異世界探求伝 第一章 第一話 マザーの誕生
三話くらいまでは近未来の地球を描いたものです。
この宇宙には様々な星があり、その中でも同じ太陽系の惑星があるのです。
この話の中では、異世界とは違う別の惑星に行ってしまう。
しかし行った先は・・・そんなお話です。
作者が行きたい先なのかもしれません。
二二世紀、ここは地球である。
二一世紀からの地球の発展はそれは目覚ましいものであった。 更に言えば電脳社会において、ジャパンはコンピューター世界に画期的な進歩を齎したのである。 それは完全自立型のマザーコンピューターの確立。 それまでの無機物の塊であったCPUだったが、有機物を内包される事により目覚ましく成長進化を遂げたのである。 それはまさに画期的であった。
処理速度は、従来のコンピューターの数億倍をはるかに上回り、その思考ルーチンは人間を遥かに凌駕したのである。 危惧されていたAIによる暴走も起こる事は無く、その柔軟な頭脳SAI(スペシャル・アーティフィカル・インテリジェンス)はジャパンの頭脳と呼ばれる程になった。 マザーは平和的利用目的でこの世に平和と言う拘束力を保持する事になる。大量破壊兵器の徹底的撲滅により、地球からは大規模戦争が撤廃されるのである。
二一三〇年にはジャパン国、主導の元、国連平和決議案が採決され、これを各国が追従し戦争のない世界が確立された。 マザーによる電脳支配は、破壊兵器撲滅に徹底的に利用されていた。 当時既に電脳化されていた世界の兵器は、すべてがアクセス拒否され新たな開発も徹底管理され、更にはマザーの「平和維持行動」にそぐわないものは徹底的に排除される事となる。 各国の主要コンピューターは、マザーによる強制介入に近い能力でその主導権を失われ、衛星すらも打ち上げ不可能になっていた。
当然、これに猛反発したのは大国メリケン、ロシカ、中花であった。
ジャパン国に対して宣戦布告を行う用意があると、大国連名で迫って来たのである。 これには流石のジャパンも、緊急国会を召集してこの対応に追われたが、結果、マザーを持つジャパン国に一蹴されただけに終わった。 既に国内に於いてマザーは、ジャパン人おいての道標となっていたのだ。
マザーの管理下に於いて、この宣戦布告は丁度良い予行実演となるとの見識で、ジャパン政府は三国に対して強固な姿勢で挑んだのである。
―――――公式見解の発表がなされた。
『ジャパンはいかなる大国にも屈する事無く、平和維持活動を遂行するであろう。 これは小国を含めて各国の総意と判断する』
これには流石の大国達は黙っていなかった。 三国同盟を締結するや否や、「ジャパン国の悪辣なウイルスの拡散で、各国の重要な産業は大打撃を被った。 これは電脳テロである。これに対応する為に我が連合軍はこれを打倒し、マザーを撃退する」との発表。 これは事実上の宣戦布告であった。
三国は独自の事前協議に基づいて、「ジャパン三分割法案」を画策していた。
九州から伊南は中花領土、北海道から以北はロシカ領、本州はメリケン領としての管理が取り決められ、マザーコンピューターはこの三国の共同所有にて成すべしとの決定の文書を取り交わしたのだ。 この三国での話し合いで、他の国々を取り入れなかったのはその利権の強大さにあった。
すでにジャパンの電脳侵略に近い行為は、世界マーケットをもを席巻していたのである。
ジャパンはこれに対して堂々と、『強大な武器を強者が手に取り弱者を貪る時代は既に終わった。 ジャパンはこれにより、世界の指針を示すであろう』と、世界各国に配信する。
かくて、世界第三次大戦の勃発・・・したのであろうか。
当然、先手を取るつもりで連合軍が放った哨戒機は、堂々とジャパンの各地情報を網羅し、海軍は陸兵を乗せ各自ジャパンへと侵攻。 続いて、メリケン軍は大西洋を横断し、西路でハワキ沖を経由して横浜を目指し侵攻、元ベースキャンプのあった横須賀基地を目指す。 同空軍は、主要施設を破壊すべく百機が飛来する。
・・・・・・だが、一機たりともこのジャパンに届く事すら無かった。
