最終章 ④
「ま、待て、ユータン! 刃を収めろ! そうすれば、貴様と貴様の女は生かしてやる! 失
った過去の楽しみを、これから楽しむことができるぞ⁉ お前の身体を、望む姿に変えてやっ
てもいい!」
「望む姿? そんなもの無い。俺は、今の姿を受け入れる」
勇太は言って、眉宇を厳しく引き締めた。
そして、おもむろに目を閉じると、究極変身を解除。元の小さな姿へと戻ってみせた。
「ッ⁉」魔王が息を呑む。
究極変身時間、残り四二秒。
だが、聖剣の輝きは消えるどころか強さを増し、勇太の黒かった髪までもが、金色掛かった白光を帯びた。
「もう俺は過去にはいない。心陽と同じ今を進む。今の俺は、山田勇太だッ!」
勇太は気迫と共に、魔王に立ち向かう。
「なんだ、この動きは⁉」
勇太の攻撃パターンが変わり、魔王が呻く。
勇太が繰り出すのは、小さな身体でも、諦めることなく積み上げた独自の剣術。
コマの如く身体を回転させ、遠心力によって速度と威力を増し、縦横無尽、連続斬撃を放つ。この技は、ユータンだった前世の頃にはなかったもの。
「我が支配下に入ってこそ、争いなき平和が手に入るものを! この愚か者がァ‼」
「みんなを支配する権利なんか、誰にも無いッ‼」
幾重にも切り結ぶ魔王だが、勇太の猛攻に押され、後退する。
「小癪なチビがァァァァァッ‼」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおッ‼」
他の追随を許さぬ勇太の聖剣は、魔王の魔剣を殴打し、削り、刻み、砕き、へし折る。
世界中の人々が口々に叫ぶ。
《いっけぇえええええええええええええッ‼》
勇太の脳裏に、ココが、仲間が、故郷が、師匠が、五郎が、ドリィが、そして、心陽の笑顔が浮かぶ。
あとは、進むだけ。
勇太は魔王の巨体と交錯。大振り横一閃を振り抜き、着地した。
究極変身時間、残・ゼロ。
勇太の聖剣によって、魔王の腹部は鎧ごと斬り裂かれ、爆発。
「グォオァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ‼」
魔王の雄叫びに、一部始終を撮影していたドローンが上下に激震。そのダメージの凄まじさを物語った。
巨体もろとも灰と化し、ボロボロと崩れ去る魔王を背に、勇太は空を見上げる。
どこか遠くで、多くの人々の歓声が上がる、そんな気がした。
「――勇太くん」
名前を呼ばれ、勇太は振り向く。
身体に広がっていた赤黒い染み――それが綺麗に消失した心陽が、両目に歓喜の涙を湛え、勇太を見つめていた。
二人ともボロボロに汚れていたが、その目だけは、澄んだままだった。
心陽は勇太に歩み寄り、ほんのりと頬を赤らめ、その場にしゃがむ。
「これが、わたしの答えです」
そうして目線を合わせ、さらに赤面しながら、彼女は両腕を、小さな身体に絡める。
二つの影が、一つに重なった。
次回で完結します




