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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
躍動編
101/172

異世界探求伝 第百話 特訓の成果

ここキャッスルフォートでは、現在ズナンの冒険者ギルドによる冒険者ランク試験が行われていた。


かづきに鍛えられたキャッスルフォート兵達は、果たして同一た戦いを見せるのであろうか。

 ここニショルクサ王国では、僻地に近い場所にあるズナンの街であったが、その街の冒険者ギルド長を務めるロナード・ミルフォードは、己の勢力を伸ばす為にもキャッスルフォートの力を欲している。 現在行われているギルドランク試験であるが、通常冒険者としての登録を済ませると自動的にランクFとなるのだが、国の兵士などが自分の技量を試す為に、冒険者ギルドでランク試験を行う事もあると言う。


本来は入りたての冒険者に特例を応用する事は無いが、かづきの例のようにパーティにクラークのような高レベルの冒険者が居る場合、パーティとしての強さの基準を確かめる為にもランク試験が行われる場合がある。 しかし、今回のランク試験の場合、新たにこの場所にギルド支部を構える事になっている訳で、そこに一定の冒険者が所属している必要がある。 そういった意味でも、キャッスルフォート所属のギルド員を増やしておく必要があるわけだ。


 現在ランク試験が行われているが、キャッスルフォート訓練施設では、人狼族のザジオ・マーズ対コームー・ヤーン戦が繰り広げられていた。 その戦いの行方はと言うと、ザジオの上段攻撃をフェイントにした柄頭の突きにより体勢を崩されていた。 盾というものは、力点が体の中心に近ければ近いほど防御力が高まるものだが、コームーが突きを受けた箇所は胸に近い位置であり、弾く事もいなす事も叶わなかった為にまともにザジオの攻撃を受け止める事になったのだ。


ザジオは盾を離し、相手の剣を持つ側の手首を掴むとそのまま捻りを入れて抱え込み、いわゆる一本背負いで勢いよく地面へ投げ落としたのだ。 ザジオは相手の持つ木剣をポーンと蹴り飛ばし、自分の持つ木剣をコームーの首に当てて、ギルド長ロナードの顔を見つめるが、ロナードが我に返るまでには少し時間が必要であったらしい。


「そっ、そこまで! おい、手当だ、急げ」

「この人、気絶してるだけだから大丈夫だよ」


多少柔らかな土とは言え、地面に勢いよくもろに叩きつけられては流石に分が悪い。 受け身ができればダメージは抑えられただろうが、如何せんほとんどの冒険者は剣技は磨いていても、魔物とは違い対人の接近戦は不慣れであると言えよう。


「わりいがザジオ、ランクBを倒したとしてもBはやれねぇな。 Bになるにゃあ、戦いとは別の知識がいるから後の講習で納得してくれや。 取り敢えずおめーはランクCをくれてやる!」

「うお、やったランクCか、やったぞビームス隊長」


「うんうん、さすがザジオだ」

「次は俺が行く!」

「おう、行ってこいズグロウ」


ザジオに感化されたズグロウは、渡された木剣をブンブンと振り回しながらも試合場へと突き進んだ。 先程伸びてしまったコームー・ヤーンは、同僚のギルド職員チーブ・アメントから介助を受けているが、大したダメージは負ってはいないようである。 ナルムはズグロウを一睨みにすると、ひとかどの素質を感じたのだろう、木剣から木槍に持ち替え対峙する。


「ズグロウだ、いくぜ」

「武器を持ち替えてもいいのだぞ」

「うーん、したら盾は要らねぇから木剣をもう一本くれねえか」

「おう、ほらよっ」


ナルムは木槍の先を器用に使い、木剣を絡め取るとズグロウに投げてよこした。 この様子を見る限り、ナルムは剣などよりも、さらに優れた槍使いといったところなのであろう。 ズグロウが盾を捨てて、双剣を選択したのは正解であった。 盾だと槍で弾かれた隙に、切っ先を突き込まれるのは火を見るよりも明らかである。


「よし、用意はいいな。 始めっ!」

「おう!」

「ハァアーッ」


ギルマス・ロナードの掛け小声で、ナルムは槍を細やかに回しながら、ズグロウの胸元を目がけて突きを入れて来る。 カンカンと鳴り響く乾いた木打の音が、心地よく鳴り響いて来るのだが、ナルムはズグロウがただ者ではない事を既に見抜いていたのだ。 パワーと素早さを兼ね備えている者相手では、近接戦は避けなばならないと教え込まれてきたし、身体にも染みついている。


