異世界探求伝 第二十九話 制圧と釣り?
かづきの初討伐となったこのキャンプ
行く手を遮る者もあらわれましたが、さて・・・
盗賊の親分は哀れな事に、煮えたぎったお湯の中で・・・とはならなかった。
実を言うと『ブクブク』見えていたの、はただの空気であり泡だったのだ。 なので中身はただのお湯である。
「よし、次はお前達だ」
そう言うと子分達も『お風呂』に蹴り入れた。 お湯の高さは顔ギリギリでお湯は溢れている。 指錠のせいで自由が利く筈も無く、溺れないようにと『ピヨンピョン』と跳ねている。小人族は大柄な男の瀬に、縋り付くようにしているが、そのせいで大柄の男も支えきれないでいる様だった。
「さぁ、これで殺れると判って貰えたかな?」
「あ、あぷっ、わ、判った」
「ん? 聞こえないな」
「死ぬのは嫌だ! しにたくねぇ、こんな死に方、嫌だっ!」
「うーん、まだ足りなかったか」
俺は親方の目の前で火の玉を作るとお湯の中に落とした
「ジューッ! ブクブクブク」
「あちっ、熱い、頼むっ、何でもやるから、いや、やらせて下さい」
「隷属に合意は?」
「する、何でもする。 勘弁してくれ、ゆでだこになっちまう」
観念した一味は湯船から救われて、ぐったりとしていた。 全員助け出すと、乾かした後でジュリナに隷属魔法を纏めて掛けて貰うことにする。 一人ひとり個別でかけると、魔力の消費が無駄に多くなってしまうからだ。
隷属の内容は以下の通り――
[主に対しての絶対服従、自害不可、逃走不可、不利益不可、敵対不可、魔力使用不可]、以上である。
第三者に対しても俺に不利益が生じれば不可能となる。
始末があらかた付いたので、俺は親玉に盗賊のねぐらへと案内して貰うことにした。
ジュリナにも一緒に来てもらい、残りはキャンプで待機の命令をだしておく。 念の為、ミシェータに服従させる命令を出しておいから、これで安全だろう。
親分を連れてねぐらへ着いたが、親分のベルミから説得を受け、そこに居た4人はすんなりと受け入れて貰えた。 意外であったが、先の拷問が役に立ったのだろうが、これで隷属者が合わせて十二人となった。 お宝は硬貨で銀貨五十枚と銅貨三百枚程、剣に槍と弓矢等の武器や防具、それから大量の毛皮と素材があった。 使えそうな物と、親分のベルミが必要と言う物を見繕って、このねぐらを後にした。 空の木箱や木材も一応回収しておいたし、これはこれで収納に使える。 他にも隠れ家があるそうだが、誰も居ないらしいし特に必要な物も無いそうなので、パスする事にした。
キャンプに戻ると、夕方から煮込んでいたスープが良い感じになっていたので、鍋を取り出して夜食を作った。 ズナンの町でお粥に使っていた押し麦と、煮込んだ肉を解したり、刻んだチーズを振りかけると軽く混ぜる。 その上に新鮮なレバーの薄切りを置き、ネギと塩とオイルを垂らして出来上がりだ。
食器は奴らの住処から持って来た。 収納が面倒なので、大量にあった木箱に詰め込んだのだが、これならば一発で出し入れが楽になる。
「ほら、お前ら並べ」
「い、いんですかい? 旦那」
「誰の旦那だ。 良いから食え熱いから気を付けろよ」
どうしてだか、ジュリナとミシェータが赤い顔をして頬に手を当てている。 が、スルーしておこう。
「「あふっ、あふっ」 「おお、うめぇ」 「麦がゆか?」 「レバーが半煮えでうめーな」」
「「きゃーん」「うまうま」「おいひ」「あちゅい」」
いつの間にか、女性陣も食べ始めていた。
「こ、これ凄い、美味しいんだけど、何かしら? チーズ? 入ってるの」
「まぁ、しいてあげれば『リゾットもどき』かな」
好評な様で、二回目のお替りを作らされてしまった。
「三杯までだぞ!」
「へい! 旦那」
これは当面の間、此奴らの食料調達と料理作りが大変だな、とか思いながらもこれからの俺の胸の内を全員に伝えるとしよう。
「えー、食事を振る舞ったのは、俺の生まれた国では『腹が減っては戦が出来ぬ』と言う諺があるからだ。 それから、『同じ釜の飯を食う』と言う意味がある」
「へえ、戦ですかい?」
「いんや、戦をする訳では無いが、同じ釜の飯を食ったからには俺達に繋がりが出来たんだ」
「へい、何となく判りやす」
「つまり、一蓮托生で同じ希望を持って歩もう、と言う俺の決意でもあるんだ」
