異世界探求伝 第十八話 ズナンギルド新人研修
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かづきとジュリナ、ミシェータの三人は、ここミシェータの店の裏庭で出来たばかりの魔導銃の試射をやっていた。
しかし、いざ試射を行ってみると、異様な威力に三人は驚かされていたのである。 純粋な魔法では、個人の資質が左右されてしまうが、この魔導銃では資質は全く関係なく、魔道具として術式の威力だけがピュアに発揮されてしまうからだ。
「うはっ!」
「凄いね」
「凄いわね」
「こ、ここでの試射は辞めた方がいいかな」
「そうですわね」
「・・・そうね、衛兵に通報されて無いかしら」
「続きはどうしよう」
「そうね、風の障壁を張るわね」
同じ様に的を作り、二人にも試射をこなして貰ったが、おかげで弾倉一つで合計六発の弾が打てることが判った。 予備の弾倉を使うほか、弾倉自体に魔力を充填し直す事が出来る為に、交換時以外はほぼ無限で弾が撃てるはずだ。 しかも、威力の増減で発砲数も変わって来そうだ。
「威力の調節装置も作ろうか」
「うん、でも凄いものが出来たわね」
「ああ、予想以上だが属性の相性もあるからな」
「ああ、この部分に魔法術式を書き込んでいるのだけど、ここをカートリッジにすれば陣の交換が出来ると思うの」
――――――
「えっとラビ、魔法陣と魔法術式って? どう違うんだ」
「魔法陣ハ召喚魔法デ 術式ヤ図式デ 魔方陣ヲ描キ ソレヲ操ル者ヲ 召喚士ヤ交霊師ト 呼ビマス」
「ほう」
「魔法術式ハ 魔力ノ属性具現ト 威力ノ増減 オヨビ範囲 動作ノ起動式ヲ 視覚化シ 魔法構築シタ物デス」
「成程ね 似ていて非なる物だな」
「イエ 魔法陣ニ 魔法術式ヲ 描イタモノガ 数式回路デアリ 魔法陣ソノモノデス」
「待てよ魔法陣は召喚魔法なんだよな? てことは魔法陣で魔法を使うのも召喚魔法なのか?」
「肯定シマス」
「魔法陣とは図式や数式で回路として魔法術式を描いたもので、召喚魔法として魔法を召喚している訳だ」
「ソノ通リデス カヅキ」
「ふむ、つまりは魔法陣は魔法を具現化する方法そのもので、術式はそれを具体的に数値化して、表現したものなんだな」
「ソノ通リ カヅキ」
――――――
「使えそうなものは火、氷、土かしらね」
「風も刃を出す術式だったら、威力が出るからいけるわね」
「そこらへんは、ミシェータに任せるよ。 でも、この工房は重要機密だな」
「うーん・・・・・・結界張ったら逆に何かあるとか疑われそうね」
「じゃあ、屋敷に工房を作りましょう。 裏庭広いし」
「良いのか?」
「チームだし、もう私達公私共に一心同体だしね」
二人は顔を赤らめてお互いを見やる。 まぁ、俺は近くて便利だから良いのだが。
かづき達三人は、大事な図面と部品一式を箱に詰めて、屋敷に持ち帰る事にした。
帰宅すると優先事項として、夕食後にチーム龍の話し合いを行う事にした。
今回は『ジュウ』に関してだ。
「これってポケットにしまうの? 剣みたいな鞘が欲しいわね」
「ああ、ホルスターと言って皮でケースを作ろう。 後でデザイン書いておく」
「そうね、でもマントで隠さないと目立つかな。 革鎧の胸元に入れる?」
俺は人物のラフスケッチを書いて、考えられる場所を書いて行く。
「ベルトから腰、太股付近、胸元、脇下、隠すなら足元かな」
「胸元、脇下以外なら、刃物を装備する位置と変わらないわね」
「そうね、剣帯は女性でも普通にするけど、普段着とかドレスの時は付けられないわね」
「ああ、うん、ガーターホルダーなら使えると思うよ」
「どうやって取り出すのかしら」
「横にスリット入れて、取り出せるようにすればいいね」
「俺は脇下にするかな。 ホルダーに取り付けるベルトは何種類か書いておこう」
「うん、お願い」
「後は他人に使えなくする為の、個人認識の術式が必要だな」
「最初の持ち主に認証を与えるのね」
「魔力認識が良いわね。 掴んだ魔力を術式認識で、動作開始の式を新たに組みますわ」
「術式の切り替え方法を思い付いたんだけど、上部にスライドを付けてずらす度に術式交換とかどうだ」
「良いわね。 小型のギヤで動きを付けましょう。 予め幾つかの術式を組み込んでおけばいいわね」
「でも、余り色々詰め込み過ぎると、本体が大きく成り過ぎとか?」
「うーん、そうね」
