第10話「学園祭前夜」
学園祭当日が近づいていた。
湊と蓮は仲直りを果たし、展示作品の仕上げに取り掛かっていた。
テーマは「距離」。
湊が撮る蓮、蓮が撮る湊。
二つの視点から、互いの距離感が縮まっていく様子を表現する連作だ。
準備のため、二人は深夜の大学に泊まり込んでいた。
静まり返った部室で、写真をパネルに貼り付ける作業を行う。
「この写真、やっぱりいいですね」
湊が指差したのは、あの河川敷で撮った最初の一枚。
ピントは甘いが、蓮の優しさが溢れている。
「……恥ずかしいからやめろ」
蓮は照れくさそうに顔を背ける。
「こっちの方がいい」
蓮が選んだのは、暗室で撮った湊の写真だった。
赤いライトの中、驚いたように目を見開き、頬を染めている湊。
完全に無防備で、艶っぽい表情だ。
「これ展示するんですか!? 恥ずかしいですよ!」
「いい顔だ。俺にしか見せない顔だ」
蓮は満足げに笑う。
最近、蓮はよく笑うようになった。
もちろん湊の前限定だが、その笑顔を見るたびに湊の胸は高鳴る。
作業が一段落し、二人はソファに並んで座り、缶コーヒーを飲んだ。
「明日、いよいよですね」
「ああ」
「たくさんの人に見られるのかな。緊張します」
「大丈夫だ。お前の写真はいい。俺が保証する」
蓮の言葉は、どんなお守りよりも強力だった。
ふと、蓮が湊の方を向いた。
「湊」
「はい?」
「展示が終わったら、話がある」
真剣な眼差し。
心臓がトクンと鳴る。
話とは、きっとそういうことだ。
湊も覚悟を決めていた。
「……はい。待ってます」
その夜、二人はソファで寄り添うようにして仮眠をとった。
触れ合う肩から伝わる鼓動のリズムが、心地よい子守唄のようだった。




