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Rapids≠Archive 名波西高等学校編  作者: えでん
□□県□□市立名波西高等学校

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1/1

Ep.1 一ノ瀬碧―1




 西暦????年 ??月??日 ???


 その日はとても暑かった。空を見てもあるのは太陽だけ、雲なんか一つもなく誰が見ても快晴。近所や公園にある木々には蝉が何十匹も止まっていて、ミンミン鳴いていてとてもうるさかった。

 道端を歩いていると、玄関前で水巻をしているおばあちゃんがいる、バス停にはいかにも二日酔いですという顔のサラリーマンがいる、コンビニにはしゃがみこんでタバコを吸っている大学生くらいのヤンキー、見慣れた人たちが今日も同じ場所に配置されていた。

 ここには田舎と都会の中間の位置にある町、“名波町”。人口は大体7〜8万人くらい、歴史も少しあるらしく神社が結構ある。コンビニやスーパー、中型ショッピングモールなどもあり、ホテルやファミレス、雑貨屋などたまに見るようなものもあり、意外と困ったりすることがない。

 だが、これだけあってもないものがある。それは、この町特有の何かだ。この町にはある程度のものがある。だがこの町特有の何かがない。だから若者は大人になると大体都会に行く。こうやって過疎化が進んでいくんだろうか。だからこの町に住んでるみんなちょっとつまらなさそうだ。そして、俺もその1人だ。




 ある真夏の森奥でのこと。木々に蝉が何十匹も止まっており、子孫を残すため一生懸命ミンミンと鳴いている。そこに、半袖半ズボンで丸腰の小学4年生くらいの少年が、森の中を1人で歩いていた。来たのが初めてではないのか少し笑みを浮かべ、どんどん道に沿って歩いていく。

「あーなんか面白いことないのかぁ…てか汗えぐ」

 少年は勢いよく腕を振り、山道を駆け上がった。

 この山道を登れば、公園程度の大きさの広場がある。山の頂上ではないが、それなりに町を見渡せる場所がある。基本そこには誰もいないから1人になりたいなら結構定番の場所。だが、今回は先客がいたようだ。

 少年が山道を駆け上がり、広場に着いたそのとき。目の前には赤色で大きな鱗に覆われた体、長い尻尾、そして広げると翼長30mはだてじゃない大きな翼。そう、(ドラゴン)だ。(ドラゴン)が翼を閉じ、尻尾を巻き、目を閉じて、寝ているのだ。

「え、え…え、な、何これ?…え」

 動揺を隠しきれず、少年は体を震わせた。だが、体の震えが止まった瞬間、少年は大きく息を吸い笑みを浮かべた。

「か、かっけぇぇ!!!!何こいつ何こいつ!!めっちゃカッケェじゃん!」

 少年は満遍の笑みを浮かべて言った。まるで大好きなサッカー選手が目の前にいるかのようなキラキラした目をしていた。

 すると、少年は(ドラゴン)の前まで歩み、体表を撫でてみた。見た目通り、体は硬い鱗に覆われており少し艶々していた。

 次は顔に近づいた。頭には大きなツノが2本、剥き出しになった一本一本が大きい歯、そして大きな鼾。どうやら今は熟睡中らしい。だが、そんなことを考えず少年は顔を撫でた。

「起きたら怒るかな?えい!」

 そう言い少年は閉じている(ドラゴン)の瞼を開いた。その瞼は重く、少年の両手の力でようやく開いた。瞼を開くと、そこには猫のような鋭く黒い目があり、結膜は綺麗な朱色の同系色だった。

