表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界探求伝  作者: 勘乃覚
躍動編
103/172

異世界探求伝 第百二話 午後のランク試験開始

ようやくサウリーネ女史の魔の手? 

から逃れた彼女達はランク試験会場へと出向く事になった。


 現在キャッスルフォートでは、慌ただしく様々動きがあるのだが、その一つはキャッスルフォート兵の冒険者ギルド加入と、ランク試験である。 クラークの婚約者となったカレンであるが、父親にズナン支部のギルド長ロナードを持ち、本人も現役のギルド勤務の受付嬢であった。


カレンがジュリナ達の場所に訪れたのは、冒険者パーティ・チーム龍のメンバーである彼女達にもランク試験を受けさせる為だ。カレン本人に他意は無かった事だが、ジュリナ達にとってはサウリーネから離れられる絶好の機会と言う事で実のところは歓迎されていたのだ。 そんな彼女らと共に昼食を共にする事になったのだが。


「ああ、お腹一杯! あれっ? ディアンヌとジュリナ、サウリーネ先生までも何でキノコ残してるのかな?」

「コホン、これは毒キノコにございますよ。 ミシェータ様」

「げっ! い、今なんて?」


どうやら、これはサウリーネ先生の罠だったようである。 つまりは食事の名にかこつけた毒見訓練だったのだろう。


「うげっ、トイレトイレ」

「危険回避! 毒消しどくけし」

「もう! ディアンヌもジュリナも何で教えてくれないのよ!」


「だって、さっきの講義でこのキノコは習ったわよ」

「ええ、ジュリナさんの仰る通りですわ。 しかもサウリーネ先生は、いつ毒が盛られるかの注意が必要と仰っていたでは無いですか」

「確かにそうだけど、私たちの食事にって、何なのよもう」


「ミシェータさん、それにモモさんにミクさんも良くお聞きなさい。 賊がすでにこのキャッスルフォートに侵入しているケースも想定しなくてはなりませんよ。 つまり、そうした危険性は出先だけではありませんよ。 人を守ると言う事は、己が無事でなければなりません」

「ふあーい、サウリーネ先生」

「てかさ、毒消し毒消し」


「大丈夫ですわ、お三方。 同じお皿に毒消しが入っていましたから問題はございませんわ。 しかも、少量ですので、万が一症状が出ても舌先が多少痺れるだけですのよ。 味覚欠損症状が怒るキノコですわ」

「さすが、薬剤師だけはありますのね、ディアンヌ様」

「ホホホ、わたくしの唯一の取り柄ですわ」


「しかし、ミシェータさんは魔法士としての技量も、かなりのものと聞き及びますが、こと薬学の知識ヘッポコですわね」

「わたくし、魔法だけは得意で学園では常にトップでしたのよ。 それに魔道具の扱いも一流ですわ、ねぇジュリナ」

「まあね、魔道具はさておいて、運動音痴で魔法以外の事はダメダメだけど、アハハハ」


「ジュリナさんも薬草にはだいぶ詳しいのですね。 このサウリーネ、今までお嬢様の教育係としても見直しましたわ」

「う、ん あたし魔法苦手だからね。 植物の知識は必要枠ってところかしら」

「でも、ジュリナさんもミシェータさんもそれぞれ、剣技に秀でていたり魔法に秀でていますが、私はどちらも全く駄目ですわ」


「あら、でも薬草学は極めていらっしゃるので、鉱石の知識を得る事でこの中では一番薬学マスターに近いですわよ。 ダンスもお上手でしたし」

「いいえ、頭が下がる想いですわ。 これからもご指南の程を、サウリーネ先生」

「ふむ、謙虚は美徳ですわ」


食事も済み、サウリーネに翻弄ほんろうされてきた女性達であったが、その後食堂を後にすると、カレンに連れられて訓練場へとやってきた。


「ここでランク試験なの? カレンさん」

「ええ、ジュリナちゃんはとう様が視るって言ってたから、ミシエータちゃんは私が診るわね」

「カレンさんが試験官なのですか?」


「ホホホ、ギルドじゃ受付嬢をやっていますけど、こう見えてもランクB保持者ですのよ」

「あのお、もしかしてわたくしもこのランク試験とやらを受けるのですか?」

「ああ、ディアンヌさんは薬草学の有資格者だから、準マスタークラスとして認められるわ。 つまり、現時点で貴女のランクCは確定よ」


「えっ! そんなに高ランクを戴けるのですか」

「ええ、薬草学は病や怪我の治療には欠かせない重要なものだし、それも含めて魔物の部位の効能までの理解度があるのは冒険者としても貴重な存在なのよ」

「モモとミクさんはランクFで、ジュリナデリカさんとミシェータさんはランクEだったわね。 さぁ、始めましょう」


 こうして午後のランク試験に合わせて、合同選考が開始される事と相成った。 午後は魔法士によるランク試験で、試験官が用意した壁に向かって、基本の四属性魔法の風、火、水、土の四属性魔法と得意魔法を一つ披露する事でランク試験とする。 魔法士協会のランク分けに準ずるものだが、異なるのは魔法の威力などでは無く、その技量と短縮詠唱や移動詠唱や魔方陣が、描けるかなどの技術が主体となっているようだ。


