異世界探求伝 第九話 ズナンの町冒険者ギルドへ
実はギルドは現在もちゃんとあるんですよ。
人材バンクもそれに近いですよね。
俺はジュリナを伴って冒険者ギルドへとやって来た。
どの世界でも暮らして行くなら、「身分証明」は必要不可欠なのであるし、その為ここへ足を運んだのである。 受付嬢から冒険者登録の用紙とペンを借りて、無事にクエスト完了するのだ。
まずは、冒険者になる為の登録用紙をしっかり読んでみる。 ふむ、読めない・・・ラビにお願いすれば一発なのだが、読めても書く事が出来ないし、ここはジュリナにお伺いがベストな選択であろう。
「なんて書いてるんだ?」俺がジュリナに用紙を手渡すと、直ぐに応対してくれた。
氏名、年齢、出身地、職業、種族、髪、瞳の色と書いてあるそうだが、これは死体確認の為なんだろうか?俺は悩んだ項目について、あれこれ聞いてみる。
「うん? 職業は無職だって!? アハハハ」と、まず初っ端から笑われた。
「ここは前衛、中衛、後衛を書くのですわ。 前方で盾を持って敵の攻撃を防ぐのが前衛、剣や槍で攻撃するのが中衛、投擲や弓等の遠距離攻撃は後衛ね。 魔法使い、回復役も同じく後衛だわ」
「ちなみにジュリナは?」
「私は細剣を使うわ、魔法も少々ね、ナイフ投げも得意だわ。 だから中衛」成程ね、俺は納得ついでに彼女に全て書いて貰う事にした。
「カズキ・クロサワ 三十一歳・・・意外と年行ってるのね。 中衛職、髪はブラック、瞳はブラウンっと、出身地は、ああ、ここは書かなくても大丈夫だわっと」
ブツブツ言いながら、ジュリナは登録用紙を書き上げてくれて様だ。 ぶっきら棒に用紙を「パサッ」と俺に返すと、「出しておいで」とニッコリ囁く。
「じゃ、出して来るな」
「ええ」
俺はそそくさと受付へと向かって、用紙を窓口へ差し出した。
「これでいいですか?」
「はい、結構です。 ランク試験はおやりになりますか?」といきなり問いかけられたが、これは寝耳に水で俺には何の事やらさっぱりだ。 だがしかし、聞くのは得意なのだ「判らない事は直ぐに聞け!」、これは祖父から良く言われたお題目のようなものである。
「すいません。 説明を聞いてから答えましょう」
「ええ、冷静ですわね、ではお話します。 ランクはFから始まってE、C、Bと上がって行きます。 受けなければFから始まり、試験を受けて許可が下りれば上位の等級から始められますわ」
「えっと、上位の等級からって、何かいい事あるんでしょうか?」
「ええ、ランクが上がる程高報酬の依頼が保証されるわ。 ちなみにCランクからは、指名依頼も発生するのよ。 それに、高ランク者は優先的に行えたり、優遇措置が受けられるのよ」
うーん、ランクとか別にいいよな。 魔物討伐しないし・・・等と考えながらジュリナの方を見やると、顎を俺に向かってしゃくっている。
「プロに動きを見て貰えば、使用武器の判断が付くかもよ」とジュリナは勧めてくれた。 成程、言われてみればそうだ、俺はジュリナのアドバイスを受けてやる事にした。
「ギルドタグを作るのに銀貨一枚、試験に銀貨一枚の合計二枚のお支払いをお願いします」
俺は銀貨二枚を支払ってそのまま待機させられたが、試験内容を聞いたら試験管との実地試験らしい。 この時間は冒険者が出払っているので、逆に職員の手が空いているらしく、直ぐに試験を行ってくれるらしい。 武器は木剣と盾で十分間程度、闘うのだそうだ。
暫く待っていたら、職員を名乗る選考管と試験管がやって来た。
試験管はCランクの冒険者らしい。 言われるままに付いて行くと、訓練場みたいな場所へと案内された。
「おいジュリナ、何かギャラリー多いんだけど?」
「そお? いつもこんなものだわ。 頑張ってねダーリン♪」とまぁ、変なテンションのジュリナであったが、応援者が居るのは心強いものである。 丸い線から出ると負け、倒されるのも勿論負け、「十分間耐えろ」と監査役から申し渡された。
開始線にお互いが出て行く。
「おい、お前本当に防具無しでやるのか? せめて盾を借りてもいいんだぞ?」
「防具は今頼んでる最中なんですよ。 取り敢えず、今の自分に何が出来るのかを試してみます」と言い放つと、木剣を手にした俺は集中する事にした。
「はじめっ!」
監査官の掛け声で足元と右腕の身体強化、準備が整った。
「ハッ!」強化した足元を蹴ってのスタートダッシュだ。 タイミングが取り難いので、剣は相手の腹に剣先を狙って突き出したままだし、全開で行くつもりだ。「ハァーっ」
「おい! ま・・・」「タン!、ドーン!!」
「ドスン!!」