まず、空軍の戦闘機は海上に入ると、全ての機が突然低空飛行し海へと滑落、パイロットは非常脱出を余儀なくされる。 最新鋭の機体は、全てが海中の奥へと沈んでしまったのである。
これは、衛星による情報伝達が全てマザーにより掌握されている為である。 敵空軍はおかげで、全てを手動にて航行を行う事を余儀なくされてしまう。
通信は暗号無線で行われる事になったが、直ぐに解読され音信不通にとなる。 海軍の戦艦、航空母艦、巡洋艦等もハワキ沖から日本との中立海域に入るや否や、その機能を停止。 最新鋭の軍船は、ただの箱船に成り下がったのだった。
ロシカはウラジオス、サハリから同じく派兵し、中花は上海とフイリピ沖に、無理やり作った新島基地から沖縄、福岡へと向け同時侵攻をかけたが、メリケン軍と同様に辛酸を味合わされる事になった。 三度この侵攻は画策されたが、三カ国ともに戦自体が有名無実化され、これに業を煮やした三国同盟は遂に、ICBM(大陸間弾道弾ミサイル)の発射を画策する。
この時、ジャパン国はこの戦時下の開戦に於いて、一切の反撃をしておらず、連合軍のこの過剰戦力は同国民世論の反発及び、世界各国の不審、反感を被る事となる為に、連合国首脳の慎重な対応がなされたのだった。 だが、「勝てばいいのだよ」とただ一言うそぶくアメリケン軍大統領の一言で、なし崩し的に正当化される。
確かに過去の歴史を振り返ると、勝利国が益を失する事は無く敗戦国が全て悪者になる。 そうした歴史が「勝てば官軍、負ければ賊軍」と言いつくされて来たのだ。 「最悪ジャパンが無くなっても、良いのだよ」甘い甘言が、真しやかに密室で囁かれ、他の二国もこれに同調する事になる。
但し、誤作動を防止する為に、参加国同時でのミサイル発射と取り決めされた。 これは死刑執行と同じで、誰が殺したかを有耶無耶にする手段の一つでもある。
かくして数日後、同時刻で着弾するように設定された、手動打ち上げによる大陸間弾道弾ミサイルが発射された。 各国三発での計九発であった。
――結果から言おう。
その九発、ともにジャパンへの着弾は無かった。 手動で飛ばされたミサイルは、全てマザーの遠距離レーザー放射によりデータを改ざんされ、発射基地へと送り返された。 つまりは自爆による自国のミサイル基地破壊であった。
ジャパン国は三カ国への情報遮断をしていたが、ホットラインだけは残しておいた。 翌日ジャパンは、敵対国であるアメリケン、ロシアン、中花の首脳に対して最終通告を配布。
『同時刻以降の敵対行動において、ジャパンは本格的な自衛行動を起こすものとする。 但し、勝者に恭順の意を示せばその場限りでは無い』
ジャパン政府はマザーを通じ、これまでの戦争勃発の経緯と戦争の様子や、例の三カ国首脳による密室会議の様子も世界各国に配信した。 そう、強制的にあらゆるメディアに画像、音声をともに情報公開したのである。 それと同時に、世界各国へ『世界平和連合』の協賛を呼び掛けたのである。 勿論敵対国のメリケン、ロシキ中花は除いてである。
かくて三カ国連合軍の足並みは乱れ、それを見ていた他の国々は、世界平和連合へと加盟して行くのである。
しかし、未だにマザーからの三カ国への封鎖は続いていた。、食料、鉱石、エネルギー主原、情報や技術、交通の遮断。 これらの大国三カ国と貿易に関与していた国々は、マザーの適格、機敏な判断で他の国への貿易へと別替えされていく。 これでそれらの国々は、三カ国に依存する必要性も無くなり、自由な輸出入が可能となっていた。
大国に在住の外国人は、それぞれ自由に帰国が許されたが、本国人は逆鎖国状態に陥っていく。 更に正確な情報が齎された各国の民は、未だ敗戦を認めない政府に業を煮やして、反戦活動とともに政府打倒を訴えるような運動も始まっている。
こうして三年が経ち、疲弊し尽した大国達は遂に膝を屈し、ともに和平を目指すことに決する。
「貴国に対する軍事行動を一時留保する事とする」これは三国連合の声明文である。
「ふむ・・・負けは認めたくないのか」と、マザーを前にジャパン首相は、ため息をつきながらも決断する事に迫られたのだ。
こうしてジャパン国の返答は、威力のある言葉を投げざるを得なくなったのだ。
