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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
冒険編
14/172

異世界探求伝 第十三話 クラークの心情

クラークは、かづきからおっさん扱いされていますが

実は主人公より年下なんです。

 丁度その頃、ジュリナはクラークに稽古をつけて貰っていた。

久しぶりのジュリナデリカお嬢様との鍛錬は、クラークにとって実に喜ばしい事であった。 だが同時に気の休まらない気持ちとで、彼の心の内は揺れ動いていたのである。


ジュリナは、クラークに執務室へ呼ばれて案の定、モモとミクに対して教育上良く無いとのお叱りを受けていたのである。 クラークは久方ぶりに稽古をサボっていたジュリナを、鍛錬に連れ出す事に成功した。

そう、罰と称してだ。 しかし、内心は複雑であった。


恩のある、育ての親であるジョーゼボルト・ヴァレンチノの一人娘でもあり、己の義理妹でもあるジュリナデリカに、ヴァレンチノ家の跡目を継がせなければならないと思っていたからだ。 その為には一人前に早く育てたいのである。 


 獣人でもある彼女は、地元の学校通学当初から群を抜いた能力であった。

運動能力は言うに及ばず、精霊魔法の使い手で13歳で卒業後、王都の魔法学園に入学。 通いながらも、周辺で冒険者としても稼いでいたのだ。 まだ生存中であった、彼女の父ジョーゼボルトは彼女を自由にさせ、縛る事もしなかった。


 彼女が順調に育っていた矢先、彼女の母アンナデリカが事件に巻き込まれてしまう。

しかし、助けに行った父は残念な事に間に合わず、愛妻アンナを亡くしてしまった。 ジョーゼボルトはアンナの敵を討つ為に、一家を上げて死のの抗争が始まる。 血に血で洗った抗争は、相手を完膚無く叩き潰したが、その時ジョーゼボルトは病に罹っていたのだった。 ジュリナデリカは看病に明け暮れたが、力及ばず息を引き取る。 精神消沈した彼女は一旦学園に戻り、無事卒業したが義理兄クラークは跡目を彼女に託す。 だが、父ジョーゼボルトは亡くなる前彼女に、自由に生きろと言ってくれたとそれを固辞。


義理のあるジョーゼボルトに対して、跡目を継がせたいクラークと、一家は守りたいがクラークに後を継いで欲しいジュリナデリカの間には、大きな溝が出来上がっていた。 ギクシャクした関係で長い間続いていたヴァレンチノ家の朝練も、ついには行われなくなってしまっていた。


 そんな時に、商人護衛に派遣していたダンテが途中で拾った男が、ゴブリン相手ではあったが、半数以上を投石で瞬殺したと言うのだ。 しかも世間ずれしていて、討伐報酬にも興味が無いらしい。 驚いたのは、そんな男が武器も無く旅をしていた事だが、魔法さえも使った形跡がなかったらしい。 ヴァレンチノ家を束ねる者として、そこで考えられたのは金はある、隠密性が高い、世間知らず風に見えており、町の情報を欲している。投石の腕前はそこそこなのらしい。魔物と接した事が無い。


 まず、クラーク達が考えた人物像は、その也も含めて貴族の御曹司辺りと考えた。

初めてこの町に来たのであるなら、まずは情報が必要であると考えているのも、いたって普通だ。 モンスターに興味を示さなかったのでは、冒険者では無いはず。 無造作に金貨を出して、言い値で買い物をしたので商人では無い。 こうして知らない間に、金持ちの世間知らずのレッテルがカヅキに貼られた。


 しかしクラークはまだ腑に落ちていなかった。

恐らくこの男、カヅキが目指すのは宿か酒場の二択になる。 何故なら、冒険者ギルドには余り興味を示していなかったと言う話だったからだ。 その身が貴族であれば、それは普通であるし、貴族は冒険者等にはなったりはしない。 もし、それが食い違っていたら・・・何かを探りに来た? 危険な男なら消す必要が出て来る。 一家を守る為には、必要悪だと先代にも口を酸っぱく言いつけられている。 何をしても守らねばならないのは、ヴァレンチノ家であったしジュリナデリカお嬢様でもあった。


