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行列!異世界の動物園~魔王が園長です。  作者: 立鳥 跡
第一章 行列! 異世界の動物園~魔王が園長です。
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第二話 騙された。

よろしくお願いします。

「ようこそ、異世界トドメントへ」

 そう語りかけてくる目鼻立ちが整った五、六歳ぐらいに見える黒髪おかっぱ美幼女の鈴のような可愛らしいが、尊大さを感じさせる声に聞き覚えがある。

「その声、もしかして僕の頭の中に語りかけてきた……」

「ああ、お前を召喚したのは私だ。魔界と呼ばれているトドメント西大陸を統治している第十二代魔王――マリアンローゼである」

「ま、魔王っっ?」

 今居る薄暗い部屋に照明はなく、先程から床で淡く光っている魔法陣がかろうじて明かりの代わりをし、何か儀式をするのだろうと感じさせる祭壇の前に尊大さを感じさせる少女だけが居るのをわからせてくれているのだが、座敷童と言われた方が百倍信じられるこのおかっぱ黒髪美幼女が魔王?

「……」


「どうした黙り込んで。魔王と聞いて恐れているのか? それとも痛い目をみた過去の愚か者共と同様に、見た目で判断し疑っているのかな?」

 疑問の声を投げかけると同時に、魔王を名乗った少女マリアンローゼの漆黒を感じさせていた瞳の色が、爛々と黄金色にまぶしく輝き、薄暗かった部屋を明るくする。

 部屋が明るくなったことにより少女の姿が鮮明になると同時に鳥肌が立つ。

 目の前に立っている黒いゴシックドレスを着た少女を見て身体の震えが止まらない。戦慄するとはこういう事かと実感させられる少女が放つ存在感につい見惚れてしまう。

「……いい」

「はっ?」

「すごくいいよっ! 見た目が小さい女の子の魔王とかすごくライトノベルみたいで良い! 信じます、あなた様こそ魔王様です!」

「ぬぅ? ライトノベルとはお前が読んでいた異世界の本であったか? よくわからんが、魔王と信じるのなら話が早い。ここは、暗すぎる。詳しい話は、我が私室でする。ついて参れ」

「はいっ!」

 召喚先がまさかの魔王だったのは驚きだが、話しは通じそうだし、さっそくのライトノベル展開に胸が熱くなる。 


 

           ~一週間後~


 柏木冬太は現在、草原にて角のついたウサギの確保に(いそ)しんでいる。

 騙された!これが今の冬太の心情である。

 現在、なぜウサギを捕まえているかというと、一週間前に魔王の私室で聞いた話が理由になる。

 簡潔に言うと、現在、魔界―――西大陸トドメントは、人間達が住む東大陸セメントに経済圧迫を受けているという。

 その打開策の為、人間の世界で流行っている動物園を魔界でも始めよう。

 そう考えたはいいが動物園の経営の仕方など魔族にわかるものがいない。 

 かといって人間達にこれ以上貸しを作ることはできない。

 観光資源のない、魔界には人間達の観光客はほとんど来ず、観光資源で溢れてる人間界には魔界から多くの魔人が観光客として遊びに行っている。

 すると、どうなるかは簡単な話。魔界はお金がなくなり、人間達に借金をする事に。借りる金はどんどん大きくなり、その負債が払えない時の担保は魔界の土地になっている為、このまま返せなければ魔界が人間達に侵略されてしまう。

 これは力では勝てない人間達が仕掛けた経済戦争だと魔人達が気付いたのは、人間達からの借金が途方もない金額になってからだった。

 そんな人間達に動物園を作りたいので、資金と人手と動物を貸して下さいと言ったところで、侵略したい人間達が打開策になるかもしれない事業に手を貸すはずもない。

 どうすればいいんだと頭を抱え込んだとき、魔王には一つの案が頭に芽生えたらしい。

 百年に一度使える大魔法勇者召喚で動物経営の知識を持った人間を連れてくればいいんじゃないかと。

 だが、勇者召喚は、本人の来る意思がないと呼べない仕様。

 その為、騙す形で柏木冬太は異世界に連れてこられた。

 冬太も最初は騙された事に憤慨したが、怒っても元の世界に帰れるわけじゃないとわかってからは、生活の面倒をみてもらうのを条件に動物園経営を手伝う事にした。

 とりあえず、動物園を開く土地は確保しているらしい。

 だけど、動物を入れる建物は作られてないし、肝心の動物も、簡単に慣れさせる事ができる人間界の動物とは違い、魔界には獰猛な魔獣しかいない為用意するのが難しい状態。

 動物だけは頭を下げて法外な値段でもなんとかレンタルするかと魔王やその配下は考えたが冬太からは、驚き発言があった。


「人間達と同じ動物を扱ってもわざわざ見に来ないよ。だから魔獣を手懐けて魔獣の動物園を開いた方がいい」


 魔獣の恐ろしさを知らない異世界の少年はそう言った。

 それが今ウサギを捕まえている現状である。


読んでいただきありがとうございました。

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