昔々、あるところにとても賢いお姫様がおりました
昔々ある小さな国に、お姫様がいました。
お姫様はそれはそれは、大層賢く、優しく、静かなお姫様……
「……誰の事でしょうか。」
目の前には、ドレスが破れても気にせず、寧ろこれで動きやすくなったとばかりに、嬉々として木登りをしている女の子。
それを下でアワアワしながら見ている侍女達。
確かに、3歳にしては賢く見た目はとても可愛らしい姫。
中身は……。
「はぁ…」
「姫様!そろそろ王妃様とのお約束の時間ですよ!」
「えー。ヤダ!」
「嫌ではありません。私とお約束しましたよね?」
「……なんだっけ?」
「木登りをしたら大人しくすると。」
「まだ途中だもん!」
いやいや、何処まで登る気だよ。嫌味言われるの俺なんだけど…。
「…わかりました。では、お約束は守らないと…。」「今すぐ、行きます!!!」
「良かったです。私も鬼ではないので」ニコリ
「鬼というよりは悪魔では……」
「何か仰いましたか?」
「執事見習いの癖に小煩いやつ」
姫はブツブツ言いながら渋々降りる。
侍女達はホッとした様子で姫を抱き上げる。
「さあ、姫様!湯浴みをしてお支度しませんと!」
「えー。着替えだけでいいよー……」
「お顔が土だらけでございますよ」
「顔だけ拭けばいいよ!」
「……」
「着替えだって着るものだって決まってるし!」
「……………」
「姫様?……。」
「はい!今すぐ支度します!!」
(ドレスなんて、お母様が買ってくれた物しか……)
「イエ、ナンデモゴザイマセン」
「約束のお時間まで、後1時間しかございません。お急ぎください」
「何とか約束の時間に間に合いそうですね」
ギリギリ10分前だ。
「さあ、お待ちになってる筈ですよ。」
「どうせ、来てないから大丈夫!」
「ほら!来てない」
「…………」
まただ。
この後暫くたったまま待たされるんだよな。
3歳児に一体何をしたいのか。
しかも座って待ってると嫌味炸裂。
今日はまだ過ごしやすい天気だから良いが、この間のように晴天だと姫様、また倒れるよな……。
「姫様、何度も同じ事を言うようですが、絶対に利口そうに見えないように。」
「わかってるよー。」
「わたち、さんしゃい!」
「にゃんにもしりゃない!」
「…………」
「どうよ!」
「……はい。見事なおバカっぷりで…」
この姫はどうして0か100なんだろう?
本当に賢いのか?
かれこれ1時間が過ぎた頃、植え込みがガサガサしたと思ったら、男の子が出てきた。
「え!?」
「お、お前何でここにいるんだ!!」「ん?」
「わたち、さんしゃい!にゃんにもしりゃない!」
「…………」
「王子殿下にご挨拶申し上げます」「う、うむ」
「殿下はここに何を?」
「母上が居ると聞いてきた」
「まだいらっしゃらないようですが…」
「おかしいな、随分前に部屋を出たと聞いたが」
「と、ところでお前!」
「ん?」
「何の用で母上を呼び出した!」「ん?」
「よばれちゃのよ?」
「お前が?…っていうか、なんだその話し方は!」
「しゃんしゃい!」
「……お前…頭でも打ったか?」
「きっとそうだ!!そうじゃなきゃおかしいだろ!?この間俺の事棒で叩いたじゃないか!」
「………」
「姫様?」
「にゃんにもしりゃない……」
「…姫様?」
「だってこいつ、母様侮辱した!少し稽古つけただけでぴぃぴぃぴぃぴぃ!ひよ子じゃないんだから!」
「………………」
そこに王妃が訪れた。
「何事です?」
「母上!こいつが...」
「王子、今は授業の時間では?」
「……はい」
「母上、お時間が出来たら私ともお話を……」
「王子」
「御前失礼します」
王子は肩を落とし去っていった。
「さて、姫。私にお話することはありませんか?」
「?」
姫は首をかしげ
「わかりゃない」
(そっちが呼んだんだろうが。こっちには話なんてないわ!)
「そうですか……。宮廷の小雀が囀ずっていました。姫は賢いと」
ヤバい誰だ!?情報統制してた筈なのに親父にボコられる!
