第11話「展示会の反響」
学園祭初日。
写真サークルの展示会場は多くの人で賑わっていた。
特に蓮の新作には注目が集まり、人だかりができている。
「すごい……これが『絶対零度の王様』の作品?」
「なんか、いつもより優しい雰囲気じゃない?」
「被写体のこの子、すごく愛されてる感じがする」
そんな感想が聞こえてくる。
湊は顔が熱くなるのを感じながら、受付に立っていた。
自分たちの写真が、他人に見られている。
二人の間の空気感が、写真を通して伝わっている。
それは少し気恥ずかしく、でも誇らしい気分だった。
「お、湊くん! 大人気じゃん」
西園寺がやってきた。
相変わらず派手な格好だが、今日は少し神妙な顔をしている。
「……負けたよ」
西園寺は蓮の作品の前で立ち止まった。
「あいつ、こんな顔できるんだな。……被写体への愛が溢れすぎだろ」
悔しそうに、でもどこか清々しく笑った。
「邪魔して悪かったな。お幸せにって伝えといて」
西園寺はひらひらと手を振って去っていった。
湊はほっと胸を撫で下ろした。
その時、一人の老婦人が湊に話しかけてきた。
「あなた、この写真の方ね?」
「あ、はい。そうです」
「とても素敵なお写真ね。撮った方の、あなたへの想いが伝わってくるわ。大切になさいね」
老婦人の言葉に、湊は胸が一杯になった。
写真には嘘がつけない。
蓮の想いは、誰の目にも明らかなほど、写真に焼き付いていたのだ。
午後、休憩に入った湊は蓮を探した。
蓮は人混みを避けて、非常階段の踊り場にいた。
「お疲れ様です。大盛況ですよ」
「……疲れた。人が多すぎる」
蓮はぐったりとしている。
人嫌いの彼には辛い環境だろう。
「もう少しの我慢です。終わったら、美味しいもの食べに行きましょう」
「……湊」
蓮が湊の手を引いた。
人気の少ない踊り場。
秋の風が吹き抜ける。
「今、言ってもいいか」
「え、でも展示が終わってからじゃ……」
「待てない」
蓮は切羽詰まったように言った。
その目は、今まで見たどの写真よりも熱く、湊を捉えていた。