ナルムは勿論、剣も使いこなすが普段使用する武器はやはり槍なのだ。 槍の良いところは遠い間合いからの強打が打てるところで、薙ぎ払いも相手にとってはやり辛いもので、突きだけでは動きも短調になってしまう。 また威力も剣より優れているので、こうした手数が勝負となる模擬戦などでは、非常に有利性のある武器なのである。


ナルムは切っ先を回しながら突きを繰り返し入れ、目を慣らした所で木槍の長さを変え、上下左右にと振り回して来るが中々隙を見せる事はない。 ズグロウの方はと言えば、両手に木剣を持ちナルムの突きを真横に弾いているが、これは正しい防御姿勢と言えよう。 人は縦に長い生き物であるからして、上下に弾いても攻撃を弾き切れない事も多々あるし、そこから隙が生まれるものであると言う事は、訓練兵の頃に既に叩き込まれている。


逆に槍の弱点も心得ている訳だが、なんせ槍は素早い動きで突きが来るし、中ほどで持ち替える事によって、切っ先でも石突の両方で攻撃ができる厄介な代物である。 相手は手慣れた槍使いである事は、ズグロウも十分理解できている。 従って手練れであるナルムが簡単に隙を見せる事はまず有り得ないが、隙とは作りだすものだと、かづきからも口を酸っぱく言い含められていたのである。  


 ズグロウはタイミングを計っていた。 横からの薙ぎ払いはどの位の速さか、そしてその頻度は頭部への打撃が少ないところを見ると、逆に狙いを定めている事も身体で体感する事ができていたのである。 その時足元への薙ぎ払いがやってきた。 ここで飛ぶのも間違いで無いが、あえて後ろに後退する事でズグロウは軽く後方へと飛んで見せたのである。


その瞬間を待ちかねていたかのように、ナルムは槍先を地面に突き立てながら、肩に槍を背負い滑らせこちらへ突進してきた。 ナルムはまるで棒高跳びの様に突き立てた槍先を持ち替えると、その反動を利用して、木槍をズグロウの上段へと渾身の一撃を見舞ってきたのだった。


あまりにも決定的な攻撃であった為に、誰もがズグロウにその一撃が入るものと思われたが、ズグロウにとっては逆に嵌め手の一つであったに過ぎなかったのだ。 ズグロウは後ろに飛んだ瞬間に左足に身体強化を掛け、すぐさま地面を蹴り込むと前方に猛進して見せたのである。 ズグロウは飛び出した瞬間に打ち込んできた木槍に蹴りを入れると、そのまま全体重をかけてのショルダータックルをぶちかましたのである。


ズグロウの威力ある肩からの体当たりは、あえてその威力を説明する必要の無いほどのパワーで、ナルムをまるで紙人形のように吹き飛ばして見せたのである。 ズグロウが追い打ちを掛けるように反応を見せたのもつかの間、そこにギルド長ロナードの待ったの声がかかったのである。


「よし! そこまでだズグロウ。 おめえもランクCだ、ご苦労さん」

「ああ、ありがとうございます」

「おめでと、ズグロウ、タオルどぞ」


「おう、あんがとタム」

「うん? そのお嬢ちゃんも兵士なのか?」

「あ、いや、こいつは、そうだな…召使のようなもんかな」


「ズグロウそりゃひでーぜ」

「うーん、では何と言えば」

「婚約者だろ、うへへへ」


「ちっ、違うぞザジオ!」

「うへへへ」

「こ、こいつはただの贈り物だ」


「オクリモノ?… タム悲しい」

「い、いやタム、誤解だそうでは無くてな…」

「まぁいい、ズグロウ、ところで残りの奴らでおめーより強えーのって居るのか?」


「ふむ、ビームスと熊獣人族のギルルには勝った(ため)しがない。 それから魔法士達とは近接戦の経験は無いな」

「魔法士は別口で試験するから構わん。 ビームスはおめえらの隊長格だったな。 よし、ビームスとギルルとやらはランクCだ。 他まだ試験受けてない奴ら全員出てこいや」


ぽかんとしたビームスとギルルを横目にして、ロナードはキャッスルフォートの兵士の実力を、まざまざと見せつけられた事でその技量に本心驚いていた。 と同時に、これ以上試験管にダメージを与えたくないと言う腹積もりもあり、魔法士以外を試験場に呼び寄せたのである。


「よし、おめーら、俺を一発ずつ殴れ」

『えっ!?』


ロナードは、自分に身体強化を掛けて殴らせる事によって、その力量を図ろうと言うのである。 技量の程はこれまで見てきた連中を見れば、特に問題はなく、後はパワーだけと言う安易な考えで、ランクを決めようと言うのである。 まったく野風増のような男の考え付く事である。 残りの兵たちは仕方なくロナードの言うままに思いきり彼のお腹に打ち込みを行い、その威力の程でレベルを決められてしまい、魔法士以外のランク試験は完了となった。