 誘導するべく手下に指示を出していた矢先、男はなぜか自らこの酒場に乗り込んで来た。

裏で控えていたダッグに面通しをして確認したのだ。 しかし、話を聞くとどうも貴族とは何か噛み合わない。 疑心案儀で裏にいたダッグに言うと、「お嬢に情報を聞き出させてみては?」と進言されるのだった。 

 

 まぁ手練れでは無さそうだし、万が一お嬢に何かあったとしてもここは一家の島内である。 さりげなく女が欲しいかを聞くと、世間話で良いと気の抜けた事を言うのだ。 暫くしてダッグから話を聞いて来たお嬢は、普段見せない様な興味津々の表情で入って来た。

 

しかも店内で飲む事も無く、さっさと部屋へと上がっちまった。 内心は心配だったが、部屋から弱い酒であるエールしか注文が無い事に安心してしまった。 あの後からお嬢の様子が変わったのだ。 暫くして降りて来たお嬢は「あいつは暫くあたしが監視する」と言い、次の日には「食客として向かい入れる」と気楽に連れ帰って来たのだった。


 稽古を真剣にしているお嬢は、久しぶりに見る充実した笑顔だった。

第一お嬢があんな風体の男に、あそこまで入れあげるとは思いもしなかったし、今まで男に興味すら抱いた事も無かったはずだ。 嬉しさ半分女となったお嬢に、嫉妬の炎が燃え上がったのは自分でも意外であった。


妹として? いや、女として見ていたのか? クラークは困り果てていた。 確かにクラーク自身が跡目を取り、お嬢を貰えば万事丸く収まるのでは無いかとの、思いが無かったとは言えない。 だが同時に先代の顔が頭に浮かび、自問自答を繰り返すが答えは出て来ないのだ。


 奴に稽古を付けるのを思い出して、庭へと降りて行った。

何とクロサワは、一心不乱に薪割をしている。 「何故薪割をしているんだ?」、近づくが俺に気付く事も無く、楽しそうに薪を割っている。 つい、あっけなく「精が出ますな」と自然に声が出てしまった。 


――――――

 お嬢との稽古が終わった。

短く感じたが、「ゼイゼイ」言いながらも目はキラキラしている。 そこで、お嬢はいきなり核心を付いて来た。


「で? カヅキをどう見てんの?」

「兄として言おう。 クロサワは不思議な魅力があるようだ。 隙が無さげで隙だらけ、弱くもあり強くもある。 まぁ、今んとこはこんなもんだな」

「ふふーん」

「あんまり、入れあげんじゃねぇぞ」

「判ってるよ」


 少し寂し気にそっぽを向いたお嬢に腹が決まった。

見守ろう、そしてもしも何かあったならそばに俺が居ると・・・まぁ不幸にしたなら、黙っちゃぁ居ないがな。 クラークが「ニヤリ」とした笑顔を見せたのを見て、ジュリナはまた笑顔に戻った。

「楽しそうね おにぃちゃん(・・・・・)


――――――

 カヅキは部屋のベッドで寝そべって、考え事をしていた。


うーん、金はあるがこのまま浪費ばかりじゃいけないし、直ぐに金になる木を見付けないとな。 などと考えていたら、ラビからのいきなり発言が飛び出した。


「銃ノ設計図ヲ 依頼サレテ イルノデハ?」

「そうだった。 定規、分度器、ペン、よし、ボードにフリーハンドで書いちゃおう」


取り敢えず安い紙でラフを書いた。 ラフを見ながらボードに部品割を書いて行く。 小一時間でパーツの見取り図完成したが、ボードが部品絵で一杯一杯だ。 コピーって無いのかな? 部屋を出てジュリナを探す事にする。 モモが居たので聞いてみると、鍛錬後で水浴びをしているそうだ。 そろっと風呂場に近づくと、水浴びの音がしたので脅かしてやろう。