「ん?こしゅじゅめ?」
「しゅじゅめしゃんいるにょ!?」
「わたちのとこりょにもきちぇくりぇにゃいかにゃ」
「…………」
「……そうですね。来てくれるといいですね」
「うん!」
「…はぁ、噂は噂ですね」
「そこの」
「はっ」
「姫を宮に送って行きなさい」
「貴方は残るように」
げっ、俺も帰りたい
「承知しました」
「姫様、お戻りになりましたらお勉強ですよ」
「うん!」
王妃は俺に向かい
「さて、貴方は明日から王子付きになってもらいます」
「!?」
「姫にはこちらから新たに従者を付けます」
「左様でございますか」
「どちらの王子にで御座いますか?」「第3王子です」
「姫ももうすぐ4歳に成ります」
「それなりの者を付けます。話は以上。戻ってよい」
それなりのものが来た。
確かにそれなりのものだ。
うん。確かに。
「姫様」
「ひゃい!」
「ホッホッホッそんなに怯えなくても」
「だってまさか執事長が来るとは……」
「まあ、これから厳しく致しますぞ?」
「……お手柔らかに」
「まず、その口調を改めて頂きます」「え?」
「こんにゃかんじ?」
「そうですなー。」
「姫様は後少しで4歳になられます。そのような話し方ではちと。」
「え?じゃあ普通で良いじゃない?」「それもちと……」
「えー……」
「ほれ、そのような言葉使いはいけませんぞ?」
「もう少し姫様らしく」
「じゃあ普通で?」
「いや、私の言葉が足りませんでしたな」
「世間一般の姫様の印象ですな」
「世間に出たことが無いからわからないよ?」
「うむ。ではご令嬢の話し方を参考に」
「何処のご令嬢でございますか?」
「うーむ……。新しく侍女を付けましょう」
侍女が慌てる。
「!?執事長!それは……」
「何、信頼できるお方の御子女だから問題ない」
「左様ですか…」
「ねぇ?さっきから蚊帳の外なんだけれど?」
本当にきたよ。
新しい侍女。
「姫様に置かれましてはご機嫌如何でしょうか」
「……ご機嫌如何じゃない。御機嫌じゃない」
「姫様!」
「えーだってこういう言葉を私が使うのおかしくない?私一応、王女よ?」
「ご理解していてよろしゅう御座いました」
「!?」
「丸っと真似せよとは申しませんが、これから周りの目が厳しく成ります」「え?なんで?私が気にしないといけないの?」
「姫様……」
「だっておかしくない?私一応、ひ・め、なのよ?」
「確かに姫様で御座いますが、後何年もたたない打ちに御披露目が御座います。その時に国外からも来賓がいらっしゃいます。我が国より上位の国も有ります」
「ねぇ?その上位っての誰がつけたの?大きさ?国力?武力?」
そもそもの話し、国に上下があるのかね?
その基準はなにさ?
誰がつけたのよ。
「私だって社交辞令はできるよ?出きるよな。うん。できる筈。」
「大体4歳の普通ってわからない。私は普通じゃないの?」
「私が知る4歳はそのような事を言いません」
「ふーん、じゃ私が最初だね?良かったねー。知れた!」
「……姫様」
「ひゃい!」
「君は下がって宜しい、ここでの事は口外無用」
「承知しました」
「姫様御前失礼します」
「またねー」
さて、どうしたものか…。
我息子、良くこの姫を制御できてたものだ。
「さて姫様」
「ひゃい!」
「姫様は何処でそのような言葉使いを覚えたのですか?」
「?」
「誰の影響やら……」
「んー?父様?」
「!?」
チッ、国王だったか。そう言われれば確かに。似すぎる位似てる。
「王は良くこちらに?」
「うん。少し前まで良くきてたよ?母様が居なくなるまで……」
「…そうでしたか」
「姫様、今何をしたいですかな?」
「!いいの?剣の稽古!!」
「え」
「本当にいいの!?」
「……少しだけなら」
少しをもぎ取った!
へへ~ん。
久しぶりのお・そ・と。
宮の裏側にGO!
ふふふん。ふふふん。 よし!執事長は付いてこない!!
確かこの辺に...。
ゴソゴソ。
あった!
