第56章 ハナのはじめてのおつかい
わたしの名前はハナ。今日は、はじめてのおつかいの日。お母さんに頼まれて、ミアおねえちゃんのお店まで行くの。ドキドキするけど、がんばるんだ!
朝起きると、窓の外はキラキラしてた。お日さまがニコニコ笑ってるみたい。わたしは、ベッドから飛び起きて、窓を開けたの。
「わぁ、いい天気!」
朝のそよ風が、わたしの頬をくすぐった。なんだかくすぐったくて、思わず笑っちゃった。
お母さんが、わたしのために可愛いワンピースを用意してくれてた。ピンク色で、胸元にはお花の刺繍がついてる。わたし、お花が大好きなの。
「ハナ、朝ごはんできたわよ」
お母さんの声で、わたしは急いで着替えた。鏡を見ると、わたしの髪の毛がちょっとボサボサしてた。お母さんにとかしてもらおう。
朝ごはんは、わたしの大好きなふわふわパンケーキ。お母さんが特別に作ってくれたの。
「ハナ、今日はおつかいがんばってね」
お母さんが、わたしの頭をなでなでしてくれた。なんだかちょっと緊張してきちゃった。
「うん! がんばる!」
でも、わたしは元気よく返事をしたの。
朝ごはんを食べ終わると、お母さんがわたしにかごを渡してくれた。
「これにお手紙と、お金を入れたわ。ミアさんのお店で、『まほうのハーブティー』をお願いするのよ」
わたしは、しっかりとかごを持った。かごの中には、お母さんの手紙とキラキラしたコインが入ってる。大切にしなきゃ。
家を出ると、村の道がわたしを迎えてくれた。道の両側には、色とりどりのお花が咲いてる。赤やピンク、黄色、紫……まるで虹みたい。
歩き始めると、ちょうちょうが飛んできた。きれいな青色の羽根が、お日さまの光でキラキラ光ってる。
「わぁ、きれい!」
わたしは思わず声を上げちゃった。ちょうちょうは、まるでわたしに「がんばって!」って言ってるみたいに、ひらひらと飛んでいったの。
道を歩いていると、いつもは怖いと思ってた坂道も、今日は楽しく感じた。坂を上ると、村全体が見渡せるの。屋根も、木も、みんな小さく見えて、まるでおもちゃの村みたい。
風車が見えてきた。大きな羽根が、ゆっくりとまわってる。風車のてっぺんには、小鳥さんが止まってて、楽しそうにさえずってた。
「こんにちは、小鳥さん!」
わたしが手を振ると、小鳥さんも鳴き声で返事をしてくれたみたい。
風車を過ぎると、いよいよミアおねえちゃんのお店が見えてきた。お店の前には、きれいなお花がたくさん咲いてる。わたしの大好きなお花屋さんのリリーおねえちゃんが、お世話してるんだって。
お店の扉の前に立つと、なんだかドキドキしてきた。でも、わたしはがんばるんだ! 深呼吸をして、ゆっくりと扉を開けた。
「こんにちは……」
小さな声で挨拶をすると、お店の中からいい匂いが漂ってきた。ハーブの香りと、お菓子の甘い香り。わたしの鼻がくんくんして、思わずにっこりしちゃった。
カウンターの向こうに、ミアおねえちゃんの姿が見えた。長い薄紅色の髪が、お日さまの光で輝いてる。青い瞳が、まるで空のようにきれい。
「あら、ハナちゃん。今日はどうしたの?」
ミアおねえちゃんが、優しく微笑んでくれた。その笑顔を見て、わたしの緊張がちょっとほぐれた気がした。
「あの……おつかいに来ました」
わたしは、かごの中からお母さんの手紙を取り出した。少し震える手で、ミアおねえちゃんに渡す。
「まあ、はじめてのおつかいなのね。偉いわ、ハナちゃん」
ミアおねえちゃんが、わたしをほめてくれた。なんだかうれしくて、頬がぽかぽかしてきた。
ミアおねえちゃんは、手紙を読むと、にっこり笑って言った。
「分かったわ。『まほうのハーブティー』だね。少し待っていてね」
ミアおねえちゃんが、奥に行って戻ってくると、きれいな缶を持ってきてくれた。缶の表面には、お花の絵が描かれてる。わたしの大好きなお花だ!
「はい、これよ。お母さんにしっかり届けてね」
わたしは、大切そうに缶を受け取った。かごの中に、そっと入れる。
「あと、これはハナちゃんへのご褒美よ」
ミアおねえちゃんが、小さな紙袋をくれた。中を覗くと、星の形をしたクッキーが入ってる。
「わぁ、ありがとうございます!」
わたしは、うれしくて思わず声が大きくなっちゃった。
「気をつけて帰るのよ。また来てね」
ミアおねえちゃんが、優しく手を振ってくれた。わたしも、元気よく手を振り返した。
お店を出ると、なんだか空が前より青く見えた。雲さんたちも、わたしに「よくがんばったね」って言ってるみたい。
帰り道、わたしは軽やかな気持ちで歩いた。風がそよそよ吹いて、わたしの髪をなでてくれる。鳥さんたちも、きれいな歌声で歓迎してくれてるみたい。
家に着くと、お母さんが待ってた。
「おかえり、ハナ。どうだった?」
わたしは、かごの中から缶を取り出して、お母さんに渡した。
「はい、ただいま! ミアおねえちゃんのお店に行ってきたよ」
お母さんが、わたしを抱きしめてくれた。
「よくがんばったわね。ハナは偉い子だわ」
わたしは、お母さんの言葉を聞いて、胸がいっぱいになった。はじめてのおつかい、ちゃんとできたんだ。
その夜、お母さんが淹れてくれた「まほうのハーブティー」を飲みながら、わたしは今日一日のことを思い出した。怖かったけど、楽しかった。そして、なんだかちょっぴり大人になれた気がした。
窓の外では、お星さまがキラキラ輝いてる。まるで、わたしにウインクしてるみたい。わたしは、星に向かって小さく手を振った。
「おやすみなさい、お星さま。明日も素敵な一日になりますように」
そう言って、わたしはベッドに潜り込んだ。今夜は、きっといい夢が見られるわ。