「き、綺麗…」

 そのときだった。(ドラゴン)の鼻の穴から強烈な鼻息が出た。その瞬間、(ドラゴン)は立ち上がり背伸びをするように大きく手と翼を広げた。

「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"もううるさいなぁ!!」

 少年は急に(ドラゴン)が日本語を喋り出したこととシンプルに(ドラゴン)がでかいことに腰を抜かしてしまった。

「しゃ、喋った???????」

「あぁ、そうさ。僕は今喋った。なんてったって(ドラゴン)だからね、それくらいできるさ。それでさ、君誰?」

 (ドラゴン)は両腕を組み、不思議そうに少年を見た。どうやら敵視はされていないらしい。

「え…俺の名前?俺の名前は一ノ瀬碧。」

「そ、それはどこからが名字でどこからが個人名なんだ?」

「え、えー一ノ瀬が名字で碧が個人名だよ。」

 少年は内心、「(ドラゴン)も個人名なんて言葉使うんだ」と考えながら答えた。そんなことを考えている内に少年の緊張はほぐれてしまっていた。

「じゃあさ、そっちの名前も教えてよ」

「え〜僕の名前〜?」

「なんでいやそうなんだよ、早く教えて!」

 少しの時間沈黙が走る。(ドラゴン)はとても言いたくなさそうな顔をしているが、少年も真剣な顔を向ける。

「はぁ〜、わかったよ。教えてあげる」

「よっしゃー!」

「僕の名前は、―――――――――だよ」




 西暦2025年 04月02日 水曜日


「お兄!起きて!早く!」

「あーもうなんだよ!今ぐっすり寝てたのに!」

 開かれたカーテンによって、窓の外側にある大きな太陽の光が少年たちに降り注ぐ。どうやら今日は快晴のようだ。太陽の周りに雲一つ無くあるのは真っ青な空、まさにお出かけ日和。

「今日は家族みんなで遊園地に行くんだから早く支度してよね!ママとパパはもう朝ごはん食べてるよ!」

 そう少年に言い少女は少年の部屋を出、下の階へ降りて行った。

「はぁ、今年は忙しいからずっといえなんじゃないのか?」

 そう言いつつ、少年はスマホの通知を確認し、クローゼットから服を取り出した。


『こんにちは。僕の名前は〈一ノ瀬碧(いちのせあおい)〉と言います。彼女いた歴=年齢で特に変わったことはなし、中学時代は意外と陽キャ、身長は159cmと小柄でイケメン寄りの顔(友達曰く)。ちなみに今年から高校生になる新人DKです。ちなみにさっきのちっちゃい奴は〈一ノ瀬栞里(いちのせしおり)〉。今年からJCになる僕と3つ離れた妹。今は身長149cmと僕より小柄だけど、ワンチャン抜かれる可能性に日々恐怖している。』

 碧は全身鼠色の寝巻きから、黄色いパーカー、黒いスキニーパンツを着て2階に降りた。

 一階にはソファで最近買ってもらったスマホを眺めている栞里、寝巻き姿で食パンを頬張っている父さん、そしてキッチンで洗い物を片付けているエプロン姿の母さんがいた。

「あら、あおくん遅かったじゃない。栞里が起こしに行ったのに」

「着替えてたんだよ……栞里、前髪崩れてるぞ?」

「知ってる、今友達とLINEしてるの。邪魔しないで。」

「はあ、なんでこんなに冷たいんだ…」

 碧が咄嗟につぶやく。すると栞里が睨みながら言った。

「お兄だけだよ!!!」

「知ってるよ!!!」

「おいおいおいちょっと待て!栞里はお父さんにも冷たいぞ?」

「「ちょっと黙ってて!!!!!」」

「はい、すみません」

 2人に黙らされた父さんは寂しそうに食パンを完食してしまった。すると、母さんが2人の揉め合いを割って入って言った。

「まあまあいいじゃない、兄妹ならよくあることよ。」

 碧と栞里が喧嘩して、父さんが入って母さんが止めに入る。このような会話は一度ではなく、もう何十回もした。もうここまで来るともうルーティーンだ。

 それから碧たちは、外出の支度をして家を後にした。碧たちが住んでいるのは、二階建ての一軒家だ。親曰く、結構広めの家が欲しかったため、この家を選んだんだとか。それだけあって駐車場もなかなか大きく、車3〜4台は停められる大きさだ。

 一ノ瀬家には2台車がある。その中でも今回乗る車は黒色の“カローラクロス”だ。父さんが車好きで、その中でもトヨタが大好きらしい。基本的にカローラクロスは父さんが通勤とかで使っているそうだ。

