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好きって言ってもいいの?
高校の卒業式の日
彼から渡された1枚のCD
タイトルも何も書いていない
家に帰って再生すると
父が作った曲を彼が歌っていた
父は自分が認めた人にしか曲を提供しない
気難しい作曲家として有名だった
父も元々は『歌手』だったが
ある事件をきっかけに『歌手』をやめて作曲家になった
『君のお父さんにやっと認めてもらえたよ』
彼は嬉しそうに笑っていた
『やっと約束が果たせる』
私の左手を掴み薬指にキスをした
『この歌を聴いて返事を聞かせて』
このCDには彼の私への想いが溢れんばかりに収められていた
一緒に聞いていた父と母は優しく微笑むと
『彼なら大丈夫だ。素直になりなさい』
そっと私の背中を押してくれた
CDを胸に抱きしめて彼のもとに駈け出した私
息を切らして目の前に現れた私に驚く彼
「あなたを好きって言ってもいいのかな?」
彼からの返事はキツイ抱擁とたくさんのキス
「やっと、僕の想いが届いた」
ぎゅうぎゅうに抱きしめられて息苦しいけど
私は幸せだと感じた
「「ずっといっしょにいようね」」
彼と私の声がきれいにハモり
お互いの顔を見て笑った