「わっ!」と入って行くと・・・そこにはクラークが驚いてこちらを見ていた。

「しっ、失礼!」


後ろを見ると、モモとミクが笑っている。

「やったな!おめーら」

「きゃっ!」二人を両脇に抱えてグルグルしてやったら、喜ばれてこっちが目を回してしまい、また笑わてしまった。


「あら、楽しそうね」

「あ、丁度良かった探してたぞ」

髪を結い上げて「ポニテ」にしたジュリナは、とてもかわゆかった。


「紙に書いた絵を、魔法でコピーとか出来る?」

「うーん、特別な紙なら出来るよ」と、教えてくれた。 聞くとミシェータの店なら売っているらしい。 図面をボードに書いては見たが、またインクで書き直さないと持ち出しが大変なのだ。 しかもインクで書いてミスしたら、また書き直さなければならない。 


あー、鉛筆ならば修正も楽なのにな・・・ふむ、こうなったらやるしかない。 俺は行動に移す事にする。

「どこいくのー、まってぇー」と、ジュリナの声が聞こえたが、「すぐ戻る」と答えて屋敷を後にする。

まず向かう先は、おっさんの店ガスド武器屋である。


「ハァハァ、おっさーん居るか」

「なんだ? カヅキか、弾は今製作中だぞ」

「ああ、それはいいから黒鉛と粘土を分けてくれないか?」

「いいが、何に使うんだ?」

「急いでるから後でな、早くしてくれ」

嫌がるガスドロビコフに、奪い取る俺、何か人生の縮図を垣間見た気がする。 「出来たら、最初に持って来てやるからな」と、言葉を投げ捨てて、俺は走り帰ったのだった。


「たらいまー」

「おかえりなさいませ」


 受け答えをする時間も惜しく厨房へと押し入り、鍋と秤を調達して風呂へと直行した。

黒鉛の重さを量り鍋に入れて蓋をしたら『クラッシュ・オン!』、中身を砕いて粉々にするイメージは出来ている。 しかし、鉱石なのでとても硬くて砕くにも時間が掛かり、魔力を多く使う様だ。 「鉱石なら土魔法を使った方がいいんだろうな」音が静かになったら次は『ミキシング・オン!』だ。 そのイメージを維持したまま次の作業に移る。 粘土の重さを量って量を調整、水も図りまずは十%の粘土水を作り出す。 

材料は簡単なので、後は比率だけである。次にニ十%の粘土水を作り、黒鉛の粉を半分づつ二種類の黒鉛の塊が出来た。 両方を丹念に練り込んだらこれを絞り出し、乾燥後に焼き上げるのだ。  俺の足は武器屋へと向かう。 途中、ジュリナと擦れ違ったが、今は構っている暇は無いのだ。 頭の中はもう一つの事しか考えて居なかった。 

「おっさーん、戻ったぞ針金作る道具あるか?」

武器屋のガスドを捕まえて聞き出すと、直ぐに器具を教えてくれたので、取り敢えずやってみる事にした。

「これを絞り出したいんだ」と見せると、材料を見て何かを感じたのか、手伝ってくれた。 有り難い。


 まずは材料を押し込めて、粘土状のブツを入れる。

そうして、腕を強化して押しを掛けながら空気を抜いて行く。 『グラビティ・オン』五倍。 先端を開けて絞り出して行くが、ガスドに頼んで揃った長さに切って丸い筒に入れて貰う。 多少の誤差は目を瞑るのが正解であろう。 二種類全部絞り終わると、これを乾燥魔法にかける。


丸い筒を回しながら乾燥させる事で、細い芯の曲がりが矯正されて、真っ直ぐな芯に出来上がるのだ。 焼成するのに、焼いても割れない石の箱が欲しいと言ったら、ガラス加工時に使っていると言う石箱を持って来てくれた。 これで後は焼くだけだが、半日掛けて焼いてくれと頼んだら、怪訝な顔をされたので仕方なく、銀貨を二枚程掴ませると、ガスドは胸を叩いて「任せろ」と言っていた。 まったく現金な奴め。