「三国連合軍は、戦争の尖端を自ら切り開いておきながら、釈明も敗戦の弁も知らぬ愚かな民族なのか!」
流石に、この文言を投げ掛けられれば、動かざるを得なかったのであろう。 かくして三国同盟は瓦礫と化し、メリケン政府は政権を別政党に明け渡した。 ついで中花の共産党は解体され、新たな議会制の政党が政権に立ち、ロシキも同じく臨時政府が、その大統領による強力な権限を分散した。
――――ここで、新たな三国同盟の首脳の元で声明文が発表された。
「貴国に於いての、三カ国による戦闘行為は非常に遺憾なものであり、弁明の余地も無いもので過去のリーダーの無法な行動はこれを厳するものである!」
「まだ、煮え切らないですねぇ」政府の要人の集まりで、首相はまたもやため息交じりで嘆くのであった。
ついにジャパン政府は、公式の場での討論会を要請すると、三国の各新首脳は衛星中継での討論会へと、渋々参加する事になった。司会は永世中立国であり、世界平和連合のリーダー国としてジャパンに推薦されたスイスにこれを願った。 スイスのジュネブ首相は快くこれを受け入れたが、全世界生中継による討論会は、最初からしらけたムードで始まった。 これは各国同時の衛星画像中継である。 実際には顔を合わせてはいないのだが、回線でお互いの顔も言葉もすべて認識できるのだ。 さらに言えば、これは公式の話として流れている。 虚偽も不誠実も皆全世界に流れているのだ。
彼たちの言い分である。 三カ国の首脳は、既に頭も当時の責任者の首もすげ変わっており、「それは我々が把握していない」だとか「貴国の認識不足では無いのか?」等と、のらりくらりと会話を交わして行く。 ジャパン首相は相も変わらず呆れた様子で聞いていたが、やがて業を煮やしテーブルに拳をぶつけ一言怒鳴りあげた。
「で! 君らは戦争に負けたのか? 勝ったのか?」
「ゴクリ」とつばを飲み込み、中花の首相がアメリケンの画面を見やりながら呟く。
「ま、負けてはおらぬ!」、これに他の二国もこれに同調する。
ジャパン首相は、三国首脳を一人ずつ睨みながら、司会者のスイス首相に言葉を投げかける。
「ふむ、三カ国連合はまだ戦の継続がお望みだそうだ。 では、世界平和連合軍の初陣と行こうではないか、早速メンバーでの協議を始めるとするか」
これに司会者のスイス首相は言葉を綴るのだった。
ジュネブ首相司会は、「それでは、世界平和連合のリーダー国としての発言を致します」と、前置きしてゆっくりと話し始めたのだった。
「世界平和連合は戦争における概要と致しまして、敗戦国はこれを隷属国として扱うとの表記がございます。 宜しいかな? お三方」と威厳を含めた言葉で話しかけたのだ。
これを聞いて中花、ロシキは青ざめた。
「わ、我が中花国は既に負けた戦を、継続しようとは思うておらん!」
「我がロシキも敗戦処理の為に、国後、択捉、歯舞、積丹の四島と樺太の半分・・・いや!樺太全島の返還を視野に入れておるのだ!」
いきなり踏み込んだ内容での、ロシキ側の言動に中花国首脳陣は驚きを隠さなかった。 自国としては中花国が率先して、他の二国の出鼻を挫けばまだ目は在る、そう考えたのだ。
「な、なに? いやぁ、ジャパン首相殿、我々中国も離散する小島を始め、台湾の独立をも明示するつもりであった」
「ほう、中花、ロシキともに潔い英断ですな。ではアメリケン殿以外での敗戦処理と参りますか」
しかし、メリケン大統領は苦み走った顔で、これに異を唱えたのだった。
「ジャパンは我が国を恫喝するのか! 流石、中華大陸を{席巻しただけの事はありますな。 侵略はお得意なことで、ワッハッハ」
挑戦的な意思のあるこの言葉には、スイスのジュネブ首相は黙っていなかった。
「メリケン大統領殿、その発言は司会者としてでは無く、永世中立国として我が国も許されざる発言ですぞ。 それに、この場は全世界に中継されておりますれば、発言自体全てが公式文書として記録されるものと知りなされ」
しかし、メリケン国も黙ってはいなかった。 まさに売り言葉に買い言葉だったのだろう。