宮廷魔導士などは高度な魔術で、魔法技術論や魔術式の技量が問われるようだが、実戦においては大魔法などほとんど使える機会など無く、たとえ上手く放てたとしても魔力切れで倒されてしまっては、元も子もないのである。 よって、冒険者で活躍する魔術師でも需要が高いのは、手数が多く使える事で仲間を補助できるサポート役が重宝され、回復魔法の使い手は引く手あまたなのは言うまでもない。


冒険者のランクは、何も物理攻撃に長けているものだけが、ランクを優先されるものではない。 魔法士も冒険者向きのスキルを身に付ける事で、上位ランカーになれる可能性を秘めている訳だ。 また、冒険者に限っての事で無いのだが、物理攻撃にも魔法にも長けている者も存在するが勿論、並大抵の努力でなせる事ではない事をここに記しておこう。


キャッスルフォート側の兵達も、物理攻撃力か魔法力のどちらかに極端に傾いているが、冒険者としての能力を図る為に、初心者であるFランク以上のEランクに上がると、その両方の能力をギルド側が審査するのである。 所属する冒険者たちの能力を推し測って準備しておくのも、いざ有事の際に備えての事でもあり、たまにある複雑な依頼の為にも情報を保有する事そのものに、大きな意味があると言えるだろう。


「やっぱり、どこの獣人たちも魔法は苦手のようね。 でも魚人はやはりと言うか、水系の魔法は得意としているわ」


兵達の試験官はチーブ・アメントで、回復魔法の得意なランクCの魔法士である。 ギルド職員で人族だが、万が一の際の為の回復要員である。 目標となる土壁はカレンが生成しているが、この壁には属性魔法を軽減する魔方陣が描かれている。


「さあ、まずはモモ・ヴァレンチノさんから行きますわよ」

「ほーい」


モモは、袋から守り刀で魔法の媒体として使用する、愛刀サザレイシを取り出した。 これはかづきのこさえた脇差なのだが、芯に魔石が練り込まれているもので、ミシエータの彫った魔方陣で魔力を増幅させる効果のあるものだ。


「その剣、もしかして魔剣なのでしょうか」

「あ、うん、使っちゃダメなの? カレンさん」

「い、いえ、その様な高価で希少な物を貴女のような年若い者が持つ事に、少し違和感を感じただけですわ。 容も他の剣とは違うようですし、ですがお気になさらずどうぞ」


モモが魔力を通すと、魔剣サザレイシは薄オレンジかかった光を放ち、それぞれの属性魔法の詠唱を行った。 


『何て事! 魔方陣が彫られたマッドウオールに穴が開いた?』

「えっとカレンさま、モモまだ得意魔法っての無いの」

「あ、いえ、充分よ。 火と風魔法に適性があるから磨くと良いわ。 そうね威力のランクはCってところだけど、その魔剣に依存しているからランクはDね」


「わーい、有難う。 でも、適正とかも解っちゃうって凄いね」

「多分、その魔剣のお陰だわね。 薄オレンジは火と風の中間属性を意味するのよ」

「へー、そうだったんだ。 やったね」


「次、わたしね」

「がんばー、ミク」


ミクもモモと同様、愛刀ジャボンを取り出すと魔力を込め、標的のマッドウール目がけ、四つの魔法詠唱を行った。 モモの魔法の威力ほどは無いが、全体的に重い一撃である事をカレンは見抜いていた。 カレンはこの娘たちが魔剣を使用しているとは言え、普通に使いこなしている姿を見て、ただの小さな子供であるという認識を捨てざるを得なかった。


「ミクちゃんは黄色の光だから、水と火の魔法の才能があるわ。 それから壁全体に魔法を放ったのはわざとなの?」

「うーん、ミクはモモみたいに、魔力の圧縮が上手く出来ないのです。 標的全部見ちゃって、全てにぶつけたくなるって言うか、その…」


「なるほど、ミクちゃん。 あのマッドウオールは四つあるでしょ。 その全ての中心に分けるイメージで魔法を放ってごらんなさい」

「はい、やってみます」


カレンから言われた通り、四つの的全てに気持ちを込め水魔法の詠唱を始めたが、魔力の塊は四つに分断され、それぞれの的目がけて中心へと当たったのだった。


「やっぱりね、ミクちゃんは全体魔法の適性が凄く高いわ。 とってもレアだからそのまま技を磨くと良いわ。 水魔法系は回復魔法もあるから、全体を支援できる優れたヒーラーの素質があるわ」

