人型ロボットの有用性について、本気出して考えてみた。
勇太くんと泉ちゃんシリーズです。
私には彼氏がいる。
茶色が入った髪を短くまとめていて、かっこいい。しかも優しいし、頼りがいもある……かな?
だけど根本的に彼とは理解しあえない点がある。それは……。
「いやマジ人型とかねーわ。理解できない。そもそも戦略的にあの造形はどうなの?」
「いやあのカッコよさを理解できないのは男としてどうなのかな?」
私がロボットオタクで、彼が軍事オタクという点。それ以外は仲良しのカップルだけどね。たぶん。
「あれだけ関節部が多いと整備も大変じゃん。ランニングコストが考えられていない兵器って、兵器としてどうなの?」
「いやそこは未来の技術力があるから大丈夫よ。しかも基本的に一機しか運用しないから、ランニングコストについてはそこまで考えなくてもいいわ」
「そもそもそれがおかしいんだって。量産する気がないのに試作機なんて作ってどうするんだ?」
「りょ、量産もしてるもん!」
「じゃあ主人公にも量産機まわしてやれよ。なんで戦果を挙げてるのにいつまでたっても試作機なんだよ。あれか? 本部の人間はバカなのか?」
ほらまた始まった。
今は私の家で勇太と一緒にロボットアニメを見ているんだけど、いつもこの手の話になるの。
「そもそも人型が戦闘機に勝てるのか?」
「勝てるよ!!」
「でも人型だと的が大きいだけじゃないか?」
「勝てるもん! 戦闘機じゃ宇宙空間だったら不利だし!」
「なんで?」
「戦闘機って前面にしか攻撃できないじゃん。地球上ならそれで構わないけど、宇宙空間なら360度の全方向からの攻撃があるんだよ? でも人型なら、背面以外は全て姿勢を変えるだけで狙えるし!」
「うーん。そもそも背後がどうとか言う戦闘にはならないと思うがな」
「なんでよ?」
「だって今でさえレーダーで敵機を捕捉して、超遠距離からミサイルを当てたりするんだぜ。そんなに未来の技術があるなら、もっとレーダー技術が発達してもいいだろ! 有視界戦闘なんて起こるはずがない」
自身満々に鼻を鳴らす勇太。
「だったらもしレーダーが通じないとしたら? 今見てるこの作品も、特殊な粒子のせいでレーダーが使えないのよ? あれ? もしかしてそんなことも知らないのに批判してたのー?」
「ぐ……、知らなかったけど戦闘機の有用性には変わりないし!」
「じゃあどうやって戦闘機で360度の狙いをつけるの? ねぇどうやって?」
「ブ、ブースターを機体各所に配置して機体の方向転換してから機銃で狙い撃てばいいじゃねぇか!」
勇太が少し焦ったように答える。いつもなら勇太の理論に押し切られるのに、今回はなんだかいけそう。
「ブースターなんかで方向転換してたら目立ってしょうがないじゃない。暗い宇宙空間で自ら光源になるなんて落としてくださいって言っているようなものよ」
「そ、それは人型だって同じだろ!」
「人型は違うわ。手足を動かせば重心が動くから、体の向きを変えることは簡単よ」
「……」
「足は飾りじゃないってことね。偉いあなたはわかったかしら?」
「や、やかましいわ!」
「あら、その程度なの? 戦闘機も大したことないわね!」
ふふんと勝ち誇った顔をする。やった。いつも言い負かされるから、珍しく勝てたのがうれしい。
「……慣性力は?」
「かんせいりょく?」
「だから回転時に発生する遠心力の事だよ! 戦闘機の移動スピードに合わせるような旋回をしたらパイロットもただでは済まないだろ!」
「それについては問題ないわ……!」
「なんでだよ」
「なぜならコックピットが機体の重心付近にあるからよ。コックピットを中心に回転するならば、加速度による慣性力は最少に抑えることができるわ」
勇太が目を泳がせ、反論の糸口を探している。戸惑いを隠せない勇太の様子に、私の顔が綻ぶのを感じる。
「これで人型ロボットの有用性は証明されたわね!」
「いやまだだ! まだ何かあるはずなんだ!」
「ふふん! どこからでもかかってきなさい!」
「……そうだ! なら地上はどうなんだよ! 人型だったら転んだらお仕舞じゃねぇか!」
「こ、転んでも大丈夫だもん! 丈夫だし」
「じゃあその拍子に関節部に砂や埃が入ったら?」
「す、砂? そんなの何か問題あるの?」
答えに戸惑う私。そしてそれを見た勇太が嬉しそうな顔をする。悔しい。
「現代の銃でも砂が入ったせいで動作不良なんてよくある話だよ。ましてや精密機器の塊である人型ロボットに砂や埃が入ったらどうなる事やら……!」
「だ、大丈夫よ! それに人型だったらどんな地形でも踏破できるから、その点戦車や歩兵より優れているし!」
「どんな場所でも転ぶという危険性はあるけどな。やっぱりその点戦車は最強だな」
どんどん勇太のペースに巻き込まれてしまう。やばい。このままじゃまたいつもみたいに押し切られちゃう!
「ゆ、勇太。戦闘において士気の重要性は知ってる?」
「当たり前だ」
「だったら人型の大型ロボットがいたら、士気の向上に重要な役割を担っているとは思わない……?」
「まぁそれはそうかもしれないけど……」
「無論そんな巨大ロボを前にした敵は絶望感に打ちひしがれるわ」
実際、木より巨大な物かいたらどんな人間だって怖がるだろう。ビルが襲ってくるような物だし。
そしてくだらない不毛な議論を交わしている内に、いつの間にかアニメは終わってしまっていた。
「あ、アニメ終わったな」
「あ、そうね。いつの間に。最後の方見逃しちゃったじゃない!」
「よし! じゃあ次はどうする? 街に出かけるか?」
「は? 何言ってんの? 次はこのシリーズ行くわよ! 今回は25話で終わるから安心して!」
「まだ見るのかよ! もういいだろ!? この連休アニメだけで終わっちまうよ!」
「なんて素敵な休日なのよ!!」
そうして私は別シリーズのDVDをセットした。
読んでくれてありがとうございます。もっと長編で、がっつりした考察をいつかまたアップするかも知れません。
ていうかあまりにも着地点が見つからなかったので、無理やり切り上げました。
連載の方も良ければ見てください。よろしくお願いします。