 碧たちはカローラクロスに乗り込み、隣町の遊園地に向かう。

「いや〜こうやって家族で外出なんていつぶりだろうな。父さん今日を待ちに待ってたんだぞ〜」

『こういう時は、だいたい母さんが反応してくれる。』

「えー私も〜きっと子供たちもそう思ってるわよ」

『いや全然そんなことはないんだが?』

「私はめちゃくちゃ楽しみだったよ?お兄は?」

「え、ま、まあ僕もたn」

「え!見てあれ見てあれ!!フェアレディだよ!フェアレディ!!」

 赤信号で停止している車の中に一際目立つ車があった。その姿は、大きなライトに緑色に輝く車体、そして近年では見られない珍しいホイルのタイヤ。車好きの父親にとってはたまらないものだ。

「え!めっちゃかわいいじゃん!!」

「いやかっこいいだろ」

 碧が反論するように言ったが、またさっきみたいに喧嘩になることを悟ったのか、言い返そうとしていた口を閉じた。栞里も今年で中学生なので、そういうところもちゃんと空気を読めるようになってきている。




 車を発進させて約30分、碧たちは“古田セントラルパーク”に到着した。

 古田セントラルパークは、名波町の真横にある古田(ふるた)町の海沿いにある中規模遊園地。アトラクションはジェットコースター、メリーゴーランド、コーヒーカップ、ゴーカート、そして観覧車など様々なものがある。中規模とは思えないぐらいアトラクションがあるが、他の大きな遊園地に比べれば少し物足りないという感じ。碧と栞里は生まれてからずっとこの近くに住んでいたから、とてもお世話になっている場所だそう。

 一ノ瀬家は車を駐車場に停車し、入場口でチケットを買う。値段は大人1200円、子どもは400円と安めだった。この値段は2人が生まれる前からのことだそう。

 入場してみると、平日の割に結構人がいた。その中でも、比較的子連れやカップルが多い。

『えーまじか、こんな人いんのかよ。やだなー僕人多いとテンションそんな上がんないんだよ。でもどうせみんな……』

「よーしじゃあメリーゴーランドから行こう!!」

 父さんははしゃぐ幼稚園児のように言う。すると栞里が、

「いや、最初はジェットコースターでしょ。一番最初は絶叫に乗ってテンションあげるのよ」

『こいつらまじか…初手からこのテンション…。最初はコーヒーカップとかでいいだろうよ…』

 碧は内心こう思っているが、なかなかみんなには伝えない。伝えたらまためんどくさいことになるからだ。だから基本碧はそういうことは口に出さないようにしている。

 と、ここで母さんが間を割って言う。

「じゃあ、ここは間を取ってお化け屋敷に…」

「「絶対嫌だ!!」」

 父さんと栞里は口をそろえて言う。これには母さんも押し切られ、ここで助けを求めるように碧に話しかける。

「じゃ、じゃあ碧はどれに乗りたいの?」

「え、えー…コーヒーカップじゃないかな…?」

  碧は控えめに言う。

「……………え!めっちゃいいじゃんコーヒーカップ!!」

「確かに、コーヒーカップがいいな!!よしそうしよう!」

『2人が賛成してくれてよかった。じゃなかったら絶対めんどくさいことになってた。てかこんな道の止まんなかでよくこんなに揉められたな』

 そんなことを思いつつ、碧たちはコーヒーカップへ向かった。

 コーヒーカップの列は短く、すぐに乗ることができた。人は結構いるが、どうやらコーヒーカップはそこまで人気ではないらしい。

「案外すぐ乗れたな」

「そうだね、それでも人けっこーいるけど」

 そんなことを話していると、機械が起動し始めた。    

 コーヒーカップは最初はゆっくりと回転を始め、その後に円上に急回転し、激しく乗客を振り回す。

 栞里や他の女性陣の乗客は「キャーーー」と笑顔で発狂しつつ、男性陣は「うおぉぉぉぉおおぉ」となんとも男の悪いところを出したような声を出していた者が多かった。ちなみに碧は少し驚いた顔をしつつ、無言でコーヒーカップを終えた。

