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準備
それからの二週間の過ごし方は極めて単純だった。
まず老人から教わったルートを頼りに、そこまでに行き着く町々で盗みを働いた。
普通の連中には絶対に出来ない手合いの盗みだ。
神殿のオーディン像から金をひっぺがすなぞ、いくら不信心な奴でもそうは出来ないだろう。
だが今となっては手段を選べない俺にとって、これほど楽に、しかも確実に金を手に入れられる方法は他には無かった。
自分の手持ちと老人からの餞別、そして五箇所ほどの神殿から拝借した金を元手に、目的地手前の二つの町で武器の調達を行った。
どちらの町の鍛冶屋も、俺の出した奇妙な注文に首を傾げてはいたが、払うものさえ払えば仕事をするのが職人のいいところだ。
俺はどうにか必要最低限の装備を確保し、最後の目的地へと歩を進めた。
目指す敵はすぐそこ。
時も次第に迫っていく。
恐怖と期待。
憎悪と歓喜。
混沌とした感情が俺の理性を軋ませた。
だがそんなことはもうすぐどうでもよくなる。
奴と対峙したとき、理性はその必要を無くすからだ。