手加減無しのフルパワーで遣ってしまったが、少しやり過ぎただろうか? 相手は、ぶっ飛んで壁に飛んで行ってしまった。 慌てた検査官が治療に走って行くが、俺も心配になり相手の試験管に謝りに行く事にした。 こういう時は只管謝るしかないものだし、下手に刺激すれば「炎上」は免れない事はこの身で体験しているのだ。
「すいません・・・・・・」
「全く君は! 身体強化が使えるなら言って貰わないと!」
「すいません。 報告の義務があるとは、知らされ無かったもので」と、前もって言われていなかった事を強調してみる。 すると、態度がすぐに変わってきた。
「い、いや初心者が使えないと判断した此方のミスだ」と、検査官は意外にあっけ無く非を認めた。
「あ、あのぉ。 大丈夫ですかね? 彼」
「ああ、気絶しているだけだ。 まぁ打撲はしているがね」
「申し訳ありません。 不合格ですかね?」
「全く君は・・・・・・ブツブツ――」
散々文句を吐き散らした監査官は、他の職員を呼びこう言った。
「彼は申し分無くランクC以上の力がある。Cから始める事を許可する」
俺は「ホッ」と息を吐きだすと、受付へ戻る様に促され頭を垂れながら歩いて行った。
「凄い凄い! ダーリーンやったわねぇ。 初心者が秒殺するなんて初めて見たわ」
「そうか・・・俺は悪目立ちしたく無かったんだが」
まぁ、やってしまったものはしょうが無い。 これからは自重しようと、心に決めるかづきであった。
「ほら見てみて」と、ジャラジャラ振りながら、膨らんだ革袋を見せつけて来る。
「胴元の一人勝ちか?」
「いいえ」
彼女の指さす方向を見ると、先程の受付嬢が親指を立てて、こちらをニコニコ見つめていた。
「貴方は本当に飯の種ね」と言いながら、ジュリナは金袋を撫でている。
今まで人を食い物にした事は否定しないが、こっちが食い物にされるとか無性に腹が立つな。 少しむくれ気味な俺にジュリナが声を掛けてきた。
「ちょっと! タグ出来たみたいいだわ」
「カヅキ・クロサワ様 此方へどうぞ」と、直ぐに受付嬢の声が掛かる。
「はい」
「お待ちかねのタグですわ。 いきなりCランクとは驚きましたわ」
「ちゃんと賭けてた癖に」
「ええ。こう見えても人を見る目はありましてよ。 良かったらお祝いにお誘い致しましょう」
「ハハハ、機会があればお願いします」
「約束ですわよ。 わたくしカレン・ミルフォードと申します。 カレンとお呼び下さい。 ふふ、ではタグをどうぞ」
「カレン、ありがとう」
「講習会は来週の火曜日になりますので、お忘れ無き様にお越し下さい」
「はい、講習会ですね。 判りました」
終わるや否や、ジュリナからすごい剣幕で外に連れ出された。
「ちょっと、カヅキ!」
「ん? どうした」
「今、受付のカレンを誘ったわね」
「え? 誘ってないよ」
「お祝いに誘われたでしょ」
「うん、でも断ったよ?」
「機会があれば宜しくって聞こえたけど?」
「ああ、俺の国であれは断る時の社交辞令だよ」
「ここは違うわ!」
「えっ?」
「契約と同等の権利が発生したわ」
「ありゃ」
「だからあれだけ口を酸っぱくして、教えたでしょ」
「あーぅ、ごめんなさい」
「もう! 言っておくけど食事だけにしておきなさいよ。 私も付いて行くからね」
「あ、ああ」
ジュリナからあれだけ忠告を受けていたのに、早速やらかしてしまった感のカヅキであった。
「ジュリナ、今日は何曜日?」
「今日は木曜よ。 火曜日に初心者講習でしょ」
「うん」
取り敢えずこちらの用事はいったん終了っと・・・次はどうするかなと思って考えると、武器屋の件を思い出した。
「おっと、ガスドの店に行かなくっちゃな」
「じゃ、こっちだわよ」とジュリナが案内してくれる、楽ちんだな。
「おーい、おっちゃん来たぞ。 ちょい早かったかな?」
「おう! カヅキだったか、丁度拭き終わって出来た所だ。 どうだ? 見てくれ」
「ふむ、いい感じだな。 試してみてもいいかな」
「投げるのか? いいぜ、裏庭に来な」
ガスドにつられて奥へと三人は入って行った。 弓矢の的だろうか、三つの的が置いてある。
「あの的で試してもいいかな?」
「おう、いいぜ。 何かの遊びか?」
俺は弾を貰うと親指と人差し指を強化した。 半分の力で良いだろうか。
「バン! バキッ」
「おっ!? 何じゃあれ!、おめぇ何やった?」
「すっごーい、本当に的に当たってる」
的が根元だけを残して木っ端みじんだ、向こうの壁には弾がつぶれてへばりついている。
「やっぱぁ、貫通力は無いな」
「何を目指してるんだよ」と、ガスドは呆れ顔で考え込んでいる俺を見ていた。
