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行列!異世界の動物園~魔王が園長です。  作者: 立鳥 跡
第一章 行列! 異世界の動物園~魔王が園長です。
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第十三話 ケルムの陰謀と未来の飼育員

よろしくお願いします。


 ある十歳の少年アルムは今日が本当に楽しみな日だった。

 普段両親の農家の仕事が忙しくなかなか遠出するような旅行をする事がなかった。それでも少年は二歳下の妹の面倒をしっかりと見て親の手伝いも真面目にしてきた。

 そんなある日、父が今話題の魔界の動物園に連れていってくれると言った。

 アルムは仕事は大丈夫なのかと心配したが、「いつもいい子のお前達にプレゼントだ」と決して裕福ではない家なのに父の気持ちが嬉しかった。

 家からは遠いので、魔導列車と魔導船を乗り継いで今魔界の港町に降り立った。

 着いたのが夜遅かったので港町の宿に泊まる事になった。

 本当は宿はいっぱいでテント泊になる予定だったが、魔族のおじさんがせっかくの家族旅行なんだからと自分が泊まる筈だった部屋を譲ってくれた。

 一人用の部屋だったから家族四人には少し手狭だったけどおじさんの気持ちが嬉しかった。

 東大陸セメントでは、西大陸トドメントの魔族は、野蛮で残忍な話の通じる人ではないと長い間言われてきた。

 だから魔界に来た時は、最初怖かったけど来てみたらそんなの嘘だとすぐにわかった。

だって魔族の皆は笑顔で僕ら人間を歓迎してくれたから。

 だから明日の動物園が楽しみなんだとアルムは明日を夢想して眠りにつく。



「うわぁぁ!」


 魔族の動物園に入るとそこは別世界だった。

 恐ろしいと言われていた魔獣達が大きなガラスケースの先に見えている。見るだけかと思ったけど、ふれあいコーナーがあってホーンラビットやシュガータートルを触る事が出来るらしい。

 最初は躊躇していた僕達家族も優しいエルフのお姉さんが触り方を教えてくれてすぐに触れる様になった。

 ホーンラビットに頬ずりしてみるとすごく気持ちいい。

 妹も真似をして頬ずりしてる。餌のシロツメクサも手から食べてくれるし、妹も餌をあげれてご満悦のようだ。

母は五百ミリリットルの水が入るくらいの瓶にシュガータートルの希少な砂糖を入れるのに夢中だ。

 確か帝国で買うと一瓶三万ゼルするというのに、ここでは、一瓶に三百ゼルで入れ放題なのだから、瓶に必死に詰めている。

 そんな僕達を柵の外から笑顔で見てくれている父。

 このあと、バトルモウの乳絞りもあって、絞りたての牛乳がこんなにおいしいとは知らなかった。

 なんでもバトルモウの牛乳はここでしか飲めないらしい。

 でもお土産店にチーズやバターなどの食品が売ってると聞き母の目が変わった。今日はとことん買い物するらしい。

 マンイーターの餌やりも迫力があって凄かった。

 妹が泣いてなだめるのに苦労したけど。

 見るのもいいけどそろそろ昼にしようかとフードコートに入る。

 父と僕はワイバーンのテイルステーキにし、母はクリームシチューとパンのセット、妹はオムライスにした。

 お互いに食べ比べて食べた事のない美味しい料理を楽しんだ。

 デザートに帝国でも話題のプリンを頼んだ。

 帝国にもプリンはあるけど、この動物園に行ったことがある友達があれは偽物だと言っていたのでここのプリンをずっと食べたかったのだ。

 プリンを家族で店からもらいテーブルまで運んでいると、ガラの悪い人間がすれ違いざまに妹にぶつかって妹の持っていたプリンが地面に落ちてしまった。

 ガラの悪い人間は「チッ!」と舌打ちするとそのまま去っていった。

 文句の一つでも言ってやろうかと思ったが父が止めておけと言ったので我慢した。

 当然妹は号泣した。僕と母と父が自分の分を渡そうとしていると、僕よりも小さな女の子が近付いてきた。

「どうしたのだ?」


 王冠をつけマントを着けたゴシックドレスの少女は妹に優しく話しかける。

 

「ぐすっ、プリン落としちゃったの」


「そうか、それはつらいな。ちょっと待っておれ」


そう言うと少女はフード店に行き、プリンを一個持ってきて少女に渡す。


「次は落とさないように気をつけるのだぞ」

 

「うん、ありがとう」


「うむ!」


 少女は妹を笑顔にした後落ちたプリンを片付けて去っていった。

 その間父と母が固まっていたので聞いてみると、なんとあの少女が魔王様だという。

 そう言えばこの動物園の園長は魔王様と聞いた事がある。

 魔王様って優しいんだなぁ。

 ちなみにデザートのプリンは四人の顔が蕩ける程すごく美味しかった。

 昼食を食べた後、グリフォンやペガサス、コカトリス、ワイバーンに乗る事ができるサービスがあるらしく、ちょうどワイバーンに乗る列が空いたので先に妹を乗せる事にした。

 普通怖がると思うけど妹はきゃっきゃっと喜んでいる。

一緒に同乗するスタッフもいるから安心だけど、それにしてもよくあんな高くで喜んでいられるなぁと妹に感心していると、先程妹にぶつかった奴が何か筒の様な物を空中のワイバーンに向け、なにかを飛ばした。

