異世界探求伝 第二十三話 通信魔法の完成と銘刀授与式
かづきの力作がとうとう出来上がったようです。ついでにあれも完成。
ジュリナデリカの大々的な発表に、とうとう通信魔法の完成を喜び勇んだチーム龍のメンバー達であったが、思わぬ落とし穴があると判り全体に悲壮感が漂っていたのだった。
つまりは、精霊魔法の使い手にしか、この通信魔法を行う事が出来ないと判った為である。 今の段階では、使いこなせるのはジュリナデリカただ一人である。 かづきは打開策を見いだす為に、先生の呼び出しを行っていた。
――――――
「つまり条件がある訳だな、ラビ」
「ハイ 精霊魔法ノ 条件付ケハ 波長 為業 純粋 魔力デス 」
「ふむ、純粋な心の持ち主で魔力を持つ者、後の意味は?」
「波長トハ 精霊界ト 自分ヲ繋グ事ノ 出来ル主デ 為業トハ 主ノ立チ振ル舞イ 良識ヲ持ッタ者ニ ナリマス」
「俺は? ラビと契約している様なもんだし」
「逢ウ事ガ 出来レバ 可能カト」
「今は逢う事が出来ないから不可能って・・・遠回しだなラビ」
「可能性ハ 否定シマセン」
「そっか、有難うなラビ」
――――――
「ジュリナ以外、今の所使えないんだな、判った。 ジュリナ精霊契約の内容変更だ」
「えっ? なに!」
「『情報者の供与』だ。 ジュリナとの契約者は精霊に報酬として与え、ジュリナに言葉を伝達出来る。 この条項を補足してくれ」
「え、ええ、やってみるわ」ジュリナが再契約の準備中に、皆が契約の書かれた本にサインした。
「精霊王の名の元に此の書に記した者らよ・汝が誓約に基づいた契約を順守する事を誓従せしもの也」
『コントラクト!』
青白い光がこの場の全員をを包み込む。 成功かな?
「契約成立の光だわ、成功よ!」
「良し、各自やってみよう」
「あれ? カヅキから直接会話が来たわ? どうしてかしら?」
「ああ、ネットワークだからな。 ここに居る、全員の相互通信が可能になったぞ」
「ネットワーク?」
「仲間の範囲って意味だな。 ジュリナが通信元の受態側で、それが全員に繋がっているから可能なんだ」
「おにぃ様? 理解出来ませんが?」
「ん? つまりジュリナと契約したから、その契約者同士て喋れるって事だ」
「なるほど」
「魔法の利便性だな。 それに裏技も使えそうだ」
「ジュリナは受態側の主だから、アンテナとして情報が掴めるはずだぞ。 ミク、外へ出て適当に独り言を喋ってきて」
「はい、おにぃ様」
暫くしてミクが戻って来た。
「ジュリナ、聞こえた事言ってごらん」
「言うわ、『あぁ、おにぃ様って何でも出来て凄いわぁ、いつもスリスリしてくれて嬉しいけど、頬ずりだけでなくたまには・・・・・・」
「キャッ! お嬢さま! それ以上は」
椅子から飛び上がってもの凄い勢いで、ジュリナの口を塞いでしまった。
「アハハ、ミクは可愛いな。 ――――と言う事でこの利用法は判るな」
俺がクラークを見て喋ると、ゆっくりと頷いて目を開けた。
「はい、クロサワ様、当家に息掛かった者の中にも使い手が居りますれば、この手法で多くの情報が得られるかと存じます」
「うん、ここで重要なのはその契約者の離反だ。 逆に利用されれば、こっちが筒抜けになるからな」
「はい、使い手には強固な誓約を誓わせましょう」
「えっ? 私にも?」
「そうだな、信頼はしているが、精神魔法とかも存在しているんだろ?」
「そうね、どうしたら良い?」ジュリナは少し不安げである。
「殆どの情報は俺から発信されているんだし、俺と契約を結ぼうか」
「そうね、それがいいわ。 うんと強力な奴でね。 うふふふ」
「死ぬとかそう言うのは無しな。 まぁ、俺に不利益な情報は思い出す事が出来なくなる。 で、良いんじゃね?」
「うん、判ったわ」
「こうした通信が出来れば、手紙が要らなくなるわよね」
「いや、必要さ。 ヒトは忘れる生き物だからな」
「左様ですな」
「では、先に進もうか。 ミシェータ、こいう物を作って欲しいんだが」
俺はそう言うと、紙に鉛筆で耳のイラストを描いた。
「ここに付けるんだけど、『イヤーカフ』って言うんだ」
「ふーん、平指輪の一部を切っているのね。 Cの形だわ」
「そうそう、ここに命令式を書いて、『送信』と『受信』で魔力が精霊の欲しがる分が出るって奴」
「そうね、簡単だからミクでも出来るわね」
「ミクが?」