うーん、鉛弾の含有率を変えるか、コーティングしてフルメタルだな。
「あーうん、判った。 おっさん、悪いが金属の種類を教えてくれないか?」
「は? 金属とその利用法とかか」
「ああ、扱っている素材を教えてくれればいい」
こうして判った事だが、地球であまり聞きなれない金属が使われていることが判明した。
武器には主に鉄鋼が使われているらしい。 特殊な物はウーツ鋼で帯状模様が特徴だが秘伝らしく、手に入れる事は難しいらしい。 伝説のミスリルもあったが、単体では固いが脆いので鉄鋼に混ぜて使うらしい。 オリハルコンもあったが、これはメッキ加工や内装、外装に使われるだけで只のさび避けとからしいが色を見ると、銀色なのでニッケルかクロムなのかもしれない。 アダマンタインという希少な金属も有るらしいが、この地では見た事が無い伝説級の物みたいだ。 他にも銅や軽銀と呼ばれる物が有ったが、これはアルミの事だろう。
俺はゲームの知識は無いが、本は沢山読んで来た。
社会に於いて知識と言う物は、何よりも勝る武器でもある。 子供の事にはお伽噺に憧れ、指輪物語やアーサー王伝説など有名処は良く読んだものだ。 こうした概念を知り、最新知識の宝庫とも言える地球から俺は来ているのだ。
「おっさん、鉛は銅をニ十%の合金弾にしてくれ。 そうして、オリハルコンメッキだ。」
「おう、何発だ?」
「とりあえず、百発ってとこだ。 宜しくな」
そう言えば、金属の事で聞き足り無い事があった事を思い出した。
「おっさん、玉鋼ってあるかい?」
「いんや、知らねぇな」
「隕鉄とか砂鉄は?」
「あー、砂鉄はあるだろうな。 でも量が鉱山く比べて取れねぇからな。 地元の鍛冶屋が鉱石買うのを勿体ながって集めて混ぜて使ってるぜ」
「そっか、欲しいな。 何処で採れるんだ?」
ガスドロビコフは、茶色い紙を広げて地図を書いてくれた。
「おっさん、そのペンは?」
「ああ、木の枝を炭にしたもんだ。 良く書けるが削るのが面倒だし、手が真っ黒になっちまう。 だがな、俺達ゃ、いちいち羽ペンにインクを付けながらとか面倒いんだよ」
「ふーん・・・・・・鉛筆って聞いたことあるか?」
「いんや」否定するガスドから、大人しくしているジュリナを見てみると、横に頭を振っている。 無いのか、鉛筆あれば便利だなと思いながら、先に砂鉄を手に入れる事にした。
「砂鉄の仕入れは出来るか?」とガスドに聞くが、取引が無いから無理だと言うので、どうするか悩んでいると、ジュリナが助け舟を出してくれた。
「地図があるから探してみるわ」と、仕入れの手伝いを了承してくれたのだった。
立ち上がろうとして、手で触れた金属が気になった。 先程の武器に使う金属では説明が無かったので、武器には使われない事は理解したが、一応聞いてみた。
「ああ、こりゃ黒墨だ。 使い道は鋳型に使ってるし、耐火効果で壁やストーブにも使われてるぜ。」
「なるほど」
ふむ、利用方法を聞くと、恐らくこれは黒鉛だろう。 鉛筆の材料が見つかったな。
一通り話が済んだので、二人で店を出てぶらぶら散策してみる。
殆どの店舗は木造のようである。 後は下着も買わなければなと思いつつ、ジュリナに今晩泊まる宿を教えて貰う事にした。
「今日は色々あったな。 後は下着を買いたいが、その前にどこか宿を世話してくれるか?」
「そうね、カヅキはほって置くと、色々巻き込まれそうだから監視が必要だわ」
「監視? 勘弁してくれ」
「じゃ、その世間知らずを利用されて、拉致されてもいいの?」
「世間知らずは自覚してるが、Cランク冒険者相手でも引けを取らなかったんだぞ。 拉致は無いだろ。 ハハハ」
「そうねぇ、私なら複数人集めて囲めばどうにでもなるわ。 単身じゃ強いでしょうけど、魔法使いもいるし、五人でもいけそうね」
「・・・・・・」
「それに、その知識の多さは大いに利用価値があるわね。 拉致して縛り付けて拷問にかければ、さぞや良い知識を得られるでしょうね」
「拷問!? 殺されるとかか」
「殺される訳無いじゃないわ。 でもね、ふふ、治癒魔法をかけながらの拷問はきついわよ?」
ジュリナの脅しに、正直背中が冷付いた。
「まぁ自重するよ」
「安全な場所に連れて行くわ。 私はカヅキの護衛だものね。 ウフフ」
彼女も胡散臭い人物の一人だが、唯一信頼できる人物の一人である事は確かだ。 異世界で気弱になっている俺としては、ここは頼ってしまおう――――と言う訳で、暫く歩いて行くと一軒の宿? に着きました。
いつもお読み有難うございました。
お気に召して戴けたら、ポッチをお願い致します。