 続いて次に魔道具屋のミシェータの元へ向かう。

「おいミシェータ、木工ボンドがあるか?」と言うと、奥から眠そうに出て来た彼女は、いつもの垂れた目を細めながら缶に入った物を渡してくれたので、俺はそれをひったくる様にして出て行った。

「ちょっと、設計図は?」と、背後から何か聞こえるが、答える暇は無い。 俺は逃げる様に缶を握りしめ、ダッシュで帰宅する。


張り切って動き回っていたら、ずしりと体が重く頭がガンガンして来た。 身体強化をやめて、ふらつく足を拳で殴りながらも歩みは止めない。

「ラビ、これって魔力の使い過ぎなの・・・・・・かな?」と、聞いていたら急に意識が飛んで行ってしまった。

「うーん・・・バタン!」 前のめりに倒れると、そのまま気絶してしまったようであった。


――――――

 どれくらい、意識を失っていたのだろうか? 気が付くと、そこはベッドの上だった。

自分が魔力切れで倒れた自覚はあるが、ここはどこだろう。 身体を(まさぐ)ると下着にされている。 まさか、身ぐるみはがされた? 起き上がると頭がまだ「ガンガン」する。


「いてて」

「起きたわね」と、ジュリナの顔を見て俺はホッとした。

「ああ、迷惑かけたな。 すまん」

「いいわ、追いはぎに会うまでには、見付ける事が出来たもの。 うふふ」


彼女はあの後、直ぐに行き倒れていた俺を保護してくれていたのだ。

「これをお飲みなさい」と、差し出してくれた物は緑色の濃い液体だった。 木のカップから「ぐぃ」と一気に飲み干したが・・・うん 不味い。 何かの葉っぱのジュースだったが、やけに濃かった。

「魔力の回復に役立つわ。 普段は薄めて飲むんだけど、今回は罰として原液だわ。 うふ」

彼女の手が額に触れるが、又すぐに眠気が襲って来た。 おやすみzzz


 次に目が覚めたのは、日が落ちかかった夕暮れだった。

朝から重力魔法を使いっぱなしで薪割り、それから身体強化で鍛錬、続いて鉛筆作りに奔走。 思えば魔力の垂れ流し状態であった事を思い出し、深く反省するのであった。


「コンコン、もう起きられますか? 夕食のお時間です」呼びにやって来たのはミクであった。

「ああ、今行くよ」と、起き上がったが体が悲鳴を上げていた。 筋肉痛の様だった。

「筋肉痛ですか、回復の魔法を掛けますか?」

ミクの言葉に、俺はふと考えてラビに尋ねた。


――――――

「なぁラビ、回復魔法の概念を教えてくれ」

「回復ノ概念ハ 細胞ヲ活性化シテ 元ニ戻す事デ 身体ヲ元通リニ スル事デス」

「治癒とは違うのか?」

「治癒ハ更ニ高度デ 身体ノ運動ヲ 阻害スルモノヲ 排除シ コレヲ修正シマス」

「怪我、病気を直すって意味で良いのかな」

「ハイ 疾患、外傷ニ対スル治療ガ 成功シタ状態デス」

「そっか、回復と治癒は違う物なんだな。 毒消しとかは治癒魔法で良いんだな」

「肯定シマス」

「そうすると、鍛錬した筋肉の強化した分も、回復や治癒で元に戻るって事か?」

「筋肉疲労デノ 炎症、外傷ハ 治癒魔法デ 軽減出来マス」

「そうか治癒魔法が良いんだな」

「ハイ 有、無機物ヲ内服ヤ ペーストスル事デモ 同様ノ効果ガ表レマス」

「そう言えば、アミノ酸は疲労回復になるよな。 ペーストは湿布だな。 ありがとう、ラビ先生」


ラビに、回復魔法と治癒魔法が別々の魔法だと教えられ、カヅキは少し混乱しながらも理解力を上げて行くのであった。


次回かづきがいよいよ刀匠にチャレンジの巻です。

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