異世界探求伝 第二十七話 楽しいキャンプ
キャンプって、学生時代の頃が一番楽しかった思い出があります。
さて、引き続き処理を見て行くが、内臓の可食部を樽に落として行く。 俺の袋が鮮度を保つと分かり、ここぞとばかりお持ち帰りだそうだ。
「久しぶりに屋敷で新鮮な肝臓が頂けるわ」
「そうねぇ、心臓も美味しいわね」
「俺はレバーも、ハツもタン塩も好きだぞ」と、言うと意味不明な顔をしていたので、部位説明もしておいた。 後は腎臓と腸だ。 腸はきれいに掃除して塩漬けにするが、肉詰めにするらしい、わーい、ソーセージも食える。 脳味噌も美味らしく、温かい脳味噌は何かお湯を入れた風船みたいであった。
内臓を取り去った後は皆て慣れた手つきで、綺麗にあばらと背骨を取り、部位肉にしてしまった。 中型の獲物はこれで完了らしいので、綺麗に掃除された肉を次々に入れて収納して行く。 樽に詰めた仕分け内臓は蓋をきちんと閉めて収納できた。 樽や木箱に入れれば簡単に出し入れも可能だから、沢山収納箱を用意しておこう。 骨はフォンを取りたかったので、適当にカットしてしまい込んだ。
桶を出して、武器傷の有無確認と手やナイフを綺麗に洗ってから再出発となった。
森に入ると言うので、馬車をどうするか相談したが、餌と水を置き結界を張る事で良いだろうと言う事になった。 馬よ、ごめんなと言うと、「ブルルッ」と言って頭を出して来たので撫でたが、これがOKの返事なんだろうと納得する事にした。
森はうっそうとしていたが、ミョウバルンの森というのだそうだ。今日は曇っているせいか、とても薄暗い。 どんな場所にアイアンビートが居るのか聞くと、落葉樹のある落ち葉の堆積した暗い場所にらしい。 「ここやん!」とか、思いながら歩いているが魔物の気配はさっぱりだ。
「魔物の匂いが余りないわね」と、ジュリナは言い。
「はい、見える位置には何居ない様ですが」と、モモは言う。
「もう少し先へ行ってみましょう」
丘を越え湿気の多い場所にやって来た窪地の様である。 俺は何か胸騒ぎがして、気配探知を使ってみようとしたその矢先、地面が動いた。
「シャーーーッ」
地面から大きな牙が、ミクの足元を狙う。
「危ないっ!」 、ミクの足を挟んだのか、そいつは鎌首をもたげてミクを振り回している。 ミシェータが咄嗟に火の弾を打ち出した。
「薪に金砂子を蒔きし如く・火が粉の沖する大気の焔よ・この手に集い汝が獲物を焼き貫け」
『フアイヤーボール』
「ビシュッ!」
奴の頭をかすめた衝撃でミクが落ちるのを見て、モモがすかさず拾い上げた。 その時、漸くそいつの正体が判った。
「アイアンビートだわ!」
「あれが・・・」
でかい、とてつもなくでかい、胴回りは少なくとも俺の三倍はあるだろう。 さぁここで復習だ。
―アイアンビート― ランクB
巨大百足で、その硬い高装は通常の武器は通らない程の硬さを誇る。
体全体で殴りつけ鋭く硬い二本の牙が在り、毒を口からブレスの様に吐き出し、尾にも毒針を持つ。
その毒は、皮膚に付着すると、酷い痛みを伴い、戦闘意欲をも無く程だ。
獲物は、頭から骨ごと「バリバリ」と、噛み砕いて喰らうと言う。
戦うには一箇所に固まらず、バラけて攻撃するのも、一つの方法である。
柔らかいお腹と、氷系が弱点となる。 体長10m程
――――――
「毒に注意よ、目に入らない様に防御して」
「氷が弱点だ、ミシェータ」
「わかったわ」、彼女は『ライキリ』を媒体に詠唱を始めた。
「氷雲がどんより低く垂れ込め・雪に覆われし大地と空の間に・石のように固く凍てつけ」
『ブリザード!』
「ヒューーーッ、ゴーーーッ」
氷を雪の様に降らせる魔法であるが、魔力が強ければ凍らせる事も出来る。 アイアンビートは苦しさ紛れに、地面に潜り込んだ。
「どこだ」
「潜られると居場所が摘まめないわ」
「ミクの状態は大丈夫か?」
「はい、丁度ブーツ底をを挟まれただけですわ」
「良かった。 銃の使用を許可する。 出力上げて氷弾だぞ」
「「了解」「はい」「わかったわ」「はぃ」」
「安全装置の確認で、各自俺が撃った周辺を打て! 散開だ」
俺は銃の属性を雷にして、気配探知を使ってみた。 居た、奴は大木の根元に隠れている 俺は木の根元に雷砲を打ち込んだ。
「バリバリバリッ」「キィイーーーーーッ」
直撃では無かったのが手応えはあった。 だが、まだ動ける様だ。 ムカデの化け物は木の根元から頭だけ出して、俺に毒液を噴き出して来た。 咄嗟に右指で鉛弾を弾いたが、一瞬逃げ遅れたか
