その笑みに先ほどの悲しみはもうない
掲載日:2026/05/15
「君は神になりたいの?」
書類整理をしていると、上司に言われた。
一度そちらを見て、向こうも整理中なのを目で捉え。書類に視線を戻してから、頷く。
「そうだな」
「神になってどうしたいの」
どう。
一瞬考えれば、すぐ答えが出た。
「……神になれば……力があれば、救いたいものを救えると思っただけだ」
「……そう」
沈黙は思いのほか長かった。
世間話は終わりかと、書類に意識を向けようとすると。
「……神になっても」
「?」
小さい声が聞こえて、また意識をそちらに向ける。
「……神になっても、救えないものは多いよ」
意識を向けても、小さな声に。
それは体験談だったのだろうと予想がついて。
「……神でも万能ではないんだな」
そう、返せば。
そりゃそうだよ、と。
いつもの笑みで上司は笑った。
『その笑みに先ほどの悲しみはもうない』/リアス




