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ヴァルキュリア  作者: 花街ナズナ
11/15

準備


それからの二週間の過ごし方は極めて単純だった。


まず老人から教わったルートを頼りに、そこまでに行き着く町々で盗みを働いた。

普通の連中には絶対に出来ない手合いの盗みだ。


神殿のオーディン像から金をひっぺがすなぞ、いくら不信心な奴でもそうは出来ないだろう。

だが今となっては手段を選べない俺にとって、これほど楽に、しかも確実に金を手に入れられる方法は他には無かった。


自分の手持ちと老人からの餞別、そして五箇所ほどの神殿から拝借した金を元手に、目的地手前の二つの町で武器の調達を行った。

どちらの町の鍛冶屋も、俺の出した奇妙な注文に首を傾げてはいたが、払うものさえ払えば仕事をするのが職人のいいところだ。


俺はどうにか必要最低限の装備を確保し、最後の目的地へと歩を進めた。


目指す敵はすぐそこ。

時も次第に迫っていく。


恐怖と期待。

憎悪と歓喜。

混沌とした感情が俺の理性を軋ませた。


だがそんなことはもうすぐどうでもよくなる。


奴と対峙したとき、理性はその必要を無くすからだ。


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