「ああ、最近は魔道具の作り方とか教えてるのよ」
「そうなんだな、偉いぞミク」と、頭を撫でてやると喜んでいる。
「でも、耳に付けるのならイヤリングがあるわよ」
「そうだな、でも引っ掛かって外れるだろ? これは耳の内側に付ける物なんだ。 ほら、ここだよ」と、耳の絵を指し示すとミシェータは直ぐに理解を示した。
「あー、そうだわね。 判ったわ、これは直ぐに出来るわ」
「出来れば、明後日の狩りに間に合う様に頼む」
「ええ」
「次に、クラークにはこれを作成して貰おうか」
次に出したのは、気送管とかエアシュートと言うものだ。
空気の圧力で、管の中をカプセルが移動するのだが、この中には手紙や小物が入れられる。
「建物内での手紙のやり取りが楽になるぞ。 発送スイッチで相手側の方から、空気を吸い込むと送られるんだ」
「片方発送ですな」
「そうだ、管を太くすれば、より多く物も送れるぞ。 但し、管の曲がり角の角度には注意な」
「そうですな、詰まりますからな」
「送り口には、緩衝材を使うといい」
「成程、壊れやすい物も送れますな。 砦村建設設備に役立てましょう」
「そうだな、これは下水道にも流用できる技術だからな。 トイレにも活用してくれ」
「承りました」
「モモは絵が上手だから、図面を引いてみるか?」
「良いんですか?」
「ああ、俺のラフと数字が判れば書けるだろう」
「はい、頑張ります」
ミクが魔道具の製作をミシェータに任されていたのを見て、少し寂しそうにしていたので、モモは俺の仕事の手伝いが出来てとても嬉しそうだ。 だが、本当に資質はあるのだ。 絵が上手いのもそうだが、思い切りが良くて何でも興味を示す感性は、この方面でも活かせるだろうと俺は思っていた。
チーム龍の定例会議がまだ続いている。
トイレの事がいつも気になっていたので、クラークに聞いてみたのだ。
「そう言えば トイレの先はどうなってるんだ?」
「穴にスライムがおりますが?」
「えっ? スライムってあの粘々した奴?」
「はい、夜行性の種でダンジョンの暗い場所に生息しており、腐肉や骨、食べ物や糞尿何でも食べてくれますが、プリアスライムと呼ばれております」
「便利だな、有機物を分解するんだな」
「ユウキブツ・・・・・・ですか」
「ああ、鉱石とかは無機物になるな」
「それで増えて来たら間引きして、乾燥させるのですよ。 プリアスライムは良い肥料になりますぞ」
「ほう、水の浄化にも使えそうだな」
「利用可能ですな。 ただ光には苦手なので、地下水路でなら活躍出来ますな」
「砦村の技術者が、ある程度揃ったら教えてくれ」
「はい、ですが命令通りに指示して、工事は進んでおりますよ?」
「ああ、使える技術があれば教えておきたい」
「情報開示されるのですか? 危険では」
「うーん、秘密流出禁止とかの誓約で、対応出来ないかな?」
「その者には効果があるでしょうが、その弟子とかそれを見聞きした者にまで、契約魔法の必要が生じますね」
「うーん、誓約方法で対応出来ないかな」
「そうね、誓約で縛る方法が楽だわ」
「砦村に暮らす者達には、秘密厳守の誓約をさせれば可能ですな」
しかし、ミシェータは別の危惧を推し量っていた。
「それだけで済む話かしらね」
「どう言う事だ?」
「忍び込む者は出て来ると思うの」
「検討余地ありだな、じゃその方向で考えてみよう」
「はい、それと、馬車の試作が出来ましたが、お使いになりますか?」
「そうだな試乗してみようか」
「では明後日手配致します」
次はジュリナに話を振ってみよう。 まだまだ聞き足りない事もあるしな。
「ポーションとかはどうなってるんだ ?ジュリナ」
「討伐の準備でしょ、用意してるわよ?」
「効果とか効能とか俺知らないんだけど、教えて貰えるか?」
「ええ、魔力回復には色々な薬草を使うわ。 秘境で取れる物ばかりだから貴重なの。 効能は魔力の回復の促進ね。 効果としては、このポーションの濃度によって回復速度が変わってくるわね」
「いきなり回復とかは無いんだな」
「魔力を込めたポーションは在りますが、希少だわ。 値段もね。 作成方法も秘匿されていて、一般には知られていないわよ」
「そうなのか、それも開発項目に入れようか」
「わかったわ、材料の目録を作るわね」
「ああ、次は治癒ポーションかな?」
「そうね、回復は体全体の疲労回復ね。 治癒はその特定部位の回復となるわ」