「シューーッ」「バシュッ! 、キン」
『アイスシールド!』
咄嗟にミシェータが、氷の壁で庇ってくれたおかげで助かった。 続けて氷弾を撃ち込むが、少し距離が通り様だ。 詠唱が無いのはスクロールを使っているからだ。 基本的に守りの魔法と、治癒系の魔法はスクロールだそうだ。 そりゃ死にそうな時に、詠唱してる暇は無いわな。
「ドシュッ、ドシュ」 「ドシュッ」 「ドシュ」
射程距離は三十mだからな、確実に打ち込むには十mは近づきたいな。 弾丸も手ごたえがあったが、弾かれてしまったのだろう。
「回り込むから援護してくれ、ミシェータは防御を頼む」
「はい」「了解」「はぃ」「あい」
四人は了解し、こちらに気取られない様に攻撃してくれている。 地面が柔らかいのでダッシュ出来ないのだ。 俺は気配を察知じながら、木の後ろへと回り込んだ。
「『コール』ジュリナ:(俺の指す方向に 電砲を打て)」
「『アンサ』カヅキ:(十数えたら打つわ)」
俺は、大刀『セセラギ』をゆっくり抜刀すると待機する。
「雷砲! ドーン バチバチバチ」
「キィーーーーッ!」
俺は硬直したその瞬間を見逃さず、上空に大きくジャンプして氷思い浮かべて魔力を流しながら、頭部の関節に『セセラギ』を差し込んだ。
「ズブッ! ピキピキピキ」
「ギィーーーー、ギェーーーーッ」
「やったか?」
「危ないよっ! 頭下げて」
俺が頭を思い切り下げ上部を身体強化すると、アイアンビートの尾が俺の頭部を薙いで来る。
「ヒューーーーン」
「グサッ ダン!」
見上げると、ジュリナの長巻『ヘシキリ』が何かと一緒に、太い幹に突き刺さっていた。 そう、それはアイアンビートの棘のある尻尾であった。 まだ体をくねらせては居たが、そのうちに静かになった。 素材部位は表皮、毒腺、牙、毒針で、肉は不可食だ。
「一応、俺が気配探知そのまま使って居るから大丈夫だ。 解体には手袋をしてくれ」
「そうね、毒腺から外しましょう」と、ミシェータは瓶を取り出した。
「零れない様に気を付けて頼むぞ」
「ええ」
「私達は、尻尾から始めますね」と、モモとミクは後方に回った。
俺とジュリナは胴体部分を担当と言う事で、解体は手早く行われた。
牙二本と毒腺、毒針にアイアンビートの甲殻十九個が取れた。 お腹側は柔らかいので背中側と頭部だけが利用できるそうだ。
オーブは頭関節の二つ目の箇所から出て来たが、成程大きい。 拳大はあったのだ。
甲羅の頭部は兜かな、普通のナイフで突いてみたが全く歯が立たなかったので、良い防具になるだろう。 金属鎧を見かけ無いのは、単に音や重さを嫌っているのでは無く、こうした素材が充実しているからなんだろうな。
内側をお湯で綺麗にすすいだ後、素材部位は水気を切って収納した。
「次の目標は?」
「この先の、山の麓を北西に進んだら沢に出るわ。 そこを真西に進むと沼があるの、そこよ」
「そうか、このまま行くけど良いか? みんな」
皆の了解を得て、武器の手入れを済ませると、クラークに連絡を入れてみる。 この距離でも通信可能かを視る為でもあるのだ。
「『コール』クラーク:(ムカデ討伐成功だ、鹿肉多いから加工の準備を、本日野営で西の沼へ行く、 皆良好だ、以上)」
「『アンサ』カヅキ:(了解、こちら建設順調で、職人が集まりました、以上)」
俺は、小洒落たパナマをかぶり直すと、進行方向へと歩みを進めた。
「よし、先を急ぐぞ。 銃は安全装置を付けたまま携帯しろ、安全地帯を見つけ次第野営に入る」
「はーい」「了解」「はい」「はいおにぃ様」
歩いている内に、様々な山野草やキノコがあったので、取り敢えず収納しておいた。
判らない物は後で図鑑で調べよう。 開けた場所には、木の実も多くなっていた。 町を離れるのは初めてだから、何処も彼処も珍しいし、見覚えの無い様な植物を見るだけでも楽しめるのだ。
ジャパンに近い気候の様だが乾燥していて、昼間でもそんなに暑くは感じなかった。 ジュリナが、方位磁石で方向を確認しながら指示してくれているが、砂鉄も磁石で集めていると聞いていたから驚かなかった。
「水の匂いがするわ、もう少しね」
水辺に近いと言う事は、それなりに小動物も多いものだ。 魔物なんだろうが、人を襲わない種も多いと聞く。 途中でウサギを見付けたが、角が生えていた。 試し撃ちでミクに打たせたが、出力最大にしていた為、お腹に大きな穴が開いていた。
魔物と言えども生き物なので、雷砲の出力を下げた雷撃がいいのかな?