「まぁ、俺達は旦那の奴隷ですから、酷使されても文句は言いませんぜ」
「俺はお前達をある場所に連れて行く。 そこで仕事を色々やって貰うが、酷使するつもりは無いぞ」
「へえ・・・」
「普通の人々と同じく労働して貰い、賃金もやる。 その金で良いもん食って女を抱くのも自由だ。 金が貯まれば家も買え、結婚も自由だ」
「ガッハハハハ、こりゃいいぜ、そんな天国みたいなとこがある訳ねぇ」
「あのさ、口挟んで申し訳ないけど元盗賊のお頭さん?」と、ジュリナが口を挟んで来た。
「うん? 何だい嬢ちゃん」
「カヅキは今それを創ってるのよ」
「カヅキって旦那の名前かい? 作るって? 何を」
ジュリナは、「旦那」と言うベルミの言葉に反応しているのだろうか、何故かまた頬を赤らめているので続きは俺が言おう。
「今、村を作っているんだ。 今は砦村の規模だが、もっと大きくする。 いや! してみせる」
「ふーん、そんな夢みたいな・・・いや、まてよ、旦那はどこかの領主様かい?」
「いや、一般人だぞ。 だが、土地は国とは関係無い俺達の物だ」
そこでやっている事業を始め、これからの事を大いに語りながら熱弁を振るっていると、連中の中からあれこれ声が聞こえて来る。
「お、俺は革細工が得意なんだ」「わしは元鍛冶屋で修行してた」「おらは木工職人だぞ」と、次々と嬉しい名乗りを上げてくれた。
ミクが気を利かして紙に書いていると、不思議そうに眺めていたので、「エンピツ」を渡してやると、ベルミは紙に殴り書きを始めた。
「ほう、これはいい、良く書けるし、にじまねぇ」
「ああ、この国には無い技術だ」
「ほぉー、これが『エンピツ』かい、売れるなこれ」
こうして話も進んで現物を見たおかげか、皆さん協力的になって貰えた様だ。 皆の同意が得られて良かった。
「武器、防具ははそれぞれ返すから、自分の事は自分で守る様に」
「いいの? 武器とか渡して」と、不安視するミシェータに俺は説明した。
「だって、魔物が出て来たら奴ら困るだろ」
「うーん、それはそうだけど・・・」、納得が行かない様だが、俺は信じる事の大切さも知っている。
「さて、歯を磨いて皆寝ろ、ベルミは見張りを数名出して置け」
「へい、旦那」
「ジュリナは少し話があるから俺とテントだ。 他の三人はそっちのテントな結界張って寝ろよ」
「えっ、ちょっ」いきなりでミシェータは不満げだが、気の利くモモとミクが腕を引いて連れて行ってくれた。
「おっ、中々の寝心地だな、おいでジュリナ」
「え、えっ?」
「うん、遮断の障壁覚えたから、いいぞ」
「あ、は、はひ」
俺は久しぶりに狼に豹変した。
ジュリナも聞かれるのでは? 内心とビクビクしている様だったが、やがて夢中になり今度は俺の方がビクついてつい、口を塞いでしまった。 「アハハ」 野外も良いもんだ、一応これも青カンなのかな?
朝起きると、凄い眩しさで目が覚めた。 それは、ミシェータのライト魔法攻撃だった。
「あ、あたくしの番は次だからね」と、来たもんだ。
さて置き、まずは腹ごしらえだ。
人数が多くて大変だ。 朝から肉を焼くのも嫌だし、ここはすいとんでも作ろうかな。 団子を捏ねるの、に大きいボウルも無いので大鍋を出す。 大麦の粉と小麦を混ぜたら、昨夜の山芋を潰して混ぜ込んで生地にする。 大麦粉を入れるのは嵩増しだし、芋を潰して入れるのは繋ぎと食感の為だ。
後は棒にしてから、適当に切ってから伸ばして行く。昨夜のスープを越して味付け、野菜を適当に刻んで煮えたら手延べの麺を入れて行く。骨付きの肉が柔かったので、適当にほぐして入れて行くと、ほら、完成だ。 最後に胡椒を入れて一丁出来上がり。
「カン、カン、カン!」「おーい! 飯だぞ」
幾人かは起きていたが、寝ぼけ顔も沢山いる様だ。しかし命令は絶対であるので、皆さん食器持参で並び始めていた。
「お替りは適当にやってくれ。 まぁ早い者勝ちと言う事で」
「へい! いっただきまーす」「はーい」
「・・・あっという間に空になったな」
食べ終わってから、今日の予定を申し渡す。
「えー、本日はここから西に向かってリザードボア退治に向かいます。 皆さん事故に気を付けて行動お願いしまーす」
「へい!」、「はい」「はーひ」「ふわーい」「はいです」