「よし次は魔法士のランク試験だ。 昼食を済ませて一時間後に再集合してくれ」

『イエッサー!』


――――

 丁度その頃ジュリナ達女性陣は、メイド長兼教育係のサウリーネ・オズモンドに、淑女たるべくマナーの教練を受けているのだが、何もお嬢様に仕立て上げようというものではなさそうだ。 この世にはいろんな人種がおり、国によっては大きく上流社会が実権を握っている場合が多く、そうした世界の人物らと渡り合う為には、相手との対等の知識や良識が必要となる。


つまり、その為の役作りのひとつだと言う事にもなるだろう。 ともあれ、彼女らはかづきの事となると一途な所がある。 サウリーネはそこにかづきの(しとね)権とも言える、夜のスケジュール管理をその切り札と言うか弱みにして、彼女らにやる気を出させるつもりでいたのだ。


「さぁさ、お嬢様方。 次は上の階へ参りますわよ」

「ふえぇー、次は何すんのよ。 サウリーネ」

「全くだらしのない! ジュリナお嬢様、その言葉使いはいただけないですわね。 減点一と…カキカキ」


「ううっ、サウリーネ先生次は何をなさるのかしらね、ホホホ」

「次は九階のお部屋で、淑女の言葉遣いの教練ですわ」

「あっ、そうですのね。 楽しみだわ、ねぇ貴女達」


「ちょっと、ジュリナ面白すぎぃ、ですわよ。 んっ、ホホホ」

「大変ねおねぇ様たち、まぁ付き合ってる私達も大変だけれど」

「まぁね、ミク」


「ミクお嬢様とモモお嬢様は、学業の進み具合も確かめさせていただきますから覚悟なさいませ!」

『うげっ』

「ん? 何か」


『いたっ、ちょミク何すんのさ』

『しっ』

「い、いえ、サウリーネ先生にお教えいただくなんて光栄ですわ」


『何よミク』

『わたくしたちも、権利を頂けるチャンスがあるのよ、モモ』

『えっ!? そうなんだ』


『そそ、だから大人しくしてなさい』

『ほーい』


 こうして大人しくサウリーネの教練を受けていた彼女らは、午前中の授業が終わるのを見計らったように訪ねていたのが、カレン・ミルフォードだったのである。 カレンは今日がギルド出張でのランク試験と言う事もあり、ついでに彼女らにも受けて貰おうと言う腹積もりでこの場に出向いてきたわけだが、久しぶりに根を詰めさせられていた彼女たちにとっては、まさに渡りに船といったところであった。


「サウリーネ学部長殿、午後から彼女達をお預かりいたします」

「これはカレン・ミルフォード様、わざわざお越し下さらなくとも予定は承知しております。 ですが、ついでと言っては何ですが、ご一緒に昼食をお済ませあそばしでくださいまし」

「承知致しましたわ。 サウリーネ学部長殿」


この国の一般人のお昼は、ごく簡単な食事で済ませる事が多い。 薄手のパンであるラヴァシュを半分に切ると、中が空洞になっている為に色々と食材を詰め込む事ができる。 この半切りのラヴァシュに、野菜や燻製肉の薄切りを挟んだものが、昼食として主に食されているものだが、今回の昼食はミニランチといった風情の食事のようである。


まず、メインには赤色で中身はジャガイモに似た、ポテと言う芋を用いたシェル状のニョッキだがソースには、かづきの作ったトメトソースがベースのひき肉とキノコソースが掛かっている。 温野菜には彩の良い根野菜のほかパプリカなど色目の良い野菜で、ソースはこれもかづきの教えたマヨベースのヨーグルトソースが掛けられていた。 ドリンクはワインのように見えるが、キイチゴの蜂蜜入りジュースである。 品数は少ないがそれなりにカロリー豊かなボリュームがあるのだ。


「にゅっきウマー、あっ! 美味しいですわ…」

「ふむ、小麦を使ったものと聞いたが、このように柔らかでふくよかな食感はこれまで食べた事がありませんわ。 丁度貝を裏返したようなくぼみにソースが溜まり、バランスのいい品のある味わいが楽しめます」

「ええ、わたくしも初めてですが、これも領主様のご考案なさった代物と伺っていますわ。 毎日のお食事がこのように楽しみになって参りましたのよカレン様」



次回閑話が入ります。

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