この間書庫から持ってきた魔法の本!!試したかったんだよな~。
フムフム。ん?何これ、イメージが大事?イメージって何よ……。わからないから本読んでるのに。イメージねぇ~。想像か?よし!私は眠くなる!眠くなる、ねむ…く…
グー…グー……。
侍女が大慌てで入ってきた。
「姫様が!!」
「!?」
「姫様に何があったのですか!?」「裏庭で倒れていて!」「至急、侍医を!!」
「姫様はどちらに!」
「お部屋に!」
宮が慌ただしくなった。少し目を離した隙に一体何が……。
「姫様!!」
「侍医!姫様の御容態は!?」
「眠ってるだけのようにも見えますが、一向にお目覚めになりませぬ」
「何があったと言うのだ……。誰も付いておられなかったのか!?」
「申し訳ございません。姫様が素振りをなさると、たまに木刀が飛ぶので……。付いて来なくて良いと」
「なんと……」
「ですが木刀ではなく、本を抱えて倒れてました」
「本を?」
「はい。そこに置いております」
「…………」
これがその本か。 ん?魔法?
「……」
「侍医、これを……」
「?ハッハッハッこれは。クッ姫様は、プッそのクッうち……ぷっ」
「んんんっん。心配なさらなくとも目覚めます。ッ」
「ただ、副作用で夜寝られなくなりますがな」
「有り難う御座いました……お騒がせいたしました。」
「いやいやなんの」
「何事もなく良かったですな」
……起きたら説教案件ですね。はぁー少ない寿命がさらに縮みましたよ。
うーん良く寝た。あれ?
何で執事長がここに居る?
ん?まて?
私何で寝てた?
あっ。
「姫様、よいお目覚めのようで」
!?まずいマズい、これは良くない。
「ん?どうしましたかな?」
「えっと…寝坊した?」
「ええ、とても」
「…………」
「姫様は裏庭で倒れてました。皆どれだけ心配したか…」
「ごめんなさい」
「眠っていただけだと分かって安心しましたよ」
「……」
「これからは何をしたいのか、何をするのか、仰って下さいませんか?」「姫様のお邪魔にならないように致しますので必ず誰かを側に置いて下さい」
「わかった。ごめんなさい」
「分かって頂いて嬉しゅう御座います」
「私から1つ姫様にお願いが御座います」
「うん」
「聞いて頂けますか?」
コクリ。
「では、明日から午前中は礼儀作法と言葉使いを私がお教えします」
「げっ」
「ん?今なんと?」
「イエナンデモゴザイマセン」
「左様ですか。では、また明日」
失敗したなー。もっと他の想像すれば良かったよ。うーむ。部屋で試せる物…………。想像力…………。
よし!足が速くなる!……速くなる?どうやってだ?走らないとダメだな。うん。後はは……。
「姫様!!」「!?」
「忘れ物を取りに戻れば……。ノックの音にも反応せず、何をしてたのですか?」
うわ……。鬼だ鬼がいる……。笑顔が……
「この本を取りに戻りました」
「あ!これは……」
「姫様?」
「ひゃい!」
「好奇心も結構ですが、後2年お待ちください。6歳になれば魔力も落ち着き教師を付けることも出来ます」
「えー」
「普通は3歳で発現しないのですが……」
「出来たよ?」
「国王様から許可を姫様がお取りになられたら」
「わかった!明日の午後
に行ってくる!」
「先触れお出しになってからにしてくださいね?」
「はーい」
「では、御休みなさいませ」
ぬー。取られた。せっかく持ってきたのに。仕方ない眠くないけど寝る。
「父様に先触れだして!」
「申し訳ございません。国王様は2日程前から外交で暫く戻りません」「え!?」
フフ。これで暫く姫様も大人しくするだろう。
むっ、執事長、謀ったな!?
「さて、姫様。ご予定が空いたので何を致しますか?」
「……木登り」
「ほう。では何人か付けましょう」「いいよ?大丈夫。」
「姫様のそれは信用なりません」
ちぇ。いいや今度こそ天辺まで登る!
おおおおお!見晴らしがいいな!後ろを見渡す限り森!森森。森……。
うん。緑一色だな。
ここって高台なんだなー。
正面を向けば街が見える。
おお!ずっと奥に青が見えるな。
ここからじゃあんまり見えないなー。
よし!
王宮の塔に登ろう!
あそこならもっと遠くがみえる!!