 するとワイバーンが急速に地面に落下していく。

 放り投げられた妹と同乗者の少年スタッフを前足で掴み、身を丸めて落下する。

 ズドンッと大きい衝撃が落下地点から離れた僕の場所まで響いてきた。

 僕達家族や周囲に居た人達は落下した場所に急いでいく。

 近くに行くとワイバーンに包み込まれた二人は無事だった。

 妹は泣きながら僕達家族のところに来る。

 それを見ていた観客の一人が、「魔獣なんかに乗るからそんな事になるんだよ! こんなとこ来てたら命の危機だらけだぜ!!」

 そう叫んだのは、先程妹にぶつかり、ワイバーンに向けて何かを飛ばした男だ。

 その男の声で周りがざわざわと不安の声が上がり始める。

 そんな中で妹と同乗していた少年が皆に聞く。


「このワイバーン――ルカは人を乗せても危険がないように訓練されてます! それが証拠に僕達を守る為に僕らを抱え込んで背中から落ちました。ルカが落ちる前に何か変わった事はなかったですか? 何でもいいんです! お願いします!!」

 

 誰も何も言わない。戸惑いの声ばかりあがる。

 僕しかあの男がなにをしたかを知らないんだ。

 怖いけど言うぞ。あの男は二度も妹を泣かせたんだ。


「あ、あのっ!! ぼ、僕見たんだ。そこの男が

筒を向けてワイバーンに向かって何かを飛ばしたのを! それからワイバーンがおかしくなったんだ!!」


「……それは本当ですか?」


「ち、ちげぇよっ! そのガキが嘘ついてんだよ!」


 明らかに動揺している。そんなの自分が犯人だと言ってるものだ。


「ちょっと身体検査させてもらってもいいですか?」


「チッ!」


 舌打ちすると僕達と反対方向に走って逃げていくが、一人の少女の手によって地面に頭を打ち付けられ気絶する。


「私がいるのに逃げられると思うなよ!」


「園長それよりもルカが苦しんでるんです。原因わかりませんか?」


「それなら私がわかりますよ~」


 ふれあいコーナーで触り方を教えてくれた金髪エルフのお姉さんだ。

 さっそくワイバーンに近付いて原因を探っていく。

「ありました、フグバラのトゲですね~。人なら一発で死んでますよ~。今毒を抜きますからね~。『キュア』と、これでもう大丈夫ですよ~」

 

「さすがエスナさんありがとうございます。ルカもよく僕達を守ってくれたなぁ」

 

 よしよしとワイバーンの頭を撫でるスタッフの少年。


「あのう、僕も妹を守ってくれたお礼をしたいので撫でてもいいですか?」


「もちろん、いいよ」


「ありがとう。君が妹を助けてくれて本当にありがとう」


 僕は涙を流しながらワイバーンを撫でた。


「きゅぁぁ」


 ワイバーンは僕の涙をなめとり、慰めるように頭を僕の頭に擦り付ける。


 騒いでいた観衆もこの光景を見て何かを感じとったのかワイバーンの身体を撫でている。


 色々とハプニングはあったけど、すごく楽しかった。

 お土産に妹はホーンラビットのぬいぐるみを買ってもらって、僕はワイバーンの牙でできた首飾りを買ってもらい、母はホーンラビットの装飾品や食べ物をたくさん買っていたけど家の家計は大丈夫だろうか? 父が少し哀しそうな背中をしている。

 帰り際に迷惑をかけたお詫びということで人数分のプリンをもらった。

 そう言えば言いたい事があったんだった。


「お兄さんの名前を聞いてもいいですか? 僕はアルムと言います」


「僕の名前は柏木冬太、トウタと呼んで」


「トウタさん。僕もいつかここのスタッフさんやトウタさんみたいな魔獣と心を通わせて、皆を楽しませる飼育員になりたいです!」


 トウタさんは僕の決意を聞くと、

「成れるよ。君なら絶対に」


 その言葉で僕の将来は決まった。

 いつかこの動物園で働くんだ。

 帰りの魔導船の中で僕はそう誓った。




            ◆◆◆


 現在、動物園を閉園し、冬太の部屋で魔王とエスナと冬太は今回のワイバーンへの毒針事件について話していた。


「捕まえた犯人は何も知らなかったんですか?」


「ああ、結構脅したんだが、何も情報がない。ただ大金を払うから、動物園の信用を失わせることをしろと言われただけらしい」


「誰に言われたかもわからなかったんですか~」


「ああ、姿を黒いフードで隠していたらしい」


「アスファルト帝国ですかね?」


「だろうな。しかし今回の事で表向きでの妨害はなくなるとは思うが」


「うーん、何もなければいいんですけど」


読んで頂きありがとうございました。

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