「昨夜の見張りだった者は、運びますから寝ていいですよ」
俺は、ガタイのよさげな数人を選んで背負子を背負わせると、次々に休憩の男達を乗せて、体重を『グラビティ』で軽くしてあげた。 軽さに驚いていたが、魔法は万能だからの一言で納得して貰えたようだった。
前衛に女子四人を先行させて、俺は殿を務める。
何処からの攻撃も対応出来る様に、探査も開放中だ。 ミシェータににゴーレムを作って貰い、盾とする。ゴーレムには両手に剣を持たせて、先頭で草や蔓を薙ぎ払って貰っている。地面が押し固められるし、安全で重宝である。 途中前方に現れる魔物は、通信機で連絡を取り合い殲滅して行く。
俺は両手に弾を握り、気配が近づいたら狙撃している。獲物は血抜きせずに『ポンポン』と収納して行くのだが、これは後で纏めて捌く予定である。 それも進行を速める為には仕方ない。暫く森を歩くと場所が開けてきたが、沼? と言うより、湖の様な広さがある。 二時間近く歩いたかな、丁度ゴーレムの魔力が切れて土に戻ったみたいだ。
「んと、ここが沼? なのかな?」
「うーん、場所は合ってるはずだけど、拓けたのかな?」
「そうか、まあいいさ。 で、狙いの奴はどこだ?」
「旦那、あの右奥で、群れが日向ぼっこをやってますぜ」
良く見てみると、ふむ、木陰の向こうに確かに黒っぽい点々が見える。
目を強化して見ると良く見えたが、この目の強化は目が後で疲れるので余りやりたくない。 多分、眼球の筋肉を酷使してるんだろう。 そう思って水魔法でレンズをイメージしてみる。 確か二つのレンズを使うんだったな、凹レンズと凸レンズだっけ、俺は両手で輪っかを作ってそれぞれレンズを作ると、それを合わせて調整して見た。「うほっ、良く見えるわ」魔法の改良は後で考えよう。
リザードボアだっけか、あれはカバだな。 でも、鎧を着たように皮がゴツゴツしてそう、ありゃ? 尻尾があるな、まるでワニの尾っぽみたいだな。 俺はギルドから貰った教本を見たが、絵が載っていないので解説ばかりだ。 絵が付いていればいいのにと思いながらも、教本のページをめくってみる。
「どれどれ、リザードボアだな、これか」
―リザードボア―
沼や湿地水辺に生息、肉食で大食い。 体長約五m程
手足は短く、指には水かきが付いており泳ぎが上手い。
巨体であるが、俊敏で足も速く平凡種のボアの様に突進して来る。
噛みついたら、離す事無く水中に引きずり込み、顎の非常に強い種である。
鼻から強力な魔水弾を放つが、強力で大木もへし折る威力だ。
防御にも秀でており、並みの剣では歯が立たない。
素材部位:皮、胃袋 尾 肉は可食
「成程、弱点は特に書かれていないな」
「あのぉ、旦那」
「うん、ベルミどうした?」
「子分が言いますには、あいつは鼻は良いが目が悪いそうです」
「狩り方は?」
「へえ、餌をロープで釣って誘き寄せてから、落とし穴に落とすらしいです」
「小さいのも居るな、子供か?」
「へぇ、子供は無視でさあ」
「可哀想だしな」
「いえいえ、これは子連れの魔物全般に言える事ですが、子供の泣き声で群れ全体が襲ってきやすぜ」
「成程、怖いな。 よし、穴掘りに良い場所を探させてくれ」
「へい」
ベルミは子分を連れて足早に発った。 俺達も近くまで行くとしよう。
「ここでやす」
「よし、穴掘りは任せろ」
俺は最近覚えたての魔法で穴を掘り始めた。 魔力消費節約のコツは、あまり一気に魔力を放出しない事である。 つまりこの場合は、一気に掘り過ぎない事であるが、五十kを一気に運ぶより十kを五回に分けた方が早いとの理屈なのだ。 掘った土は、ミシェータに水分を抜いてもらい、四角に固めて脇に置く。
土を少し掘り下げると、色違いの土が出て来る。 この土を見た瞬間、俺はタイルの事を思い出した。 このきめ細かい土ならば、タイルどころか陶器も焼けるなと思ったのだ。 触るとやはり、きめ細かく、粘りがある。 恐らく、この周辺は大きな湿地でその植物も多かったのだろう。 田んぼの土も良質な土が出来る事で有名だし、これは是非土産に持って帰ろうと思ったのだった。
モモ:キャンプってたのしぃねぇミク。
ミク:そうね、でもいつも死と直面してるのだし、注意しないとね。
モモ:そうね、人さらいもこわいもん




