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行列!異世界の動物園~魔王が園長です。  作者: 立鳥 跡
第一章 行列! 異世界の動物園~魔王が園長です。
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第三話 ホーンラビット

よろしくお願いします。


「魔獣を手懐ける」

 

 その言葉を聞いた時、魔王もその配下達も大笑いした。

 あんな凶暴な魔獣達を手懐ける。

 見たことがないから言えるんだと笑いながら異世界の少年―――冬太を諭す魔王。

 だが冬太は言う。

「心がない生き物なんていない。なら通じ合えるように努力をすればいい。きっと仲良くなれる」


 勇者になりたいと夢見がちな少年とは、思えない真剣な顔な少年にムキになった魔王。


「なら仲良くなってもらおうじゃないか!」


 こういう経緯で草原にて角のついたウサギを捕まえようとしている。

 この世界ではホーンラビットと喚ばれるそのウサギをなぜ最初に捕まえているかというと、魔王いわく、魔獣の中でも比較的弱い部類に入るからだそうだ。一応、冬太の安全は考慮しているらしい。

 それでも獰猛なのにはかわりなく、魔人ならまだしも、人間なら二、三人なら瞬殺できるレベルらしい。

 それを聞いても冬太は動揺せず、連れてこられた草原でホーンラビットを探す。


「ははっ、無闇やたらに草むらに入って攻撃されても仕方ないぞ。まぁ、魔王である私が危険になったら助けてやるがな!はっはっは!」


「さすが、マリー様です。今日も素敵です~」


 冬太についてきた魔王マリアンローゼとその侍従官である金髪爆乳エルフのエスナの会話も聴こえていない程冬太は探すのに集中している。

 そして、さっそく三羽で行動しているホーンラビットを発見する。

 すると、冬太は身を屈め匍匐前進(ほふくぜんしん)をしながら、ホーンラビット達に近づいていく。


「なっ!?バカっ!!」


 魔王が冬太をホーンラビットから助けようとするが………。


 ――――クゥ?


 ホーンラビット達の様子がおかしい。

 普通なら警戒心の強いホーンラビットは、人を見かけたら、逃げるか、攻撃してくるかなのだが。


 しばらく、冬太もホーンラビットも動かずお互いを見ている。 

 その見つめあいもホーンラビット達が冬太に向かってジャンプしたことにより終わる。


「「危ないっ!?」」


 魔王と侍従官エスナは同時に叫ぶ。


 しかし、ホーンラビット達のジャンプした先は冬太の膝のうえだった。

 膝の上でクゥクゥと甘えるホーンラビットの体を撫でてやると気持ち良さそうに目を細める。

 

 魔王とエスナは唖然としている。


「よしよし、君らおとなくしていい子だね」


 クゥクゥ言って甘えるホーンラビットを笑顔で撫でる。


 「そんな馬鹿なっ!?ホーンラビットがなつくなんてっ!?」


 魔王様がありえないと喜んでいる横でエスナは目をキラキラ光らせ冬太とホーンラビットに近づいていく。

 ホーンラビット達が冬太の比較的の上でぶぅぶぅと鼻を鳴らした警戒音をエスナに向ける。


 「ヒェッ!」


 ホーンラビットの警戒音に怯えたのか後退するエスナ。

 

「大丈夫だよ、あの人は僕の友達だから。怯えないで。君達と仲良くなりたいだけなんだ」


 冬太の言葉と撫で技術により再び微睡んだ表情を見せるホーンラビット。


 「エスナさん次近づく時はホーンラビットと同じ目線まで身を屈めてゆっくりと近づいて撫でる時は、上から撫でるんじゃなくて下から撫でるんです』


「そうなんですね、やってみます!」

 

 先程と変わって身体を屈めながら、恐る恐るホーンラビットに触ろうと試みる。


「さ、触れました触れましたよ、冬太さん、マリー様!」


「なら私も」


 魔王も同じ様に身を屈めて触ろうとしたが、ホーンラビット達は、冬太の背中に隠れ触らせようとしない。

 

「何故隠れる!私にも触らせよ!」

 

 あまりにも逃げるものだから無理に触ろうする。

 その瞬間、ホーンラビットが魔王の顔めがけて突撃。

 咄嗟に首を横にずらした為、頬に薄く切り傷ができた程度ですんだ。

 

「危ねぇー。やっぱりこいつら危ないぞ」


「無理矢理触ろうとするからですよ。エスナさんを見てください。もう抱っこまで出来るようになっていますよ」


「本当に可愛いです~。この愛くるしいルックス触れないだろうなと諦めてましたけど夢が叶いました。ありがとうございます、冬太さん」


「いえいえ、エスナさんが仲よくなりたいと思ったから触れたんですよ」

 冬太とエスナがホーンラビットでほんわかしてるなか、動物園で飼育する為、倒すわけには行かないホーンラビットの攻撃を一人回避し続ける魔王。


 結局そのあと、二十羽程のホーンラビットを手懐けた。


「僕達が作る動物園で生活して欲しいんだ」

 

 真剣にホーンラビット達にお願いする。

 

「いやいや、人間の言葉がわかるわけないだろ」


 失笑する魔王。


 だが、ホーンラビット達は、クゥクゥと鳴きながら首を縦にふる。


「わかるんかい!」


 ついツッコンでしまう魔王。


「わぁ、冬太さんすごいです~」


 エスナは単純に感動していた。


 こうして二十羽のホーンラビットを飼育できるようになった。

 けど、肝心なのはホーンラビットの飼育環境作りと餌。


「魔王様、ホーンラビットはどういう風に飼うつもり?」


「えっ、そりゃ人間の動物園のウサギみたいに金網を窓がわりにした小屋で、餌は人参をやろうと思ったが?」


「間違いです!!これだけの運動能力を持っているホーンラビットを普通のウサギ小屋になんか入れたら即脱走ですよ。あと、ホーンラビットの巣穴の近くを見てください。僕が知っている物より三倍程大きいですけど、これはシロツメクサですよね?」

 

「ああ、魔界シロツメクサだ。それが?」


「確かに人参や他にも小松菜やキャベツなどの野菜をウサギは食べます。しかし、自然界のウサギが食べているのはシロツメクサのような野草です」


 よく勘違いをしている人もいるが、ウサギは人参が好き、猫は魚が好きなどは見当違いなのだ。

 確かにウサギは人参を食べる。だが好物となるとやはりシロツメクサが正しい。猫は魚が好きというのも日本が魚を食べる文化だった為根付いたもの。猫は肉食で魚も食べれるけど、肉が好きが正しい。

 他の動物もアニメや漫画での先入観で好物を勘違いされている生き物は少なくないのだ。


 「ホーンラビットが普通のウサギの様に野菜を食べるとは限りませんし、この魔界シロツメクサを持って帰って一部を栽培しましょう」


「うむ、わかった。でこやつらの住処はどうする?」


「ストレスを与えないようにできるだけ今の住処に近い環境を作りましょう。広さは先程話していたウサギ小屋の三倍程で」


「う、うむ。わかった。さっそく手配させる」  


 こうしてホーンラビット二十羽を動物園のキャストとして手に入れた魔王一行。

 次なるターゲットは?


読んでいただきありがとうございました。

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