「姫様どちらに?」 「塔に登りたいの」
「あの塔は鍵が掛かっており魔塔の許可が必要です」
「そうなの?じゃあ無理ね」
チッ仕方ないか……。
「何故あの塔へ?」
「さっき、木の上から街の奥に青いのがみえたの!あれはな何なのかもっと良く見たくて」
「成る程。では、書庫で地図をご覧になれば宜しいかと」
「そうか!あれは海と言うものね!ここから見えるのね!」「左様で御座います」「有り難う!詳しく見てみるわ!」「姫様。書庫は明日になさいませ」
「なんで?」
「姫様が本を読み始めると、なかなか出て来ないからです。後、半時で夕食で御座います」……「姫様?」
「わかった!」 「本当にお分かりになりましたか?婆やに隠し事は出来ませんよ?」
チッ。何で分かるかな~
「…少しだけ」 「では、お部屋に地図をお持ちしますから、お待ちください」
地図で思いを巡らせながら、後半月で4歳を迎える事に。
「ねぇ」
「何でしょうか」
「私暇」
「そう言われましても、執事長から御披露目までは、剣術のお稽古も木登りも禁止されております」
「父様は?今お忙しい?」
「!?」
「どうしたの?」
「姫様が…」
「?」
「国王様のご都合をお聞きになる日が来るとは……」
「…………」
「以前は、父様ー!かくかく然々でね!といきなり執務室に乱入されたり」
「乱入なんてしてないよ!?ただ、会いに行っただけだし…。それに父様もお話してくれたよ?」
「会議中に乱入されたり...」
「…………知らなかったんだもん」
「姫様がご成長なされて婆やは嬉しゅう御座います」
「…………」
そんなこと言っても、誰も何も言わなかったし…。知ってれば……、……うん。知ってても行ったな。
「それで父様は?」
「ご都合お聞きしてきて」
「少々お待ちください」
「今の時間から多少はお時間を頂けるそうです」
「やったー!早くいこ!」
「父様!!」
「姫様…」
「あ、お父様、お時間を頂き感謝します」
「……どうした!?何か悪いものでもたべたのか!?あれ程知らぬ物は食べてはならぬと言ったではないか!」
「いえ」
「では、剣術で頭を打ったのか!?」「…………」
「どうした!?やはり具合が悪いのか!?」
「侍医を呼べ!」
「お父様、私はおかしなものを食べた訳でも、頭を打った訳でもございません」
「では、なぜ!?いつものように飛び付いて来ない!言葉使いも変わってる!」
「お父様は今の私はお嫌いですか?」「!?そんなわけがあるもんか!!どんなお前でも可愛い娘だ!」
フフフン。
「もう4歳になるから言葉を使い分けなさいって」
「誰がそんなことを!」
「執事長」
「大丈夫だ。私が許す私の前では取り繕わなくて良い」
「父様大好き!!!」
「!!」
国王は嬉しそうに姫を抱き上げ膝に乗せた。
「それで姫はどうした?何かあったのか?」
「私ね海を見たいの!」
「海?」
「うん!この間木に登って街を見たときに奥に見えたの!あれが海なんでしょ?」
「おお。そうかそうか。でもな?王族は御披露目までは王宮の外には出てはならないんだよ」
「えー誰が決めたの?」
「うむ、そういえば、誰だろうな?父様の父様から言われて、そんなもんなのかと」
「ふーん」
「そうだ!姫。書庫で調べてはくれぬか?もしかしたら何処かに書いてあるかも知れん」
「書いてないよ?全部読んじゃったもん」
「なんと!?」
「姫は賢いなぁ」
「でも、禁書庫はまだ見てない」
「あそこは姫が6歳になったら鍵を渡そう。それまでは我慢だな!その代わり4歳の御披露目が終わったら船に乗せてやろう」
「本当に!?やったー!父様大好き!」
「でも、それまでお部屋に居なきゃいけないんでしょ?……」
「いや?何時もと同じで構わん。ただ、怪我だけはしないでくれよ?」
「うん!じゃあ、またね!!」
ふふふふ。これで外に出られる!やったね。
姫様……本当に頭が回る。国王を味方に付けられれば私にはなんとも出来ぬ
昔々ある小さな国に大層賢い……いや大層可愛らしいお姫様がおりました。
お姫様はとても優しく、聡明で……いや悪賢くとても静かな……ゴホンとても活発な姫でした。