「よし、じゃあ次はメリーゴーランドだな」

「いや、ジェットコースターだね」

『結局また始まるのかよこのくだり。さっきやっただろうよ』

「もうじゃんけんで決めろよ、ここで争っても時間の無駄だよ?」

「そうよ、あおくんの言う通り。2人でじゃんけんで決めなさい」

 母さんが少し怒ったように言う。さすがの2人も少し反省し、正々堂々のじゃんけんで決めることにした。

「「じゃんけん!…ポンッ!!」」

 父さんはグー、栞里はチョキをだした。勝者は父さんのようだ。

「ふっふっふ、これが我が大黒柱の力だっ!」

『ふっふっふ、バレてないようだが俺は後出しをしたんだがな、哀れな小娘め』

『なんて大人げない父親なんだ…あっ』

 碧は咄嗟に目を隠すよう覆った。

「どうした?目に何か入ったのか?」

「いや、なんでもないよ」

「…お兄…」

 栞里が碧の肩を叩き、耳元に小さな声で呟いた。

「わかってる、大丈夫だから」

 栞里に心配をさせないようにか、少し微笑みながら言う。

 『それから僕たちは、栞里が乗りたいというジェットコースターに乗った。ジェットコースターは人気だったから、やっぱり少しの時間だけ並んだ。ちなみに母さんはジェットコースターが苦手だから、ベンチに避難している。』

 碧と栞里は運良く一番前に乗ることができ、父さんはその後ろ。ジェットコースターが動き出す。どんどんレールを登っていき、てっぺんに着いた。その先を見ると、青い海と光り輝いている太陽が視界全体に映り込んだ。と、次の瞬間視界が真っ逆さまになり、ジェットコースターは滑り落ちた。風を切り、グネグネとしたレールを高速で走っている。これは他のものでは絶対に味わえないものだ。

 碧が横を見ると、「キャーー」と叫ぶ栞里がいた。だが叫んでいるのは栞里でけではなく、ほとんどの乗客がそうであった。そして、このジェットコースターに微動だにしなかったのは碧だけだろう。




『時間というものは結構すぐ経つ。だってもう6時だよ?流石にちょっと早い気がする』

「にしても、ほんんと疲れたなあ。」

「でも。最後はやっぱお兄が好きな観覧車でしょ」

「結構みんな最後は観覧車乗ると思うけどな」

 父さんが先ほどのお化け屋敷で腰をやってしまったので、ここでリタイヤ。母さんも付き添いでリタイヤ。今はベンチで寝ている。なので、碧と栞里だけが観覧車に乗ることになった。

「いや〜にしても、お兄と観覧車なんていつぶりだろ。4年ぶり?」

「そうかもな」

 2人は観覧車の列の最後尾に並んだ。日も落ちてきたということで、今観覧車に乗りたいという人が増えたのだろう。列には人がたくさん並んでいた。

「うわ〜これは結構乗るのに時間かかりそうだな〜」

「そうだね、連絡したら」

「そうだね、そうしよ」

 栞里はカバンからスマホを取り出し、LINEで親に遅れると連絡を入れる。

「よし、これでー………ねえ、あれ何?」

 栞里は朱色に染まった空に指を刺す。碧がその先を見ると、そこには黒い円状の“穴”があった。周りを確かめると、「何あれ」「えー怖」などの声が上がっていた。どうやらこれは誰でも見ることができるようだ。

「ねえ、お兄、あれって…」

「ああ、」

 と、次の瞬間黒い円状の穴の中から誰もが想像したことがあるであろう伝説の生き物の顔の姿を現した。その顔に続き、細い体に光沢がある鱗、鋭い爪、そして長い尻尾。

「ドラゴンだ。」

 碧たちの目の前に現れたのは、赤い鱗をした空想上の生き物“ドラゴン”だった。




 Characters

CN.1 一ノ瀬碧(いちのせあおい) 2009.09.03 

備考︰新人DK、身長159cm


CN.2 一ノ瀬栞里(いちのせしおり) 2012.09.26

備考︰新人JC、身長149cm


CN.3 一ノ瀬大輔(いちのせだいすけ) 1980.04.04

備考︰一ノ瀬父、車好き


CN.4 一ノ瀬京子(いちのせきょうこ) 1980.11.25

備考︰一ノ瀬母

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