「侵略国を侵略国と言って何が悪いのだ。 我がメリケン国は戦争で勝っても、敗戦国や同盟国に返してやっているのだぞ! ジャパンはその恩も忘れたのか」と切り返す。
「ふむ、では中立国の我が国としてではなく、国際平和連合を代表して物申す」と、前置きをしてさらに言葉を綴る。
「確かにジャパン国は、過去に於いて他国を侵略した行為を認めておる。 だが、戦後ジャパンはその国々に於いて賠償を済ませておるし、陛下の告解のお言葉も公式文書にもある。 当事国である中花、ロシキ首脳の見解はいかがか?」と、司会者のスイス首相はあえて当事者でもある、他の二国に問いただしたのだ。
「あれは、中花大陸での不幸な過去の出来事であった。 共産主義時代での教科書や、仮想敵国としての刷り込みもジャパン文化の発展により、それも跳ね返されておった。 こうして過去を振り返ると、敵対したのは恥じ入るばかりである」と、中花国新党首は冷静な判断を下したのだった。
続いてロシキも発言を行い始めた。
「ロシキも恥じ入る事は多々あるのだ。 第二次大戦終了の情報を知りながら、我が国はまだ戦争終結決議案には至っておらぬと難癖をつけ、領土を奪った上多くの兵を帰還させると偽っては、強制労働の労に就かせたのだ。 これに反省し、是非とも我が国も世界平和連合の一員として、励んで行く所存である」
との公式見解を申し出た。 これに怒りを覚えたか、中花首相は黙っていなかった。
「ロシキ大統領、先程から自分だけジャパンにすり寄り過ぎでは無いか。 我が中花も是非、組み入れて戴くつもりだぞ、既にこの誠意ははジャパン国も承知の筈である」
これに、ジャパン首相は苦笑いで答えず、メリケン大統領の画面を凝視している。 司会者は、それを横目で見ながらメリケン大統領に問いかけたのだった。
「メリケンは侵略行為は過去の出来事であっても、謝っても賠償金を出しても、まだ許されないと仰るので?」
「ふん! 当たり前だ。 正義の国である我が国ではそんな戯言が許されるものか」
「ほう・・・では貴国の建国からは何年になりますかの?」
「!っ ・・・ま、まぁ三白年はまだ経っておらぬ」
「建国までの経緯をお聞きしても?」
「それは知っておろうが! 大概の国の教科書にも載っておる。 未開のメリケン大陸にわれらの祖先が移住したのだ」
「移住ですね、ではその当時未開の地メリケン大陸には、先住民は居ましたよね?」
「・・・・・・インディアン、だ」
「一くくりにしましたか、そうメリケン大陸先住民を総称して、様々な部族のインディアンが居ましたが、他の民族もおりましたな。 大まかに言いますが、それを駆逐して建国したのですよね?」
「まぁ、過去の歴史にはそうある・・・」
「更に、アフリカ大陸から奴隷狩りを行って、それを売買、使役しましたよね?」
「おい! 司会者、ここは裁判所なのか?」
「いえ、裁判所ではありませんが、その一言一句は記録されており、国際軍事裁判での証拠となり得ます」
この言葉には、流石効いたのであろう、ボディブローのように重くメリケン国に圧し掛かったようであった。
「はぁ、わかったよ、アメリケン国も過去に過ちを犯した。 ジャパンには公式に謝罪する」
「その謝罪は受け取っておきましょう。 しかし我が国よりも、先住民と奴隷にした国々の謝罪と賠償を考えた方が、良いのではないでしょうかね」
「わ・・・わかりました。 議会に提言致しましょう」とついに、メリケン大統領は悔し気に言葉を絞り出す。
後に、この男は直ぐに大統領職を罷免され、メリケン国最短任期の大統領となってしまったが、逆に誠実な大統領と人気が再熱し、再びこの職に舞い戻る事となるのだった。
「最後にお聞きしますが、メリケン国が見る、この戦争の見解は他の二国とは違うのですか?」と、ジャパン首相は詰めの一手を指したのだった。
「・・・いや・・・メリケン国は負けた。 これ以上押し述べる事も無く、敗戦国として処理して下され」
こうして無条件降伏にも近い発言で、この会議は終焉を迎える事になった。
この後、戦後処理が行われたが、三カ国に厳しい処分が科せられたのは言うまでも無い。
次回は明日投稿になります。