プロローグ エンタングルメント・ラボ
日本最高峰の高校、日本科学第一高校に俺は入学した。
もちろん、死に物狂いで勉強したわけで、そりゃもう大変だった。
起きている間はずっと勉強、勉強、勉強の日々。
中学での人間関係に悩んでいた俺はとにかく別の世界に行きたかった。
新しい環境で俺は生まれ変わるんだ。
そう意気込んでいたが⋯。
しかし高校に入学した後も俺には友達が全くできなかった。
なぜだ。
論述式にもほどがあるクソ難関な筆記試験を突破して、偏差値76のこの高校に入れば何かが変わると思っていた。
しかし、結果はE組。
どうやら俺には才能がなかったらしい。
俺ってこんなもんか。
もっと自分はすごいやつだと思っていた。
根拠もないのに、そのうち自分は大成功する人間なのだと。
完全に思い上がっていた。
みんなに称賛される自分を想像してはニヤニヤとし、
周りの人間を心の中で見下していた。
そうか、そんなだから友達ができないのか⋯。
これが俺の弱点だ。
ふと、母さんの言葉を思い出した。
「すごい人ほど身の程をわきまえているのよね。」
まさにそのとおりで、上に立つ人間は自分よりさらに上の人間と比べて謙虚になる、ということだ。
下には下がいるように、上には上がいる。
それを知っている者が強いのだ。
高校に入学して人間関係がある程度固まり、もはや自分の入る隙などなくなってから、このことに気づいた。
さて、もう昼休みだが、死ぬほど教室にいたくねえな⋯。
気まずい⋯。
たしか、屋上の手前の階段は人気が少なかったはず。
そこで一人飯でもするか⋯。
購買で買ったジャムパンを齧っていると、
俺は急に声をかけられた。
「君は面白そうな視点を持っていそうだね。」
暗めの茶髪を肩まで伸ばした女が、俺の目の前で仁王立ちしていた。
「⋯お前は確か入学式のとき新入生代表として挨拶してた⋯」
「A組の由津里司だよ。君の名前は?」
E組の俺がわざわざA組のやつと、しかも首席を取るようなやつとお近づきになんかなりたくないが。
とりあえず、答えるしかない。
「物部信だ。噛みそうな名前であまり好きではないが。」
「信くんか。覚えたよ。でさ、君は友達いないの?階段で一人でご飯を食べるだなんて。」
「俺には義務教育学校の頃から友達なんていねえよ。」
「ふうん。友達、いないんだ。それはちょうどいい。」
そう言いながら振り向きざまに由津里は言った。
「私たちのアジト、エンタングルメント・ラボのお手伝いをしてよ、物部信くん?」
「一人きりでいたら、観測されない。そうすると、存在しないのと同じになっちゃうんだよ。」
無邪気にそう言った彼女の手にはスマホが光っていた。
「ようこそ、量子力学の世界へ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
作品の感想を、★〜★★★★★で評価していただけると嬉しいです。
今後の創作の励みにさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。




