ。
お昼はパンと果実、リザードボアの脂の乗ったロースステーキが各一枚づつ出してやった。
お腹があまり一杯になり過ぎると、動きが鈍くなってしまうので量は控えて食べる様に指示した。 さぁ、食べ終わったら火の後始末をして出発だ。
先程の陣形と同じく前にゴーレムを置くが、このキャンプ地は、石材に恵まれているのでストーンゴーレムを作って貰った。 水辺で「タデ」えお見付ける事が出来て、それも回収して帰還する事にする。 クラークには、イヤーカフの通信で簡単な説明と、無事に町へと入れるように手配を頼んでおいた。
先頭に斥侯と案内役とを先行させ、ゴーレムと前衛を置き、力の弱い者を中心に隊列を組んだ。
俺とミシェータが殿を務め、双子は左方をジュリナは右方を見て貰っている。
「前方に木に爪痕発見! ベアのテリトリーに入った模様でやす」
「後方了解! ジュリナ、熊の魔物かな?」
「ええ、この辺はロンガムベアの生育地よ。 ランクCだわね」
俺は詳報を聞き、速やかに行動を起こす。
「そのまま進め、発見次第討伐する」
「斥侯了解! 前進しやす」
手早い返事に、俺は気配探知で周辺を探って行く。
「ん? 何か居るな前方右前、魔物の気配察知確認せよ」
「何かいる? 匂いも気配もしないんだけど」
「うん、気配は消してるんだろ。 待ち伏せ型の魔物なんだろうさ」
「発見しました! ウッディフログでさぁ、直ちに殲滅しやす。 許可を」
「許可するぞ。 慎重に対処せよ」
「へい」
―ウッディフログ― ランクE
森蛙の仲間 肉食で大口 体長二m
木目の背中の皮に植物を寄生させており、大木に張り付く事で木に葉が生い茂っている様に擬態している。
草食動物がや若い葉を食べに来た所を、大きな口で捕食する。
歯が上下フックする様な構造で捕らわれると、即座に強酸の胃液を吐き窒息させると上向きになり飲み込んでしまう。
素材部位:皮 肉は可食
――――――
「攻撃了解! 弓引け、前方右大木へ、口を狙って攻撃だぜ」
「ドス!ドス!ドス!ドス!ドス!」
「よし! 後は任せな」
「ズゴーン、ゴン、ゴン」
「回収たのんます、頭」
「了解、引き続き警戒前進だ。 だから、頭言うなって」
「へい! お頭」「はい、お頭」
「いや! 誰も頭に『お』を付けろと命じて無いから・・・」
しっかし、この巨大蛙って気持ち悪いぞ、でも触れないと収納出来ないもんな。 俺は、目を瞑って奥歯をかみしめながらも、端っこに指をチョコンと触れてしまい込んだ。
『ストレージ・イン』
「すまんが、キノコと薬草も目にしたらでいいから、拾って行ってくれると助かるぞ」
「へい! お頭」
「お頭言うな! 俺はカヅキだ!」
「へい! カヅキの頭」「はい、カヅキの頭」
何か、どんどん深みに嵌って行く気がする。もういいや、何でも・・・
一行は先へと進んで行ったが、俺の気配探査にまた獲物が掛かった。
「その先十m、魔物がいるぞ」
「うん、匂うわねロンガムベアだわ」
さすがは、狼娘だ、鼻が利く。
「ロンガムベアらしいぞ。 良く見ろ」と、俺は危険を発する。
「へい」
「あっ、見えたわ。 木の上の葉陰に隠れてるよ」
―ロンガムベア― ランクC
手長熊 森に住み雑食で甘いものを特に好む 体長四m
手が長く 身体強化を使った硬い爪で獲物を切り裂く、巻き付いて締め殺すのも得意である。
素早く木登りも上手いので、木上で待ち構えての狩りが得意だ。
素材部位:皮、爪 胆のう 肉は可食で左手が美味
―――――
見付けたのはモモだ。
目が良いのは猫獣人のモモとミクで、鼻が利くのは狼獣人のジュリナである。
ミシェータも俺も良く判らないので、モモに位置を確かめて貰う。
「ああ、判った。 あそこだな」、そう言いながら直ぐに対処する。
「タン!」
「バシュッ! ドサッ」
「すげーな、脳天一発か。 流石親分だぜ」
「すげー、おやびん」
「カヅキに掛かればランクCも雑魚よね。 フンフン」
機嫌の良い、ジュリナを尻目に収納完了し先へ進む。
回収を頼んだキノコや薬草も次から次へと、リレー式でこちらにやってくる。 ジュリナが機嫌良いのはこのせいでもあるんだろうな。 それからも、魔物の気配は離れた位置にあることはあったが、近づいて来ないので無視する事にした。 命大事にだもんね。 しかし、そのうち魔物の気配も余りしなくなってきた。
「もうすぐ森を抜けますぜ、親分」「抜けます、おやびん」
「了解だが、親分言うな!」
「へい! おやびん」
「それも嫌だ!」
「うーん、それじゃボスで」
「カヅキ、もうその辺で諦めなさい」と、まぁジュリナが言うし、俺も半分諦め模様でその言動を認可してしまった。
「ちっ、もうそれでいいや」
「へい! ボス」「はいな、ボス」
「あっ、結界を発見しましたわ。 ボス」
「お前までもか、ミシェータ!」 俺は、次第に感じが掴めて来た魔力検知を使い、結界の場所へ一目散に走り出す。 走りながらも、クラークに到着の連絡も入れる事は忘れない。 「ほうれんそう、だからな」
「なぁ、ミシェータ、この結界は術者本人じゃないと外せないのか?」
「うーん、術者が使った威力を上回れば、破壊出来るわね」
「そうなのか、俺にでも出来るかな?」
「さぁ、どうかしら、カヅキならいけるかもよ」
「ちょっと試させてくれ、どうすればいい?」
「手で触れると『ビリッ』と感じるはずよ。 そのまま魔力を込める感じ」
「了解、やってみる。 少し下がっててね」
俺は恐々と結界に手を触れてみた。
ああ、なんか『ビリッ』と弾かれそうになるが、低周波の電流に触れたような感じだな。 手を押し付けると、そんなに抵抗感は無い。 俺はゆっくりと、魔力に出力を上げて行くのだが、少しづつイメージが沸いて来るようだ。 あれれ? おかしいぞ、良く見ると二重に結界が張られてるな。
まず初めに、外側の結界を感じてみる。 目に魔力を通すと、魔法陣が描かれているのが見えたので、俺はその術式を乱すイメージで触れてたら、『スッー』と見えなくなった。しかし、上手く消せたのかな。 俺は、次の結界に同じ様に触れてみる。 さっきの結界とは違って、網の目のような結界である。
そうだな、これは例えると蚊帳だな。 俺は同じ様に魔法術式を探して消える様にイメージして行く。
『パリン!』今度は音が聞こえたように感じた。 成功のようだ、隠れた馬車が現れたので大丈夫、馬は生きている。
「ハハハ、やった」
「ちょっ!」
何やら、ミシェータが不機嫌な様だが、既に夕暮れだし町まで急ごうか。
モモ:あー、また美味しいものが食べられそうだわ
ミク:モモったら食いしん坊さんね
モモ:だったら分けてあげないわ
ミク:大丈夫よ。おにぃ様ならモフモフ言いながら分けてくれるわ。 ふふっ