「魔法術式って、何にに書いて入れるつもりだい」
「媒体は魔石よ。 オーブを板に切って、そこに式を書き込むのよ」
「だから、書く場所に限りがあるって事か」
「で、書き込み方法は?」
「うん、なるべく小さな術式を書いて、『トレース』で魔石に書き込むの」
「じゃぁ術式も縮小して写せるんじゃないか?」
「あっ、そうね、成程、判ったわ。 やってみる価値はありそうね」
「威力の強弱はどうするの?」
「ああ、それも組み込んでおくわ。 回路の縮小で小型化出来そうだし」
「それなら、女性用に小型のタイプをデザインしようか、隠し易いし。」
まだ暫くは、改良の余地のある銃開発であった。
――――――
時間は過ぎて火曜日の朝、今日は冒険者ギルドの講習を受けに行かなければならない。
朝の鍛錬と朝食を済ませ、俺は一人でやって来た。 実技は無いので、講習である。 俺の他には五人の研修生が居たが、皆若く見えるな、恐らく十代だろう。 読み書きもマスターしたので準備万端である。
講習はランク説明から始まった。ランクはFからSまであるらしく、ランクを上げる為には実績が必要となって来るらしい。 実績とはそのランクに応じた依頼の合計ポイントである。 ポイントが貯まれば、次のランクに上がる権利が派生する。
上位ランカーになるには試験があるが、前回の様なギルド職員の前での実技対戦だ。 これがBランク以上になると、ギルドが示したB級の強さがある魔物退治が必要となって来る。 他にもここからは信頼度と貢献度が必要で、信頼度は今までの依頼の完遂度らしい。 つまり依頼の失敗が少ない事が重要らしい。
次に貢献度だが、Cランクからは指名依頼があるらしい。 この指名依頼をこなす事と、ギルドからの討伐依頼を受ける事で、ポイントが加算されて行くと聞いた。 また、遭難者や救命行為もこれに挙げられるそうだ。 まぁ、俺は冒険者に余り興味が無い訳だから、関係の無い事と思う。
依頼はギルド内に貼ってある、ランク相応の依頼書を受付に持って行く事で受注。 これを完遂する事で達成、報酬が貰えるシステムになる。 依頼書を所持していれば、町の出入りには通行料が掛からないと言う事である。 まぁギルドとしては、魔物退治で安全が確保され、それによる食料、素材、オーブが手に入るので冒険者の優遇措置と言えようか
魔物退治の完遂は、それを倒した特定部位を提示する事だ。 特定部位はその魔物の特徴の部位、もしくは右耳になる。 他の部位の買取もギルド内で行われるが、綺麗なものほど効果に取引がなされる。 ここで一律十%徴収される。 冒険者はあちこち土地を移動するので、税金の取りっぱぐれが無い様にとの措置らしい。 勿論ギルド以外で直接取引も行えるが、申告しないでばれると厳罰があるらしい。 冒険者ギルドに入ればギルド員となるのは当然だが、こうした守るべく項目が幾つか定められている。 法の順守は当たり前だが、虚偽行動も処罰の対象となる。
次に講習は魔物の知識に入った。 この周辺で出現する魔物の種類と、取得部位の剥ぎ取りが説明された。 教本もあったので、銅貨十枚払って取り敢えず買っておく。 他に植物の本もあったので同じく購入。 そうこうしている内に、意外と早いもので昼過ぎに終わってしまい、ついでに防具が出来ているか、ガスドの弟であるギルベスタ防具店へ行く事にした。
ギルドを出る際に何人かがパーティの誘いを申し出て来たが、間に合ってると答えてそのまま出た。 余り目立つのは嫌だし、仲間に束縛されるのもうっとおしいからだ。
ギルベスタの防具屋に行くと、防具一式が出て来ていたのでその場で着替えてみる。
パナマ帽をかぶりクルリと回ってみたが、うん、いい具合だ。 グローブも付けてみたがフイットしている。 親指の爪先部分の強化を頼んでいたが、言い感じに仕上がっているようだ。 まぁ金貨四枚だったし・・・ああ、そう言えばジュリナの値引き交渉があったから、三,五枚か、うん百七十五万円位かな。
高いか安いかはいまいち判断の付かぬ所だが、ついでに武器屋に寄って、新しい弾を補充して試し打ちをやってみる。 「やぁ」「おう、おめぇか、出来てるぜ」
取り敢えず大きめの石があったので、新武器のグローブで身体指強化で弾いてみたが、軽く弾いただけで木っ端微塵だった。 「あちゃー」と思ったが、丁度邪魔な石だったから丁度良かったと、ガスド親方は喜んでいた。
