第5話「仮面の夜、真実の結末」
広間に緊張が張り詰めたまま、舞踏会は一時の静寂に包まれていた。
倒れた令嬢も、犯人たちの告白も、すべてが明らかになったはず――しかし、澄玲の瞳はまだ満足していなかった。
「隼人、全員の動き、もう一度確認して」
澄玲は優雅にマントを翻す。
「嘘は連鎖する。人は誰も、完全には隠せない――だから、もう一歩踏み込むのよ」
隼人は深く息をつき、瞳を見開く。
「澄玲様……本当に、細かいところまで見抜くんですね……」
「当然よ。観察力こそ、私の武器。人の心の裏を読むのは、娯楽でもあり、戦いでもある」
澄玲は笑みを浮かべ、舞踏会の全員を見渡す。
すると、最初に倒れた令嬢の横で、小さな異変を隼人が見つけた。
「澄玲様、あの侍女……何か隠しているようです」
澄玲は瞬時に視線を送る。
「ふふ……やはり。嘘は些細な仕草に出るもの。手の震え、視線の迷い……すべて証拠よ」
侍女は青ざめ、口ごもる。
「い、いや……私は……」
「隠さなくていいわ。あなたの役割も、すべて私には見えている」
澄玲は鋭く微笑み、侍女を見据えた。
「毒を運んだだけの人間でも、罪は罪。だからこそ、人は愚かになるの」
隼人は小さく息をつく。
「澄玲様……これで、全員ですか?」
「ええ、これで一件落着……とはいかないかもしれないけれど、今夜の狩りは完了ね」
澄玲の瞳には冷徹さと、ほんの少しの楽しげな光が混ざっていた。
広間の空気が少しずつ和らぐ。
人々は安堵し、犯人たちは警備に連れられて去っていく。
だが澄玲の目は、まだ遠くを見据えていた。
「隼人、覚えておきなさい。人の心は常に仮面で覆われている。今夜の事件は序章に過ぎない――次の夜も、真実を暴く戦いは続くわ」
隼人は深いため息をつき、しかし微笑みを浮かべる。
「……澄玲様と一緒にいると、胃が痛いですが、世界が鮮やかに見えますね」
「ふふ、当然よ。私の遊びは、ただ単に面白いだけではない。心の闇を照らし、嘘を暴き、そして愚かさを楽しむ――それが私の流儀」
澄玲は扉の方を向き、広間の灯りを背にして立つ。
夜風がマントを揺らし、金の刺繍がきらめく。
「次は誰の嘘を暴こうかしら……」
少女の微笑みは、夜の闇よりも冷たく、しかし美しかった。
舞踏会の夜は終わった――だが、神楽坂澄玲の狩りは、まだ終わらない。
仮面の街に潜む「真実」を暴き尽くすため、令嬢の冒険は次の夜へと続くのだった。
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