エピローグ「数年後のフォーカス」
「蓮、早く! 飛行機出るよ!」
空港のロビーで、湊がスーツケースを引きながら走っている。
あれから数年。
大学を卒業した二人は、パートナーとして共に暮らしていた。
蓮はプロの写真家として名を馳せ、湊はそのマネージャー兼パートナーとして彼を支えている。
今日は、海外での個展のために出発する日だ。
「そんなに急がなくても間に合う」
蓮は相変わらずマイペースだが、その表情は穏やかだ。
かつての刺々しさは消え、大人の余裕と色気を纏っている。
左手の薬指には、シンプルなシルバーの指輪が光っていた。
湊の指にあるものと同じデザインだ。
「だって、今回の個展、大事なんでしょ?」
「まあな。……でも、一番大事なのはお前との旅行だ」
さらりと甘い言葉を吐く蓮に、湊は顔を赤くする。
何年経っても、この男の溺愛ぶりは変わらない。
いや、むしろ年々悪化している気がする。
「もう……場所わきまえてください」
「事実だろ」
チェックインを済ませ、搭乗口へ向かう。
大きな窓から、飛び立つ飛行機が見える。
「ねえ、蓮」
「ん?」
「俺たち、これからもずっと一緒だよね」
「当たり前だ。……死んでも離さない」
重い言葉だが、今の湊にはそれが心地よい安心感だった。
「俺もです。死んでも離れません」
二人は顔を見合わせ、笑い合った。
その瞬間、蓮がポケットからコンパクトカメラを取り出し、カシャッとシャッターを切った。
「あ、また撮った!」
「いい顔してたからな」
蓮は液晶を確認し、満足そうに頷く。
そこには、愛する人に見守られ、世界で一番幸せそうに笑う湊の姿があった。
ピントは完璧。
二人の未来には、もう迷いもブレもない。
無限に広がる空のように、鮮やかな物語がこれからも続いていくのだ。