途中で何匹かのウサギやバクのような魔物を俺の弾で仕留めて、四時間後に目的地の小さな沢へとたどり着いた。
テントは二つで、設営はミシェータとジュリナに、料理はモモとミクに任る事にする。
俺は土魔法でかまどを二つ作り、鍋やフライパン、網を用意すると椅子とテーブル、食器も用意した。 今度、キャンプ用品も作ってみようかな。 空を見るとまだ曇りの様だが、ジュリナに聞くと雨は大丈夫と言ってたので安心だ。 沢で雨に降られると、大変な事になるからね。
俺は手が空いたので魚でもいるかなと、沢を見ていたら無性に風呂に入りたくなった。
良し、ここは露天風呂でも作ろうと考えた。 ミシェータに土魔法のイロハは教わっていたので、ついでに少し離れた場所に簡易トイレを作って、土壁を作っておいた。 露天風呂は、川縁に一m位の穴を掘ってそれを広げる。 横幅は三mあればいいだろう。 川石を集めて底へ敷いたら完成だが、水路で繋げよう。 やはり上流の澄んだ水である。 砂地だし、泥で濁らないから正解だと思う。 すると、せわしなく俺が作業をしているのを見て、何かとばかりに皆が様子を見に来ていた。
「何作ってるの?」
「露天風呂だぞ」
「水を温めるのね」
「たのしみぃ」「楽しみですね」
皆集まってワイワイ見ていたが、食事が終わって後で入ろうと言う事になった。
野外の風に吹かれての食事も、とても趣のあるものだ。 バクのソテーに、ウサギの串焼き、近くで掘れたヤマ芋みたいなものも炭火で蒸し焼きにしていた、 新鮮なレバーをひと腹出して、と言うので出してやったが、薄く切って塩とオイルを掛けて出てくる。 皆で精霊に感謝を捧げると、晩餐会ならぬキャンプの開催だ。
「おっ、生レバーやん、旨そう」
俺が美味しそうにパクつくと、ミシェータが不思議そうに眺めていた。
聞くと、人は生肉はあまり食べないそうで、こう言った物は獣人が好んで食する物らしい。
「甘くておいしぃ―」
「そうだね、どれ位ぶりかな」と、獣人娘三人はとても喜んでいた。 実際に、冒険者や狩人から獲物を手に入れても日数も経って居るだろうし、新鮮だと思っても内臓だから足が速い筈だ。 こんな獲れ立ては現地じゃないと中々手に入らないであろうと俺は考えた。
俺は、鹿のモモ肉も取り出して刻むと、卵の黄身、塩、オイルで味付けして出してみた。 ユッケである。
「ネギいやぁー」「嫌い」「やらー」
香草や野菜、卵などは予め青果店で買っておいた。 獣人娘は無視して、ミシェータの口に持って行くと、彼女はさも嫌そうな目つきをしていたが、俺が旨そうに口に入れるのを見て、目を瞑り、そして口を開けた。
「きゃっ、これ何? 甘い、肉が何で甘いの?」
こうなったらこっちのもんである。 ミシェータは生レバーまで克服したのだった。 俺達がユッケを旨そうに食べていたら、残り少くなったユッケに、モモがネギ類を避けながらも、恐る恐る手を出していた。
「あー、美味しい、おにぃちゃん! もっと食べたい」
「あ、私も食べてみる」「みるー」
そう言う訳で追加注文、あっという間に腿肉一固まりを平らげてしまった。
「焼いたお肉より、こっちの方が人気だったね・・・・・・」
少ししょんぼりしていたが、残った肉もまだまだ役割があるから、心配ご無用なのである。 俺は残り火に、寸胴鍋を置き処理した骨と残りの肉、持って来た野菜を入れて、あくを掬いながら煮込む事にした。
かづきは、食器の片付けも終わったので、お風呂に入ろうと提案する事にしたのだった。
ジュリナ:「じゅー」ってやっぱり、簡単に魔法弾が打てていいわぁ。
ミシェータ:そうねあなたは昔から魔法は苦手だったのよね。
ジュリナ:ええ、おかげで詠唱を気になくて済みそうだわ。
ミシェータ:でも、カヅキに言われてるように、寝る前の訓練は忘れちゃだめよ。
ジュリナ:はーい、でも次回は、何かが起こりそうな予感がするわ