「回復魔法と治癒魔法の違いだよね」
「ええ、これらは魔法もあるから安く作れるわ。 薬草も比較的手に入れ易いの」
「瞬間に治るって感じかな?」
「ハハハ、そんなものは無いわね。 回復速度が速くなるのよ。 時間はそれなりにかかるわよ」
「毒消しも?」
「うん、そんな感じ」
「材料は植物だけかな?」
「いいえ、魔物の材料もあるわよ。 種類や部位によって効能の良いものもあるわよ。 伝説では人魚の肉が不老不死とか龍の血とか、神懸かった素材もこの世には存在するらしいわ」
「へぇ、そう言うのやっぱり居るのか」
「この辺は都会に近いからね、秘境じゃ居るのかもね」
妙なフラグは立ててはいけないと、カヅキはここをスルーする事にした。
「では解散、明日も頑張ろう」
「オー」「はっ!」はい」「はーい」「はい」
――――――
翌朝、いつもの鍛錬の時間がやって来たが、全員揃っている。
「はーい、今日はいい子にしていた皆さんに、おしらせがありまーすっ!」
いきなりのKY発言で、じっと見されてしまった。 いやぁ 失敗失敗、気を取り直してやり直しだ。
「えー、皆様の日頃のご愛顧に感謝いたしまして、この黒川かづきから皆さんにご褒美があります」
まだ意味不明な顔をしている皆に、収納袋から短刀を一振り出すと、ようやくその意味をのみ込んでくれた様だ。
「モモから前へ」
おしゃまなモモは裾を軽く摘まんで会釈し、跪いた。
えっ? 何か仰々しくないか。 これがこの世界の作法なんだろうと思いつつも、彼女に短刀を渡す。
「銘は『サザレイシ』だ。 小石が大岩に成長するが如き力と言う意味がある。 魔法を使う際の媒体としても使えるぞ」
「はっ! 有り難く頂戴いたします」
彼女は貰った短刀を、頭上高く抱え上げ両膝を少し上げると、そのまま後方へにじる様に下がった。
「次はミク、前へ」
「はい、おにぃ様」
「銘は『シャボン』と命名した。 泡自在に穢れを消し去ると言う意味だ。 同じく魔法の媒体として杖代わりに使えるぞ」
「はい、謹んでお受けいたします」
「次はミシェータ、おいで」
「はい、カヅキ様」
ミシェータは製作に携わっているから、驚きは無いはずだが、さも初めての様な態度を示してくれている。 やはり、空気の読める女である。 だが、試して見てさぞや驚くだろう。 他の短刀とは少し仕様が違うのだ。
ミシェータが恭しく跪く。
「ミシーの短刀は少し変わっている。 後で試してみると良い。 雷をも切り裂くと言う意味だ。 銘は『ライキリ』」
「ライキリ・・・・・・素敵ですわ、頂きます」
「この短刀は『守り刀』と言って、自分の身を守ってくれる由緒あるものなんだ」
「大事にします」「有難う御座います」「感謝致しますわ」
「最後はジュリナだな。 前へ」
「はーい、カヅキ」
えらく軽いノリでスキップして来たが、此奴はこいつで嬉しくて堪らないんだろうな。
「えらく長い柄なのね」
「そうですな、短槍と剣の中間ぐらいですか」
「色が派手なのね、鞘も柄も真っ赤だわ」
「うん?赤では無いな、これは朱っていう色さ」
「変わった剣ね、カタナって言ったかしら」
「これは、長巻って言うんだ」
俺は木の棒に麦わらを巻いて作った物を幾つか用意していたので、そいつで試し切りをした。 刀の軌道を見せるためである。 ジュリナが触らせて欲しそうだったので、させてみた・・・
「キャー! なにこれ凄い、サクサク切れるー」
彼女は長巻をクルクル回し、巻き藁を切って行く。 飛んでは切り、柄の長さを短く持ったり長く持ったりして振り回している。 そんな使い方じゃ無いんだがな・・・・・・ま、まぁ、見ている俺は思っていた通り、彼女の愛用する細剣より、こちらの方が向いていると実感した。
彼女は狼の獣人なので、特性はその優れたバネとパワーである。 狼の目は特筆するほど良くは無いので、武器に関していえば最適なのかもしれない。 ジュリナが『ハァハァ』息を切らせて戻して来たので、長巻の特性である『払い』も教えることにした。
女性陣に喜んでもらって嬉しいのだが、何故かクラークは元気がなさげな事にかづきは少し気になっていた。
ジュリナ:やったわ! とうとう完成よ。今夜は離さないわ、覚悟してなさい。
次回、クラークが大騒ぎの巻だわ。
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