「そうなんですか! モモっ、褒められたー」

「今の所、ランクはEだけど、この後の訓練次第では高ランクになれるわよ」


「あーあ、モモとミクに追い越されちゃったわね、ジュリナ」

「フンっ! 魔法なんか使えなくても、剣技じゃ負けないわよ。 最近はヘシキリにも魔力を込められるようになってきたんだからね、威力倍増よ」


ミシエータの出番がやってきた。 彼女は魔法士と言うよりも、既に魔導士のレベルにある。 魔法士は魔法が使えるレベルの者を指すが、彼女は魔道具の良し悪しは別として専門に扱ってきた為、魔法そのものの成り立ちをよく理解しているのだ。 かづきに言わせれば、科学的根拠を持ち合わせている人物だと言う。


かづきの魔法の師でもあるミシェータだが、逆に彼女はかづきを教師としてあがめているのであった。 ミシエータの愛刀ライキリは、怪しげな濃い紫色の光を放ちながら、彼女はとある魔法を放って見せた。


「えっと、高ランカーの条件は短縮魔法だったわね。 ジュリナだけじゃなく、わたくしも身体強化が使えるようになったから、もう鈍足とは言わせないわ」


『魔法の全てを跳ね返せ・リフレクトダブル』


彼女は自分の足に強化魔法をかけると、走りながら壁にリフレクトの魔法を二回続けて唱え、続けざまに火の矢と風の矢を両手で同時に放って見せた。 リフレクトは魔法を跳ね返す高度な技であり、一度しか効果は無いが術者にそのまま跳ね返す事ができる。 但し、込めた魔力以上の攻撃魔法であれば攻撃が突き抜けて来るので、相手の技量を確認してからの発動が必要となるのだ。


続けざまに放った火の矢と風の矢は、当然術者であるミシェータに跳ね返されていくが、既に彼女の愛刀ライキリの刃先には土魔法と水魔法が展開されており、それぞれの矢を相殺して見せたのである。


「とうさま、今ご覧になりましたか?」

「こりゃ、おめえが試験官どころじゃねぇな」

「なぁ、ミシエータ、ルクサ王都魔法学園卒業で、その腕前じゃ王宮に呼ばれたんじゃねぇのか?」


「あら、この技はこちらで覚えたんですわ。 ロナード様」

「ほう、師匠はどなたか聞いても?」

「うーん、あまり言いたくは無いのだけれど、キャッスルフォートで一番偉い人とだけ言っておくわ」


「ほう、って事は奴は魔法も使えるって事かい?」

「まあね、試験の続きいいかしら?」

「おう、すまねえ、続けてくれ」


ミシェータは続けて得意魔法の実演を行うようだが、この魔法はかつてサキュバスの砦門を強制的にこじ開けた魔法である。 かなり魔力消費の多い大魔法の部類に入るが、常に魔力を貯めた魔石を常備しておく事で、魔力切れの危険を極力抑えているのがミソである。


「大地に根差す灼熱の焔よ・彼の地に集いし・巨大な(ふいご)にて・怒涛の勢で彼の門を蹂躙(じゅうりん)せよ」

『メルト・フレーム』


見た目はファイヤー・ウォールの呪文の様で、目標となる壁を炎が包み込んでいるが、その灼熱の焔は壁を真っ赤に染めやがて黄色に近づくと、壁がドロドロに溶かされていった。 こうなってしまえば、魔法攻撃軽減の為に施された魔方陣も、全く意味を成す事は無いだろう。


「メルト・フレーム…初めて見たわ。 とう様、ランクBのわたくし如きでは、ミシエータさんの技量を推し測る事はできませんでしたわ」

「フーム、モーリスを連れて来るんだったな。 おい、ミシェータ嬢ちゃん、あんたのランクはBだ。 後で手続き頼むぜ」

「まぁ、嬉しいわ。 有難うございます」


「えっと、ジュリナ嬢ちゃんも魔法がスゲエのかい?」

「えへへ、あたしはからっきしだわ。 精霊魔法で誓約魔法が使えるくらいね」

「ほう、レア魔法だな。 最低Cランクはあるぞ」


「そうなんだ、でも武器の扱いの方が得意だわ」

「ほう、じゃあ俺様が直に相手してやるよ」

「いいけど、木刀なんかつまらないわ」


「いいぜ、得物は何でも有りだ。 本気でかかってきな」

「やったー」


こうして、ズナンギルド長ロナード・ミルフォード自ら、試験官として登場する事になった。

ロナード:何でこいつら全員魔剣を持ってんだ?

 カレン:しかも、見た事も無い剣ですが、意匠は同じ職人のものですわ

ロナード:ふむ、これだけモノを打てる職人なら名前が売れてるはずだがな

 カレン:はい、探っておきますわ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