「そう言えば、商人から砂鉄が手に入ったぞ」
「そうか、どれ位?」
「五十kだな。 ヴァレンチノ家から前払いしてあるとさ」
「そうか、炭屋を教えてくれないか?」
「うん? 燃料ならあるぞ」
「それはコークスか」
「ん? 燃える石だぞ」
「石炭かな、まぁいい、木炭が欲しいんだ」
「そうかい」
庶民が、かまどに使うという木炭を販売している店を教えて貰った。 ついでに、工房を借りられないかと聞いたら、ヴァレンチノ家の発注で鋳型の生産中だそうで、困ってしまった。 考え込んでいると親方は、昔使ってい居た廃炉があるので、そこを使って良いと許可を得た。 壊れても問題ないそうだし、少し修理も必要らしい。
炭屋を探し当て、店主に聞いて炭を見ると、高い物と安い物があるそうだ。
やっぱり備長とかかな? と思ったが単に固く締まっている物が高いのだそうだ。 取り敢えず安い物を五十kと高い物を二百k頼んだら、流石にそんなにどうするのかを聞かれたので、「鍛冶屋で使うんだよ」と言うと、鍛冶屋は火の石だぞと言われたが、この炭で遣りたいんだと言うと、変わり者を見るような顔をされてしまった。 安い炭は十k銅貨十枚で、高い方は十五枚だったので、代金は銅貨三百五十枚になる。 俺は銀貨三枚と銅貨五十を支払い、ガスド武器屋に配達する様に言い付けておいた。
途中で暇そうな子供を見付けて、ヴァレンチノ家に使いをやる。 ミシェータを呼ぶ為だが、火床と呼ばれる炉に風を送り込む「ふいご」には魔道具が使われているので整備が必要だったのだ。 火床を確認してみると、所々壊れているみたいだ。 粘土で修復開始である。 作業を熟しながら、思い出した材料を集めておこう。 この土地の窯は二種類あるようだ。 一つは石で組んだ窯で金属を溶かすために使っているみたいだ。 もう一つは土で出来た窯だが、鍛錬にはこちらの方が向いている。
俺は実家が武道家だった為に、一族の物は成人を迎えると守り刀を持たされた。
腰刀だったが、そのおかげで刀匠とも懇意であった。 だいたい刀鍛冶と言う職種は閉鎖的であり、外部の物は受け入れないと言うが、この匠の親父さんは古くからの付き合いがあり、相打ちも手伝わせてくれたのだ。 だから俺は全てとは言わないが、そこそこ詳しいのである。
たたら製法自体は余り使われていない古い製法だと親方は言っていたが、とても優れている精錬法だとも教えて頂いたし、日本刀の極意は優れた玉鋼だとも言い聞かされた。 実際そこでも簡単な炉を使い昔ながらの方法で、たたら製法で精錬していたのだった。 砂鉄五十kでも鋼はニ十k位しか取れない。 しかも、刃金とも言われる玉鋼は非常に希少な金属であるのだ。 酸化鉄を木炭で還元する方法だから、鉄鉱石でも良かったのだが、ここは拘ってやってみる。 そうこうして、必要な道具や材料を集めていると、ミシェータとジュリナがやって来た。
「カヅキ、今度は何やるつもり?」
「ああ、すまんな。 銃の製作中だったろ」
「ううん、カヅキの為なら直ぐに飛んで来るわよ」
ジュリナが紙の包装を解いているが、何かを持って来たんだろうか。
「これ見てちょうだい、『ワフク』だったかしら、ドラゴンチームの衣装が出来たわよ」
見ると深緑地の皮コートで大きな『龍』のロゴが刺繍されている。
「ドラゴンチームじゃねーよ。 チーム『リュウ』だぞ」
「あっ、御免、その呼び方だったわね。 リユー、リュウっと」
「ハハハ、刺繍が凄いな。 金糸、銀糸が使ってるんだな」
「字体がかっこいいから、刺繍の方が生えるって言われたのよ」
「素敵だな、いい出来だ。 だけど、ここは火を使うから着れないな」
「ああ、これ火耐性が付いてるわよ。 火竜の皮だから」
「あれ? 布で作るんじゃなかったっけ。 そうか、革細工屋で作ったんだな。 高かったろ、いくらだい?」
「うん一着、銀貨五十枚。 だってブティックの布の方が高いんだもん」
「うん? 結構安い?」ってミシェータが言ってはいるが・・・
高いだろ、金貨三枚で百五十万円だぞそれ。 しかし、それを着て喜んでいるジュリナとミシェータを目の前にしてでは、到底言えないよな。 まぁいいさ、金はまだある。
ジュリナ:かっちょいいねぇ「ジュウ」って、わたしみたいに攻撃魔法が苦手でも
魔法を放つ事が出来るんだもんね。 でも研修っていうのも退屈なのよね。
私なんか、寝て起きたら終わっちゃってたよ。アハハ




