戦支度
実際のところ、ここまでこぎつけるだけで随分と苦労した。
とはいえ、最初は完璧な偶然から始まった。
敵の特徴、移動ルート、そしてもっとも肝心な弱点。
それらを運良く知りえたのはまさに幸運としか言いようが無いが、それに伴って必要となる品々をかき集めるのがともかく難題だった。
しかも絶対的に時間が不足していた。
奴が根城に帰っちまったなら、さすがにもう手の出しようが無いからだ。
それはもう大急ぎで、俺はこの二週間ほどを駆け抜けていた。
おかげでなんとか準備は間に合ったが、問題はここからだ。
いくら準備万端整えたところで、それが役に立たなきゃ何の意味も無い。
俺は近くの酒場跡に入ると、重い荷袋の中身を少し危なっかしいテーブルの上に広げ、大事な荷物の最終点検をした。
純金製の杭が二本。
純金製のナイフが一本。
純金鍍金を施した剣が三本
砂金が二掴み。
一点一点を確認しながら、それらをまとまり良く身に帯びていく。事前に予定していただけあって、装備を身につける作業は極めて短時間で終わった。
あとは奴がここにやってくるのを静かに待とう。
俺はそこらに転がる椅子の中から一番まともそうなのをひとつ選ぶと、店の入り口付近に立たせ、ゆっくりと腰を下ろした。
全ての用意が終わった今、なぜか俺の頭にはこれまでの、ここへ至るまでのいきさつがまるで走馬灯のように思い出され、自然と全身が緊張した。
思えば妙な成り行きだ。